想雅は、見慣れた部屋に一人で何やら、荷物を準備していた。
今、想雅がいるところは、幻想郷の外にある本来の家にいる。
幻想郷の外にいるわけは、紫を引き留めた時だった
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「ちょっと待ってくれ」
想雅は不気味な空間の中へ帰る紫を、引き留めた。
「何かしら?」
「俺を、元の世界へ帰してくれ」
「無理ね」
「即答かよ……」
まぁ、見る限り紫は当然のことのように俺を元の世界に帰してくれないだろうな。
この世界、幻想郷のことをいろいろ教えてくれた時点で、だいたいわかっていたことだった。
しかし、元の世界でいろいろとやることがあるので、想雅は諦めなかった。
「しかしな、こっちにもいろいろとやらなければならない事があるんだ」
「とか言って、逃げるつもりなんでしょう?」
「無理やり連れてきた人が言う口か」
「無理やりではないわ。ただ、スキマに落としただけよ」
「了承もなく落としたことも、無理やりと言いますけどねぇ!おかげで、何回も死にかけましたからねぇ!」
「生きているからいいじゃない」
まぁ、確かに生きているからいいか……じゃなくて!
「まずは、落ち着いて話を聞いてくれ」
「……わかったわ、一応聞くだけ聞いてみるわ」
一応ですか……
「元の世界では、俺は高校生なんだ。まずは、この世界に住むのなら、高校側に退学届を出さなければならない。それでもしないと、先生が家まで訪問して来て、もしも俺がいないとばれたら、捜索届を出され、学校側にも、警察側にも、迷惑が掛かってしまうし、自分を育ててくれた、爺ちゃん、婆ちゃんにも迷惑が掛かってしまうし、バイト先のみんなにも……」
「わかったわ!聞いていても埒がなさそうだから連れて行ってあげる!」
え?もう少しで終わりなんだけどな……まいっか、元の世界に帰れれば。
「一つだけ約束してくれない?」
「なんだ?」
「向こうの世界には、一時的に返すだけ。時間が過ぎたら迎えに行くから」
「わかった」
自分の後ろで、不気味な空間が開き始めた。
「これって、紫の能力なのか?」
「えぇ、私は、『境界を操る程度の能力』よ。あとそれはスキマと言うのよ」
「
「それ以上でもなく、それ以下でもないということだわ」
「さっぱりわからん……」
それ以上、それ以下……まず何がそれ以上で、それ以下なのかが分からない。
「それなら、俺の能力も、程度がつくのか?」
「どうかしら、あなたの能力は未知だから、それ以上なのか、それ以下なのかわからないのよ」
「おいおい、俺って本当に人間なのか?」
そんなこと言われたら、ますます自分が人間なのかわからなくなってきたぞ。
「人間ではないのなら、私の式神になってみない?」
「いや、自分は人間デス」
「最後の方、カクついていたけど、大丈夫?」
「ダイジョウブデス」
想雅は人間なのか不安になりながらも、スキマへと進んでいった。
「言っておくが、異変や弾幕ごっことかすごく楽しそうなものを聞いて、逃げるはずないだろ。そんなことを人生、一度も経験しないで生きていくなんて、絶対後悔するからな」
「子供ね」
「子供でいいさ、大人になってからじゃ、楽しめないことが多いからな」
想雅は笑顔で言った。
「これからよろしくな、紫」
「……//////!!!」
スキマの中に消えていく想雅を見送りながら紫は思った。
「さっき感じた感情……まさか」
-----○●○-----
「ふぅ、これで全部か、意外と荷物が少ないもんだな」
高校に退学届を出して、バイトを辞めて、
さすがに、爺ちゃん、婆ちゃんに事情を話すのは身が重かったけど、案外、すんなり受け入れていくれた。
『ふぉ、ふぉ、ふぉ。自立して、仕事に就くなんて、儂はいい孫を持ったものじゃよ。なぁ、婆さんや』
『そうですね、爺さん。しかし想雅や、葬式には出てきておくれよ』
いい爺ちゃん、婆ちゃんを持ったものだ。うん。
なんか誤解されていたけど……気のせいだろう。
で、荷物のことに戻るが、服と実用品だけを持っていくことにした。
タンスや調理器具など、幻想郷で買った方がいいだろう。せっかく、量産したお金もあるのだから、
え?犯罪ですって、いやだな。犯罪なんて起こしていませんよ。え?お金を作るのが犯罪?ばれなきゃ犯罪じゃないんですよ。『
「しかし、時間が余ったな」
予定より、五時間早く終わってしまった。紫は何を基準としてそんな長い時間を用意したか。
あれか、女性は身支度が長いっていう、俺は男だ。女性と同じにされては困る。
「どうしたものかな……」
時間が余ったと言ってもな……何をする。
そこらへんぶらぶらするか?テレビでも見て暇つぶしするか?本でも読むか?
ん?読む……
チャラ神に言われた、『聖剣』や『魔剣』、神話と言うものを見てみるか。
さっそく目的が決まれば、図書館へと想雅は行った。
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聖剣、魔剣、神話について調べてきたが、さっぱりわからん。
聖剣、魔剣にはいろいろな種類の剣があって覚えにくいし、唯一覚えられたのが、アーサー王が使ったとされている、『聖剣エクスカリバー』。北欧神話の主神、オーディンがシグムントに渡したとされている、『魔剣グラム』と言う具合だ。
神話の方は、さっぱりわからん。
チャラ神が読めばわかるとか言っていたが、まったくわからん。しかし、器の中にわずかずつ知識という水がたまっていくように感じた。神話事態を読むより、その神様一つに絞り、そしてよく知る方が効率的にはいいだろう。
そして、図書館で本を読み更けたせいで、当然時間に遅れた。
「遅いじゃない」
「すまない。図書館で自分の能力のこと調べてきた」
「そう……」
紫はそっぽを向いてしまった。
当然のことだ。時間に遅れてしまったのだから。
「それじゃぁ、開いてくれ、紫」
「……」
あれ、聞こえていないのかな?
「おーい、紫さんや」
「……」
無視されていた。
いや本人には聞こえているだろう。
時間に遅れたことをそんなに怒っているのか?
遅れたこと言ったが、そんなに怒っていなかった気がするが……
なんか気まずい……なにか言わないと。
もういい、やってしまえ!
「遅れたこと、誠に申し訳ありませんでした!」
想雅は、全力の土下座で、自分の部屋に屈した。
「……で?」
「で?って、俺に何をしろと?」
「時間に遅れた人がそのような口を訊いてよいのかしら?」
「すみませんでした!あなたが言うことを何でも聞きますから!」
「何でもと言ったわね」
「はい、言いました。男に二言はありません」
「そう……考えておくわ」
考えておくのか……、人がいないところで言ってほしいものだ。万が一、誰かがその現場に居たら、何かすごくヤバいことになるだろうな。
「開くわよ」
紫の前にスキマが開かれ、想雅、紫はその空間へと消えていった。
次回は博麗神社に行きます。