この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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夜遅くにすいません。勤務が特殊なので……
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13話 本心とは

 

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 

愛里寿と一緒に歌を歌っている時に聞かれて、余りにもいきなりだったこともあり反応に遅れた。

 

 

「ん?何が?」

 

「……やっぱ何でもない」

 

 

愛理寿はそう言うと、何事も無かったかの様に歌ってほしい曲を言ってそのまま聞きに入る。まぁいいか、そう思い俺は愛里寿と共に休みを満喫した。

 

 

家族で初詣に行ったのは凄い久し振りだった。去年もずっと母さんは仕事で予定が合わず、父さんは海外に出突っ張りだ。だから基本は俺と愛里寿で過ごしていたのだが、今回は母さんも一緒で愛里寿も満足そうだった。……母さんと愛里寿の着物姿は最高に素敵だった。あぁ、俺の楽園はここにあったんですね!(片方は親でもう片方は妹だが)父さんにはメールで送っておいてやろう。悔しがるだろうなぁ。

 

最初は一緒にいたものの、知り合いを見つけたらしく、母さんは挨拶に行く(苦々しい顔をしていた)と言い離れた。取り敢えず俺と愛里寿でおみくじも引いて、愛里寿はいい結果だったのかずっとご機嫌だった。

 

 

「おみくじ良かったみたいだな」

 

「はい!お兄様!」

 

 

外モードの愛里寿だが、いい笑顔で返事してくる。……これでまた生きていけるな!

 

 

「お兄様は?」

 

「あはは……ほれ」

 

 

愛里寿に渡すしておみくじを見ると、思わずうわぁーと声を上げた。うちの愛里寿は感情豊かです。

 

 

「凶、ですね」

 

「そうなんだよなぁ〜、まぁこれはこれでいいさ」

 

「お兄様嫌じゃないの?」

 

「勝負は時の運て言うように、おみくじも引く時の運だよ。それに、おみくじってこれもまた一興、みたいなとこあるでしょ?」

 

「私は嫌だけど、お兄様は凄いね」

 

「そうでもないぞ、凶って知った時は顔がうへーってなったし。けど参考になる事もあるしね。忘れそうだけど、忘れないうちは注意するくらいの意識でいいと思うぞ」

 

 

と、そんな会話をしながら満喫していた。あとはこの人ゴミを利用して、愛里寿に近づく不埒ものがいないか監視する。すると、

 

 

「ねぇ、そこの貴方。このあと暇?私達と遊ばない?」

 

「……ん?」

 

 

女性の三人組がどうやら俺に話し掛けてきたみたいだ。これはナンパか?ナンパなのか!?知らない人だし。しかしすまないな、貴女達と過ごすより愛里寿と過ごす方が有意義で大切なのだよ!

 

「!?お兄ちゃ」

 

「ごめんなさい、今妹とデートなんで」

 

「あ、ちょっと!」

 

 

愛里寿の手を引いてその人達から離れた。勿論手を強く握りすぎない様に、ゆっくりと。それでも人が多いし、そもそも追い掛けてままで誘うなんて事はしないだろう。

 

 

「お兄様、綺麗な人達だったけど良かったの?」

 

「さっきの人達か?別にいいんだよ、愛里寿と過ごしてる方が楽しいし、俺行ったら母さんが挨拶終わるまで愛里寿が一人だろ?そもそもタイプじゃないし、愛里寿の方が可愛い!」

 

「……」

 

 

愛里寿は俯いてしまった。耳まで真っ赤になってる。照れてる?かわいぃぃい!

 

 

「照れちゃってまぁ、可愛いなぁ!」

 

「お兄ちゃん!可愛い言うの禁止!」

 

 

思わず家モードが出ちゃってる、なんだこの天使は。愛里寿だった。つまり愛里寿は天使より尊かった……?当たり前だよなぁ!?

 

 

「お兄様、また変な事考えてる」

 

「おっと」

 

 

むすっとした顔に戻ってた。若干顔がまだ赤いけれど、そんな愛里寿も可愛い。けどこれ以上言うと流石に怒りそうだったので、残念ながら、誠に残念ながら、断腸の思いでからかうのをやめる。

 

そんなこんなで母さんから連絡が来るまで愛里寿と遊んだりして過ごした。

別の日には愛里寿や母さんを車に乗せてドライブ()をして母さんがめっちゃビビってたことや、「次はわたしの運転でお兄ちゃん連れまわす!」と意気込んだ愛里寿と戦車に乗って、いろんなとこを見て回った。そして、

 

 

「じゃあ、いってらっしゃい」

 

「うん、また来年かな?」

 

「別にいつでも戻ってきていいのよ?長崎や青森に行くくらいなら」

 

「あははは……」

 

 

冬休みもそろそろ終わる為、大洗へ戻る時が来た。長崎や青森へ行っていた事は、まぁお金の都合もあるので母さんは知ってるんだが、確かに家に帰ってもいいかもなー。

 

 

「……お兄ちゃん」

 

「ん?愛里寿どうした?」

 

 

すると、母さんの陰に隠れてた愛里寿が顔を出す。ちょこんと顔出し愛理寿、これは売れる!売らないけどな!やらんけどな!

 

 

「……また帰ってきてね?」

 

「当たり前だろ!愛里寿に会うために帰って来るさ!」

 

「……はぁ、愛里寿も相当だけれど、湊の方が重症だわ」

 

 

母さんが頭に手を当てているが、こればっかりはしょうがない。シスコンなのは理解してるけど厳密に言えばシスコン(愛里寿)、これが重要だ。直す気は無い!

 

 

「帰って来るまで会話が無かった空気が考えられないわね……それじゃあいってらっしゃい」

 

「お兄ちゃん!いってらっしゃい!」

 

「それじゃ、行ってきます」

 

 

そう言って荷物を持って島田家から出る。あーこれから大洗へ帰って……自動車部かぁ、死ぬな。こ、今回はお土産買ったし、大丈夫だろ!

 

 

「湊あと一つ!」

 

 

すると後ろから母さんの声が聞こえる。

 

 

「いつでも話は聞いてあげるから、遠慮だとか、迷惑だとか考えないで。……私は勿論、愛里寿もいるんだから」

 

「……はい、分かりました」

 

 

母さんは笑いながら手を振ってくる。愛里寿も出てきて同じように手を振る。全く、そんな一生の別れでもないんだから……

 

手を振り返して、再度出発する。そろそろ新学期、大洗へ行ってからそろそろ一年か。時間経つのは早いなと感じつつ、帰路へ着いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ミナトーって、あれ?」

 

 

私が自動車部へ顔を出すと、最近はよく見るミナトの姿が無かった。

 

 

「お、ナカジマか。シマダなら来てないよ」

 

 

と、部活の先輩から返事を受ける。備品の確認したかったから手伝って貰いたかったんだけど。

 

新学期が始まる前の日に、帰省していたミナトが帰ってきてお土産を貰い、そのまま自動車部に参加していった。それから一ヶ月ほど経ったのだが、ここ最近のミナトは自動車部に参加する確率が高くなっていた。

 

最初こそ今まで通りにライブをしていたらしいんだけど、どんどん回数が減って、今は一週間に一回するかしないかだ。本人にどうしたの?って質問したら「気分転換だ。それに自動車部も抜け過ぎたら、後輩がそろそろ出来るのにまずいだろ?」と言われた。

 

まぁ、確かにその通りなんだけど、ミナトって変に真面目だし頭良いから、教えた事すぐ出来るようになるし要領もいいんだよね。それに出ない理由も皆知ってるし、むしろライブの方を楽しみにしてる人多いと思うんだけどなぁ。私達としては出てくれた方が助かるんだけど。

 

 

「しかしシマダの奴、最近悩んでんのかね」

 

「あー……先輩もそう思います?」

 

「そりゃあ、あんなあからさまだったらな」

 

 

そう、ミナトの様子がおかしい。自動車部に参加するだけでなく、生徒会にも結構な頻度で手伝いしに行っているらしい。クラスの子から話を聞くには、前から口数は少なかったけど、最近は特に話してるとこを見てないらしい。休み時間も上の空で、そんな黄昏てる島田くんも素敵!なんて言っていたが、流石に心配になってきた。と言うわけで、

 

 

「よし、先輩!ホシノとスズキ連れてミナトのとこ行ってきます!」

 

「おっけー、いってらっしゃーい」

 

 

先輩からの許可を貰い、ミナトの所へ行く。今日こっちに来てないって事は、恐らく生徒会の方へ行っているんだろう。部室に来る途中だったホシノとスズキを連れ、そのまま生徒会室へと移動した。

 

 

「どうもー」

 

「ちょっとしつれーい」

 

「ミナトを探しに来たんだけど」

 

 

私からスズキ、ホシノと連続で生徒会室に入る。そこには現生徒会面子とミナトが居た。

 

「島田ー呼んでんぞー」

 

「角谷はもっと働け……で、どうしたのナカジマ。珍しいなここに来るなんて」

 

 

実は生徒会は現在三人で、全員が一年という。そこに混じってミナトが居るんだけど違和感が無い。

 

 

「いやーちょっと話したい事があってねー」

 

「そうなのか、じゃあすぐ行く。そもそも今日は自動車部に行く予定だったのに、こいつらに拉致られただけだからな」

 

「えー島田、そりゃ困るんだけどな」

 

「そうだぞ島田!こっちに来た以上、手伝って行け!」

 

「桃ちゃん、手伝いに来てくれてるんだし、湊君の言う通り今日は急だったから……」

 

「小山の言う通りだぞ。それに今日くらいの量だったら、角谷がしっかりすればすぐ終わんだろ」

 

 

と言うわけでー、とミナトは生徒会室を出て行く。

 

 

「ごめんねー会長。うちの部員連れてくね」

 

「しょうがないよねー、じゃあ任せたよ。あいつの事」

 

 

そう言って、会長は仕事を始めた。そんなすんなり始めるとは副会長も河嶋さんも驚いた様子だった。

 

 

「んで、話したい事って、部活の事か?」

 

「んー、取り敢えずここでもなんだしどっかファミレスでも」

 

「あれ?部活は?」

 

「先輩からは許可貰ってるから安心してちょーだい!」

 

 

生徒会を出てそのままファミレスへと移動した。この時間に帰るのも久し振りだなー。

 

 

 

ファミレスへと到着し、各々注文して本題に入る。

 

 

「珍しいな、お前達が部活サボるなんて。話したい事ってなんだ?」

 

「そうだねー、まぁ一年同士の付き合いってのもあるけど、ミナト最近どうしたの?」

 

「どうしたって?」

 

 

キョトンとするミナト。こりゃ気付かれてないと思ってんのかな?

 

 

「いやー明らかにミナトおかしいじゃん」

 

「そうそう、うちらとしては自動車部に出てくれるのはありがたいんだけどさ、最近ライブ少なくない?」

 

「それに生徒会の仕事も引き受けてるみたいだしね、前よりかも」

「あー……わかる?」

 

「「「逆に分からないと思ってたの?」」」

 

 

見事三人とも被ってしまった。何故バレてないと思ったのか、あんだけ歌歌ってたのが少なくなったらそりゃわかるよ。

 

 

「いや、別になんでもないよ」

 

「そうやって嘘をつく、うちらの中で隠し事は無しだよ。加えると、周りからいろいろ言われてて鬱陶しい」

 

「理由の殆どそれだろ……」

 

 

心外な、結構真面目に心配してるんだけど。

 

 

「うーん、ほんと個人的な問題なんだけどね」

 

「ほらほら言ってみ?」

 

「言ったら楽になるよ」

 

「……ちょっとね、しっくり来ないんだ。新しく曲を作って練習しても、こんな曲じゃないって。それに今まで演奏してた曲も全然これじゃない感が出てね」

 

 

……これはスランプという奴かな?てか結構感覚的なガチの悩みすぎてどうしようも出来なさそうなんだけど。

 

 

「それで、気分転換……という言い方は悪いけど、自動車部の方に参加したり、生徒会の要請に応えてるわけ。生徒会は……流れもあったけど、自動車部については俺自身がやりたいと思ってた事だったからね」

 

「こ、これは……どうしようか?」

 

「うーん、まぁ確かにやりたい事をやるってのは良いと思うけど」

 

「ミナトが良ければだけど、ミナトの演奏聴いてみようよ!なんか私達でもわかるかもしんないし」

 

「「それだ!」」

 

 

話がまとまり、ライブの演奏に必要な道具をミナトの家に取りに行った。「え?まじ?」などと狼狽えてるミナトを無視。何気にミナトの家知らないから地味に気になる。

 

と、思ってたら案外普通のマンションだった。出口で待っててと言われて十分程した後に荷物を持ったミナトが出てきた。正直遅かったら三人で家ん中突入しようぜって言ってたけど、また今度の機会にするとしよう。

 

 

そしていつも路上ライブしてるとこに到着し、ミナトは準備始める。そうしてるうちに周りに人集りが出来始めた。すっげー、ここで聴くの初めてだけど、こんなに人来るんだね。周囲の人々がミナトに話し掛けている。

 

 

「湊君、最近してないから心配してたんだよー」

 

「湊君の歌聞くと仕事終わりだなぁって感じがするからさぁ」

 

「分かる分かる、あー学校終わってうちの子も帰ってくるかなーって。けどうちの子影響受けてギターやりたいとか言いだしたのよ……」

 

「あんちゃんあんちゃん!今日は何歌うの?」

 

 

てかまじで人多い。え?ミナトこんな人気あったの?まぁ地元みたいなもんだし、周りの人達も見たことある人ばっかりだけど。

 

 

「あはは、すいません最近出来てなくて。あと今日も少しだけで……」

 

「そうなの?まぁそろそろ年度末だし忙しいのかねぇ」

 

「無理しないでください!」

 

 

私も、ホシノもスズキも唖然としている。あの子隣のクラスの子じゃん。てか上級生も居るし。

 

 

「それじゃ始めます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

 

ライブも終わり、集まってた人達も既に解散している。私達も再度ファミレスに集まって結果を話し合っている。が……

 

「ミナト上手くなってるじゃん」

 

「うんうん、別におかしいとか下手くそとかないと思うけど……」

 

 

スズキとホシノの言う通りだ。そんな悪そうな感じはしなかった。むしろ前より上手くなってね?とさえ思った程だ。

 

 

「そうか……」

 

「ミナトが深く考えてるだけだって!」

 

 

しかし、本人が納得してないのが分かる。

 

 

「けどミナトが納得してないんだったらそれはもうしょうがないよ。だって、こう言うの歌ってる本人の気持ちじゃん。私達は力になれそうに無いけど、ミナトがしっくりこないって言ってるから、納得出来る何かを見つけないとダメだよね」

 

「そっかぁー」

 

「ちっ、ミナトに恩を売れるチャンスだったのに」

 

「おい、最後ゲスいぞ……本人の気持ち……かぁ」

 

 

ミナトは黙り込んだ。この調子じゃ、まだまだ時間掛かりそうかな〜。

 

 

「ほら、なんでも良いからさ。私達に手伝える事があったらどんどん言ってくれて構わないから」

 

「その通り、どんな所にでもうちのソアラで連れてってあげるからさ!」

 

「同じ自動車部なんだからね。それにそんな感じだと、来年から入部して来る一年にメンツが立たないでしょ?」

 

「ああ、そうだな、そん時は頼むわ。今日もお前らと遊べて良かった。ありがとな」

 

 

ミナトはお礼を私達に告げて帰っていった。

 

 

「うーん、こりゃ難しいね」

 

「ミナト学校じゃまともに話すの私達と生徒会メンバーくらいだもんね」

 

「会長とかに相談するような感じでもないっしょー」

 

 

はぁーどうするかー、と三人で迷っている時だった。

 

 

「三人ともお疲れー」

 

 

と、目の前に会長さんが現れて、自然に椅子に座った。

 

 

「いやー私も聞こうと思ってたんだけどね、私らより仲良い自動車部が話聞いた方が良いと思ってさー」

 

 

干し芋を齧りながら話してくる。

 

 

「と、言うわけで、何があったか教えてくんない?」

 

 

まだ私達は帰れそうになかった。

 

 




こんな感じです。正直本編までこんな遠かったか……?テンポ良く早めにしてる筈が……


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