正直こういう話の方がやっぱり書きやすくて筆が進みますね。
クオリティは……どうでしょうか?
さて、今どうしようか猛烈に悩んでいる。それは目の前の女子についてだ。冷泉麻子、天才少女であり、そして低血圧少女だ。何が言いたいかと言うと、初めて登校中にエンカウントした。すげぇしんどそうに歩いていて、正直見ていられない。
しかしだ、西住みほならばいいだろう。同じ女子だしね。けれど、男の俺が手を貸すのは問題ではなかろうか。声をかけるくらいなら問題はない……と思いたい。そこから「辛そうだね、学校まで連れて行ってあげるよ」とか言って体を触るのは非常に問題だ。そのまま学校ではなく警察署に行かなければならないだろう。
けどこのまま放っておくのは、何だかなぁ。取り敢えず声くらいかけるか。
「おい、君大丈夫?すげー体ふらふらしてるけど」
「……朝なんて消えて無くなればいいのに」
何てことを言っているんだ。しかし低血圧と言ってもここまで負担がかかるものなんかなぁ。……今日は遅刻かな。
「学校までは行けるか?」
「……問題ない。たどり着けるはずだ」
「途中で倒れたりしないよな、まじで」
「通い始めてから倒れたりはしてないな」
別にいいんだけどね、敬語じゃねーや。多分意識が朦朧として、先輩だとか気付いてねぇなこりゃ。
「取り敢えずこのまま素通りしてほっとくのも嫌だから、学校まではついて行くぞ」
「……別に私は構わないんだが、お前も遅刻するぞ」
「気にすんな」
と言うわけで一緒に歩く。この速度なら毎日遅刻も分かるわ、すげぇ遅え。しかし通りすぎて行く周りの生徒の視線が凄い気がする。まぁ冷泉が凄い姿勢で凄い歩き方してるから注目されるのもしょうがないか。
徐々に意識がはっきりしてきた冷泉から「……先輩だったのか」と気付かれはしたものの、別段変わりなどなくゆっくり登校した。ていうかお互いに互いを知っていた。冷泉は今年の主席だしそりゃ分かる。しかし何で俺知ってるんだ?と聞くと有名人らしい。まぁ路上ライブしとけばそりゃそうか。そのまま歩き続けてやっとの事学校に到着するとあの子がいた。
「もう!また冷泉さん遅刻!?入学式の次の日からずっとよ!分かってる?」
「そど子、耳元で騒ぐな。うるさい」
「いい加減にしなさい!てかそど子って呼ばないで」
そう、風紀委員のそど子、園みどり子だ。てかもうそど子って呼ばれてんのかよ。冷泉はまだ入学してきて二ヶ月も経ってないのに。
「そして今日は珍しい人もいるじゃない」
「おう、俺は初遅刻だな。すまんなそど子」
「島田までそれで呼ぶなー!!島田、その子は冷泉麻子と言って、遅刻の常習犯なのよ。それに貴方が付き合う事はないわ」
「うーん、けどこんな生まれたての子鹿みたいに足プルプルさせながら登校してる奴ほっとけないだろ?倒れても困るし」
「だからって貴方まで遅刻してたら世話ないじゃない!」
まぁ、ごもっともなんだけど。
「うーん、冷泉。遅刻を無くすにはどうすればいいと思う?」
「もっと朝早く起きて登校すれば?」
「そど子!私を殺す気か!……無理だ、今でもギリギリなんだ」
「無理って何よ!」
「園落ち着けって……」
そど子がえらい騒いでる。しかし遅刻しなくなれば、冷泉が戦車道に参加する理由も無くなっちゃうし……よし、ここは明らかに無理な事を言いつつの、俺も考えたって事でここから逃げよう。
「うーん、俺が自転車で送ろうか?毎日は無理だろうけど。ま、今日会った男にそんなこと頼む奴なんて」
「よし、それで頼む先輩」
「無理じゃなくて、毎日すればいいじゃない島田」
「いな……待て待て。冗談に決まってるだろ?てか冷泉、初めてあった男にそんな事頼むか普通!?そど子も風紀委員だろ?これは風紀の乱れじゃないのか!?」
待て待て。そこは無理でしょ!風紀を乱すようなことはするな!って叱るとこでしょ!
「まぁ、先輩は有名人だし、大洗でも信頼されてる男の人だろ?今日だって普通は無視すればいい話だったのに」
「島田、アンタが周り与えてる影響知らないの?アンタがさっさと誰かとくっ付かないから、ファンクラブが問題起こすのよ。それを無くす事と冷泉さんの問題も解消、これは一石二鳥じゃない」
「そど子、流石にくっ付いたりにはならないだろう」
「そういう誤解をしてくれるだけでもだいぶ緩和するでしょ。ていうか、貴方達そど子そど子言うな!」
おいおい、まじなのか?てかそんな俺は周囲から信頼されてんの!?どちらかと言えば距離取られてる人間でしょ!それにそど子よ、ファンクラブなんて初めて聞いたんだが、なんの話だよ!
「ま、本人は知らない方がいいことだってあるわ……と言うわけで明日から冷泉さん、ちゃんと連れて来てね」
「よろしく頼むぞ、先輩」
なんて事だ……これ原作がやばいぞ。何か良い案が、ここを切り抜ける案はないか……
「ま、待て!流石に毎日は無理だ。自動車部の活動だってある。朝早くからとかざらにな。あと、やってもいいが冷泉。一日送る毎に貸し1だ。その貸しをちゃんと返してくれるのならばいい」
と、取り敢えずこの場をやんわりと切り抜ける!
「まぁ、そんな所が落とし所ね」
「貸しって何をすればいいんだ私は」
「なに、俺が頼んだ事をしてくれるだけでいい。そんな無理難題は頼まない、それに頻繁に頼むわけでもない。ただ、1日送る毎に貸しの数が増えていくって感じで行こう。俺が卒業したら0にしていいから」
「軽く手伝うだけでいいのか。それならまぁいいか」
「よし、話は終わりね!そろそろ授業も始まるし、さっさと2人ともクラスに行きなさい!」
「そど子もな」
「そど子って呼ぶのやめなさーい!」
そこで2人とは別れた。……えらい事になったぞ。上手く切り抜ける事は出来なかったようだ。
しかし、冷泉には借しをつける事が出来たし、最悪戦車道の時に「やってくれなきゃ送らないぞ、あーこれから先は遅刻が増えるなぁ」とか言えば……
俺ってゲスいな、流石にそれは最終の最終手段にしておこう。
1日経って冷静に考えるとやっぱこれ色々おかしいだろ。昨日の帰りに私の家はここだって教えられたけど、朝から行くとかカップルか!カップルでもやらねぇよ!
次にファンクラブとか何とか。例えば本当に実在したとしよう、俺見た事ないけど。そうした時、こう過激派?みたいなのがいたら冷泉が危険じゃないか?いや、別に俺が人気あってそこまでやる人がいると思ってるとかじゃない。可能性の話だ。
てか最後に昨日クラスに行った時だが、えらい目にあった。普段は話しかけてこないのに、冷泉の事を聞いてくる奴が多すぎる。男子生徒がいるだけで、冷泉はこんなに人気出るんだな……女子は女子で「彼女!?彼女なの!?」なんて迫って来てちょっと恐ろしかったわ。何でそんなに気になるのか。
よって正直気が進まない。別に送る事は構わないんだが他の要素が……取り敢えず今日はしょうがない。冷泉を迎えに行くか。
冷泉の家に着いて、チャイムを鳴らす。……全く出てくる気配がない。あ、思い出したけど確か原作でも武部が起こしに行った時、全然起きなかったよな、確かあの時は戦車の空砲で……
いや、無理だろ常識的に考えて。まず戦車ねぇし。あっても空砲撃たねぇよ。これまじでどうすっかなぁ。この前登校中に会ったんだし、原作のあのシーンはかなり朝早かったから、まぁ出てくるだろ。
普通に歩いても遅刻するってタイミングで冷泉は出て来た。……っておい。
「おはよう。髪はぐしゃぐしゃだぞ、寝癖が……」
「うるさいぞ先輩」
「迎えに来たのになかなか鮮烈な一言だな。顔洗ったか?飯食ったか?」
「……顔は洗うだろう普通」
「飯は食ってないんだな?……取り敢えず乗れ。途中でおにぎりでも買ってやるから。あと髪の毛くらい整えろ」
「……」
「おーい、だめだ聞こえてるかわかんねぇ。もういいや、出発するぞー」
冷泉を後ろに乗せる……かっる!びびったわ。しかし本当に乗るんだなぁ、しかもちゃんと落ちない様に背中に捕まってるし。服掴むだけとか流石に怖すぎて運転できねぇしな。
と言うわけで、冷泉を送るという日課が追加されてしまった。ちなみに武部沙織ちゃんと出会い、どんな関係なのか、一体いつから付き合ってるのだとか、めっちゃくちゃ質問責めを受ける訳になるんだが、それはまた先の話。
「島田ー最近後輩とよろしくやってるらしいじゃん」
「よろしくって何だよ角谷。まさかの仕事が増えただけだよ……本当予想外だった」
「そど子から聞いたよ〜。いやー笑った笑った、自業自得じゃん」
「ほんとそれな。弁解のしようもない」
「どうせその場から逃げようとしたんでしょ?それで適当な事言ったら、まさかの採用されちゃったみたいな」
「何で分かるんだ、エスパーかよ」
「島田がわかりやすいんだよーほんと」
あれからほぼ毎日の様に冷泉の送り迎え担当になってしまったわけだが、もう二ヶ月も経てばいい加減慣れる。最近は周囲ももう何も言わなくなってきた。
しかしあれだな、冷泉と話してみると彼女だとかそんなんじゃねぇな。妹の世話をしてるみたいに感じる。愛里寿は自分で出来るし、本当によく出来た妹だったけど、冷泉の奴は本当朝が弱過ぎて話にならん。
けど最近は低血圧も改善されてきたらしい。朝食をちゃんと食べる事は大事だからな、もはや作ってやってるわ。それでも俺が自動車部等で行けなかった日は遅刻してるらしい。
……こんな事、愛里寿にバレたらやばいな。ぶち殺される。
現在は夏休みに入っており、自動車部と生徒会を行ったり来たりしている……え、俺生徒会じゃないんだけど。なんかもう公認みたいな扱いされてるんだが勘弁して欲しい。しかし、普通に断って仕事しないと河嶋辺りが倒れる、主に過労で。
ケイやカチューシャからは行けないと連絡を入れると、かなりの数のメールが来た。どんだけだよ。特にカチューシャからは新生プラウダを見てもらいたかったらしく、こっち来ないなら、生で見れなかった事を後悔するレベルの試合をしてやるんだから!って言われた。……黒森峰戦、どうなるんだろうな。
さて、今はと言うと角谷と約束していた夏休みの仕事の話をしに来ている。
「そろそろ角谷教えてもらってもいいか?そんなにもったいぶるもんでもないだろ?」
「うーん、ま、いっか。目的としては他の学園艦の視察して、どんな運営方針をしてるか、どんな活動をしているのかを見に行って勉強するって奴なんだけど」
おおう、意外とというか、思ってたよりまともだった。
「けど、今回行く学園艦はタイミング的に寄港していて、お祭り騒ぎになってるんだよね」
どういう事だよ、お祭り騒ぎって。なんかイベントでもしてんのか?
「そんで、その手伝いも兼ねてるんだよ」
「ふぅん、楽しそうだな。で、場所とその学園艦はどこのなんだ?」
「行く場所は静岡県。そして――」
「その学園艦は、アンツィオ高校だよ」
という訳で次回からアンツィオへ飛びます。
ガンガン先に進みます。