この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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ここまでは一気に書いていたのです。

これも切ろうかと思ったのですが、どこを切っても微妙になりそうだし、導入を3話に分けると話数的に長いなと思って、早く投稿しました。

早速お気に入りありがとうございます。昨日でこんなに読まれているとは思わず感謝の極みです。
これからペース落ちると思いますが、よろしくお願いします。


2話 それは突然

 

 

中学3年になって、そろそろ高校を選ぶ時が来た。

 

 正直いろいろ考えて、やはり自分のしたいと思ったことをやっていきたいという結論に至り、それがギターを弾きいろんな曲を歌うことだった。それは何故かと言えば、実はこの世界って細かいところが色々違うのだ。

 

 例えばこの世界では、ボコというキャラと作品が存在するが、俺の前世ではガールズ&パンツァーという作品の中にしか存在しなかった。まぁ簡単に言うと前世ではあったものがこの世界には無く、この世界にあるものが前世には無かった。そもそも戦車道なんてしてる時点でそうなんだけど。

 

 しかし、そこに歌も含まれているのだ。知らないバンド、歌手はいるけれど、前世で好きだった人や曲が存在しなかったのはとんでもなくショックだった。前世ではそんな長く生きられなかったが、それでも歌を聴いて元気が出たりしんみりしたり、励まされたりテンションを上げたりと、多くの事で助けられたと思う。

 

 だからこの世界に無い曲をできる限り再現して、いろんな人に聞いてもらいたいと思ったのだ。そこで問題がある、それは俺に音楽のセンスがあるかどうかだ。それに家があの島田家だから、音楽をやりたいです!って言って簡単に納得して貰えるとは思えない。だから練習した。ひたすら毎日練習に打ち込んだ。昔は色んなことに対して全力で取り組んでいたが、それを全てとは言わないが楽器の練習に割り当てた。あとは歌の練習だなと思い、調べては取り組み、自分に合った方法を模索した。その姿を見て母さんは、高校3年生までは好きに生きなさいと言ってくれた。

 

 なんだかんだ劇場版の時も、この世界に生まれてからも身近に感じてたが、母さんは島田家よりも俺や愛里寿の事を優先してくれているのだ。中学ではバンドを組み、文化祭を盛り上げたりもした。友達や愛里寿からとても褒められたんだが、それ以上に母さんからも演奏、歌とそれぞれを褒められた。だから演奏も歌声もそれなりには聴けるものになったのだと考えてる。

 

 けど前世の先人達には全然敵わない。具体的な目標が頭の中でイメージ出来ている。あとは歌に関して努力できる高校を選ぶだけだなと、進路については考えていた。

 

 

「ただいま!お兄ちゃん!」

 

「おかえり、愛里寿。今日はどうだった?」

 

「うん、えっとね……」

 

 

 愛里寿は日々日々可愛くなっていく。あーこれで好きな人が、彼氏が出来たとか言われてみろ。色々やばいぞ、まじで。今日あったことを一生懸命伝えてくれている。テンションも上がってきてるのか、顔を赤くしながら、上目遣いで話してる。うはー、まさに俺のテンションは有頂天だわー。その様子だけで楽しかった事が伝わってくる。

 

 

「お兄ちゃん! 聞いてるの?」

 

「聞いてる聞いてる! 愛里寿の話を聞き逃す訳ないだろ〜!」

 

「そう……かな? あ、お兄ちゃん、またボコの歌歌って?」

 

「いいぞ〜けど本物の方聞いた方がいいんじゃないのか?」

 

「それもそうだけど、お兄ちゃんの声が私好きだし、歌うなら私も一緒に歌えるから」

 

 

 可愛すぎる! くぅ〜まるでダメ兄貴製造妹だ。早速アコギを持ってきてチューニングし弾く準備をする。準備ができたら、合図をして一緒に歌い始める。

 

 

 あーこんな日が毎日ずっと続くのなら、幸せもんだよな俺は。そう考えながら笑顔で歌う愛里寿を横目で見ながら一緒に歌い続けた。

 

 

 

 

「んー、ちょっとトイレトイレ」

 

 

 夜中に突然尿意に襲われ目を覚ます。そのまま流れでベッドから立つと、流石に気づいた。

 

 

「待て待て待て、なんだ夢か」

 

 

 目の前には真っ白い空間が広がっている。今立ち上がったはずなのにベッドもない。こんな光景を見れば、夢だと思う。

 

 

「ベッド無いけど、頑張って寝るか」

 

「待って待って」

 

 いきなり後ろから声が聞こえた。振り向けば真っ白い空間なんだけど、さらに真っ白い様なちょっとモヤモヤしてる何かが居た。

 

 

「俺疲れてたっけ……愛里寿と歌った後は飯食って、勉強教えて、楽器練習して」

 

「その後寝たんだよ、そしてここへ僕が呼んだ。君と話すためにね」

 

 

 なんと返答までしてきた。正直混乱していたが、まぁ夢なら夢でいいし、取り敢えず要件を聞くことにした。

 

 

「訳わかんないんですけど……何か用ですかね?てか貴方……貴女? どちら様でしょうか?」

 

「うーん、僕は管理人と言うべきかなー。まぁ君たちの認識では神と思って貰って構わないよ」

 

「はぁ……」

 

「あ、これは信じてもらわなくても良いからさ。本当に信じて貰うべきことは他にあるんだよ。それが君を呼んだ理由だ。聞いてくれるかな?」

 

「えっと……はい、聞きます」

 

 

 なんかやけにフランクだな、この……人?

 取り敢えず話だけ聞いてみることにした。要約すると、どうやら転生をする時、記憶は無くなるそうだ。そりゃそうだと思う。大事なのは後半だ。俺は記憶を持ったまま転生した。更にその転生先は、本来ならばその家族には娘一人しか出来なかったらしい。つまり、俺と言う存在が完全にイレギュラーであるらしいのだ。

 

 

「此方の不手際なのだが、本来なら君は居ちゃいけない、そう言う運命になんだよね」

 

「居ちゃいけないってなんですか。ふざけるなって話ですよ、それが本当だったら」

 

「本当なんだよ。まぁ、とは言っても別に居ても良いんだけど」

 

「いや、どっちなんですか。話が要領を得ませんね」

 

「なんて言うのかな。これで記憶が無ければ別に良かったんだけど、この状態だと完全に君だけ特別扱いしてることになるんだよね。それが非常に困る」

 

「そんなのあなた自身も言ってたけど、そっちの不手際じゃないですか」

 

「厳密に言えば、君の前世の世界担当の、なんだけれどね。実はね、正直君が前世で死んだのも予想外の死だったらしいの」

「え?」

 

「君を殺した通り魔は女の子を殺そうとしたけど、偶然足がもつれその場でこけるはずでね。そのタイミングで君が通り魔を押さえつけることで収まる出来事だったんだけど……君が一歩踏み出すのが早かったらしい」

 

「え?まじですか?」

 

「そう、言ってしまえば無駄死にって奴だ。だけど、それを知るのは僕たちのみ。あの場での行為は無意味ではなく、とても勇敢な行動であったのも事実だからさ。だから個人的にはここに居てもらっても良いんだけど」

 

「だけど?」

 

「君が元々居た世界の奴が返せってね」

 

 

 因みに、もし返すんだったら俺はこの世界で不幸な事故に巻き込まれて、そのまま御陀仏らしい。

 

 

「そんなふざけんなって話です」

 

「そこで、君はこちらに居るから、既に担当は僕です!って押し切ってもいいよ。条件は付けさせて貰うけど……あ、勿論拒否権は無いよ」

 

「はぁ!? 何でそうなるんですか!?」

 

「君のせいではないにしろ、僕のせいでも無い。君は楽しく暮らしてる。けど僕には何も無い。だから僕を楽しませて欲しいんだよ」

 

 

 そう言って神とやらは一枚の紙を渡して来た。

 

 

「そこに書いてある項目をやってね、期限内に」

 

「待って下さい!期限て何ですか!?それにそもそもやるなんて……」

 

「拒否権は無いって言ったでしょ?あーどうしようっかなー、元の世界に君を返そっかなー、そんでその際に起きる不幸な事故の近くに君の大切な人がいるかもなー」

 

「あんたまさに外道だなおい……」

 

 

 もう敬語はやめだ。むちゃくちゃ言って来やがって……そう思いつつ渡された紙の内容を確かめる。取りあえず中身を確かめなければ。

 

 

「まぁ、その項目次第だよな。それをこなしていけば……待て待て待て」

 

「ん、どうかしたかい?」

 

「おかしいだろ!何だこれ!」

 

 

 紙に書いてあった事をまとめると、

・ダージリンからお茶会に誘われる

・聖グロリアーナ女学院OG会の問題を解決し、新戦車導入を手伝う

・ケイがサンダース大付属高校戦車道の隊長になること

・単独でアンツィオ高校に赴き、屋台を手伝うこと

・カチューシャを肩車する

・ノンナに同志と言われる

・西住しほとみほを和解させる

・ミカと一晩を過ごす

 

 

「突っ込みどころ多すぎだろ!」

 

「そうかな?」

 

「中には意外と出来そうなのあるけど、明らかに無理難題なもんばっかりだよ! しかも何で名前指定!?」

 

「君の家の戦車道に絡めてみた且つ世代同じでしょ?」

 

「そうだけど! それに……」

 

 

・西住みほ率いる大洗学園を優勝させる

・西住みほ率いる大洗学園を大学選抜チームに勝利させる

 

 

「え? 何これ? 大洗優勝できないの?」

 

「さぁ、どうだろうねぇ?しかし、君はこの子達を知っている口振りだね。ここに書かれている中で知り合いは一人しかいないはずだけど。それに、西住みほと言う少女が大洗で戦車道を始めて、優勝をすることが当然のように言うね」

 

「え?」

 

 

 この神とやらはもしかして、俺にガールズ&パンツァーの知識がある事を知らない? この世界の管理人とかそんなだから、前世のような別世界を知らないのか。俺についてはこの世界に来た者だからある程度知ってるとか?

 

 

「何でこの世界の事について君が知っているのかは分からないけれど、一つ言えるのは本当に君の知っている通りになるのかな?」

 

 

正直そうなると思っていた。俺が関わっているわけではないからバタフライエフェクトだっけ? そんな連鎖的に他の事に影響なんて与えるわけないと考えていたからだ。

 

 

「それと、期限は大学選抜チームと勝負するまでだからね。期限設けないと、やらなそうだし、僕もめんどくさいし。ま、君が挑戦してダメだったとしても、周囲の人は巻き込まないと約束するよ」

 

「……」

 

「因みに偶然にも、大洗女子学園は来年から共学になるらしい。僕から言えるのはここ迄だ。是非とも楽しませてくれ、人と話したのなんて久し振りだからさ」

 

 

最後にそう言い残し、神とやらは消えた。同時に真っ白い空間が崩れていく。最後までその紙を見つめて居たが、視界が暗くなり、何も見えなくなったのだった。

 

 

 

 

「お兄ちゃん、ご飯出来てるよ。お母様も待ってる」

 

「……あぁ、わかったよ。ありがとな」

 

 

 ドア越しから愛里寿の声が聞こえる。一体どれくらい寝ていて、いつから起きていたのだろうか。流石にそろそろ起きないとな、と思いベッドから立ち上がる。夜中の事は本当だったのだろうか、むしろ夢であって欲しかった。だが

 

 

「まじか……」

 

 

 机の上を見ると一枚の紙が置いてある。その内容は夢の中で見た、やるべき項目が書かれてあったのだ。

 

 

「ほんと何でこうなった……」

 

 

 取り敢えず今後の方針は決めた、というかこれしかないだろう。大洗学園に行くことだ。俺は年代的には西住まほやダージリンと言った原作でいう三年生達と一緒だからな。だから西住みほが来るまでは時間があるのだが、違う学校に最初は進学し、途中から転校することで関係を築く……なんてことは無理だろう。余程な事が起きるか、母さんに頼み込んだら転校できるかもしれないが......できないと考えて動いたほうがいい。つまり最初から大洗に行っていなければならない。

 

 思わず溜息をこぼしてしまう。順風満帆な人生に突如として余命宣告された様なものだ。俺が提示された条件をこなそうとする限り、あの外道(神様)は、最悪の結末には周囲を巻き込まないと言っていた。しかし簡単に終わらせるわけにはいかない。幸せな生活を捨てるのなんてあり得ないし、そもそも母さんや愛里寿、いろんな人を悲しませる。少なくとも家族から愛情を貰ってる事くらいはわかるのだ。だから、

 

 

「やれるとこまで、やってやるしかねぇよな」

 

 

 思わず出てしまった独り言を、自分の中で噛み締めて、お手伝いさんと母さんが作ってくれたご飯を食べに行くことにした。




ツッコミどころ多すぎるとは思いますが、ぜひどうぞ。
シリアス系にしようかと思いましたが、それだと自分が書きたい事じゃなくて、全力で戦車道バックアップしろよってなると流石に感じたのでこんなところに落ち着きました。

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