今回は……非公式、ですかね。半ばオリキャラ的な人が出てます。そんなに関わらせてないので大丈夫かな、とは思っていますが…
では本編へどうぞ
「とまぁ、こんな感じだったわね」
ダージリンは満足そうにして、新しく注がれた紅茶を飲む。……ぶっちゃけ最初全く気づかなかったんだよな。聖グロ行く事、そして最後の格言で確信したもんだし。格言聞いた瞬間にダージリンの生格言キター!ってテンション上がったなあの時。
「アッサム、今日もいい出来栄えね、美味しいわ。……あら?皆さんは飲まれないのかしら?」
ダージリンはきょとんと周囲を見渡す。うんまぁ……なんだ。当人の俺も恥ずかしくなった。この人気づいてないのか、惚気にしか聞こえなかった。
え?俺の事好きなの?ってくらい語ってたけど、流石にここまで言われちゃうと気付かない方が無理だろ……
すると、耐えられなかったのかカチューシャが声をあげた。
「何よそれ!そのラブコメみたいな展開!」
「……凛ちゃんはスイーツ脳みたいですね」
「あら?プラウダの優秀な砲手は1人の的にすら、ろくに当てられないのかしら」
「……」
「ちょっと、ノンナ落ち着きなさい!いきなりどうしたのよ」
「いえ、何も」
「ふふふっ、こんな格言を知ってる?
慢心は人間最大の敵だ。
貴女はどう思ってるか知らないけれど、攻める時に攻めた方が勝ちなのよ?」
「……シェイクスピア、だな。ダージリン、いきなり元気良くなったな」
「んふ、やだですわね、湊さん。いつも通り私の事は凛ちゃんで良いわよ?」
え、何この一触即発の雰囲気。アッサムさんは涼しげな顔をして優雅に紅茶を嗜んでいる。ちょっとアッサムさーん、暇なら話しません?と思ったら目で制された。口元隠してるけどめっちゃ笑ってるじゃん。ここに来てアッサムさんの笑ってる姿しか見てない気がする。
その時、悔しそうではあったものの、ニヤリと笑ったカチューシャが告げる。
「まぁでも、昔からの付き合いとは言っても趣味の事話してなかったみたいね!結果カチューシャ達への協力は惜しまずしてくれたのよナトーシャは」
「!……その通りです、カチューシャ」
「そしてプラウダは優勝を果たし、ナトーシャはそれを喜んでくれたのよ!」
「……確かに、それは否定できませんわね」
「つまり!ナトーシャは私達の参謀、いや秘密兵器と言って良いわけよ!分かった!?」
苦々しい顔をするダージリン。これ見たかとドヤ顔なカチューシャ。ノンナさんはいつも通りでわかんねぇや!
「……そうね、その通りだわ。何故湊さんは私に戦車道の事黙っていたのか理由を聞いてもいいかしら?」
ダージリンは此方へと目を向ける。こ、怖い!何考えてるのか分からんのが怖い!電話での慌てる姿とか、おちょくりやすさで単に黙ってただけなんだけど、そんな事言える雰囲気じゃねぇ!
……あ、そうだ!ダージリンにはあんま知らないって言っちゃったし、知り合ってから戦車道を好きになって観戦始めたんだ!って言ったらこうなんか、気恥ずかしいだろ、よしこれで行ける!」
「途中から声を出していらっしゃるのだけど、これはツッコミ待ちなのかしら?」
「いえ、私にもわかりかねます……たまに理解し難い行動をしますからね、彼は」
「アホっぽいわね!全く、ちゃんと気を持ちなさいよ!」
そしてカチューシャは続ける。
「恋だの好きだの、浮気した後の男みたいじゃない!そんな話じゃないんだから、もっと普通に答えればいいわよ!そして私達の左腕としてこれからも励みなさい!」
カチューシャのその言動に二人が一気にカチューシャを見る。その言動と動きにアッサムはとうとう堪え切れなくなったのか、笑い声が漏れ始めた。
俺?俺はもうなんか、席を立ってカチューシャの元へ行き、思いっきり頭を撫でた。
「……あはは!そうだよな!面白くていい奴だよなぁカチューシャ!」
「ちょ!何してるのよ!カチューシャは子供じゃないんだからやめなさーい!」
ちなみに我に返ったノンナさんがドロップキックを俺に放ち、吹き飛んだ。まぁ、自業自得ですね、はい。
「では、本日のメインを始めましょうか」
とアッサムが一言言うと、ダージリンが「そうでしたわ、危うく忘れるちゃうところでしたわね?」とウィンクして来た。……いや、可愛いけどいきなりどうした。
「では、ちょっと学園内を案内致します」
「メインって何かあるの?」
「ダージリンが単に貴方に聖グロ内を見せてあげたいそうです」
「メインとは一体……」
「私達も行っていいの?」
「勿論ですわ、カチューシャもノンナもいらっしゃったら最後にいいものが見れるかもしれないですわよ?」
「ま、折角来たんだし、見に行ってみる?ノンナ」
「わかりました、お伴します」
それからしばらくは学園艦内を案内された。聖グロの生徒達が此方を奇異の目で見ている。
「なぁ、ダージリン。俺場違い感がハンパないんだけど」
「なにナトーシャ?怖気付いてるの?胸張って歩きなさいよ」
「ふふふ、なにぶん男子生徒が珍しいからしょうがないわね。普段なら会うことはありえませんもの」
まじできついですこれ。あーあ、そこの人達とかこそこそ話してるし、一体どんな事言われてるのやら……
するとカチューシャは何か気にした風に言った。
「戦車道の練習はしてないのかしら?」
「してる子はしてるかもしれないわね。けど、今の時間帯はティータイムを過ごしている子の方が多いかもしれないわ」
「ふぅん……」
カチューシャは何か思うところがあるのかもしれないな。
「あら?ダージリンにアッサムじゃない」
そこに現れたのは長い金髪の女性だった。……誰?
「アールグレイ様、此方にいらしたのですか」
「えぇ、そちらの方々は……プラウダの隊長達と、件の殿方ね?」
「はい、そうでございます」
「ふふ、楽しみに待っているわ」
そう言ってアールグレイと呼ばれた人は去っていく。あぁ、何処かで見たことがと思ったら、ダージリンの先輩の前隊長か!雑誌かなんかで見たことがある。しかし……
「なんかあの人楽しみにしてるとか言ってたけど、イヤーな予感プンプンするんだが」
「気にしないでよくてよ?」
ダージリンがにこやかに微笑む。うわぁーうさんくせぇ……
その案内されるていくうちに戦車道練習場に着いた。
「本来なら他学校の生徒を招き入れることはないのよ?しかし片や優勝校の隊長と副隊長である以上、見られたとしても此方に得るものは多いと思いますの」
「偉く余裕じゃない、ダージリン」
「その通りです」
「俺はいいの?」
「貴方は……まぁ私情もありますが、この後役目があるので」
ほらー絶対何かやるじゃん……楽器持って来させた以上、予測は付いてたけどさぁ。
中に入るとそこには、ティータイムを過ごしていた生徒達だらけだった。
「ダージリン様!……プラウダの隊長まで!?」
周りの生徒達が集まってくる。てか多いわ!
「ダージリン様!新戦車の導入の件進んでいますか?」
「うーん、ぼちぼちね……まぁ期待はせずに、今ある手の内で全力を尽くす事、これも戦車道ですわよ?」
「うー、せめてブラックプリンスがあればプラウダにだって負けないわよ!」
「私はチャレンジャー……ですわね、クロムウェルでもいいかも」
「はいはい、無い物ねだりしても仕方ないわ、私は案内しなければならないの。各員戻りなさい」
「「了解ですわ」」
まさに嵐のようだった。なんて勢いだ。って、戻るって練習じゃなくて紅茶飲むんかい!
すると横でカチューシャがプルプルと震えていた。
「……カチューシャよく耐えました」
「……まぁプラウダではないからしょうがないけれど、ダージリン?」
「あら、カチューシャどうかしたのかしら?」
「一つ言うわ、カチューシャの言いたい事は全部、カチューシャの参謀が言うから」
かなりご立腹のようだ……まぁ、分からんくはないな。しかし、流石戦車道チーム、ダージリンとカチューシャ達にしか目が行っていなかったな、変に見られても困るし。
「ふーん、まぁ湊さんがね……まぁいいわ、じゃあ次が最後ね」
そのまま足を運んでいくと、その先には多くの椅子が並べられており、明らかにステージと言える場所だった。
ほんと、ほんと不愉快だわ!ダージリンもなんで何も言わないのかしら!ここの連中は……前々から話は聞いていたけど、内情がここまでだったなんて流石に驚いたわよ。
私は今ステージ近くの椅子に座って準備が終わるのを待ってる。そう、なんと今回のお茶会のメインとは、ナトーシャのライブだったのだ。ダージリンは元々そのつもりで居たらしく、ナトーシャもナトーシャで、何となく予想していたらしい。
本当はあの場で言ってやっても良かったんだけど、私が言ったところで、どうせ何にも変わらない。それに、例えダージリンがお茶会仲間としても、所詮ここは他人のチーム。どうなろうと、どうなっていこうとも知ったこっちゃなかった。
けどまぁ、私の気分が晴れない。非常にムカムカする。だから同じく理解出来てるであろうナトーシャに全部任せた。ライブするとは思ってなかったけど、それなら尚更都合が良い。
だいぶ人も集まって来た。中には戦車道チームに属してない生徒も来ている。ふふふ、関係ないのに来た奴らはとばっちりね!
準備もできたらしく、彼がステージ上に上がる。周りを見渡して、予想外に人が多くなった事に驚いてるようだった。
「隣いいかしら?」
そんな時私の隣に来たのは、ダージリンと前隊長のアールグレイ。反対にいるノンナは警戒しているようだ。
「プラウダの隊長さんがいろいろと不満があると聞いたのだけれど、何が気に障ったのかしら?」
本当に分かってないの?……これだから試合中まで紅茶飲んでる奴らは……
「……ふん!カチューシャから言っても聞きやしないでしょうが。だから、ナトーシャに1発かましてもらうわ」
「へぇ〜……なんだか面白そうね」
「ナトーシャは何だかんだ優しいから、甘っちょろい言葉にならなきゃいいんだけど……ま!そもそもカチューシャに、この学校がどうなるかなんて関係ないしね!ノンナ!」
「はい、その通りでございます」
「……」
アールグレイは押し黙る。そしてダージリンは……だめだ、もうナトーシャの事しか見てないわ。
そして、ナトーシャが始めようとしたのだろう。そん時に私は言ってやったわ。
「ナトーシャ!1発かましてやりなさい!」
「この状況でか、カチューシャ……」
今から一曲目を歌うという時に、初っ端から行けとの命令だ。……はぁ、まぁそうだよなぁ、少しは場を温めてからと思ったんだけど。周囲の生徒は、いきなり叫んだカチューシャに目を向けていた。当の本人はいつもの、あの凄惨な笑みを浮かべていた。
ライブやるなんてカチューシャは知らなかったし、恐らく最初は俺からダージリンへ言わせようとしてたんだよな。カチューシャの言葉より俺からの方が聞くと思って。
ただ、こんなライブ会場で、聖グロの戦車道チームが揃ってるこの状況ならば、全員に直接言えるだろうし、好都合と考え直した上でのあの発破なんだろう。
てか後ろに生徒とは違った服装の人がいるから、もしかしたらOG達なのかもしれない……本当に絶好の機会じゃねぇか。
……それに口ではああ言ってるけど、ほんとカチューシャ優しいよなぁ。みほの時もだったけど他人のチームにそこまで気をかけられるんだからな。場合によっては自分達が不利になるのに。
いや、自分自身とノンナ、そしてプラウダの全員を信じ、勝利を疑わない自信を持っているからなのだろう。
ここまでやらせたんだ。俺も腹をくくるしかない。……俺、生きて帰れるかなぁ、割とまじで。
「……えっと、それじゃあ皆さん、初めましての方は初めまして」
まずは挨拶から。適度に話していき、雰囲気が落ち着いた所で本題に入る。
「……戦車道チームの皆さん。一人の戦車道ファンとして、この聖グロリアーナの戦い方はとても惹かれます。
隊列を崩さず進み行くその姿はまさに鉄壁の城塞。己の自信を示し、それらが周りへ伝播し一つの大きなチームとなる。先の大会でも本当にお見事でした」
満更でもない顔を浮かべる生徒達。カチューシャやノンナは不機嫌そうな顔をしている。まぁまぁ、これからだって。
「いやー本当に見事でした。普段からどれだけの鍛錬をしているのかと。どれだけの努力をしているのかと。そして今日、貴女達の姿を見て確信しました」
俺は息を吐き、覚悟を決める。
「貴女達じゃ、プラウダを倒せない」
周りが一息置いたあと、騒然となる。ダージリンやアールグレイさんは顔をしかめている。
「何故なら、貴女達は勝てない理由を戦車のせいにして、新しい強力な戦車の導入許可を許さないOG達のせいにしているからだ。
加えて、めんどくさくてややこしい交渉ごとは前隊長のアールグレイさんや、そしてダージリン、アッサムさんに丸投げしている現状。
挙句には自己鍛錬に余念がないかと思いきや、伝統だからだとか戯言を抜かしての紅茶を飲んでいるばかり。
……そんなんで、優勝なんて出来るわけねぇだろ」
俺を見る目線が敵意へと変わっていく。しかし今更止める訳にいかねぇ。
それに俺は知っている。今はまだ生まれてすらないチームだけれど、そのチームは弛まぬ努力を続け、自分達が多くの人々の生活を背負っていた事を自覚してもなお、潰れずに勝利をもぎ取った事を。
そのチームだけじゃない。ケイだって、カチューシャだって、自分達が好きな事に対してただひたすらに、ひたむきに、がむしゃらに努力を続けてきた事を知っている。
そんな彼女達を知っているからこそ、俺はこのチームに言わなきゃいけない。誰もが気づかないふりをしていて、気付いた時にはすでに遅いのだと。……負けてからではもう遅いのだと。
「貴女達が努力をしていないなんて言うつもりはない。言う権利なんて俺にはないさ。
けど俺は、そしてそこに居るプラウダの隊長や副隊長だって、同じ事を思ってるはずだ。
自分の好きな事くらい、本気の全力を持って取り組んでる。自信と確信を持って言い切れる。
……貴女達はどうだ?」
未だにこちらを敵意ある眼差しで見続けている生徒達。そして、ダージリンやアッサム、アールグレイさんはこっちを真剣な表情で見据えている。
「……この一曲を聴いて、どう思うかは分からない。決めるのは本人だから。だけど、俺は貴方達に贈る歌は、これしかないと思った。長くなったけど聴いてくれ」
『No Reason』
裏タイトル 『No Reason』
sum41 より No Reason です、是非お聞き下さい。
和訳がいくつかありますが、個人的に某動画サイトに挙げられているや和訳動画が一番しっくりきました!
あかん、意図してない形でカチューシャのイケメン力が上がっていく……