この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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紅茶の国からとうとう彼女らが。




37話 〜前哨戦 です!〜

 

 

 

 

……よし、なんとか起きれた。

現在時刻は朝の四時半。めちゃくちゃ早いけれど、これには訳がある。

 

まず朝ごはん。

あいつらには今日頑張ってもらうからな。しっかり食べてもらうためにも、作り手としては食べやすいものを作っておかねば。勿論武部に手を煩わせる訳にはいかんからね。

 

次にあの戦車空砲事件。

朝五時過ぎくらいかな?原作ではそのくらいの時間に朝から空砲をぶっ放してたはず、冷泉を起こすために。あれを再現するなんて正直正気の沙汰じゃないが、あそこかⅣ号に乗って直接出向いてる事を考えたら、持って来とく事に越した事は無い。

 

ちなみに、俺もこの世界に来て知った事だが、戦車道のある学園艦は全ての家が耐空圧・耐震性を兼ね備えた強化ガラスなんだ。だから空砲でも割れない。確かに街中で試合してたら、直撃したならともかく、周囲の家さえも悲惨な事になるからなぁ……

まぁお金は出るんだけどね。

 

というわけで、手早く確実に朝ごはんを作り、書き物を残してⅣ号を取りに行くという作戦さ!

なお、車長兼目の代わりとしてナカジマが戦車倉庫に居る。先日頼もうとして話したところ、

 

「あぁ、その時間なら最終メンテでいるよ〜。ミナトはずっと頑張ってたし、西住隊長さんに呼ばれてたからねぇ」

 

ナカジマの優しさに目が沁みると共に、流石のブラックさに笑いすら出てこない。本人達は嬉々としてやってるから、俺が口挟む事じゃ無いが、なんて職場環境だ。

 

さて、ご飯も作ったし、Ⅳ号持ってくるか〜

 

 

 

 

「あっはっはっ、ミナトもだいぶ頭吹っ飛んでるねぇ。朝っぱらから目覚ましがわりに戦車の空砲って……笑いが止まらないよ」

「雨の日に傘をささずに、笑いながら歩きまわるやつに言われたくないわ」

 

それ、さらっと原作主人公ディスってるからね?あの子「ごめんなさい!空砲です!」っていう一言で済ませてるからね?

 

というわけで早速家に向かう。途中電話で武部から「どこいるの島田先輩!麻子が起きないよぉ〜」と連絡が来た。まじか、四人の力でも起きないのかよあいつは。一応持って来てて良かった。

 

冷泉の家の前に到着し、取り敢えずすぐさま空砲ぶっ放すと、何事かと四人が出てくる。

 

「島田先輩!何やってるんですか!?」

「先輩、朝から砲撃なんて流石にどうかと〜」

「あ、麻子も起きたよ!流石島田先輩!私達には考えつかないよう事思い付くね!」

「朝から砲撃音なんて、先輩殿最高です!」

 

これ君達がやった事だからね?特に西住、そんな信じられない顔してる君が主犯だよ。

 

冷泉をそのまま戦車に放り込み、各ポジションへ各員が乗る。俺とナカジマは戦車の外にそのまま乗り、そのまま出発する。

 

「ミナトー、戦車の上に乗って景色見ながら街を移動するのも、なかなか乙なものだね」

「そこに関しては完全に同意するわ」

 

なんて、どうでもいいことを話しながら、大洗の陸地……つまり試合会場へ向かって行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?朝早くからご機嫌よう」

 

……何でもう試合会場にいるんですかねぇ、まだ開始まで三十分はあるよ?

 

「おー、朝早いねぇダージリン。今日はよろしく〜」

 

軽く挨拶をしている会長。なんかスゲー知り合いに見えるけど初対面ですよね?それに続いて全員が挨拶している。……さて、まずは先制攻撃、これ凛ちゃん達に対する常識な?

 

聖グロもすでに到着しており、試合会場でいつものティータイムをしている。その向かい側に大洗がいる状態だ。秋山が生ダージリンに感動してたり、一年生が本物の淑女を見て羨ましそうに見ているが関係ないね!

そして、俺は凛ちゃんもとい、聖グロの元へ近づいていく。

 

「あら?湊さんもごきげん」

「よう!凛ちゃん!朝早いのに悪いね。流石淑女、朝に電話の折り返しするといつも寝ぼけてるのに、ちゃんと決めるところは決めてくるね!」

「ちょ!何を言っ」

「それにアッちゃんもおひさ〜、大体二ヶ月くらいぶり?になるのかな?」

「ッ!?湊様何を」

「あ、アッちゃんじゃまずい?アーさん?それともアッサム様?ほら親しみを込めてさ、ダージリンも凛ちゃん呼びだし。……思いついた。凛ちゃん事、ダー様って呼ぶのもアリか……」

「湊さん!これ以上は」

「み、湊様、落ち着い」

「いや〜ほんと、最後には酷いことばっかりしたからさ!今回の試合とどうかなと思ってたけど、いつも通りでよかった……!!」

 

いつもの調子でからかっている最中に、俺の前に立つ人影が一人現れた。

 

「貴方がダージリン様やアッサム様、前隊長のアールグレイ様達、そしてその方達では飽き足らず、聖グロリアーナ全員に辱めを与えたあの噂のケトルですね!!」

「ちょ、誤解がある!なんだその不名誉!それにその呼び方!?それに君は……」

「貴方に名乗る必要はありませんが、淑女として名乗っておきます。私はオレンジペコ、ダージリン様より授かった誇りある名です!貴方をダージリン様、アッサム様は勿論、聖グロの皆さんには指一本触れさせません!」

 

奥を見ると、既に赤くなっていた顔が普段通りに戻り、爆笑していた凛ちゃんと、未だ顔が赤い状態で睨んで来ているアッサムがいた。

 

くそ!ダージリンめ!精神攻撃(からかいたいだけ)に対する防御手段を持っていたとは……しかもそれがペコだと!?

 

するとゆっくり凛ちゃんが近づいてくるのが見えた。

 

「ダージリン様!?」

「いいのよ、オレンジペコ。私はこの殿方に言うことがあるのよ」

 

そして凛ちゃんは続けた。

 

「湊さん?……いいえ、ケトル。いつまでも貴方の手のひらに乗っている我々ではありませんことよ?」

 

最初は思いっきり狼狽えていた癖に!顔真っ赤にして、地の凛ちゃんを出してやろうかと思っていたが、そう簡単には行かないようだな!

 

「それに、これは思わぬ収穫だけれど

……貴方の味方は何処にもいないみたいよ?」

 

なに?……はっ!?思わず後ろを振り向く。そこには呆れた顔からぽかんとしてる顔、何よりも一人、恐ろしい顔をした人物がいた。

 

「先輩……。先輩のそう言うよく分からない時のノリ、やめた方がいいと思うぞ」

「……島田先輩♪あちらで話を聞きますね?……一体この人達とどんな関係ですか?」

 

これは……これが、策士策に溺れる……と言うやつか……

 

「ケトル?こんな言葉達を知ってる?

自業自得、因果応報、身から出た錆……ふふふふふふ。さぁ、行ってらっしゃい。無事帰ってこれたらお茶会にしましょ?」

 

くっそぉぉぉおおおお!覚えとけよ!凛ちゃん!畜生めぇ!!

俺はその後、大洗の皆の誤解を解くためにめちゃくちゃ頑張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、おかえり。味方が敵だった事についての感想はどうかしら?」

「そうだな……既に帰りたいくらい疲れた」

「それは駄目よ?ケトル。貴方はこの試合を見届ける義務があるのだから」

「分かってる分かってる……ってなんでアッサムさんそんな離れてるの?」

「身の危険を感じるので」

「何故だ……そんな危険を感じるなんて、俺なんか無害代表だろ」

「貴方の先程の行いについて、省みる事を強く推奨しますわ」

「ただのノリというか、遊びじゃないか……んでそこのちっこいのは?」

「私はオレンジペコと言う名があると言いましたよね!?」

「はいはい、ペコちゃんペコちゃん」

「ほんと!バカにしてますよね?」

「……あの〜、いいですか?」

「あら、貴女は大洗の隊長さんでしたわよね?」

「は、はい!……ところで島田先輩とはどんな関係なんでしょうか?」

 

ダージリンとアッサムに付け加え、オレンジペコと西住を交えてお茶会をしている。西住が会話について来られていないようだが。まぁすぐに慣れるだろう。

 

「さっきも言ったろうに……」

「念の為です!念の為!」

「ふん、どう言う関係……と言われましても……アッサム、どんな関係に見える?」

「そうですね、ダージリン。私には悪戯好きの男子とその相手に選ばれた女子生徒に見えます」

「関係と聞いてるのに……まぁ、本当にそんな感じだからなぁ」

「……私をバカにしているのかしら?アッサム?湊さん?」

「「そんな訳ありませんよ、ダージリン」」

「……」

「湊様、露骨に合わせてくるのやめてくれませんか?ダージリンがすごい睨んで来てます」

「合わせたのはアッサムさんだろ?俺だって凛ちゃんどころか後輩にまで睨まれてるんだぞ?」

「……お二人共仲よろしいのですね?なんか聞いていた噂とは違って来たのですが……」

「騙されてはいけないわペコ。彼こそが我ら聖グロリアーナの歴史に残るほどの伝説を起こした島田湊、あのケトルよ」

「そうよ、ペコ。彼を素直に信用しては駄目。私みたいにいきなり裏切られるわよ」

「おい!あまりに誹謗中傷過ぎるぞ淑女達。……そろそろ疲れて来たな。まぁ西住、こんな軽口が叩ける位の関係って感じだな」

「わかる訳ないですよ!いや、すっごい仲が良いってことは分かりましたけど!?」

 

と言うわけで紅茶を飲みながら残り少ない時間を過ごしていく。西住はあまり慣れてないからか、結構おどおどしてる。俺?俺は母さんに無理矢理付き合わされてたからな……

 

するとアッサムさんが口を開く。

 

「西住……と呼ばれていましたが、貴女はもしかしてあの西住でしょうか?」

「……そうですね、その通りです」

「あら?そうなの?……まほさんの妹さん、ねぇ〜。これは予想以上に楽しい試合が出来そうだわ。

戦車達もなかなかにおかしい状態だし、少々不安でしたので」

 

西住の顔が若干曇る。武部達や昨日の母さんの言葉でだいぶ調子良さそうだったんだが……はぁ…ほんと世話のかかる……

 

「何言ってんだ?ダージリン」

「……何かしら?ケトルさん?」

「不意打ちでケトルって呼ぶのやめろ……一つ勘違いしてる事がありそうだったんでな」

「あら?勘違いって何のことかしら?」

「このチームは西住流でも、島田流でもない」

 

ダージリンの目付きが変わる。後ろでアッサムさんがやっぱり、と呟いてるのもわかる。

 

「このチームは西住みほ流であり、大洗流だ。味方はだいぶ荒削りの奴らばかりだけれど、絶対にダージリン達を退屈にさせる試合にはしないぜ。

……行くぞ西住。そろそろ準備をしよう」

 

そう言って、椅子から立ち上がり自軍へと向かう。背中へ感じる視線が凄いが、こんなもんへっちゃらだ。その時ダージリンから声がかかる。

 

「ならば賭けましょう。貴方達が勝てば貴方達の言うことを何でも聞きましょう。その代わり、私達が勝てば私達の言う事を聞いて下さる?」

「おっけー、乗った」

「……ふふ、結果が楽しみですわね」

 

 

話は終わり、今度こそ大洗チームの元へ向かう。西住もおどおどしながら付いてくる。

 

「せ、先輩!よかったんですか?あんな事言って」

「いやー、ついその場のテンションでな」

「つい、じゃないですよー!」

「あははは!まぁ、なんだ。西住、伸び伸びと自由にやってくれ。お前と、大洗の皆の試合には参加出来ないけど、楽しく観戦しながら応援しとく」

 

そう言って西住の背中を軽く叩き、その場を離れる……前に一つだけしておく事がある。

 

エルヴィン達と磯部達にちょっとした激励を、だな。

 

 

 





戦車戦……どうすっかなぁ……
書ける気がしないっすねぇ

次の試合次第ですね。今後どうするかは

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