この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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日にちが空いてしまいました……流石に忙しくて
ま、まぁ少しくらい……

というわけでお気に入り、感想、評価ありがとうございます!
ちょっと空きましたが、完結まで必ず行くので大丈夫です!
絶対書きたいシーンもあるので……

あと、今回は曲紹介等で後書き長めになるので、飛ばす方は注意お願いします。


39話 〜勝者と敗者とこれからへ です!〜

 

 

「おつかれさん」

「あ……島田先輩……」

 

ダージリン、もとい聖グロリアーナとの試合を終え、俺はそのまま会場へと向かう。すると、丁度行動不能にされたⅣ号が運ばれるところであり、ボロボロなっていた西住達を発見する。……秋山、すげぇ満足そうだな。

 

西住は罰が悪そうな顔をして、目を逸らしている。

 

「すいません、負けてしまいました……」

「そうだなぁ〜、最後なんか流石ダージリン、完全に読まれちゃったな」

「はい……」

 

全く、そんな暗い顔しちゃって。まさか俺と凛ちゃんとの約束について、後ろめたい事あんのかね?気にしなくてもいいのに……そこを気にしちゃうのが西住か。

 

「なぁ、西住」

「は、はい」

「試合、楽しかったか?」

「!……はい」

「皆と初の試合で負けちゃった事、悔しかったか?」

「……はい、とても悔しいです」

「なら良かった良かった。西住が戦車道を楽しくやれててさ。そして悔しいって思えるんなら尚更。……次は勝って、あのドヤ顔格言隊長を悔しがらせようぜ」

「〜〜〜〜はい!」

 

うん、いい顔つきになったな。やっぱり大洗という環境は、西住にとって最高なんだよな。

 

「だれがドヤ顔格言隊長……ですって?」

「おぉ、凛ちゃんもおつかれさん」

「この程度……と言いたいところですが、この試合はここ最近の中で、一番楽しめた試合でしたわ」

 

そう言って、凛ちゃんは西住へと近づく。西住もおろおろし始めてるが、西住さん、試合外のメンタル弱ない?

 

「西住みほさん……まほさんとは違った戦い方ですのね。とても有意義な試合内容でしたわ。……次は全国大会で戦いましょう」

「!此方こそ、とても楽しかった試合ができました。ありがとうございます!大会でもよろしくお願いします」

 

良きかな良きかな。二人の距離も縮まったようだし、一件落着。チームのみんなにも原作と誤差はあれど、大きな経験を得たと思うし、練習試合とは良いものだ。

と言うわけで、俺はその場から去ろうとした……が、ペコちゃんに回り込まれ、アッサムさんに肩を掴まれた。って、力つっよ!淑女(物理)ってシャレになんねぇ!

 

「……アッちゃん、その手離してもらえると助かるなぁ」

「いえ、約束をしていたはずなのにどこ行こうとしていたのか気になりまして。あとアッちゃんはやめて下さい」

「ご自身で言い出した事ですよね!義務は果たすべきです!」

「さて、湊さんには何をしてもらおうかしら……」

 

いやいや、逃げるつもりは全く無かったよ?ホントだよ?

しかし、一体何をやらされるんだか……

 

「と、悩んでるように見せかけて、既に決めてありますのよ?」

「そうなんですか?ダージリン」

「ダージリン様!何をやらせますか?」

「久し振りに、私の為に歌を歌ってもらおうかと」

「「……………………はぁ?」」

「えぇ?そんな事でいいの?」

「そ、そんな事で終わらせる事ではないわ。話を聞くに、カチューシャやサンダースのケイさんなど、貴方から個人的に歌を歌ってもらってるらしいじゃありませんか。だから」

「だから湊様に、その方達みたいにダージリンに似合う曲を選んでもらって、歌って欲しいと」

「ア、アッサム!?」

「……プラウダの隊長の事はいいとして、サンダースについて調べたのは誰だと思ってるんですか……」

「わざわざ調べる事かよ……うーん、別に構わないぞ?むしろもっとえぐいのがくるかと思ってた」

「一体私をなんだと思っていますの……」

 

うん、別にその程度なら全然構わない。ダージリンに似合う曲かぁ……なるほど。しかしそれだけだとすぐ終わっちゃうな。

 

「オッケー、それ了承した。そんで付け加えるよ。凛ちゃんだけじゃなくて、アッちゃんとペコちゃん、あと一緒に観戦して仲良くなった子に対しても歌うよ。

……凛ちゃんはともかくアッちゃん達が嬉しいかどうかは分からないが……」

「!?」

「あら、良かったじゃないアッサム。貴女湊さんファンですものね」

「ちょっと!ダージリン!」

「……別に私はどうでもいいんですが、ダージリン様?」

「あら、何?ペコ」

「私が聞いていたケトルとこの方の特徴だいぶ違うみたいなんですが……

それに今のアッサム様のファンという話と、ダージリン様の歌ってもらいたいというお願いと彼との掛け合い。どう見ても仲が良いとしか思えないのですが……」

「あら?そうだったかしらねぇ〜」

「ペコちゃん、凛ちゃんは俺の事なんて言ってたんだ?」

「さっきからペコちゃんと呼ばないでください!……聖グロリアーナに乗り込んできて、散々悪口を言い散らした挙句、個人個人を怒らせては恥ずかしい目に合わせた殿方だと」

「めちゃくちゃ酷い事になってるけど、逆に疑わなかったの!?」

「……実際先輩方も貴方の話になると、顔を歪ませて、練習に熱が入っていたので本当の事かと……」

 

凄い情報操作を聞いた。絶対わざとだろ、現に凛ちゃん笑ってるし。聖グロと話をしていると、西住達も話に加わる。

 

「島田先輩の聖グロで起こした事は置いといて……私達も聞いていいですか?先輩の歌」

「それはご自由に、ですわ。……出来ればこう、なんていうか……」

「わかってるよ、あくまでも俺の罰ゲーム。凛ちゃん達に対しての曲を歌うさ。それに西住達はいつでも会えるし、聴けるしな」

 

という風に先程の広場へ戻ろうとした時だった。

 

「いや〜西住ちゃん負けちゃったねぇ」

「約束通り、踊ってもらおうか」

 

生徒会チームがやってきた……そういえばあんこう踊り踊るんだっけな?……よくあれ大洗の踊りとして定着したよな、生で見たら相当きつい。

しかし!西住達の踊りなら見て見たいかも……いかん、こっちは凛ちゃん達との約束が……

 

「ほらと言うわけでいくよ〜」

「さっさとこい!」

「でも河嶋〜やっぱこういうのって連帯責任だと思うから、さ」

「待ってください会長!もしかして私達も……」

「もちろん!」

 

角谷以外の二人も急に顔色が悪くなったな。西住を除いたAチームも顔色が悪い……いや、気持ちはわからんでもないが。

 

「……角谷、俺もそっち行った方がいいの?」

「「「「「!?」」」」」

「お、それもまた面白いねー」

「「「「「!!??」」」」」

 

西住以外の大洗陣全員が俺と角谷を交互に見る。そして、

 

「島田先輩はだめー!!!」

「さ、流石に先輩も混じるのはちょっと……」

「お嫁に行けないですよぉ〜!!」

「……別に気にしないが、先輩があの衣装を着るのがまずい」

「それもそうだけど、麻子も気にしてるじゃんか〜!」

「……聞いてはいたけど、そんなに?」

「みぽりん!あの姿を島田先輩に見られたら、多分これから島田先輩の顔見れないよ!」

「そうです、みほさん。みほさんの為にも島田先輩はグロリアーナの方達の方へ行っといてもらいましょう。向こうとの約束を優先しましょう」

「……うーん、ま、これから西住ちゃんには頑張ってもらわなきゃだし、島田はいいや。聖グロの方に行っといでー」

「そっかー、地味にお前達が踊る姿みて見たかったんだが」

「!!」

「みぽりん!騙されないで!島田先輩の変態!」

「……流石に島田、引くわ」

「先輩、そういうとこだぞ」

「えー」

 

まぁ、しょうがない。単純に生であの踊りを踊っているところ見てみたかったんだが……女の子としては見せられないよな〜。

てか角谷、お前から言ってきたんだろうが!

 

と言うわけで、俺は聖グロの奴らと広場へ向かう。凛ちゃん達が「あれ程までに拒絶する踊り、見てみたいわね」って言ってたが、多分女性なら見てるだけでもきついと思うぞ。

 

 

 

 

 

広場へ到着して、準備を始める。凛ちゃん達は優雅にティータイムをしながら、此方を待っていた。そこにローズヒップも加わり、先程よりも賑わっていて、楽しそうな様子である。

 

ちなみに合流してから、ローズヒップと知り合っていた事に驚きながらも、さっき言っていた仲良くなった子とはローズヒップの事かと納得していた。そして、紅茶を一気飲みしてアッサムさんから怒られ、凛ちゃんは爆笑していた。その後ローズヒップとアッサムさんが俺を睨んでいた為、取り敢えず笑っておいた。

 

準備が完了したところで、試合を観戦していた人達も集まりだしていた。「お?景気付けに歌うのかい?」やら「今日は楽しい事だらけだねぇ」とか声を掛けられていて、それらを見ていた聖グロの面子は驚いていた。

さて、そんじゃあ本番と行きますか。

 

「皆さん、試合観戦後にも関わらず集まってくださりありがとうございます!

残念ながら大洗は負けてしまいましたが、今日の試合は本当に良い試合で、とても胸が熱く、体も滾ってしまいました。

 

これから、我々と練習試合をしてくださり、熱い試合を見せてくれた聖グロリアーナ女学院の方々にお礼とこれからの健闘を祈って、ここで歌いたいと思います!

 

聴いてください!」

 

 

 

『それじゃあバイバイ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛ちゃん達は満足そうな顔をして帰っていった。ローズヒップなんか「私も試合では負けてはおりませんのよー!!」なんて叫んでいた。勿論アッサムさんから止められていたが。

 

ペコちゃんの印象はなんとか回復出来たみたいだが、それでも若干距離を感じた。まぁ、それはそれでしょうがないんだけどね。実際聖グロの行った時の行動は大胆だったと思う。

 

最後凛ちゃんが「……我々も日々精進していますのよ?全国大会を楽しみにしてなさい。みほさんにも改めてよろしくと伝えておいて?」と伝言を頼まれた。今日の試合ぶりからして凛ちゃん……ダージリンは油断も隙もなかった。こりゃ、これから原作通りに上手くいくとは思わない方がいいな。相手があの黒森峰だけど。

 

現在はあんこう踊りを終えた筈の西住達の元へ向かっている。そろそろ……お、いたいた。うん、西住すげぇ項垂れてる。あれはあんこう踊りを思い知ったんだな。

 

「おつかれーみんな。踊りはどうだった?」

「どうだった?じゃないです島田先輩!あれ見たいって言ってたんですか!?」

「珍しい西住が見れると思って」

「もし見てたら私発狂しますよ!?」

「見てない見てない、だから今すぐ離れろ。近い近い」

 

迫って来ていた西住を落ち着かせつつ、これからの予定を聞いた。

 

「私はおばぁに顔出しに行かないと。殺される」

「麻子はそうだね〜。私達はどうする?」

「ショッピングしませんか?折角の陸地ですし」

「賛成です!先輩殿は?」

「あーどうしよっかな。何も予定ないし」

「な、なら、島田先輩も一緒に……」

「あ、先輩。一緒に付いて来てくれないか?」

「え?冷泉はおばあちゃんに顔見せに行くんだろ?」

「そうだが、前に電話した男連れてこいと言われてて……」

「あー確かにそりゃそうか。大事な孫に朝から一緒にいる男だもんな。そういう気が全くないことを伝えておかなきゃな」

「……先輩の言ってることは事実だが、何かムカつくな」

「いて!ちょっと脛蹴るのやめない!?」

 

俺は冷泉に抗議をしたが聞く気がないようだ……って周りから視線が!?

 

「……麻子!それっていわゆる家族に紹介するってやつだよね!」

「あら〜冷泉さんもなかなか大胆ですね」

「はわわわわ」

「…………」

 

……西住の目が死んでるんだが。てか互いにそんな気は無いと言っているだろうに。それに挨拶くらいだしな。そんな気張っててもしょうがない。

 

「それじゃ行こうか、先輩」

「おう、んじゃ西住……はなんかヤバそうだな。武部、ちゃんと夜には学園艦に乗るように。園さんが管理してるから注意な」

「はーい!分かってるよー」

 

と言うわけで、冷泉の家に向かうとする。……確かこのタイミングで五十鈴のお家問題が出てくる筈だが、それに関しては俺の出る幕はないだろう。五十鈴って一番肝座ってると思うし、その姿を見て西住も思う事があるだろうからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃい……アンタがこの子の言っていた先輩だね?」

「会うのは初めてですね、島田湊と申します。現在は三年で冷泉さんの選択している戦車道のマネージャーをしております」

「……ふぅん」

「先輩からさん付けて呼ばれると違和感しかないな」

「アンタはお客さんいるんだから、お茶の一つでも用意して差し上げなさい!」

「ん、わかった」

 

そう言ってリビングから冷泉が出て行く。この場には俺と冷泉のおばあちゃん……冷泉久子さんと二人っきりだ。

やばい、舐めてたわ。この空気なかなかきつい。おばあちゃん迫力ありすぎだろ。

 

「全くあの子は……」

「ふふふ、冷泉さんらしいじゃないですか。と言ってもあくまでも俺の主観ですけど」

「らしい、と言うと」

「いつも自然体と言うか、無理してる時が無いんですよね〜。あるとしたら貴女を心配している時くらいですかね?」

「はっ!アタシを心配するなんて100年早いよ!それよりも自分の事を心配しろってんだ」

「それ、この前も言ってましたよ?まぁそう言いたくなる気持ちは本当に分かりますが」

「ほー例えば?」

「そうですね〜、例えば冷泉さんと知り合うきっかけだって……」

 

そのままの流れで冷泉との出会いから、男に警戒しないだの、いきなり凄いこと頼んでくるだの、朝弱くかったりだの色んなことを話した。

 

久子さんも相槌打ってくれながら、「あの子も変わらないねぇ〜」「全く!アタシから離れたらすぐこれかい!」など、いつの間にか冷泉の愚痴みたいになってた。これ聞かれてたらやばい?

 

その時に久子さんから話を切り出して来た。

 

「……アンタはあの子の事、どう思ってるんだい?」

「どう思ってる……ですか……正直言っても?」

「勿論、正直言ってもらわないと困るよ」

「うーん……そうですね……妹、みたいに思っています」

「妹……ねぇ」

「はい。

俺には本当の妹もいます、今は離れ離れですけど。うちの妹って、俺と違って本当に出来た子なんですよ。どこに行っても自慢できるくらい、俺の妹が一番なんだーって。

 

冷泉さんはそうですね……凄い世話のかかるやつです。朝が弱いとか、日頃の振る舞いだとか色々。けど、なんか放って置けなくて。

 

それに……似てるんですよ、うちの妹と。無愛想だけど、心の開いた人に対しては表情豊かで。とても頑固で義理堅くて。そしてとても優しい。

 

だからですかね?一緒に居ても辛くない、きつくないというか、本当自然体で居られるんですよ。うちの妹と重ねてるんじゃないか、そう言われても否定は出来ません。ですがこれだけは言えます。

 

冷泉さんだから、これまで一緒に居たんだと。なんかこう、もう大洗での生活の一部みたいな感じなんですよ、アイツといる事が」

 

久子さんは静かに俺の話を聞いてくれている。

 

「あと、どう思ってるかとは違う話になっちゃうんですけど。最近はそんないつでもマイペースなアイツと一緒に居てくれる友達が増えました。ありのままのアイツと共に過ごしてくれる奴らが。

 

だからそんな心配しなくてもいいと思いますよ?俺なんかよりも頼りになる友達がアイツには居ますから」

 

……とりあえず、言いたい事は全部言ったつもりだが、大丈夫かな?

時計の針の音しか聞こえない静寂が、この場所に満ちる。……うん、気まずい。

と思っていると、久子さんが口を開いた。

 

「あはははは!!あの子が妹!?面白い事を言う奴だね〜アンタは!」

 

うん、驚いた。いきなり笑い出すんだもん。かなり豪快だなおばあちゃん。

 

 

「……どんな奴かと思ってたけど、アンタは面白い。……うん、これからもどうか」

 

 

どうか麻子の事をよろしくお願いします。

 

 

そう言って久子さんは頭を下げて来た。

 

「ちょ!頭上げてくださいよ!」

「あの子の事、そんな風に想って言ってくれる人なんざ、幼馴染の子くらいだった。それに実際一人暮らしさせて、本当に大丈夫なもんかとも思っていた。

けど安心したよ。アンタみたいな子があの子の側にいるんだったら大丈夫だわ」

「……うーん、そんな頼られても……それにさっき言った俺よりも頼りになる奴らもいるし」

「それとこれとは別問題だよ。……おーい!お茶はまだかい!」

 

久子さんが呼ぶと、少し時間を置いて冷泉が戻ってきた。

 

「……おばぁ、場所変わってたから分からなかったじゃないか」

「……はぁ……そういう事にしておくよ。ほら!いつまでもお客様を待たせるんじゃないよ!」

 

そう言って、冷泉がお茶を出してくれる。

……ん?

 

「冷泉、なんかあったか?」

「……いきなりなんだ?先輩」

「いや、妙におどおどしいというか、落ち着きが無いような気がして」

「気にするな。気のせいだぞ」

「うーん、そうか。ならいいんだが」

 

その後は冷泉の家でゆっくりして過ごした。まぁ、やる事が後二つあった為、早めに切り上げて帰る事にしたが。

帰る際には「今度はこの子の友達達を連れて遊びに来なさいな!」と久子さんが声を掛けてくれた。……分かってたけど、めっちゃいい人やんけ、泣くわ。

 

 

「……先輩はなんだ、自分の発言の恥ずかしさが分からないのか?」

「はぁ?いきなり何言ってんだ?……うーん、恥ずかしさとか気にしてたら言いたい事も言えんだろうさ。

特に歌歌ってるんだぜ?自分の考えを相手に伝える事を躊躇ってどうするよ」

「…………本当に気障ったらしい先輩だな、貴方は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず、用事二つのうち一つを済ませて、もう一つの用事を学園艦へ戻る。角谷に話を聞いたから確かだと思うが、ここ辺りに……いたいた。

 

「どうしよ〜…………」

「戦車道の試合があんなに怖いものだなんて思わなかったよ……」

「やっぱり西住隊長に謝ろう!西住隊長、優しそうだし、許してくれるって!」

「許してくれるのかなぁ……」

 

そこには一年生チームが集まっていた。先程の試合で逃げ出した事について話しているんだろうが……うん、言わなきゃダメか、あんまり偉そうな事言いたくないけど、誰かが言わなきゃだし、今更だよな。

 

「澤ちゃん達」

「「「「「島田先輩!?」」」」」

「いきなり悪いな、話し声が聞こえたからさ……それより、お前達は何について謝ろうと思ってるんだ?」

「そ、それは……勿論逃げ出しちゃった事についてですけど……」

「そうだな〜、ちゃんと一緒に戦ってくれとけば勝てた可能性はあったな」

「うぅぅ…………」

「でもそんな所じゃない、そこを謝るんじゃないんだ。元を辿れば逃げた事だけど、逃げた事で起きてはいけない事が起きる可能性があった。そこについて謝らないといけない」

「え?」

「それって……?」

「それに、許して欲しいから謝るのか?それも違うだろ?お前達ならそれも理解出来てる筈だ」

「島田先輩……」

「これについてはおれも試合を見ながら怒っているんだ。周りの人達もすごく心配していた。……澤ちゃん、分かるか?簡単な話だよ。お前達が怖いと思った事、それと一緒」

「……外に出たら危ないからですよね」

「その通り。しかもあの時は互いのチームが熾烈に撃ち合っていただろう?

戦車道の試合が初めてで怖いのは分かるよ。鉄の塊が凄い勢いで自分達の元に飛んでくるんだ、怖くないわけが無い。

けど、外に出ちゃったら、それがお前達の体に直撃していた可能性も十分に有り得るんだ」

「…………」

「恐らく、西住も通信で言った筈だぞ。危ないから出ないでって 」

「はい……言ってくれていました」

「だろう?」

 

一年生チームは俺がここにきた時よりも表情が暗くなっている。あぁもう、そんな顔するなよ。させてる俺が言える立場じゃないけど。

 

「澤ちゃん、山郷ちゃん、坂口ちゃん、丸山ちゃん、宇津木ちゃん、大野」

「何で私だけ呼び捨て!?」

「もう分かるな?西住に、皆に言わなきゃいけない事」

「「「「「……はい!」」」」」

 

丸山もコクリと頷いている。うんうん、この子達も原作じゃ凄い成長してくれるし、最初なだけであって、ポテンシャルは凄いものがある筈なんだ。

 

「なら大丈夫、ちゃんと話せば西住達なら分かってもらえるさ。

……よし、まだ時間あるな」

 

そう言って俺は徐に楽器を取り出し、演奏の準備を始める。

 

「島田先輩?何するんですか?」

「お前達の新たな出発に期待して、特別でライブしたくてな」

「え!?いいんですか?」

「おう、西住達もまだ戻って来ないみたいだし、それに最近はあまり歌えてないんだ、歌える機会があったら歌ってもいいだろ?少しぐらい」

 

俺はそう言って、笑いながら準備を終えた。

 

 

「さて、それじゃーやるか。

……遅くなったが、お前達もお疲れ様。活躍は見れなかったけど、これから先はまだまだ長い。自分達と向かい合って頑張っていけばいいさ。

これは俺からの激励と思ってくれ」

 

 

 

『決意の朝に』

 

 

 

 

 

 

 

 

西住達が急いで戻ってきて学園艦に乗り込んだようだ。そこで一年生チームが西住達へ声をかけ、謝っている様子が見える。……よし、取り敢えずこれで終わったな。

 

「……先輩はやっぱり年下に甘いよな」

 

いつのまにか隣に来ていた冷泉が話しかけてくる。俺が一年生チームと話している時は、外で西住達を待っていた筈だが、隠れて聞いてやがったな?

 

「まぁ、大事な後輩達だからな。俺の出来る事があればなんだってするさ」

「は〜い、そんなミナトにいいお知らせがありま〜す!」

 

するとそこへいきなりナカジマが現れた。

 

「会長から此処にいるって聞いてさ〜……何か忘れてる事ないかな?」

「は?忘れてる事?そんなのあるわけ……」

 

 

…………ふぅ、さて。

 

 

「冷泉!任せた!」

「は?いきなりなんだ」

「こら!逃げるなミナト!今日試合終わったら、戦車の整備やるって言ってたじゃんかー!」

「い、いや、今日はちょっとしなくちゃいけなかった事があってだな……対戦校の接待とかいろいろ」

「問答無用!ツチヤ!」

「りょーかーい」

 

そして俺は車に乗せられてそのまま連れて行かれた。……完全に忘れてたわ。で、でもしょうがなくね?あんな熱い試合に、聖グロに呼び出されて、冷泉家に行ってたら時間無かったよ!

 

「取り敢えず、ミナト。ローテ的に今日は頑張ってもらわなきゃね!」

「……了解っす」

「分かればいいよ、分かれば」

 

というわけで、今日もまた寝られない日になりそうだ。

 

 

 

 

 




まず、聖グロメンツの曲についてです。

ダージリン surface より それじゃあバイバイ
アッサム 坂本真綾 より ロマーシカ
ローズヒップ GRANRODEO より modern strange cowboy

……はい、ペコちゃんとルクリリがいませんね。ペコちゃんは候補はあるのですが、しっくりこず、ルクリリは全くですね笑
思いつき次第、乗せたいと思います。
あと、アッサムは影でsum41とか好きそうなイメージ。still waiting とか


一年生チームのイメージ曲は ポルノグラフィティ より ミュージック・アワー

また、聖グロ戦後での謝罪シーンにおいて、この子達の後悔とこれからどうするか、を考えた時にイメージした曲は Aqua Timez より決意の朝に

澤梓 モンゴル800 より あなたに
山郷あゆみ ASIAN KUNG-FU GENERATION より ネオテニー
宇津木優季 ミュージック・アワー
坂口桂利奈 中川翔子 より 空色デイズ
大野あや midnight pumpkin より 深夜急行クジラバス
丸山紗希 SunSet Swish より マイペース


……しかし、あやちゃんの恐らく曲は見つかりにくいと思うので、もう一つ。
紗希ちゃんはこっちの方がしっくり来たけど、歌じゃないので……
大野あや the pillows よりスマイル
丸山紗希 光田康典 作曲の 風の情景(BGM)



……あれれーおかしいな。なんか麻子が正ヒロインみたいになって来てる笑
五十鈴さん関連の後ろ側を書こうと思ったら自然にこうなってました。後悔はない!


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