この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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感想、お気に入り、誤字報告ありがとうございます!
今回は後書きちょっと長めです。
では本編どうぞ!





46話 〜時代を変えゆく全力少女達です!〜

 

 

 

 

「では、ウサギは右方向の偵察へ、アヒルさんは左方向。カバさんとあんこうでカメを守りつつ前進します。

では行きましょう、パンツァーフォー!」

 

ちょっとしたハプニングがあったけれど、すぐに気持ちを切り替えて、各チームに指示を出していく。現在は森の中を進行中であり、外の様子は伺えないけれど、島田先輩から聞いた話が実行されていれば何かしらアクションがあるはず。そう考え、すぐにフォローに出られるよう各チームとの距離を一定に保つ。

 

しかし、仮に傍受されているとしたら、あまり指示を出しすぎるのも不自然に思われる。そこはなかなか難しいとこであるが、気付いている事がバレたり使用していないと判断できれば、最初の予定通りになるだけである。

 

一番やってはいけない事はこちらが撃破されてしまう事。ただでさえ数的有利を取られているのに、撃破されてしまっては更に不利になる事は当然として、相手に余裕を持たせてしまう。

 

私は考えを巡らしつつ、索敵を行いながらも、敵の出方を伺う。その時であった。

 

『敵車両発見しました! 森の外です! では誘い出します!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合開始され、観戦に徹しているがサンダースと遂に会敵したようだ。しかし、

 

「これは……」

 

そう、別のモニターでは各戦車がどのように位置取り、動いている様子が分かる。だからこそ気付く。

 

ウサギチームが最初に会敵した相手を誘き出そうとするも、敵の別働隊がウサギチームを捉え、集中砲火を受けてしまう。咄嗟に回避行動に移りつつ、カバチームとあんこうチームがカバーに入る。

 

うさぎチームは索敵していた為、他のチームとの距離はあったものの、流石みほと言うべきか、然程時間は掛からずにカバーに入る。

状況は芳しくないが、ウサギチームが撃破されてしまう事は免れつつ、先回りしていた敵チームもあんこうチームが先頭に立ち突破した。

 

てか冷泉やべぇ、あの状況で前に出た挙句、敵の砲弾を回避又は逸らしながら切り抜けるのかよ。

 

さて……これはやはり使ってるようだな……

みほも気づいているだろう、初戦闘の森に十両中九両を投入……だけならまだしも、戦闘の流れが全て先回りされ続けている事、この二つが証拠だ。

 

俺は取り敢えず安堵して、被害ゼロで切り抜けた大洗を見つめる。みほ、こっからが勝負だぞ。

 

「しかし、流石はサンダース。数に物を言わせた戦いをしますね」

「そうだな、何とか切り抜けられてホッとしているよ」

 

ペコちゃんの言葉に反応した所に、凛ちゃんが得意げな顔をして、いつも通り言葉を述べた。

 

「こんなジョークを知ってる?アメリカ大統領が自慢したそうよ?我が国には何でもあるって。

そしたら、外国の記者が質問したんですって……地獄のホットラインもですか?って」

「「……はい?」」

 

おっと、ペコちゃんと被ってしまった。そう言えばこんなセリフあった気がする。アッちゃんすまねぇ、流石にわからねぇわ。

 

「ダージリン様、それは一体どのような意味が?」

「……それって確かジョークだったんだっけ?アメリカとソ連、もしくはソ連を他の国に置き換えて、何か暗喩してる。

詳しい中身知らないし、流石に俺もわかんねぇぞ?」

「……あらあら、勉強が足りないわね二人共。しかしそれにしてはみほさんは対応が早すぎるし、湊さんももっと驚いてでも良さそうだけれど」

「何がだ?」

「最初からこんな試合展開になる事が、よ。まるで『最初から分かってた、想定していた』かのようにね」

「……あぁ、そう言うことか。てことは凛ちゃ……いや、ダージリンも既に気付いているのか?」

「ふふ……やはり面白いわね大洗。てことはこれは布石、これから逆に利用していくのかしら?」

「さぁ? みほに訊かないとわかんねぇな」

「え、えぇっと……どういう事ですか?」

「ペコ、見ておきなさい。これから面白くなりそうよ?」

 

そこで会話を終える。しかし凄いな凛ちゃん。あれを初見且つ一発で見抜くとは。言い方がまどろっこしすぎて、何言ってるか分からなかったが。

 

モニターに再び目を向ける。そこでは、八九式が束ねた木々を利用し、砂煙で複数の戦車達が移動していると見せかけつつ、その移動先へシャーマンが先回り……いや、既に待ち構えている三突とリーの元へ誘導されている所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵戦車二両撃破確認!』

『初撃破だよぉ〜!』

 

三突とリーにより、誘き出した敵戦車の二両撃破の報告を受ける……よし! 上手くいった!

 

「まさか通信傍受してたなんて……」

「みほ殿が言うように、確かにルールブックには使用してはいけないーなんて記載されていませんが……」

「まぁまぁ! お陰で逆に相手撃破出来ちゃったし〜、連絡手段は何も無線だけじゃないのよねぇ〜」

 

そう言って沙織さんは携帯を手に、手早く文字を打ち込んでいる。

そう、相手が通信を聞いているのなら、逆に誤情報を伝え、本当の情報は別の手段で伝えればいい。まさかこんなに上手くいくとは思わなかったけど。

 

「西住さん、次はどうする?」

「そうですね……」

 

敵を遠目から確認していると、基本フラッグ車を抜いた九両で攻めて来ていたのが分かっている。ならば、フラッグ車がいるとされる予測地点を洗い、見つけ出し撃破する。その間、残っている敵戦車七両は全く別の場所に行ってて貰おう。

 

しかし、今通信傍受を利用しての攻撃を行ったばかり。相手もこちらがそれを利用している事に気付いたかもしれない。

だから、まず誤情報を流して七両の敵車両がどう動くか様子を見る。まんまと乗ってくれるのであれば、見当違いの方向へ移動してくれるはずだ。

 

もし移動しなかった若しくは移動したとしても動きが遅かったとして、こちらが通信傍受を利用してる事がバレてるのならば、そこから本当の始まりである。二両撃破出来た時点で既に目的は達成しているんだ、こちらの作戦がバレている事の見極めはしっかりしないと……

 

「決めました、次は……」

 

 

 

 

 

 

 

いい気になるなよ……たまたま上手く撃破出来たからって。

確かに先程はしてやられた。恐らく移動途中に敵から先に見つかり先手を取られてしまったんでしょう。全く、何をしてるのかしら?

 

取り敢えず次の行動を聞き出さないと……

 

『……はい、皆さん、次は一二八高地に移動して下さい。敵にファイアフライが居る限り、こちらに勝ち目はありません。

危険ではありますが、一二八高地に陣取って上からファイアフライを一気に叩きます!』

 

傍受機の方から相手チームの声が聞こえてくる。

 

……くっくっ……くくくくく

 

「あーはっはっはっは!!

相手は捨て身の作戦に出るつもりよ!

……でも丘に上がれば、いい標的になるだけよ? 特に、貴女達が警戒しているファイアフライの……ね?」

 

これは勝ちね。さっさと終わらせてやるわ。

私は無線を繋ぎ、隊長や各チームへ伝える。

 

「一二八高地へ向かって下さい」

『ん? どう言う事?』

「敵の全車両が集まる模様です」

『ちょっとアリサ、それどう言う事? ……どうしてそこまで分かっちゃうわけ?』

「……私の情報は確実です」

『お……OK! アリサの女の感とその情報、信じてるわ!

全車、聞いていたわね!? それじゃあ、Go ahead!!』

 

隊長達が大洗の元へ進み追い詰め撃破するだろう。ふん、チョロいものよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっちゃ〜……二両撃破、それも明らかに誘導されたものだったのにサンダース、気づいてないみたいだな」

「そのようね、挙句本隊がよく分からない場所へ向かってるわ。……大方、みほさんが高地から狙うだとか、誤情報を与えたのでしょうけど」

「何でそこまで分かるんだ?」

「サンダースの進行方向の地形見たら、どんなやり取りが行われたかくらい分かるわ」

「……お二人共、そろそろ教えて下さい」

「おーペコちゃんすまんすまん、一人だけ仲間外れにしてしまって」

「ペコ、一つ一つ考えてみたら、自ずと答えがわかるはずよ?」

「確かにサンダースの不可解な動き、大洗は先の行動を読まれてたかと思えば、それは最初だけで以降は先手を取り続けていますが……」

 

横で凛ちゃんが、ヒントを出しつつ答えへとペコちゃんを導いている。格言とか、ジョークとかややこしい言葉さえ無ければ、教えるのかなりうまいと思うんだけどなぁ。

 

凛ちゃんのややこしい言葉には確かに深い意味が込められてるけどと思いつつ、ペコちゃんも答えに辿り着いたようでとても驚いている。

 

モニターに目を戻すと、サンダース本隊は誰も居ない、全く見当違いの場所に居た。一方大洗側は……って、

 

「このままだと林の中で、大洗の一両とサンダースフラッグ車がかちあうわね」

「けどあれって八九式だよな……装甲抜けないな……」

「これはどうなるんでしょう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

……まさか嵌められた……?

隊長達へ連絡した場所は間違っていないが、その先に居ないとすれば、もしかして通信傍受機の事がバレており、それを利用されているのでは? と最悪なケースが頭をよぎる。

 

これから先、どう動くべきか、まずは隊長へと伝えるか? いやまて、それは後で……

 

その時だった、何か動いてる音が聞こえてきて、こちらに近づいてきている。それは自然物じゃない駆動音、まるで戦車……

 

 

「………………あ」

「………………ん?」

 

 

しばらく互いに微動だにせず、固まったまま見つめ合う。目の前のこれは何だろう、丁度さっき見た記憶がある。えっと……これは……

 

「右に転換! 急げぇ!」

「……ッ! 蹂躙してやりなさい!」

 

くっそ、油断した。何ぼけっとしてたんだ私は。八九式が先に動き出し、目の前を逃走している。

 

「連絡しますか!?」

「するまでもないわ! 撃て、撃てぇ!」

 

絶対に逃がしてたまるもんか、八九式の様な豆戦車、すぐに白旗上げさせてやる!

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵フラッグ車、○七六五地点にて発見しました! でも、こちらも見つかりました!』

「……っ!! ○七六五地点ですね? 分かりました! 逃げ回って、敵を引きつけてください。

そして、○六一五地点へ、全車両前進して下さい! 沙織さん、メールお願いします!」

 

ある程度絞っておいた予想していた場所と違った! ここでこちらが撃破される事はまずい。相手本隊に合流される事もまずいけれど、まずは生き残る事が大切だ。

 

その後のメールにより、相手はアヒルさんを追いかけてきてるようだ……なんとか誘い出した時点でケリを付けたいところだけど……

 

私は他のチームの連絡報告を見ながら、前を見据える。ここからが正念場、やり切るしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが噂に聞く逆リベロか!?」

「何をおっしゃってるんですか? ケトル様」

「あの八九式、とても面白い動きするわね。初めてよ」

 

敵フラッグ車から攻撃を仕掛けられている八九式だが、軽快な動きと発煙筒を利用した煙幕スパイクで視界を封じ、上手く避け続けている。

それと、相手の砲撃感覚がやけに長い。……あ、機銃で撃ち始めた。流石に八九式とは言えど機銃でじゃ無理あるぞ。

 

「そろそろね……」

「何がですか……って、あ!」

「さぁ、こっからだぞみほ」

 

そう、大洗本隊と合流する事が出来たみたいだ。敵フラッグ、車は煙幕がまだ晴れず目の前が見えてないのか、そのまま付いてきているが……って、速いし上手い! 奇襲を避けやがった。

 

煙幕が晴れたのか、奇襲による砲撃を急停止により避け、その上逃げ出す事に成功している。みほ達も追撃しつつ狙ってはいるが、なかなか決定打にならない。

 

その時だった。ファイアフライが砲撃したのだろう。モニター越しでは地面での着弾しか見えないが、サンダース本隊が徐々に近づいて来ている……四両で。

 

「……上手いですね、サンダース」

「上手い? ペコちゃん、確かにサンダースは徐々に大洗との距離を詰めて来ているが、上手いってどういう事だ?」

 

戦車の各位置簡易モニターの方では、ざっと5000程の距離が空いている。ファイアフライの有効射程は3000程だったはずだが。

 

「あら湊さん、戦車道には駆け引きと言うものがあるのですよ?」

「この辺りは実際の空気を知っていないと分かりづらいかもですね」

 

凛ちゃんは得意げに紅茶を飲みながら、ペコちゃんは今回は自分が先に理解できている事で笑顔になっていた。……言葉ではフォローしてるのにペコちゃん嬉しそうなのが隠しきれてないぞ。

 

解説を受けると、確かにファイアフライの砲撃はあの距離では届かない。しかし当てる事が目的では無いらしい。

砲撃音・着弾音を知らせる事により、サンダース側は本隊が来るまで耐え切った事により気を持ち直し、大洗……対戦相手には自分達が来たと言う事実と焦燥感を与えると言うものだ。

 

凄く納得してしまった。現実問題として、ファイアフライの射程圏内に入ってしまえば瞬く間に大洗側は撃破されてしまう。しかもその砲撃手はナオミ。高校戦車道界に置いてトップを争う程の実力者である。

 

早々に決めたい所ではあるが、焦れば今以上に当てる事が出来ない。しかし遅れればこちらが撃破される。そんな状況など、以下に試合経験を積んでいようと焦燥感は拭えない。経験が少な過ぎる大洗の皆では尚更だ。

 

こんな話をしているうちに、サンダース本隊……ファイアフライは射程圏内に入りつつある。会場のアナウンスでも言われているが、近年稀に見る鬼ごっこ。この状況を乗り越え、フラッグ車を撃破しなければ勝ちなどあり得ない。

 

あぁ、カメチームを守っていたウサギチームとアヒルチームがやられた。そう、ファイアフライにだ。……てか八九式燃えてね? 戦車内大丈夫なのかあれ、特殊カーボンとは、安全とは一体……

って、あの様子を見ている限り大丈夫そうだ、しかしこの短時間で二両撃破されてしまったわけだ。

 

「くっそ……皆諦めるな!」

「まさかこんな展開になるとは……大洗ピンチですね」

「……ふふ、湊さん、ペコ、こんな言葉を知ってる?

サンドイッチはね、パンよりも挟まれたキュウリの方がいい味出すのよ?」

「「………………はいぃ?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリサの声が聞こえて来た。何故かかなり切羽詰まっているようだ。すると、はっきりとした口調で報告を受ける。

 

『大洗女子、全車両こちらへ向かって来ます!』

「えぇ! ちょっとちょっと、アリサ?

話が違うじゃない、何で?」

 

いつのまにかに私たちは大ピンチに陥ってるようだった。一体何が?

 

『……お、恐らく通信傍受が逆手に取られたのかと……』

 

通信……傍受だって? 私はそんな物を使っているなんて話は聞いていない。そもそも許可しないだろう。

 

てことはなんだ。アリサは自己判断でそんな不公平な道具を使用する事を決め、それを無断で本番に使用し、全てを利用されて今の状況が生まれていると言うこと……?

 

「……ばっかもぉぉぉおおおん!!!」

『す、すいません!』

「戦いはFair Playでっていつも言ってるでしょ!?

いいからとっとと逃げなさい! Hurry Up!」

『YES! MA'AM!』

 

そこで通信を終える。……はぁー、アリサの悪いとこが出ちゃったわね……これついては試合が終わった後にしましょう。

しかし、これからアリサの元へ向かうんだけど……

 

「無線傍受しておいて、全車両で反撃ってのもUnfairねぇ……」

 

それに、私はミナトに相談した時の言葉を思い出す。

 

『正面から堂々と話を付けに行くとか、認めてもらう為に対戦したり……』

 

確かにあの言葉はミナトにとって何気ない一言だったのかもしれない。けど確かにあの言葉で私は思い付き、行動が出来たのだ。

 

「これじゃ正面から堂々となんて言えやしないし、周囲から認められる事なんてないわね。何より……ミナトに合わせる顔がないわ」

 

普段から公平にだとか、正々堂々とか言ってる人間がこれではどの口が言ってるんだって話になっちゃう。

 

「よし! 同じ数で行こっか! 四両で行くわ、私とナオミ、後二両付いて来なさい!

それとナオミ、途中で砲撃してもらうから、合図したらお願いね」

 

さて! ミホ、大洗の皆、そしてミナト、私の戦車道って奴を見せてあげる!

 

 

 

 

 

 

 

「ウサギチームとアヒルチームがやられちゃった! どうするみぽりん!

このままじゃあ……」

 

チーム内に嫌な空気が流れ始める。途中までは良かったのだが、中々決められないまま時間が過ぎ、それがサンダースの本隊への追いつかれる原因となってしまった。

 

先程までの活気があった姿は今は無く、負けたという雰囲気で満ちている。負けた? いや、まだ勝負は終わっていない! けれど口に言うのは簡単だ。そこに私の想いを乗せて皆の心に伝える為にはどうすればいい……?

 

「もう……だめなの?」

 

沙織さんの声が響く。あぁ、こんな時島田先輩なら……そう思った時、それが目に入る。そう、先輩から貰ったボコだった。

……落ち着いて、そう落ち着いて皆伝えなきゃ。私には歌って伝える事は出来ないけれど、隊長として、大洗の一員として、皆に勝てる可能性を示さないと!

 

「……敵も走りながら打って来ています、当たる確率は低いです。

フラッグ車を倒す事を第一に考えて下さい! 今がチャンスなんです!当てさえすれば勝つんです!諦めたら負けなんです!

負けたら……このメンバーで、先輩達と出来る戦車道が終わってしまう。私はまだ終わらせたくない!」

 

そんな言葉しか言う事が出来なかった。当てさえすれば、これがこの局面でどんなに難しい事か皆理解しているのに。

 

けど、これが私の想いだ……どうか、どうか……

 

「……そうだよね、みほ! まだ試合は終わってないもんね!」

「西住殿の言う通りです! 」

「よーし、華! 撃って撃って撃ちまくっちゃって! 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、だよ! 恋愛だってそうだもの!」

 

皆の顔が明るくなった、明るくなってくれた。無線から聞こえてくる声も先程までの悲壮感は無くなり、声に強さが戻っていた。

皆、ありがとう!

その時、華さんが口を開けた。

 

「……いいえ、一発でいいはずです。冷泉さん丘の上へ。上から狙います」

 

その声からは、いつもの飄々とした感じでは無く、言葉では表せない何か強い意志が感じられた。……分かりました華さん! 任せます!

 

「稜線射撃は危険だけど有利に立てる! 掛けてみましょう! 麻子さん、お願い!」

「了解した、最高の場所まで連れて行ってやる」

「……麻子、また気障ったらしくなってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

まさに手に汗握る場面だった。大洗はここで試合を決めるとばかりに、一つの戦車-Ⅳ号が高所へ上がって行く。

 

「……ここですわね」

「……そうですね」

 

凛ちゃんもペコちゃんも食い入る様にモニターを見つめる。その時だった。ファイアフライによる砲撃が鳴り響く。

 

しかしそれを緊急停車と合わせてドリフトを行い回避、直ぐに高所を目指し始める。

そして、ポジションを定め停止。Ⅳ号が見つめる先には敵フラッグ車が、後ろにはファイアフライがⅣ号を見つめている。

 

俺は思わす立ち上がり、叫んだ。

 

「撃ち抜けぇぇぇえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何というのでしょうか?外せば負けるような状況なのに、頭はとても透き通っていて、体の震えもない。

……みほさんにあんな事を言われてしまっては、それに応えないと友達ではないのでしょう。

 

ふぅ……花を生ける時の様に集中して。

集中している間に、身体中の血が心臓を滾らせている。私の視界は今までにない程、澄み切っていてよく見える。

 

「華さん! お願い!」

「発射」

 

お願いされました! その声に無意識に反射したかの様に、一瞬でトリガーを引く。撃ち出される砲弾に、鳴り響く轟音。その直後に訪れる衝撃。恐らく相手の砲弾が私達の戦車へ直撃したのでしょうか?

 

恐らく時間は経っていないのでしょう。しかし、まるで時が止まってしまったかの様な錯覚に陥る程に、次の声が聞こえるまでがとても長かった。

 

 

 

 

 

 

「サンダース付属、フラッグ車戦闘不能!

よって、大洗学園の勝利!」

 

 

 

 

あぁ、やっぱり私、戦車道を選んで良かったですわ。

 






前話で歌った二曲について、まずは大洗vsサンダース戦をイメージした曲として レミオロメン より シフト です。
もう一曲は 五十鈴華 のイメージ曲で スキマスイッチ より 全力少年 です。全力少年については全体的なイメージにもなってますが、新たな時代の幕開けを示唆するシフト、その為に全力で壁を乗り越えようとする全力少女達……是非聴いてみてください。

戦車戦やはり難しく、今回は中身自体はあまり変えておらず、少しだけですね。どちらかと言えば皆の心情をメインとして書かせてもらいました……まぁあくまでも私の主観となりますが……
しかし、書きすぎるとダレるよなぁと思いつつ加減が難しいと感じました。

質問、気になった点があればお願いします!

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