時間かかった割には短い?
ていうか一気に投稿したかったのですが、戦車戦難しすぎて全く思い浮かばず、取り敢えずこれから。
大洗チームは試合会場へ到着し、実際に見る事が少ないであろう積もりに積もった雪に興奮しながら、試合開始まで待機していた。
「……よしっ!
「「「もんだいなしでーす!」」」
「オッケー了解! さて、ここに戦車持ってくるまでに走らせたとは思うけど、余裕あれば今の内に操作感覚慣れとけよ〜。特に園達は初めてが雪中戦でかなり大変だと思うから、冷泉を始めとしたそれぞれのポジションのみんな、しっかりサポート頼むな」
「「「はーい!」」」
「それと……足出すのはいいけど、慣れない環境、加えてこんな寒い状況だから、ちゃんと防寒対策しとけよ……?」
「えぇ〜そんなぁ〜、確かにめちゃさむだけど島田先輩、用意してくれたのごわごわしてそうで動きにくそうなんだけど……」
「武部、理解してたと思っていたがまだ足りてないらしいな……寒さを馬鹿にしちゃいけない。長期戦になればなるほど寒さは体に影響を与える。それだけじゃなく精神面にさえ影響を及ぼすんだ。熱いことも問題だが、寒さにはまた別の問題がある。女の子だからと言ってここは引かないぞ。大体……」
「あーあー、また始まったよ。島田先輩心配し過ぎ!」
「ま、まぁまぁ湊先輩、落ち着いて……」
「しかしだなみほ。お前もよくわかっているだろう? 家みたいにいつでも毛布を被れるわけでもなければ、暖房が効くわけではない。しかもみほはこの中で一番それが分かっているはずだろう? そんな寒そうな格好して……全く」
「あはは……」
「……いつの間にかみぽりんが名前で呼んでるし、二人の間に何があったのかなぁみーぽりん!」
「私にも是非お聞かせ願えませんか!」
「さ、沙織さんに華さん!? ちょっとまっ!」
みほに飛びかかる武部と迫る五十鈴……こんな寒い中でよくやる。流石女の子と言ったところか? 俺は一人、みんなが確認したと思われる戦車を改めて最終確認していた。おい、一年どもはしゃぐな。緊張感が足りないぞ……ってタカちゃん達! 何を作って……すげぇじゃねぇか、完成度たけぇなおいってカエサル雪投げるんじゃない!
そんなこんなで戦車の整備をしてると、冷泉が歩いて来た。
「……どうにかなったみたいだな」
「そうだな……ありがとな、冷泉」
「気にしないでくれ先輩。送り迎えの恩を返しただけだ……その、なんだ。よかったな」
「……おう」
正面からそんな言われるとちょっと照れるじゃん。まぁでも、冷泉が発破掛けてくれなかったら、こうも上手くいってなかったさ。
そんな会話をしていると、こちらへ近づいてくる音がする。そちらへ顔を向けると、一台の車が向かって来ていた。ある程度までそばに来ると、その中からはよく見知った相手が出てくる。
「……ふぅん……あはは! このカチューシャを笑わせる為にこんな戦車達を用意したのね!? ね!?」
まーたこいつはすぐ煽る……駆け引きなんだろうけどいい印象受けないぞ〜。ってもう戦いは始まってるってことだよな。ほら、一年達は臨戦態勢だよ。
「やぁやぁカチューシャ、よろしく! 生徒会会長の角谷だ」
カチューシャのそんな態度を気にも止めずに、角谷が挨拶とともに手を差し伸べる。しかし、それを見たカチューシャは頰を膨らまし、ノンナへ登り……肩車されていた。
「貴方達はね? 全てがカチューシャより下なの? 理解してるのかしら?」
「……ふぅん、島田ー」
「……はぁ……なんだよ」
「な、ナトーシャ!?」
戦車の後ろから這い出て来た俺は、その場へ近寄っていく。すると角谷は俺へ……っておい!
「おい……降りろ」
「相手がその気だからねー。精神攻撃は基本だよ」
「ぐ、ぬ、ぬぬぬぬ……」
「カチューシャ、落ち着いてください……島田湊、貴方はどちらの味方ですか?」
「少なくとも今は大洗の味方だよ! それより角谷は早く降りろ。無理やり落っことしてもいいんだぞ。早く降りないとやばい……主に俺の背中から凄い視線を感じる」
「えぇ〜乙女を無理やり地面へ放り出すとか、島田ってさいってー……さぁどう? カチューシャ。これで私の方が高いよ?」
「ナトーシャ! 居るならいるって言いなさい! それに卑怯じゃない! 」
「島田湊……やはり処すか」
「卑怯って何!? ノンナさんいつもより怖さ三割ほど増えてません!? あぁもう、お前ちっこいから軽いけど、流石に降りろや!」
「島田のケチー」
「ナトーシャ!? 今そいつと一緒に私の事を馬鹿にしたわね!?」
「貴方の墓場は此処になりそうですね……」
「お前ら息合いすぎ! 本当に初対面か!? カチューシャの事は馬鹿になんてしてねぇから!」
これもうわかんねぇな。カチューシャの初っ端の印象は何処かへと消えて、ただの愉快な相手選手になってしまった。
こんなコントじみた事をしてる間に、みほが駆け寄ってくる……って隣に並ぶついでにちょっと肘打ちするのなんで?
「カチューシャさん、今回はよろしくお願いします」
「……ミホーシャ、今回は蟠りのないしっかりとした試合にしましょ」
「……はいっ!」
「ナトーシャ? あの喫茶店ですごい事言ってくれたわね! けど関係無いわ。勝つのはこのカチューシャ、プラウダ高校よ! 」
「……はいはい、お前達の恐ろしさは身に染みて分かってるって」
「ミホーシャとナトーシャの全力を真っ正面から叩き潰してやるから待ってなさい!」
そう言って、カチューシャは引き返していく。ただの宣戦布告じゃん、律儀だなぁ。
「……湊先輩、見てて下さいね」
「おうよ」
「……お二方、申し訳ありませんがまだ言う事がありますので……カチューシャも忘れないで下さい」
「おぉう! ノンナさんまだいたの!?」
「あー! そうだったわ。ミホーシャ、そして此処にいる全員に告ぐわ! この勝負に私達が勝ったら、サンダースの時みたいにナトーシャの身柄は私達が貰い受けるわ! そしてそっちの! その時は私がナトーシャの上に乗ってアンタを見下ろしてやるから待ってなさい!」
そう言ってカチューシャとノンナは車に乗り込み去っていく……ってそんな事聞いてない。
「「「えぇぇーーー!」」」
「湊先輩! 私聞いてませんよ!?」
「俺だって聞いてないわ! カチューシャ達が勝手に言い出した事だろ!?」
「……けどこれ別に守らなくてもいいだろ」
「冷泉甘いな、甘すぎる。カチューシャは勝ったら本当にやってくるぞ。無理にでも連れていく気だ」
だから本当勝ってくれよ? 三年の戦車道を此処で終わらせない為だけじゃなく、俺の生活も守ってくれ。そう言いながら俺は額を押さえる。なんて事を言い残してくれたんだ。
みほ達は戦意が高揚? したのか、操縦や視界、寒冷地での運用に慣れる為にも、試合開始までの間、戦車達を動かそうとしていた……っとその前にっと。
「武部」
「えっ!? なに島田先輩。用ならやる気に満ち溢れたみぽりんから捕まる前に早くしてね」
「いや、ちょっとな……いざという時の為だ。どうしようもならない時、みんなが落ち込んでる時にこれを」
「えっ? 何これ?」
「まぁ、必要ないならそれに越した事ないから。使わなかったら試合の後返してくれ」
そう言って俺は武部に封筒を渡す。困惑しつつも受け取ってくれた武部は、急ぎ足でみほ達の元へ向かう。
……さて、俺も観客席へ行くかな。
「あら? まほさん、今日は妹さんの応援かしら?」
「……敵情視察だ」
「素直じゃないのねぇ……ってそちらはもしかして」
「あら! マホに聖グロリアーナの隊長もいるじゃない! みんなミナトと一緒に見に来……って、西住流の師範!?……じ、じゃないデスカ?」
「……湊? お母様、この方達はお兄様の事知ってそう」
「愛里寿、先行かないの……って西住流ではありませんか。ふふふ」
「……島田流、何故ここに居るのかしら?」
「息子の学校を応援に来ちゃいけないかしら? そういう貴女も娘さんの応援かしら? 珍しく意気投合したわねぇ」
「……私はただ見極めに来た、それだけよ」
「ねぇねぇダージリン、これって中々ないExperienceじゃない? 同時にちょっとやばそう」
「……ケイさん、みっともないわよ? もう少し落ち着きなさいな」
「……ダージリンも手が震え過ぎて紅茶溢れそうよ?」
観覧席へ戻ると、何とも言い難い雰囲気を醸し出している一角が存在した。あれにはみほも近付きたくないだろう、俺は近付きたくなかった。
「……はぁ〜」
思わずため息を漏らしてしまう……その場所へ行き、試合を観戦する事は確定事項だ。だが、絶対厄介な事になるのは目に見えている。少しだけ覚悟を決める為の時間が欲しいと思ったが、現実は非情だった。
「おぉ〜湊君や、娘達はどうだったかい? 今日もいけるかなぁ」
「ばっちしだと思いますよ……あはは……」
「しっかし、対戦校のぷらうだ? 高校は強そうだねぇ……大洗のみんなが気を張り過ぎなきゃいいけど……」
「し、信じてあげて下さい! それに緊張するって事は悪いことではないじゃないですか〜」
「ま、楽しく試合をしてくれるだけで私達は満足さ、そうだろ?」
「その通りでございます……」
大洗学園を応援してくれる地域の皆さんや親御さん達から話しかけられる。心配している様子を見せながらも、早く試合を見たいという気持ちが隠しきれておらず、全員そわそわしている。
普段なら嬉しい。むしろばっちこい、ノンアルコールビールを片手にあん肝を食べながら、皆さんと談笑して観戦したい。けどそうはいかないだろう。
何故なら先程まで人を近づけさせない、一言で言うならやばい雰囲気を出していた一角にいる人達の目が此方へ向いた。そりゃ気付かれるよな、名前呼ばれてたもんな……えぇ……あそこいくの? と言いたくなるが、最愛の妹がいるから結局行くんですけどね。
すると、真っ先に愛里寿が胸に飛び込んできた。
「お兄ちゃん! 久し振り! 今日はお母様と一緒に沙織さんや……みほさん達を応援に来たよ!」
「あらあら〜湊、早くこちらへいらっしゃい。ふふふ、貴方の友達はみんな明るくて元気ねぇ」
……ふふふ、楽しそうですね母上。そして愛里寿よ、家モードが出ているよ?
胸に飛び込んできた愛里寿が離れようとせず、しがみ付きながら上目遣いで見つめてくるので、そのまま横向きに抱っこしながら母さんの所へ向かう。
あぁぁぁぁぁ! 久々の生愛里寿、可愛すぎる! ここが観覧席じゃなかったらぎゅーってしちゃう! 優しく撫でて高い高いしたい! 実際、最近はこんなあからさまにしがみ付いてまで甘えてくるなんてなかったから、その分暴走しそう……主に俺が。
「……シスコンめ」
「んだと、西住。お前もみほの事好きだろうが! 人の事言え……ひぇ、貴女を呼び捨てにした訳ではないので睨まないで下さいませんか? 西住師範」
「……」
「無視も無言も辛いのですけど……」
「湊、わざわざそれの事を師範なんて呼ばなくていいのよ? そうねぇ……話した事ないでしょう? なら親しみを込めてしぽりんと呼んであげなさいな、喜ぶわよ?」
「おい、島田流」
「し、しぽり……」
ごめんな、みほ。俺は試合を見る前に死ぬかもしれない。西住師範より呼んだら殺すとばかりの視線を受けて、息が吸えなくなりそうだった。だって親からのフリだし! 応えなければいけないと思っただけだし!
取り敢えずどこに座ろうか……と思った矢先だった。
まずダージリン達聖グロの所に四つの椅子が用意されている。ダージリンは香りを楽しみながらこちらを見向きもせずに紅茶を飲み、アッサムは額に手を当て、ペコちゃんは俺とダージリンを見比べている……空席が一つ、なるほど。
一方でケイさんがウィンクをしながら、隣の観客席をポンポン叩いている。アリサはこちらが興味津々なようで観察されており、それをナオミが窘めている……ふむ。
そして聖グロやサンダース勢より、前列側を見ると、西住としぽり……西住師範が並んで座っており、少し間隔を開けて母さんが座っている。心の中で考えただけだというのに、師範からすげぇ睨まれた気がしたけど、気にしたら負けだ。
さて、何処に座るか。愛里寿を抱っこしながらだったが、即決だった。
俺は師範と母さんの間へ行き、空いてる席に座る。愛里寿を母さん側に降ろして、俺は師範側だ。背中に多くの視線を感じるが……今は無視だ、応援に来てくれていたのは嬉しいけれど。
西住は怪訝そうな顔でこちらを見ており、母さんはいつの間にか口元を扇子で隠している……母さん? 何でこんな場所にまで扇子持って来てるの?
そして、西住師範はこちらを見てすらいなかった。
「……先程はうちの母と私合わせて申し訳ありません……。あの、直接お話しするのは初めてですよね? 私は島田湊と申し「知ってるわよ」……」
「全く……貴方達の事どれだけ聞かされてると……それで? そこの女の事はさておいて、何か?」
「やーん、しぽりんそんな他人行儀じゃなくていいでしょ〜」
「黙ってなさい」
……あれ? この二人仲いいの? とは言えない。ほら、西住も驚いてる。ていうかお二方、俺が勝手にお二人の間に座ったけども、お互いの目を合わせないどころか、目の前の会場を真っ直ぐ見据えつつ言い合いするのやめて? ほら、お母様の初めて見る姿に愛里寿が困惑してるから。
しかし、前もって言っておかなければならない事がある。怖い雰囲気もあるが、母さんのおかげか親しみやすさも感じる。そんな中、例え踏み入れてはいけないとしても、言わずにはいられない。せめて……せめて言っておきたい。
「……西住師範、どうですか? みほは」
「ッ! ……そうね、考えるまでもないわ。私はあの子に勘当を言い渡す為に来たのだから」
「へぇ〜そうですか……そうですか! みほはみほのやり方で戦車道と向き合っています! 笑顔で友達たちと取り組み……そして勝ち続けています!」
「その戦車道へ臨む在り方が邪道でしかないわ」
落ち着け〜落ち着けぇ……
「そもそも、貴方には関係無い事でしょう」
「……確かに人の家に口出すなんて身勝手が過ぎるかもしれません。けど、それでも俺はするべき……いや、したい事をします。やってやりたい事をします。だって俺は西住みほの先輩ですから」
「島田……お前」
「……島田流、貴方の息子は随分自分勝手なようですね」
「誰に似たのかしらねぇ〜」
西住が驚愕している中で全く顔色が変わらない西住師範、そして面白そうにしている母さん。
そんな中、服を少し引っ張られる。その方向を見ると愛里寿がこちらを頰を膨らませて見ていた。
「……お兄ちゃんのバカ」
「えぇ! 愛里寿、俺なんかしたか!?」
「ふん!」
「謝るから! な! 」
「……頭撫でてくれないと許さないもん」
「よぉ〜し! あぁ、今日の愛里寿は一段と甘えてくるなぁ、そこが可愛い!」
「……ふふ」
「……ほんとシスコンだなお前」
「はぁ……」
先程の空気は何処へ行ったか、西住親子は此方を呆れるように頭を押さえている。あ、すっごく親子っぽい。そして母さんは愉快そうに笑う。そして笑いながら母さんは一言言い放つ。
「しかしね湊。貴方も間違ってるわよ。それは口下手と恥ずかしさを隠してるだけよ。大体勘当を言い渡す為だけに、こんなところにまで戦車の試合を見に来るわけないじゃない」
「……え?」
「だから、勝手な事を言わないでくれるかしら?」
「ま、何でもいいけれど。取り敢えずは試合を見ましょうか? 誰が何と言うと、少なくとも此処にいる以上は、この試合を見る事が目的なのだから。だーかーらっ! 楽しみましょう、ね?」
突然母さんが俺と愛里寿に近寄り、肩を寄せ抱き締めながら頭を撫でてくる……って母さん! きついって、息できなっ
「……お母様、ちょっと狭い」
「あらあら〜久しぶりの家族団欒よ? 楽しまなきゃ損じゃない……お父さんがいればよかったんだけど、それはまた今度にお預けねぇ」
上手くはぐらかされた気がするが、その通りだ。みほ達の応援を優先しよう……西住師範とはまだ話すタイミングがあるのだから。
「むぅ〜流石にあの中には入れないわねぇ……」
「ケイ、今回はしょうがないわ。私もじっくり話すのが楽しみだったのだけどね」
「隊長の想い人を調査する絶好の……ヒィッ!」
「……ペコ? お代わりを頂けるかしら?」
「ダージリン様……ヤケになって飲みすぎるとお腹ゆるくなっちゃいますよ?」
「もぅ……湊様はいないならいないで面倒事を引き起こしますね……」
ちょっとー、聞こえてますよー。
〜今更だけど〜
みんなの呼び方時系列的におかしくない?
→仲良くなる、絆を深めるのが早まった。理由は……