某バーガーショップへ入り、それぞれ注文をする。何でこの辺りファーストフード店こんなにも多いんだ、とここに来てから感じていたが、間違いなくサンダースの影響もあるんだろうなと思った。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、あぁ、聞いてるよ」
目の前にいる女子生徒——ケイは話を続ける。てか最初のおどおどとしてた姿はどこ行った。確かに今の姿の方が原作でのイメージに近いけど。
「つまり、自分に嫉妬してる奴らが陰でこそこそ邪魔してくるのがムカつくんだろ?」
「う、そこまでは言って……ないけど」
要約するとだ。高校へ進学し、ここでも戦車道を続けているケイ。そして入部してからのこの数ヶ月で隊長から認められ、中隊長に任じられたらしい。しかしその影響もあってかケイは今いじめ、とまではいかないにしても様々な妨害行為などを受けているらしい。まさかそんな事があったとは……。
「確かに一年の中隊長ってだけで不満があるかもしれないし、他の経験のある先輩達の方がいいかもしれないし……けど、隊長に任命された以上はやれるとこまでやりたいし、どうしたら先輩達に話を聞いてもらえるかなと思って!」
「んで、見ず知らずの俺に話しかけてきた……と、すげぇなアンタ。知らない人だから相談しやすい事もあるとは確かに言うが、実際に実践する奴初めて見た」
「だってだって、歌を歌う、それだけで周囲の人を虜にしてたから。私だってGreat!って思わず呟いちゃった!」
凄くいい顔でさらっと褒めてくる。いや、嬉しいけど恥ずかしいな。舞台だとか演奏してる時に言われても、気分が高揚してて感覚が麻痺してるのか、嬉しいという気持ちしか湧かない。けど関係ない話をしてる最中にいきなり真っ正面から褒められると流石に返答に困る。
「あぁ、ありがとう。しかし、先輩達にどうしたら聞いてもらえるか、か……難しいな。他の一年の友達とかは?」
「それが最近距離を取られてて……あぁ、やっぱり思うところがあるのかなぁ。少し前までは普通に話してたり、中隊長に任命された時も一緒に喜んでくれてたのに」
いやそれは先輩達が裏から手を引いてるだろ。絶対、とは言えないが一緒に喜んでたり、任命されたあとも普通に話してたりしたとなると、そっちの方が確率が高い。
「どうすれば……みんな話を聞いてくれるのかな。どう伝えればわかってくれるのかな」
「……うーん」
てか、サンダースの隊長はこうなる事が見越せなかったのか?いきなり入って数ヶ月の一年を上の立場にしたら、反発してくる輩も出てくるとわかるようなものなんだが。ケースバイケースだけどさ。
「それに、私の事庇ってくれてる先輩達にも申し訳ないよ……」
「いい先輩いるじゃないか。相談した?」
「これ以上は迷惑は掛けられないし、一度してみたら、私の方で話をつけて置くって。そしたらその先輩が見てないところで……」
なるほど、陰険さが増したと。しかしサンダース大丈夫か?こんな調子で。下の意思疎通すら出来てないぞ。
「うーん、思いつく限りでは、正面から堂々と話を付けに行くとか、認めて貰う為に対戦したり、隊長がいった「それよ!」……ん?」
「このままじゃ話が進まない。だから戦車道で決めるのよ!公平にスポーツマンシップに則って!」
「……お、おいおい、そんな簡単に決めちゃっていいのかよ。てか大会がもうすぐなんだろ? もう開催まで時間ないだろ?そもそも隊長さんはそれを許してくれるのか?」
「no problem! あの隊長ならチームがより良い方向で進むのなら許してくれるわ! やっぱり真っ正面から会話を、会話といえば戦車道よね!」
「……大丈夫かこの子」
こんなキャラだっけ?あんまりな急展開に頭が追いつかない。
「ありがと!ミナト!こうしちゃいられないわ!隊長と先輩達に話をしてくるわ!」
「あ、あぁ」
「ここ、代金置いていくわ!じゃあまた会えたら!」
そう言ってケイは飛び出して行った。
「……なんて速さ・行動力だ」
思わず独り言を呟き、店を後にする。ちなみに代金は、むしろ多めに置かれていて、今度会った時に返さなきゃと思った。
次の日もライブを終えたタイミングで、ケイがやってきた。正直あの後のことは気になってたんだ。もしかしたら上手くいくかもしれないが、反面もっと溝を深める可能性もある。迂闊に口に出してしまい、もし悪い方へ行けば俺のせいみたいなもんだ。まさかあそこまで行動力があるとは……
近寄って来たケイを見ると、なんか泣きそうな顔していた。おいおいまじで失敗したのか?
「ミナトー!どうしよー!」
「いきなりどうした、ってええい引っ付くな!片付けられないだろ!」
昨日会った男によくこんな行動できるな。しかしかなり取り乱してるな。取り敢えず話を聞かなければ……
「また、昨日の店でいいか?そこで話聞くからちょっと離れろ!」
「うわー!明日やばいよー!」
「やばいのは今だよ!周りから見られてるから!」
周囲の目が痛い。なんでこんな目に……無理矢理引き剥がして、また同じバーガー店へ入った。
「全く……少しは考えてくれ……んで、昨日帰った後から何があったか教えてくれ」
「あのね……」
どうやら、まじで主犯格の先輩達の所に決闘(ケイ的には実力を見極めて欲しいだけ、のようだが明らかに下剋上狙ってると勘違いされてる)を持ちかけたようだ。食堂の皆が飯食ってるその目の前で。案の定、先輩達は自分達がしていることは認めずとも、決闘には乗って来たらしい。そしてその場にいた隊長も許可を出したらしい、らしいが……
「車両数5対10、少ない方が私で、これで勝てれば誰もが認めるわと言われて……」
「単純計算で二倍の戦力差じゃねぇか、勝てる見込みは? あと対戦形式」
「作戦も昨日からずっと考えてるけど、かなり厳しいわ。一応フラッグ戦ではあるんだけど……あーどうしよう」
「自分から言い出したことだろ? まぁその原因は俺にもあるわけだが……しかしここに居ていいのかよ。チームの奴らと作戦考えたほうがいいんじゃないか? 大会近いけど試合いつすんだよ」
「明日」
「……はぁ!? だから明日やばいって言ってたのか!尚更ここにいちゃダメだろ!打ち合わせしろよ!」
「その、なんにもいい案思い浮かばなくて……。取り敢えずチームメイトの皆には休憩って伝えて、報告と気分転換でミナトの所に来たの」
「はぁ……まじか」
「……迷惑だった?」
「いや、色々驚いただけだ。気にすんな。しかし気分転換だな?」
これじゃあほんと、何もせず返したらダメだな。そんじゃ……
「アンコール、だな」
「え?」
「時間は取らせん。ちょっと付いて来い」
そう言って俺はケイを連れて店が出た。
ここら辺で良いかな。俺はライブの準備を始める。
「ミナト、何するつもりなの?」
「見りゃわかるだろ、ライブだよ。一曲だけのアンコールだ」
「え? アンコールってファンの方から言うものじゃない?」
「まぁいいんだよこの際、俺からすればケイに伝えときゃなと思ってさ」
準備を整えて、ケイと向かい合う。
「ケイはさ、仲のいい人とは今のケイみたいに積極的で真っ直ぐな態度でさ。側から見てても気持ちいいんだよ。けど、昨日の初対面の時は最初のうちは遠慮してるっていうか、オロオロしてたよな」
「う、うん」
「サンダースって戦車道での強豪校らしいし、部員数もかなりいるんだと思う。その中であまり関わらない人もいるんじゃないかな。同じ一年にしろ、先輩にしろさ」
「………」
「そうなると、初対面の時の様なケイが出てくると思ったのさ。……例えば明日組むチームメイトだとか。急とは言え、明日試合なのにここに来るなんておかしいと思ったからな。昨日と今日しか見てないけどね。
その顔見たら図星のようだな。いや、責めてるわけじゃない。言ったろ? 気分転換って。俺に出来ることはお前を応援することだけ。口で言うだけじゃ伝わりきらないから、人からの借り物だけど、音に言葉を乗せて伝えることにする。
この曲を聴いて、ケイがどう思うかわからない。ただ、俺は誰に対しても今の真っ直ぐなケイで居て良いんじゃないかって思う。
少なくとも俺がこの曲を知った時は、自分に対して正直に、出来ることをやって行こうと思ったからさ。
時間も押してるな。ケイには早く帰って、仲間と作戦を立ててもらわなきゃいけないからな。
じゃあ、聴いてください」
『アンバランス』
AJISAIよりアンバランスです。知らない方は是非聴いてみて下さい。
この曲は爽やかでこの作品は抜きにして、アニメのケイに似合ってると思ってました。
皆さんにもそれぞれのキャラに似合ってると思う曲がありますかね?