この世界で伝えられる事を探して   作:かささぎ。

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今回はかなり短めですが、どんどん話を進めていこうと思います。
流石に話短すぎにも関わらず、進めすぎですかね?
長く書くにはどうすればいいのか……
長めに書きつつテンポのいい話しかける人ってすげぇなぁと思い知ってます。




9話 いざ、青森へ (上)

 

 

「さっむ!」

 

 

 現在青森県青森港に来ています。気温は−3度と慣れない寒さに心挫けそうになっています。防寒着着ているけれど寒さが貫通しているんだが。

 

 そんな訳で冬休みに入り、プラウダ高校が寄港地としている場所に訪れている。勿論、カチューシャ・ノンナに出会うためである。大湊港の可能性も十分にあり得たのだが、寄港予定は調べたらすぐ出たのでまずは一安心。

 

 しかし、問題としては年末近い訳で、あちらの予定が既に決まっている可能性が高い上に、年末年始は島田家に顔を出す事になっているから、大体一週間が滞在できる限度だ。しかし、ノンナの出身地が北海道らしく(戦車道 注目選手特集! って雑誌に書いてあった、カチューシャは載っていなかったが)此方にそもそも居ないこともあり得る。

 

 どちらにせよ、プラウダ高校の学園艦が滞在中に接触できれば一番いいのだが、今回はかなり厳しいかもしれない。まぁ、今回だけのチャンスって言う訳ではないので、降りてくるプラウダ高校の生徒に覚えて貰っておくだけでもだいぶ変わるだろうとポジティブに行こうと思う。

 

 

 手早くライブの準備を始めてるが、しかしだいぶ人多いな。時期も時期だし、そこに加えて学園艦も到着しているから、人の出入りが多い。予定では、駅の方でやろうと思って居たが、ここまで人が多いとやってみる価値はあると考えた為、このまま港でやってみようと思う。比較的暖かいし。

 

 

「よし、始めるか。ケイの時は早く出会えたし、意外と順調に行くかもしれんな!」

 

 

 気合いを入れ直し、早く出会える事を願いながらライブを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「あーやべぇなぁー」

 

 

 あれから四日後、現在休憩のために駅のホームにいる。

 

 実は初日は良かったものの、二日目にお客さんに「うるせぇ! 他でやれや!」と注意された為、場所を当初の駅に変えている。しばらく運が良かった為、出会う機会はなかったが、そりゃ知らない人間の歌なんて聴きたくない、迷惑と感じる人もいる。過去にも何度かあったが、こう言う時は素直に従うべきだ。厄介な事に巻き込まれる可能性もあるし、そもそも相手が正論なのだ。だから、しょうがないと割り切り場所を移動した。

 

 そこから、駅のホーム近くで続けているが、生徒を見かける数は格段に減った。人もサンダースの時ほどとは言えないものの、集まって聴いてくれる人が増えてはきたが、生徒の数は少ない。まぁそもそも弾き語りを始めて、ずっとこの場所で続けているわけでもないのに集まるだけでも驚く事だし、感謝する事なんだけどね。

 

 ここを良く通るのか、この四日で毎日見る生徒もいる。学園艦から降りた時とこっちに来たのがたまたま一緒だったらしい。凄い話しかけられた。

 

 取り敢えずそれは置いといて、残り三日間で何をするか。何かアクションを取るべきかこのまま行くか。ダメで元々の予定だったが、しかしいざ来てみると流石になー。どうしよっかなー、サンダースの時はほんと運良かったなぁーって思っている時だった。

 

 いきなり目の前を女性が通り過ぎて行く。結構な速さで急いでる事がわかる。問題はその女性だ。制服からして、プラウダ高校の生徒である事がまず1つ。女性にしては背が高い方で、肩下まである真っ直ぐな黒髪。何よりも最近その顔を見た記憶がある。

 

 

(ノンナ……か?)

 

 

 それにしても、あの冷静そうな人がする表情ではなかった。焦っているような、怒っているような、少なくとも何か大きな事が起きている事が一瞬で理解できる様子だった。

 

 

「あー、くっそ!」

 

 

 取り敢えずノンナを追いかける事にした。見知らぬ人間である俺が何か出来るとは到底思えないが、もやもやするくらいだったら行動するべきだ。制服姿だし、今追いかけたらたぶんすぐ追いつく。

 

 纏めていた荷物を荷物預け場に預けて走ると、駅からすぐ出た所にその姿が見えた。何やら周りを見渡していた。何かを探しているのだろうか? ……ノンナがあそこまで切羽詰まった様子になってまで探すもの、いや人ならば心当たりがある。それとは限らないが。

 

 

「すいません、何かお探しですか?」

 

「……」

 

 無視かい! いや、知らない相手だし、急いでる時に声掛けられてもそうなるよなぁ!?

 

 

「人、ですかね?」

 

「……申し訳ありませんが、此方の問題なのでお気になさらずに」

 

 

 反応したと思ったらこれかー。こればっかりはしょうがないよなぁ。

 

 

「そうですか。いや、余りにも慌てているようでしたので、何か手伝える事があればと」

 

「ありがとうございます。ですが大丈夫ですので、それでは」

 

 

 ノンナはここから去ろうとする……変に警戒されても嫌だし、ここらで退散するか。さっきも思ってたけど、冷静になれば当たり前のことだ。いきなり話しかけて来た赤の他人が、手伝える事はないかと聞いてきたら怪しむに決まっている。男なら尚更だ。ここから強引に押しても意味が無いのは明らかにわかる事だ。それに俺が関わっても助けになれるなんて保証はなく、むしろ邪魔になるかも知れないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……プラウダ高校1年 戦車道 砲手担当のノンナ選手。とても大切な人をさがしているんですよね?」

 

 

 ほっとけ。こんなの自己満足だ。むしろ、今後の課題に影響を与える可能性が高い。だから手を引け。

 

 

「……なんで私の事知っているんですか?」

 

 

 ほら、警戒されてるだろ?落ち着いて、後ろを向いて何事もなかった様に戻れ。

 

 

「俺、戦車道が好きなんです。だから特集してる本買ってて。貴女のことも覚えてました。

 そして、貴女のコメントに載ってたことも。とても尊敬している大切な人がいると」

 

「……それが今の現状と何の関係があると言うんです?」

 

「コメントや貴女の印象として、とても冷静そうな人だと思います。そんな人が、他人から見ても一目で切羽詰まってる様子が分かるって、余程のことが起きてるんだと思いました。

 その余程なことと、今何かを探してる様子を照らし合わせれば、貴女の言っていた大切な人を探しているのではないかと思ったんです」

 

「……そうだとしたらどうするんです?別に貴方には関係ないことだと思いますが」

 

「そうですね、関係ないと思います。だけど、さっきも言いましたが俺って戦車道が好きなんですよ。もし、今起きてることで貴女のパフォーマンスが落ちたら、嫌だなって。

 それに、戦車道は抜きにして、単純に手助けしたいなって思ったので。ただの自己満足ですよ」

 

「……」

 

 

 あー言っちまった、なんで言っちゃうかな俺。ノンナはこっちを睨みつけている。ちょー怖い。こりゃダメかな?と思ったその時、

 

 

「ノンナ! こっちには居ない……あれ? 何でここにライブの人いんの?」

 

 

 プラウダ高校の生徒が此方にやってきた。てか、この人俺のライブを毎日聴いててくれた人じゃん。ノンナと知り合いだったのか。

 

 

「それより、こっちには居なかったよ!」

 

「そうですか……」

 

「誰か探してるんですか? 手伝える事があれば手伝います」

 

「本当ですか! 金髪で背がこんくらいで……」

 

「ちょっと!」

 

「ノンナ、人が居ないし、増える事に越した事はないよ! それにこの人良い人そうだから大丈夫だって!」

 

 

 ノンナと女生徒が話している。これはもしかしたら、

 

 

「よし、取り敢えずこの子です。カチューシャと言って……」

 

 

 話は纏まったようで、女生徒が写真を見せてくる。やはり予想通りカチューシャだった。どうやら、戦車道関係で一悶着あったらしい。

それで寮に帰っても姿が見えず、一緒に居たはずのノンナが慌てて探してるというのが現状だ。軽く説明して、連絡先を渡して来た。見つけたら此処へ連絡してほしいらしい。

 

 

「わかりました」

 

「ところで貴方はこの辺りの道わかるの?」

 

「……取り敢えず行けるとこまで行きますよ。迷ったら携帯で検索すれば戻ってこれますし」

 

「あはは、猫の手も借りたいとは言え、頼りなさすぎ……よろしくね」

 

 そう言って女生徒はまた走っていく。そしてノンナもまた捜索を再開していく。と、探しにいく前に此方を見る。

 

 

「……信じた訳ではありませんが、よろしくお願いします」

 

 

 そう言って走っていく。

 よし、こうしちゃいられない。俺も二人の走った方向とは別の方へ走っていく。まだ日は落ちる前、出来る限りの事をしようと決意して捜索へと繰り出した。

 

 


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