エミヤ(アチャ子)TOLOVEるへ行く   作:メスザウルス

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これは、作者が、前から書きてぇなーと思っていたものを書いたものです。
本編で、このことは触れません。
しいて言うなら、この世界のエミヤさんの過去について、少し知れる程度です。

別に読まなくても大丈夫です。
読まなくても本編に支障はありません!


特別編(読まなくてよし)

すべてが燃えたあの日

私が名をなくしたあの日から、ずっと思っていた。

誰かを助けることは、義務なのだと。

 

私は、あの日、多くの者たちを見捨て、自分だけが生き残った。

ゆえにこれは粛罪なのだ。

私は、死んでいった人たちのためにも、この理想を果たさなければならない。

その理想が刃となり、我が身を切り裂いても。

痛みを超えたその先に、何かがあると信じていた。

 

故に、それで死ぬのは、もはや必然だったのだろう。

 

「行くのか…殺されるというのに」

 

薄汚い、石でできたような暗い部屋にいる男が、私に言った。

 

「……」

「もはや決意は固まってしまったか。 お前はバカだな」

 

男は私を憐れむような表情で、フンっと鼻を鳴らしながら言った。

 

(ああ、確かにそれはよく言われたな)

 

多くの者に、同じことを言われていた私は、大バカ者なのだろう。

私が昔、同じことを言われたと答えれば、男は「そりゃそうだろうよ」と返した。

男は胸ポケットから少し潰れた箱を出し、そこから一本のすこし曲がったタバコを取り出し、ライターで火をつけた。

使い古されたのであろうそのライターは、柄の表面が大きく剥げ、所々端がさび付いている。

 

男は味わうかのように、ゆっくり、大きくタバコを吸い、ハァー…と煙を吐き出した。

男の出した煙は、モワモワと周囲に霧散していく。

タバコはジリジリと赤く光っており、燃えて灰となった部分がポトリと床に落ちた。

 

「…命をムダにするやつが、バカじゃなくて何だっていうんだ」

 

男は、まるで咎めるかのように、私に言う。

 

「お前はこのタバコと同じだ。すぐに燃えて灰になっちまう。人生ってのはそういうんじゃねぇ。もっとゆるやかで、温かく、そんでもって、何かに感謝しながら逝くもんだ。オラぁな、おめぇみてぇに命を燃やしてるやつを見てるだけで、腹が立って仕方がねぇ」

 

男は少し乱暴に、タバコを灰皿に押し付けた。

 

「…私が行けば、この件はすべて丸く収まる。それで良いではないか」

「オラぁ医者だ。頭にヤブが付くがな。だがそれでも、命を捨てに行くようなやつを見て、『それでいい』なんて言うほど腐っちゃいねぇ」

 

この男は、この戦争で走り回っていた医者だ。

手の回らない場所へ駆けつけ、敵、味方関係なく治療し、金のない人々も、ほぼ無償で治療した。荒っぽい口調の男だが、それでも、多くの者は彼を好き、信頼し、感謝した。

その厳つい顔の奥には、誰よりも優しい心が隠されていた。

 

「お前はお前の信念のために行くんだろうが、俺には俺の信念がある。俺は失敗しちまっても、その後悔は、必ず俺の信念を貫くための力になる。そう思ってきたし、今もそうだ。だがお前はどうだ?お前のそれは成功なのかもしれねぇが、その先にあるものは何もねぇ。ただの闇、ただ何一つない完全な無の世界だ。そんなんで、お前はどうやって信念を貫いて行くっていうんだ?」

 

男はこう言っているのだ。 死んでは何もできはしないと。

そうだろう。

確かに、死んでしまったのならば、その先には何もない。

それが常識、それが当たり前。

しかし、それを破る例外が、私にはある。

 

私は、男に向き直った。

 

「大丈夫だ」

 

できるだけ安心させるように、私は、男に言った。

 

「俺は、大丈夫だ」

「……おめぇ…」

 

男は目を見開き、絞り出すように言った。

彼は何を思ったのか、そのままうつむき、「そぉかよ…」と言葉を漏らした。

私は扉を開け、外に出ると、そのまま歩いた。

 

…きちんと、笑えていただろうか。

だめだな。最近はまったく、笑ったことなどなかった。

 

自身の歩を進める音が聞こえる中、背後から『バン!』と、扉をあけ放つ音が響いた。

 

「エミヤァァアア!!!」

 

すると、遠くから聞こえる男の声。

振り返るとそこには、先ほどのヤブ医者がいた。

男は「スゥゥ…」と息を吸うと、大声で言った。

 

「ここに!!お前の墓を作ってやる!そこらにある石で適当に作った墓場だ!!そこにおめぇの名前を適当に掘ってやるよ!!」

 

タバコで悪くなっている肺を。全力で使い、男は大声でつづける。

 

「毎日、線香代わりにタバコを立ててやる!!どうだ!?タバコを吸わねぇお前には十分だろう!?」

 

それは、言外に言っているのだ。お前のことは忘れないと。

不器用で優しい男の、不器用な送り出し方だった。

 

私は、そんな男の姿を目に焼き付けると、手を軽く挙げ、そのままその場を去った。

 

ヤブ医者は、男の去って行った方向を、ずっと見つめていた。

 




これは、私が好きな曲の、「イマジナリー・ライク・ザ・ジャスティス」を聞いて思い浮かびました。すごくいい曲なので、ぜひとも、聞いたことのない人は聞いてみてください。
以上です。

ありがとうございましたー
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