原作が始まるまでの間、書きたいところだけをピックアップして書いていこうと思います。
また、この空白期のどこかがリメイク前とは変わっていますね。そこが修正箇所です
――――あの日の光景を、私が忘れることはないだろう。
『ノイズ!? よりによってこの場所に……!』
『全員逃げろぉぉぉ!』
何事もなく終わるはずだった遺跡発掘。両親について来た形で、私もその現場にいた。しかしそれは、目的の物を発掘した瞬間に崩れ去ることとなった。
『来るな……くるn』
『っ、イヤアァァァァ!』
『二人とも、こっちだ!!』
周辺に突如現れたそいつらの名は、ノイズ。国連総会にて認定された特異災害であり、人類の天敵。
奴等に触れられた瞬間に体は炭化し、人間だけを襲う化け物。その襲撃を受けた私たちは、次々とその餌食にかかっていく。
『父さん、母さん!』
『こっちよ! ここさえ抜ければ……!』
『っ、危ない!!』
『……え?』
『父、さん?』
そして厄災は容赦なく、私の大切な人も奪っていった。
パニックを起こしそうになった私を母さんは激励し、その命を代償に私の逃げ道を確保してくれた。
『父さん、母さん……。ごめんなさい、ごめんなさい……!』
――しかし、だからと言って無事生還できるほどこの世は優しくない。
ようやく見えてきた出口。そこから漏れる光を見て希望を抱き、全力で出口を抜ける。
『やった!………………え?』
そこにいたのは、数多のノイズ。奴らは遺跡内部だけではなく外にも沸いていたのだ。そして私の存在に気づき、一斉に向かってくる。
『…………ここまで、なの』
希望など一切ないその光景を見て、私はへたり込む。全力で遺跡の通路を走り抜け、既に息は絶え絶え。精神的にも身体的にも限界だった。
……あんなに頑張ったのに、結局は無駄に終わるのか。
『そんな、わけない……!』
脳裏に浮かぶ言葉を即座に否定し、近くに転がっていた採掘道具を手に取る。結構重量があり取り回しが悪いが、ないよりはましだ。
『父さんと母さんが、命をかけて繋いでくれた……! ならこの程度で、生きるのを諦めてたまるかよッ!!』
自分を叱咤する意味も込めて叫び、迫りくるノイズに向かって駆け出す。そして――――
「………………んぁ?」
少女は目を開ける。枕元で鳴り響く時計を乱暴に止め、上体を起こす。カーテン越しに窓から差し込む光は強く、今が真夏であることが実感できる。
「ふぁぁぁ…………随分と、懐かしい夢だったな」
少女は夢の内容を振り返りつつあくびをし、起き上がる。そしてカーテンを開け、窓から外の風景を覗く。そこには巨大な入道雲と青空が広がっていた。
「うん、今日もいい天気だ」
そんな感想を抱きつつ、少女――天羽奏は、いつもの場所に行く準備を始めていった。
「ちわーす、旦那」
「うむ、おはよう!」
指令室に入り、奏はそこにいた男性に声をかける。彼女に気づいた男性――風鳴弦十郎は快活な挨拶を返す。
「今日は随分早めに来たな。何かあったのか?」
「何もないよ。ただ懐かしい夢を見ただけさ」
「……そうか」
一瞬悲しそうな表情になるが、弦十郎は奏に気づかれる前に表情を元に戻す。そして、伝えようと思っていた要件を話した。
「っと、忘れるところだった。奏君、了子君から呼び出しだ。レポート提出、まだなんだろ?」
「うげぇ……旦那にチクっていたのか」
相変わらず抜け目がないな。そう思いながら奏は、カバンの中から紙の束を取り出して弦十郎に見せる。
「大丈夫だって。心配しなくてもこの通り、ちゃんとやってきたからさ」
「みたいだな。まだ訓練まで時間がある、渡せるなら早めの方がいいぞ?」
「んー……わかった。じゃ、これ出しに行ってくるよ」
弦十郎の提案を受け入れ、奏は指令室から出て移動する。目指すは研究室、そこにこのレポートを提出すべき人はいるはずだ。
「失礼しまーす……あ、いた」
「あら、おはよう」
研究部屋に入ると、椅子に座っていた女性が奏を迎える。挨拶ついでに確認も兼ねて、奏は女性に話しかける。
「了子さん、これレポート。あと、今日の訓練いつからだっけ?」
「はい、受け取りました。訓練は今から30分後ね……って、そうだ。体調はどうかしら?」
思いだしたかのように女性――櫻井了子は奏に問いかける。それを聞き、改めて彼女自身の体調を確認するが、どこにも異常はないように感じた。
奏は本来不可能な事を無理やり可能にしている。その時に使用する薬――LiKERの後遺症は身体への負担が大きく、最初は適合訓練すらままならなかった。しかし了子の尽力もあってLiNKERは日々改良されており、こうして負担は大分低下しているのだ。
「全然大丈夫だよ。にしても、最初に比べてずいぶんよくなったよなー」
「もちろんよ。奏ちゃんの負担を減らすため、皆が一生懸命だったんだから。なんたって…………」
問題ないことを伝えると、了子は嬉しそうに答え、LiNKERがどうやって改良されていったのかを説明し始める。こうなった彼女の話は長くなるのを知っている奏は急いで周辺を見渡し、時計を見つけて驚くフリをする。
「っと、ごめん了子さん。もう行かなきゃ!」
「そこでなんと………って、あらもうこんな時間。訓練頑張ってねー!」
「あいよー!」
了子からの激励に返事をしつつ、奏は部屋を出て訓練室へ向かう。実はもう少し余裕があったのだが、彼女の話は難しすぎてよくわからないのだ。ほどほどなところで切り上げるのが一番である。
「わりぃ、待たせた!」
「おはよう、奏。あと大丈夫、全然待ってないよ」
訓練室に入ると、すでに奏の相棒が待っていた。遅れたのかと思い詫びるが、彼女はまるで気にしてないかのように挨拶をしてくる。
「そうか、そりゃよかった。……おはよう、翼」
「うん」
挨拶を返すと相棒――風鳴翼は微笑む。それにつられて頬が緩むが、訓練の時間が刻一刻と迫っているのを思い出す。
「ん、そろそろ時間だ。翼、始めようぜ」
「うん、わかった」
翼の返事を聞きつつ、奏は持ってきたLiNKERを自身に打ち込む。注射器で注入するのには慣れたが、身体の中に入っていく際の妙な感覚はあまり慣れそうにない。
投薬が終わり、翼と一緒にシミュレーター室の中に入る。そして奏達は似たような形状のペンダントを握り、歌を紡いだ。
それは武器を起こす歌であり、ノイズ共と渡り合える力を引き出す歌。
「Croitzal ronzell Gungnir zizzl――――」
「Imyuteus amenohabakiri tron――――」
――――そして、聖遺物の欠片から生み出されたFG式回天特機装束、シンフォギアシステムを起動させる歌。
その名を、聖詠という。
『ステージ3:街郊外、セットアップ。対ノイズシミュレーション、レベル4で開始します』
「行くぞッ!」
「あぁ!」
「ふわぁ…………ねみぃ」
寝室の灯りを付け、ベッドに身を投げ出す。ボフンという音とともに奏の身体は小さく跳ね、やがて落ち着いた。
「くっそー、翼の奴また腕を上げやがった……」
仰向けに寝がえり、今日の訓練内容を思い出す。今日はすこぶる調子がよく、シミュレーションも単独でレベル4、翼と組んだらレベル7までこなすことができた。
問題はその後の組手だ。ここ最近、ようやく翼の太刀筋が見えてくるようになっていた。なので今日こそ白星をつかもうと思っていたが、今日も黒星を付けられてしまったのだ。
「なんだよ逆羅刹って……。あんなの予想できるワケがねえ」
そう愚痴りつつ、奏の脳内ではいくつもの対策シミュレーションを行っている。しばらくそれを行った後、思いついた中で有効そうなものをノートに書きだしていく。こうすることで情報を整理でき、次回の訓練までに対策を練ることができるのだ。
「……よし、こんなもんか」
ノートを閉じ、一度起き上がって窓から外の景色を見る。夜も更け、ここが田舎だったら綺麗な星空が見れたことだろう。それをしばらく眺めていて、ふと今朝見た夢を思い出す。
「そっか……もう、1年になるんだな」
あの日、奏がすべてを失った日。あれから彼女は日常を捨て、復讐の道を選んだ。その事を後悔したことなんてないし、するつもりもない。ノイズに復讐するため、今思えば随分と無茶をしたものだ。
特異災害対策機動部二課の拠点侵入に、人質を使った交渉。さらにはまだ未完成品だったLiNKERを多用した聖遺物の適合。ぶっちゃけどこで死んでもおかしくないな、と奏は苦笑する。
「そんでその結果、またこうやって日常に戻らされる羽目になるとはね……」
そして今現在、奏の覚悟を受け取った弦十郎の配慮により、彼女は奏者として活動する傍ら、日常生活を謳歌している。最初こそ戸惑ったが、日常を過ごしているうちに心に余裕が生まれ、訓練も良い結果が出ている。そこで、彼の判断は間違っていなかったんだと感心したのを覚えている。
世の中わかんないな、そう思いつつ奏はカーテンを閉める。そして部屋の明かりを消し、ベッドにもぐりこむ。
少しずつ薄れていく意識の中で、明日はどんな出来事が起こるのだろうと未来へ想いをはせながら奏は目を閉じ、眠りに入っていった。
――――ノイズ共へ走り出した直後。上空から襲い掛かった衝撃に、私はノイズ諸共飲み込まれた。
十字の剣戟がそのまま飛んできたかのような一撃。それは大地を割り、私の周辺にいたノイズを消し去る。その衝撃は激しく、私は踏ん張る間もなく遺跡の壁まで吹き飛ばされる。
『がッ!』
頭を打ち、意識がもうろうとする。薄れゆく意識の中、私は土煙の中で佇む1つの存在をその視界にとらえた。
そいつはゲームに出てくる戦士のような出で立ちをしていた。龍をイメージした鎧をまとい、その牙をそのまま取り付けたかのような双刃を持っていた。
突如現れたそいつは、周辺のノイズを見渡す。なぜかそいつを見てもノイズ共の反応は薄く、逆に少しずつ距離をとっていた。それを確認した彼は私を一瞥し、ノイズに向かって駆け出していく。
そしてノイズと激突する寸前で、私の意識は途切れる。あの時そいつが何か言っていたような気がしたが、既に気を失う寸前だったので覚えていない。それにあの戦闘の結果がどうなったのかも私にはわからない。
ただそれでも、やけに大きく見えたあいつの背中は私の眼に焼き付いていた。
≪See you Next game……≫
※副作用が減ってるLiNKER →バタフライエフェクト。きっかけは完全適合者が増えたことで研究が進んだからかと。