紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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思っていたよりもリメイク前の最新話である22話にたどり着くまで時間がかかりそうなので、今日明日の2日間、投稿ペースを上げることにしました。
8時・9時・12時・15時・18時・20時に更新する予定ですので、読む話を間違えないようご注意ください。
また、12話のみ1時間後の10時に投稿します。



第11話 『蒼き防人のReadiness:前編』

 

人である前に、人類を守る剣であれ。

 

物心ついた時から言われ続けていたその教えに従い、私は今まで鍛錬を重ねてきた。

 

どんなにきつくても、どんなにつらくても、どんなに苦しくても。倒れそうになった時はその教えを思い出し、剣であろうとした。

 

 

 

 

 

だがしかし、私は結局のところ人間だったようだ。

 

なぜなら、剣はこんなに荒れ狂った感情を抱かない。剣はその身に宿す衝動で燃え尽きようとはしない。剣は大より小を優先しない。

 

ある出来事によって、私は変わった。今までと変わらず鍛錬は続けるし、人類を守るという意思も変わらない。しかし、自分は間違いなく人間であると確信したのだ。それを決意したのは皮肉なことに、私の大切な人を奪われた時だった。

 

 

あぁ、だからこそなんでも言おう。この衝動を忘れぬために、この思いを減らさぬために。

 

 

 

――――私は、奴を絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奴を知る最初のきっかけは、了子さんによる講義を奏と一緒に受けていた時だった。

 

 

「――じゃあ最後に、各種ノイズの特徴をまとめていくわよ。二人とも、手元の資料を見て」

「はい」

「はーい…………ふぁ」

 

 

櫻井女史の声を聞き、私はタブレットに入っているデータを開く。そこには各種ノイズの概要と特徴、外見に出現時期などが分かり易くまとめられていた。

 

クロール、ヒューマノイド、フライト、etc……。シミュレーションでよく相対するノイズもいれば、未だ資料でしか見たことのないノイズも記されている。その一つ一つに目を通し、思いつく限りの対策をシミュレートしていく。奏もこの時は真剣な表情でその資料を眺めている。

 

 

 

 

 

「…………あれ?」

 

 

そしてその中で私が気になったのは最後のページ。そこには出現時期以外、ほとんどの情報が書かれておらず、名称には『アンノウン』とだけ記されていた。

 

 

「櫻井先生、最後にあるアンノウンとは一体……?」

「え?……あちゃー、私が個人的にまとめていたのを丸々持ってきたから、それも入っちゃってたのね」

 

 

私の質問を聞き、了子さんは失敗したとでも言いそうな表情で右手を額に当てる。それを聞いていた奏も気になったのか、私が見ているものと同じページを開く。

 

 

「なになに……うわ、なんだこれ。二年半前に初めて現れたこと以外、何もわかってないじゃねえか」

「ほんとそうなのよ。それに、そもそもこのアンノウンがノイズかどうかも不明なのよねー」

「「え?」」

 

 

それを聞き、私たちは同時に疑問符を浮かべる。

 

ノイズかどうかもわからない、ならばなぜ了子さんはここにまとめていたのだろうか?

 

 

「……ふーん、聞きたい?」

「はい、興味があります」

「おぅ、私も翼と同意見だ。一度気になったんだし、最後まで聞いてみたい」

 

 

私の考えを見透かしたかのように、了子さんは笑顔で私たちに聞いてくる。予定の時間まではもう少しあったので、どうせならと私たちは聞くことにした。

 

 

「んじゃ、櫻井了子のノイズ講義・特別篇! 始めるわよー……と言っても、さっきも言った通りアンノウンはノイズかどうかもわからないの」

 

 

順を追って説明するわね、と了子さんは手に持つタブレットを操作する。すると正面のプロジェクターが稼働し、ある建物が映し出された。その建物を見て、私は既視感に包まれる。

 

 

「これって……」

「二課じゃねえか。……あれ、ちょっと古い?」

「奏ちゃん、鋭いわね。アンノウンが初めて確認されたのは二年半ほど前で、場所は改装する前のここなのよ」

 

 

サラリと明かされる衝撃の真実。それを聞いた私は一瞬思考が止まり、奏の大声で我に返った。

 

 

「ちょ、どういうことだよ!?」

「予想通りの反応どうも。知らないのもしょうがないわよ、これは機密事項なんだし」

「ではなぜ、アンノウンはここに?」

「それが全くの不明だったのよねー。警備員を全員無力化し、外部に情報が届かなくなった状況で侵入。なのに聖遺物は盗まれてないし、データを抜かれた様子もない。そしてアンノウンがいた痕跡は偶然姿を見た警備員の証言だけ、監視カメラは雑音交じりで何も映らず」

 

 

残った事実は当時の二課の防衛機構は何一つアンノウンに対して無力だったということだったのよ。了子さんはそう話を締め、それを聞いた私は正直なところ、不審に感じていた。

 

明らかにノイズとは思えない複雑な行動。それに了子さんは警備員を全員【無力化】と言っていた。

 

ノイズが人を無力化? そんなこと、あるはずがない。奴らは人間のみを襲う災害だ。なのに活かしておくなんて、どうにも信じられなかった。

 

 

「んー、翼ちゃん。今アンノウンは本当にノイズなのか、なんて思ってたでしょ?」

「え? あ、はい……わかっているのなら、なぜ了子さんはアンノウンをノイズに分類したのですか?」

「まあ、これだけ見たならそう思うわよね。……じゃあこれを見たら、どう思う?」

 

 

そう言って了子さんはタブレットを操作し、画面を切り替える。映っていたのは世界地図であり、いくつか赤いマーカーが記されていた。先ほどの話から察するに、それ以降のアンノウンの出現場所なのだろう。

 

そしてそれを見ているうち、私はあることに気づく。それを確認するために、了子さんに問いかけた。

 

 

「櫻井先生、まさかこれ……」

「さすが翼ちゃん、すぐ気づいたわね」

「やっぱり……」

「翼、何かわかったのか?」

「奏……この間学んだばっかりなのに……」

 

 

本当に気付いてない様子の奏を見て、私は少しため息をつく。奏は戦闘方面はとても優れているのだが、勉学方面がからっきしなのだ。それがこんな所でも出てくるなんて……。

 

 

「このマーカーがついてる場所。全部、聖遺物があると推測されている場所よ」

「聖遺物、聖遺物…………。あぁ、あの時の!」

 

 

どうやら思い出してくれたようで、奏はポンと手を叩く。それを複雑な思いで見た後、気を取り直して了子さんが続きを話すのを待つ。

 

 

「そう、それ以降アンノウンは聖遺物があると推測されている場所に出現し始めたの。と言っても相変わらず映像は無くて、証言から同一の存在であると推測されているだけど」

「と、いうことはまさか……」

「その推測はたぶん正解。アンノウンが二課に侵入した理由、それは聖遺物の所在地を調べるためでしょうね」

 

 

その言葉と共に、マーカーがついている場所の画像がピックアップされる。

 

それは遺跡だったり、密林だったり、果ては湖だったり。全く統一性のない場所ばかりだが、しかし一つだけ共通している箇所があった。それは――

 

 

「……なんか、どこもかしこもボロボロだな」

「老朽化、ではありませんよね」

「その通り、これはアンノウンが起こした戦闘の爪痕よ。おそらく相手は聖遺物の防衛機構でしょう。奴らが戦った余波で周囲が揺れ、建物が崩れかけてるの」

 

 

了子さんの言ったとおり、画面に移されてる建造物はどれもがボロボロだった。優しい場合でも穴が開いてたり、周囲の地形が少し変わっていたりする。ひどい場合は原形すらとどめず崩れ去っており、残骸しか残ってないような場所さえあった。それほど激しい戦闘を、アンノウンは行っていたのだろう。

 

 

 

 

 

「ふーん……なぁ、了子さん。結局のところ、アンノウンは聖遺物が集めることを目的としたノイズってことか?」

 

 

奏が本筋に迫るため、了子さんに尋ねる。それを聞いた彼女は、むず痒そうな表情で頬をポリポリかきながら首を横に振った。

 

 

「そうだったら事情は簡単なんだけどね……。聞いた話じゃ、アンノウンはノイズに対して敵対行動をとっていたそうよ」

「は?」

「……え?」

 

 

それを聞いて頭がさらに混乱する。

 

人を消さないだけでも驚愕なのに、ノイズと敵対? 

 

流石におかしいとを思ったのか、奏が了子さんに質問する。

 

 

「了子さん。それを聞いた感じ、アンノウンはノイズじゃないんじゃないか?」

「私もそう思っていたわよ? この映像を見るまでは――」

 

 

そう言いつつ了子さんは画面を切り替えようとして、その途中でピタリと動きが止まった。

 

それを見た私はなぜ止まったのだろうと疑問に感じていたが、奏は何か感づいたようだ。

 

 

「櫻井先生、どうしたのです?」

「えっと、そのー……ね? 今回は映像じゃなく、言葉で伝えてみようかなーと思って……」

「……了子さん」

 

 

態度がしどろもどろになっている了子さんを、奏が静かに呼ぶ。微笑を浮かべていたが、どこかそれは悲しそうだ。

 

 

「私は大丈夫だ。辛いことだけど、もう受け入れることができてるよ」

「あっ………」

 

 

その言葉だけで、私は察してしまった。私と奏が初めてあった時、彼女は憎悪に染まった表情で叫んでいたのだ。家族を殺したノイズに復讐する、と。

 

そして今の台詞。つまりこれから流れる映像は、その時のものなのだろう。

 

 

「……本当にいいの?」

「あぁ、今はアンノウンについて知りたいからな」

「奏……」

「私は大丈夫だよ、翼」

「……じゃあ許可をもらったことだし、再生するわね」

 

 

その言葉と共に、画面内の映像が再生される。それは遺跡の入り口を映しており、カメラは倒れたのか視界が90°回転していた。

 

そして鳴り響く重厚な音。どうやら遺跡外部で戦闘行為が起きてるらしく、画面もカタカタ震えていた。

 

 

「えっと、たしか…………ここら辺ね」

 

 

了子さんが映像の時間を進めていき、ある程度進んだところで等速再生に切り替わる。

 

先ほどと打って変わって静まり返った空間。すると数秒後、入り口から誰かが近づいてくる。それは入り口で止まり、内部を見渡している。内部が暗いせいか日光の反射が激しく、その存在は外見の輪郭しか確認できない。

 

 

「これが、アンノウン」

「おそらく、なんだけどね。でも証言と外見が一致しているから、ほぼ間違いないと思うわ」

「…………」

 

 

そして全て見渡し、目的を終えたのだろうか。直後、彼の身体に異変が生じる。

 

身体が急激に崩れていき、細かいブロックが空中に舞う。そしてすべてが崩れ去った後、ブロック状の物質は意志を持つかのように空へ昇っていった。

 

 

「これは……」

「ノイズの瞬間移動、とはまた少し違うでしょ? 最初は位相差障壁を利用したものかと思ったけど、どうもそれとは違うみたいなのよねー……」

 

 

ムムム……と了子さんは考え込む。そしてふと気づくと、奏が俯いて何かを考えていた。その表所は真剣で、何かを思い出しているようだった。

 

その様子が心配になり、私は声をかける。

 

 

「そうか、ということはあいつが……」

「奏、大丈夫? きついなら休んでも……」

「え? いやいや、大丈夫だって!」

 

 

な? と奏は笑顔を向ける。どこか誤魔化そうとしている雰囲気を感じたが、その様子を見た私は安心して、了子さんに続きを聞くことにする。

 

 

「了子さん! アンノウンについては大体わかったし、そろそろ元のお題に入った方がいいんじゃないか?」

「でも、もしそうなら…………え? あぁ、そういえば今日のまとめをしている所だったわね。大分脱線しちゃったし、そろそろ戻りましょうか」

 

 

了子さんは気を取り直し、私たちの講義は再開された。

 

そしてこの時、私たちはアンノウンと言う名称で奴のことを知ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――もしもあの時、奏に話をもっと聞いておけば。もしもあの時、抱いていた違和感を解消しようとしていたら。

 

 

 

 

 

「っ、あ…………」

「…………さらばだ」

「かなでええぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 

 

あんなことには、ならなかったのだろう。

 

 

 

 

 

≪See you Next Sequel……≫

 

 

 




※今回は特にありません。何かありましたらご連絡していただけると幸いです。


ここまで読んでくださりありがとうございます。
ゆっくりさん、無銘さん。感想ありがとうございました!
キジローさん、評価ありがとうございます!

思いのほか長くなったので、前後編に分割します。その弊害でグラファイトの出番くっそすくないです。主人公の活躍までもうちょっと。
ちなみにあと2,3話で原作1期に入る予定です。
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