第14話 『新たなChallenger現る!』
夕焼け色に染まる街。それを形作っている物の1つである建物の屋上、そこにグラファイトは立っていた。
「――――――」
屋上の隅に位置取り、そこから街並みを見下ろしている。グラファイトの視線の先には人間や犬、乗り物などが動いているが、彼の関心はそこにはなかった。
何かを探し出すようにグラファイトは観察を続ける。絶対にそれを見逃さないよう、彼は警戒を怠っていなかった。
――そしてしばらく時間が経った頃、グラファイトの目がピクリと動く。その視線は街のある地域に絞られていた。
「未だ確証はない。だが……行く価値はある」
その言葉の後、グラファイトはそこから姿を消して移動する。予めこの街のマッピングは済ませてあるため、主要な場所にはいつでも移動できるようになっている。
そして移動した先は、別の建物からなる裏路地。少し歩いて表に出れば、帰宅途中の人間がたくさんいることだろう。その事を確認したグラファイトは、フードを被って表に出た。
顔を隠しているので道行く人からチラチラ見られているのを感じる。が、そんなことは意に介さずに歩き続ける。その間も周囲への警戒は緩めていない。
(この辺りのはずだが……)
標的を探すため、グラファイトは一度周囲を見渡す。しかしそれは見つからず、グラファイトは一度裏路地から元の屋上に戻って索敵を再開するべきか考える。その為にも一度引き返し、裏路地に向かって歩き始めた。
――――その直後。風に乗って後方から吹いてくる風、そこにわずかながら炭粉が混じっていることにグラファイトは気づく。素早く振り向き、懐からガシャコンバグヴァイザーを取り出して走りだした。
しばらく走り続け、グラファイトの視界にコンビニが映る。しかしその中に人間はおらず、代わりに炭粉の山がいくつかあった。それを確認した直後、ガシャコンバグヴァイザーを持った右手を上空へ向けて振り抜く。
それは上空から接近する存在――ノイズにぶつかり、ガシャコンバグヴァイザーの紫色のボタン側についているチェーンソー
によって両断される。そして二つに別れたノイズは急速に炭化し、地面に着く前に崩れ去る。
「ようやくお出ましか……!」
そう言いながらボタンを押し、周囲に低い電子音が響き始める。それと同時にグラファイトの周囲の空間が歪み、大量のノイズが出現する。
「培養……!」
『infection! LET`S GAME! BAD GAME! DEAD GAME! WHAT`S YOUR NAME!? ……THE BUGSTER……!』
変身が完了し、グラファイトファングを構えてノイズへ突貫する。それに反応して、周囲にいるノイズのうち数体が彼に向かって突撃してきた。
「相変わらずだな!」
しかしそれを待っていたグラファイトはギリギリのところで避け、すれ違いざまに一閃。走った勢いのまま集団へ飛び込み、双刃を用いて自分の周りにいるノイズを薙ぎ払った。
ノイズ共が吹き飛び、そのすべてが崩れ去ったのを確認した彼は振り向きざまに双刃を振るい、後方から飛び込んできたノイズを切り裂く。不意打ちを完全に見抜かれたそのノイズは一瞬で崩れ去っていった。
どうやらそのノイズで最後だったらしく、周囲に静寂が満ちる。戦闘が終わったことを確認したグラファイトは周囲に人間がいないことを確認し、そのまま最初の屋上に戻る。そして再び気配を探りだした。
(奴らがあの程度の規模で終わるとは思えん。必ず別の集団がいるはずだ……)
その予感は的中し、1分も経たない頃にそれを見つける。しかしグラファイトの表情は先程とは打って変わって、渋い表情になっていた。
それもそのはず。グラファイトが感知したのはノイズの気配だけではない、そのすぐそばに人間の気配も感知したのだ。本来なら全く気にかけないのだが、2つある気配のうちの1つが既知のモノだったのが問題だった。
「なぜあいつがここに……?」
気になったため、件の場所から少し離れた屋上へ移動する。そこから下の景色を見下ろし、幼い少女をおぶってノイズから逃げている少女を見つけた。どうやらノイズとは偶然接触したらしく、彼女が望んでこうなったわけではないようだ。
「あいつとの約束を果たした以上、もう俺に関係はない。……だが」
ノイズは俺の獲物だ、グラファイトはそう呟きつつ飛び降りようとする。しかしすぐそれをやめ、後方に振り向いた。すると先ほどまで何もいなかった空間が歪み、数多のノイズで埋め尽くされていく。
前回の戦闘の時とは規模が段違いなのだが、グラファイトの表情はむしろ明るくなっている。先ほどのはあまりにもぬるく、ウォーミングアップにもならなかった。ようやくまともな戦いができそうだと彼は考えていた。
「よほど俺の存在が気に入らないようだな……いいだろう」
グラファイトファングを構え、ノイズの突撃を待つ。奴らが攻撃している最中でないとダメージを与えられないという特性を持っている以上、彼の対ノイズ戦はカウンターが基本となっていた。
「…………ほぅ?」
しかしグラファイトの予想は当たらず、ノイズたちは距離を保ったまま動かない。そしてブドウ型ノイズが爆弾を大量に生成しているのを見て、彼はこいつらが標的であることを確信した。
「こちらが当たりだったか」
今までの機械的な行動とは違う、統率されているノイズ。制約があるのか、直接指揮しているわけではなさそうだ。
「ならまずは奴を叩くまでだ!」
そう言いつつブドウ型ノイズに向けて走り出す。するとまるでそれを遮るかのようにブドウ型ノイズを他のノイズが取り囲む。そしてその一部が一斉にグラファイトに向けて攻撃を始めた。さらにそこに畳みかけるようにブドウ型ノイズの爆撃が重なる。
「ハッ!」
だがこの程度、レベルXに比べれば造作もない。グラファイトは突撃してくるノイズやこちらに飛んでくるブドウ型爆弾を的確に打ち落とし、更に進路上のノイズをすれ違いざまに切り払う。そしてブドウ型ノイズにたどり着き、一体は貫き、もう一体を貫いたノイズごと叩き潰す。
それはわずか数秒の出来事だった。そしてグラファイトの行動が終わり、埋もれていたグラファイトファングを引き抜いた直後。周囲に倒した数と同じ量のノイズが出現した。
「今回は量で攻めに来たか、まどろっこしい事をする」
再会されるノイズの猛攻をいなしながら、グラファイトは呟く。
このまま迎撃を続けていれば、その内ノイズを倒しきることができるだろう。だとしてもこの状況はいささか面倒だ。遠距離攻撃をしてくるブドウ型ノイズを叩けばいいのだが、周囲のノイズがそれを簡単に通さない。かと言ってブドウ型ノイズの爆撃を避けつつ他のノイズを倒していくのは時間がかかる。彼の性格的に、チマチマやるのは合わないのだ。
「フ、ちょうどいい。こいつの試運転と行こうか……!」
グラファイトはそう言いつつ懐からソレを取り出し、起動させた。
「反応絞り込みました! 位置特定!」
場所は変わって特異対策機動部二課・司令室。
ノイズが出現したことによりアラートが発令。ノイズの出現場所を確定させるため分析していたのだが、それが今完了する。
「座標出ます!」
「今回は2ヶ所か……距離は?」
「リディアンより距離8000、及び9000!」
女性オペレーターの言葉の後に、前方に映るマップに円状のマーカーが2ヶ所現れる。それを見た二課の司令である男性――風鳴弦十郎がここからの距離を聞くが、どちらもほどほどに遠い距離であることが分かった。
近い場所から順に向かわせるか。弦十郎がそう考えていると、追加の情報が入ってくる。
「2ヶ所ともに、ノイズとは異なる高出力エネルギーを検知!」
「波形の照合急いで!」
男性オペレーターからの報告に対し、同じく解析していた女性――櫻井了子が素早く指示を出す。一刻も早く知ることで対策を組み、シンフォギア走者を安全に送り出すことができるからだ。
―――だがしかし、今回は対策を組む必要がなかった。
「まさか、これって……アウフヴァッヘン波形!?」
解析の途中結果を見て了子は頬に汗を垂らす。
アウフヴァッヘン波形。それは聖遺物、あるいは聖遺物の欠片が歌の力によって起動する際に発する、エネルギーの特殊な波形パターンのことだ。つまりノイズが発生している2カ所において両方ともに聖遺物が起動しているということになる。
一体なにが? 解析している了子と彼女の言葉を聞いていた弦十郎がそう思案していると、アウフヴァッヘン波形の解析結果が大画面に表示された。
「なっ!?」
「えぇ!?」
「っ…………!?」
その結果を見て、二課のメンバー全員が動揺する。了子や待機していた少女――風鳴翼はもちろん、司令である弦十郎も驚きを隠せなかった。
なぜならこの波形を、二課の面子は何度も見てきたのだから。そして、もうこの波形を見ることはないと思っていたから。
そこに記されていたのは、1つの聖遺物の名前。発生個所は2つだが、規模は違えどその波形は完全に一致していた。
「2つの…………ガングニールだとッ!?」
≪See you Next game……≫
※今回は特にありません。何かありましたらご連絡していただけると幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。