紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第19話 『Noiseと介入者と:後編』

 

「おりゃあああぁぁッ!」

 

 

その知らせが届いたのは、響がノイズと戦っている時だった。

 

せっかく今夜は未来と星を見に行くという約束をしていたのに、それすらも許さない連日のノイズ発生。彼女にすぐ戻ると言った以上、今回の響は一味違っていた。

 

 

「未来と一緒に、流れ星を見に行くんだ……だから、さっさと消えろッ!」

 

 

いつもはノイズの動きを避け続け、確実に攻撃が通る時だけ反撃をしていた響。しかし今回は攻撃こそ最大の防御と言わんばかりに猛攻を続け、出てくるノイズを一網打尽にしていく。

 

 

「――――――ッ!!」

 

 

ノイズにつかみかかり、力に任せて引きちぎってゆく。身体の内側から溢れ出てくる激情に身を任せて暴れ回る彼女の姿は、まるで理性ある人間のようには見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして響の咆哮が響き渡ること数分。彼女が落ち着いた時、周囲にノイズの気配は残っていなかった。そこで彼女がようやく正気を取り戻したところに、二課の司令部から連絡が届く。

 

 

『響さん、聞こえますか!』

「藤尭さん?……まさか、他の場所にノイズが!?」

『ノイズではありませんが、ノイズ並に重要度が高いことです。アンノウン……グラファイトが現れました!』

「っ!」

 

 

飛び込んできた知らせ、それはグラファイトが出現したという事。あの日以降は出会うことはなかったが、度々どこからか現れてノイズと戦っていることが確認されているらしい。そこに向かおうとするが、大抵自分たちが相手取っているノイズを殲滅できたときには向こうの戦いは終わっており、そのまま行方をくらませている。

 

 

「場所はどこですか!? あと、翼さんは!?」

『場所は今からナビゲートします、そして翼さんなら既に到着してるでしょう!』

「ですよねぇ!」

 

 

それはともかく、このタイミングで現れたのは少しまずい。なぜなら今は戦闘が始まってから時間が経っている。それはつまり、自分よりはるかに強い翼なら既にノイズとの戦闘を終わらせているということだ。

 

藤尭のナビゲートに従い、響は急いで戦っていた駅から出る。そしてシンフォギアの恩恵を最大限に生かし、建物を跳び移りながら高速で移動する。

 

 

『またグラファイトだけではありません。もう1人、ネフシュタンの鎧と言う完全聖遺物を纏った何者かもその場にいます!』

「わかりました!……翼さん」

 

 

グラファイトと翼の因縁はあの戦いの後日、大まかにだが弦十郎から聞かされていた。翼の相棒――天羽奏の武器を奪い、奪い返そうとした翼が惨敗した存在。自分の無力さを思い知らされた彼女はその日から、何かにとりつかれたかのように鍛錬を行ってきたらしい。それほどまでに、彼を憎んでいるのだろう。

 

普段の翼の戦い方は洗練されており、的確に攻撃していくものだった。しかしあの時の戦いの時だけは少し違っており、とても荒々しく感じたのだ。2年もの間、刃を研ぎ続けていた彼女にとって待ちわびた相手と出会ったのだ。今まで溜まってきたものが爆発しても仕方がない。

 

 

「あのグラファイトって人も強かった。でも、翼さんだって……ッ!」

 

 

直後、視界に爆発が映る。それは藤尭に教えてもらった場所付近であり、すでに戦闘が始まったことを示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく着いた……って、うひゃッ!?」

 

 

指示された場所にたどり着き、着地する響。すると正面に見える木々が音を立てて砕け散り、土煙の中から3つの人影が飛び出してくる。

 

 

「せい!」

「甘い!」

「ッ……まだだぁ!」

 

 

最初に跳びだしてきたのはグラファイト。それを追うように翼が跳び出し、彼に剣を振り下ろす。それをグラファイトは武器で迎え撃たず、体を捻ってかわしつつ回し蹴りで反撃する。カウンター気味に放たれたそれを翼は間に腕を挟むことで衝撃を抑えるが吹き飛ばされる。しかし地面に背中が着く前に立て直し、足を打ち付けて空中へ跳ぶ。

 

 

「この一撃、受けて――――」

「おいおい、あたしを無視すんじゃねえよ!」

「ッ、邪魔をするな!!」

 

 

剣を巨大化させようと構えた翼に、最後の人影である少女が鞭を振るって攻撃する。それを確認した翼は行動を中断して回避。連撃の中に生まれるわずかな隙を見つけて少女に向かって剣を投げ、巨大化させつつ蹴って加速させる。

 

 

 

「はあああああああッ!!」 --天ノ逆鱗-- 

「ハ、ちょせぇ!」

 

 

 

回避することは無理だと即座に判断した少女。地に足をしっかりつけ、鞭を盾のように重ねて展開して翼の攻撃を受け止めた。剣と鞭は激しくぶつかり合っていたが、徐々に剣が押し返されていく。

 

 

「生憎と、使ってるモンのポテンシャルが違うんだよ……!」

「随分と悠長だな!」

「なっ!?」

 

 

そのまま弾こうと少女は力を込めるが、唐突に翼の声が背後から聞こえて驚く。その直後にわき腹に衝撃が走り、体勢が崩れる。それによって盾が崩れて、巨大化した剣が一気に少女に迫る。思い切り横に跳ぶことで回避に成功するが、即座に剣を持った翼が追撃する。

 

そのまま繰り出される翼の攻撃、それは反撃する暇も与えないほど苛烈であり、少女は防戦一方だった。

 

 

「てめぇ、いつの間に回り込んでいやがった!?」

「ぶつかり合った、その瞬間からだ!」

「そういうこと……って、グッ!」

 

 

受け止めながら少女が叫ぶと、翼がネタ晴らしをしつつ姿勢を一気に下げる。一旦距離をとるため薙ぎ払おうとした少女は見事にそれを透かし、隙だらけの腹部に翼の蹴りが容赦なくたたきこまれる。

 

しかし少女もただではやられず、その勢いを利用して後方へ跳ぶ。それを逃がさんとばかりに翼は剣を巨大化させるが、それよりも少女の反撃の準備が整うのが早かった。

 

 

「隙だらけなんだよ、くらいやがれ――――」

「貴様がな!」

「な……!?」

 

 

大技を叩きこもうとした少女の頭を、後ろからグラファイトがつかむ。そのまま力ずくで彼女を地面へ投げつける。強い衝撃と共に地面に打ち付けられた彼女はしばし意識が朦朧となるが、すぐに意識を取り戻して立ち上がろうとする。

 

 

 

……が、その隙を地上に立つ翼と空中で構えるグラファイトが逃すはずもなかった。

 

 

「激怒龍牙!!」

「はああああッ!!」 ーー蒼ノ一閃ーー

 

 

同時に放たれた2つの剣戟。それは少女を中心として大爆発を起こす。それを見届けた二人はお互いを見据え、武器を構えて跳びだした。

 

しかしぶつかり合う前に突如煙が晴れ、その中心には少女が立っている。鎧に多少傷が見られるが、その様子は未だ健在だ。

 

 

「……ほぉ、随分と頑丈だな。流石はネフシュタンの鎧、完全聖遺物の名は伊達ではないということか」

「ネフシュタンだけだなんて言ってくれるなよ。……あたしの天辺は、まだまだこんなもんじゃねーぞ!」

「なら、その上から叩き切るまでよ」

 

 

一旦膠着するが、言葉を交わした後に3人共己が獲物を構える。見た限り三つ巴の状況のようだが、何にせよ翼の援護に来た響は今のうちに声をかける。

 

 

「翼さん!」

「っ、あなた……!」

「……ガングニールか」

「お、来たか。だが今のお前はノーセンキューだ、こいつらと遊んでな!」

 

 

少女はそう叫び、右手に持っていた杖を構える。その先端から光線が放たれ、ちょうど3人と響の間に着弾して光がほとばしる。それが消えた時、その場にはダチョウ型ノイズが複数体おり、それらは同時に響に襲い掛かった。

 

 

「嘘、ノイズが操られてる!?」

「ッ、そこをどきなさい!」

「嫌なこった!!」

 

 

ノイズと戦闘を始める響を見て、翼はその場に向かおうとする。しかし少女がそれを阻み、彼女に向かって鞭を振るった。

 

再びぶつかり合う二人。それを横目にグラファイトが響の元に向かおうとするが、その正面に男性が立ちふさがった。

 

 

「おっと、響君の元にはいかせんよ」

「ようやく来たか、弦十郎。……だが、お前の相手は俺ではない」

「なに……?」

 

 

弦十郎にそう返しつつ、グラファイトは懐から物体を取り出す。

 

武器とは思えぬそれを見て疑問に感じる弦十郎をよそに彼はその物体――ガシャットを起動させた。

 

 

ドラゴナイトハンター、Z!

「ドラゴナイト、ハンターZ……?」

「……フ、はぁッ!!」

「っ!」

 

 

周囲に響く音声を聞き、その言葉を繰り返す。しかしその直後にグラファイトが切りかかり、それを弦十郎は横に跳んでそれを避ける。グラファイトはそのまま弦十郎の横を通り抜けて駆けだし、右腕のみ鎧を解除する。その視線の先には、響と交戦しているノイズの姿があった。

 

 

「さぁ、始めるぞ!」

ガシャット!

「待て!」

 

 

弦十郎が追いかけるが、それよりもグラファイトの方が早い。起動させたガシャットを右手に固定されているガシャコンバグヴァイザーに差し込み、がら空きになっているノイズの胴体にバグヴァイザーの銃口を突き刺した。

 

 

「ノイズは所詮兵器……そしてバグスターウイルスは、元はコンピューターウイルスだ。……推測の域を出なかったが、上手くいったな」

「なに、これ……?」

「まさか、ノイズが作り替えられている?」

 

 

突き刺さると同時にガシャットとノイズに電気がほとばしる。それと同時にノイズの動きが止まり、その身体が細かいブロックに覆われる。それは徐々に大きくなっていき、ブロックは球体の形をとって膨張を続けていく。

 

元の質量の数倍まで膨らんだそれは激しく光り出し、その内側からノイズとは別の存在が姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こいつは……!」

「――――――――――――――ッ!!」

 

 

黒い鱗に覆われた爬虫類を思わせる体、鋭い爪と牙を携え、大きくはためかせる翼によってその体は空中にとどまっている。そして口や鼻からはたびたび炎の息を吐いていた。

 

 

「ドラゴナイトハンターZは、最大4人プレイでドラゴンの討伐を行う狩猟ゲームだ。……まぁもっとも、今回はお前1人だが」

「ドラゴンだとッ!?」

「さあ行け!」

「――――――――――――――!」

「っ、おらぁ!」

 

 

グラファイトの命令に応じ、ドラゴンは雄たけびを上げながら弦十郎に襲い掛かる。ただの突進だが、その質量から放たれる威圧感は尋常ではなかった。

 

しかし弦十郎は退かず、真正面から応戦する。しかし元がノイズであるため直接触れられるのか判断できず、地面に拳を叩きつけて土塊をドラゴンにぶつける。ドラゴンの勢いは衰えたが止まることはなく、切り返して再び弦十郎に襲い掛かった。

 

 

「弦十郎さん!」

「今宵の俺の相手はおまえだ、ガングニール」

「ッ、どいてください!」

 

 

ドラゴン相手に一人で奮闘する弦十郎の援護をするため、響は跳び上がろうとする。しかしその上からグラファイトが跳びかかり、槍を振り下ろす。それを響は何とか避け、グラファイトに呼びかける。

 

 

「なんで、どうして同じ人間同士で戦わなければならないんですか!?」

「戦場に立っておきながら、何を馬鹿な事を!」

「ヒッ!」

「この状況は……!」

「あたしと戦っている時にあいつの考え事か?……度し難えッ!」

「くッ!」

 

 

だがそれは逆にグラファイトの琴線に触れたようで、彼の怒りの言葉に思わず身体がすくむ。それを聞いていた翼はこの状況がまずいと思案するが、そんな余裕を少女は与えまいと蹴りを放つ。それを翼はバク転することで避けるが、その隙に少女は新たにノイズを呼び出した。

 

 

「そらどうする、このままじゃあのアマチャンはやられちまうぜ!?」

「させるものかッ!」  

 

 

--蒼ノ一閃--

 

 

襲い掛かるノイズの集団を、翼はすれ違いざまに次々と切り裂いていく。さらに剣を巨大化させ、周囲にいるノイズを一気に殲滅する。

 

そしてその勢いのまま走り出そうとするが、上空から感じる気迫に立ち止まって上を見る。そこでは少女が鞭を振るい、巨大なエネルギー球を形成していた。

 

 

「くらいなッ!」  

 

 

--NIRVANA GEDON--

 

 

「っ、あぁ!!」

「翼ッ!」

 

 

翼は剣を巨大化させたまま地面にさし、その球体を受け止める。しばし拮抗していたが激しい爆発を起こし、彼女の体が吹き飛ばされる。

 

何度かバウンドしてようやく止まるが、先回りしていた少女が彼女の顔を踏みつける。

 

 

「のぼせあがるな人気者。まさかお前が今夜の主役だなんて思ってねえだろうな?」

「なに、を……」

「いいぜ、教えてやるよ」

 

 

そう言いながら少女は響に向かって指を指す。そして遂にその少女は、自分の目的を話した。

 

 

「狙いはな、はなっからこいつなんだよ」

「な、に……?」

「こいつを掻っ攫うこと、それがあたしの目的だ」

「…………!」

「ガングニールではなく、こいつを……?」

「響君が目的だと?……まさか!」

 

 

グラファイトはその言葉が気になり、攻撃を止めて少女の方を見ている。そして弦十郎は何かに思い至るが、ドラゴンの相手に精一杯で動けない。

 

そしてその言葉を聞いた翼は目を見開き、黙っていた。その様子を見ながら少女は嗤い、彼女を追い詰めるために言葉をつなげる。

 

 

「鎧も仲間も、アンタには過ぎてるんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………誓ったんだ」

「なんだって?」

 

 

足元でつぶやく声を聞き、少女は翼に聞き返す。それに対し、翼は左手を上空に掲げて答えた。

 

 

「二度と繰り返さないと、あの時に誓ったんだ!!」

 

 

ーー千ノ落涙ーー

 

 

その言葉と共に、上空から剣型の剣戟が無数に降り注ぐ。それは彼らの戦場の全てを覆うほどに多く、次々に着弾していく。

 

易々と受けるわけにはいかず、少女はその場を離れて回避する。その隙に翼は立ち上がり、狙いを定めて投げつける。

 

 

「こんな無遠慮にばらまいたところで……!?」

「そうね。でも、あなたの動きを封じることはできる……そして!」

 

 

ーー影縫いーー

ーー蒼ノ一閃ーー

 

 

翼が投げつけたもの――小刀は少女の影を貫き、地面に突き刺さる。するとまるでそれに縛られるかのように少女の動きが止まる。その隙に剣を巨大化させて剣戟を放ち、前の攻撃でひるんでいたドラゴンに直撃させる。致命傷には至らなかったがドラゴンは標的を変え、弦十郎の元から離れて飛び立った。

 

 

「あいつを呼んだところでなにができるって…………まさか、おまえ!?」

「……さぁ、月が覗いているうちに決着を着けましょう」

「翼、歌う気か……!?」

 

 

少女が何か気づき、弦十郎は翼の覚悟に顔をしかめる。その声をよそに翼は静かに夜空を見上げて目を閉じ、口を開いた。

 

 

 

 

 

「あの子は奏が命を賭して救った子……奏が残してくれた、光なのよ」

「え…………?」

 

 

その声が聞こえた響は目を見開く。その独白は、彼女にとって衝撃の大きなものであった。

 

 

「だからこそ、あの子には日常を謳歌してほしかった。だからこそ、私はノイズの脅威を打ち払う防人であろうとした」

「翼、さん……」

「あの子が戦う必要なんてない……ノイズと戦うなんてこと、私ひとりで十分よ」

「…………」

 

 

そこで目を開け、少女をしっかりと見据える。その翼の様子を、グラファイトは静かに見つめている。その在り方を見て、誰かを思い出しているのだろうか。先ほどまでの荒々しい様子は鳴りを潜めていた。

 

 

「そしてあなたはあの子の日常を奪おうとした…………さぁ、覚悟はいいかしら?」

「ッ、この!」

 

 

そう言って翼は少女の前に立つ。その表情から何をするのか確信を得ている少女は逃げ出そうとするが、その体はピクリとも動かない。

 

 

「防人の生き様、覚悟を見せてあげる。しかとその胸に、焼き付けなさい!」

「――――――――――ッ!!」

 

 

遂にドラゴンの射程圏内に翼が入り、ドラゴンは突進する。しかしそれを一切見ず、彼女は歌を紡いだ。

 

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl――――

「くそ、動けぇ!」

 

 

尚も動こうとする少女の肩に触れ、翼は薄く笑いながら歌う。これから起きることが分かっているのに、2人の表情は対極と言っていいほど違っていた。

 

翼が歌っている歌は奏者への負荷を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に撃ち放つもの。対価が大きいものほど、放たれるエネルギーは絶大なものになる。

 

 

 

 

 

――――その名は、絶唱。

 

 

――Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 

歌い終えた翼は穏やかな表情で目を閉じる。

 

そして膨大なエネルギーが彼女を中心に爆発し、周囲を覆い尽くしていった。

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※グラファイトの鎧部分解除……原作にそんな描写はなかったが、怪人態のグラファイトはガシャコンバグヴァイザーを持ってたり持ってなかったりしてたので独自設定として追加。特に原作への影響はない。
※ノイズのバグスター化……ノイズは自立兵器なんだし完全体は無理でもバグスターユニオンならいけんじゃね? と思った。なおグラファイトが持っているガシャットはあの2つだけなので、仲間を復活させるのは無理な模様。


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