紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第21話 『暴かれしenemy!』

 

ギャラルホルン、その完全聖遺物の名をグラファイトが聞いたのはこれで3度目になる。

 

1度目は今から約5年前。グラファイトが本当の意味で初めて人類に認知された場所、F.I.S.でのことだ。彼がネフィリムのことを調べるためにデータベースを(無断で)見ていた時、この名前があった。しかしその時わかっていることはこれが完全聖遺物であるということだけであり、性能及び所在地等は不明だったのだ。なので彼はこの時、名前だけは覚えていたがさほど興味を示さなかった。

 

2度目はそれから半月後。グラファイトが二課へ侵入した時、閲覧した聖遺物の資料の中にこの名前があった。流石は聖遺物の先端機関であり、機密書類であることも相まって、そこにはギャラルホルンの性能もしっかりと記されていた。

 

 

『ギャラルホルン、たしかあの時にも見た名だが…………なっ!?』

 

 

 

 

 

――そしてその性能を知った時の衝撃を、彼は今でも忘れない。ギャラルホルンの性能、それは自分がいる世界と並行世界を繋げることができるというものだったのだ。

 

すぐさまその詳細を知るために隅々まで調べ通したが、結局明確な所在地は不明だった。過去に二課の前身である風鳴機関が所持していたらしいのだが、起動しないことも相まって性能を秘匿して研究材料としてアメリカへ引き渡されたと資料に記されていたのだ。しかしそのアメリカの聖遺物研究所であるF.I.S.にも所在地が書かれていない。それはつまり日本からアメリカへ渡された後、その行方が消えてしまったということになる。

 

その後、他の聖遺物を収集と並行して探索し続けたが経過は芳しくなかった。どのルートから調べても、必ずとある箇所でギャラルホルンの行方が消えてしまうのだ。しかし行方を探し続けて4年経った現在でも、グラファイトはギャラルホルンの探索を打ち切ることはしなかった。

 

【仲間たちと再び共に戦う】。一度断ち切った未練とはいえ、現実的に解決できる手段を伴って再び彼の眼前に現れたのだ。彼に動かないという選択肢はなく、諦めるという選択肢を選ばせるのにも未だ至らない。

 

グラファイトがそれほどまでに執着する聖遺物、ギャラルホルン。どの国でも行方が分からない以上、彼はもうその名を聞くことはないと思っていたが――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――まさか、その名を聞くことになるとはな」

「あら、異界の存在と言う点は否定しないのね」

「否定する意味もない。それを知られたところで、俺に何の不利益もないのでな」

 

 

フィーネにそう言い返しつつ、グラファイトは構えを解く。それを見て話を聞く気になったと判断した彼女は、薄い笑みを浮かべながら口を開く。

 

 

「けれど、理由は明かさせてもらうわ。その方があなたにも利益があるでしょうし」

「なに?」

「あなたを異世界から現れた存在と定めた理由は案外簡単よ。私がギャラルホルンを所持していて、その起動に成功しているから」

「…………」

 

 

フィーネの話す内容を、グラファイトは静かに聞く。

 

 

「ギャラルホルン、その力は並行世界とこの世界をつなぐこと。これによって私たちは並行世界への移動が可能になるのは知っているわね?」

「……あぁ」

「でもそれだけではないのよ。それと同時にギャラルホルンは、異世界の存在を感じ取るセンサーでもある。並行世界なんですもの、余計なものを持って行ったり、持ち込まれたりすると不利益な事態に陥りやすいわ」

 

 

暗く、静かな森の中。風によって揺れる木の葉の音だけが響く中で、フィーネは言葉を紡ぐ。グラファイトという存在をこちら側に引き入れるために。

 

 

「私がギャラルホルンの起動に成功させたのは10年前。ただし余計なイレギュラーを発生させないために、センサー機能だけを起動させた半想起状態にしていた」

「計画の邪魔になる存在を増やさないため、か」

「そう言うことになるわね。そして5年前、今まで一度たりとも動かなかったギャラルホルンが反応を示した。すぐさま監視の網を広げ、その存在を探したわ。そして……」

 

 

わずか半月後、あなたは人類からアンノウンと呼ばれる状態で現れた。フィーネはグラファイトに手を伸ばし、そう言い切った。それに対し彼は何も反応を示さず、彼女を静かに見ている。

 

 

「私は遥か昔から、ノイズと人類の戦いを見てきたわ。しかしあなたは、明らかに今までの常識に当てはまらないのよ」

 

 

彼女は自身の計画のため、邪魔となる存在がいないか常に現人類を見張っていた。

 

その中で常にあったのは、人とノイズの戦い。位相差障壁のせいで現人類は当初、ノイズに蹂躙されていた。攻撃される瞬間のみ攻撃が通る事が後に判明したが、それを実践できる人間など存在しなかった。そして位相差障壁を無効化しようと様々な兵器が研究・開発されてきたが、シンフォギアシステム以外はどれも実用化に至っていないはずだ。

 

そんな中現れたグラファイトと言う存在。彼は戦闘能力が高いのは言うまでもないが、それよりもフィーネにとって引っかかったのは彼の移動方法と戦闘装束への変身方法だ。

 

瞬間移動と言うよりは、自身を粒子化することによるわずかな時間での長距離移動。そしてグラファイトが持つ機械、あれを用いた変身は鎧を着ているというより、彼自身を分解してあの姿に再構築しているようだとフィーネは分析していた。

 

 

「あなたのその力は、この時代の人間では決して再現できないのよ。そしてギャラルホルンが反応を示した時期と、あなたが動き出した時期があまりにも近い」

「…………」

「これが私があなたを異世界からの来訪者と定めた理由であり、それと同時に私がギャラルホルンを所持し、その起動に成功させているという根拠でもあるわ」

「……まだ足りんな。なぜ俺がその聖遺物を求めているという理由の証明ができていない」

「元の世界に帰る手段が欲しいから、でしょう?」

 

 

グラファイトの指摘に対して、フィーネは即答する。今までの彼の行動、無作為とはいえない聖遺物の探索、そして何度か彼女の網に引っ掛かったその足跡。それを追っていてわかったことが、彼は必ず情報を調べる時にギャラルホルンを真っ先に調べていたということだ。そしてグラファイトが異世界の存在という前提を持って考えた場合、彼は元の世界に帰る手段を持たず、欲しているということが簡単にわかった。

 

そして彼女の即答を聞き、彼はそれ以上話すことはなかった。完全にこちらの事情は知られている、そう判断したのだろう。

 

 

「沈黙は肯定と受け取るわよ。そして最初に言った不可侵条約に戻るのだけれど」

「……なんだ」

「ハッキリ言うわね、私は貴方と事を荒立てたくない。あなたに後れを取らないという自負はあるけれど、一度始めると決して少なくはない被害を私も被るでしょう」

 

 

それでは計画に支障が出る、そうフィーネは語る。ここで敢えて上下関係を明確にせず、あくまで対等であるかのように見せかけながら彼女は交渉の理由を話していく。

 

 

「本当は力を借りたいところだし同盟がいいのだけれど……あなた、人間そのものを嫌悪しているでしょう?」

「そうだな」

 

 

別に否定する理由もないので、グラファイトは即答する。条件を満たせばある程度認めるが、基本的に彼の人間に対する感情はマイナスだ。

 

 

「そこで不可侵条約よ。お互いに助け合うのではなく、お互いに干渉しない。幸い、私たちの目的がぶつかり合うことはない」

「待て、そもそも貴様の目的はなんだ?」

「そうね、そこも明かさないと不平等かしら。簡潔にいうと……人類にかけられた呪いを解き、救済することよ」

「なに?……いや、それ以上はいい。話を続けろ」

 

 

人類にかかっている呪い? あまりにも突然な内容にグラファイトは一瞬思考停止するが、すぐさま立て直してフィーネに続きを促す。

 

 

「えぇ、いいわよ。条件だけれど、まずこの不可侵条約を受けてくれるのなら前金としてギャラルホルンをあなたに渡すわ。そして私の計画が成功した時、完全想起に至らせましょう…………いかがかしら?」

 

 

そう言って、フィーネはグラファイトの反応を待つ。それに対し、グラファイトは考えるような動きを見せる。

 

この不可侵条約、基本的にグラファイトに有利な条件に見えるだろう。彼は例えこの条約を受けなくても探し続けていた聖遺物のありかを知ることができた。さらに口約束でも受ければ不完全ながらもギャラルホルンを手に入れることができるし、最後まで条約を守れば、確実に帰れると言っても過言ではないだろう。詰まる所、どの対応をしてもメリットの方が大きいということになる。

 

それに対し、フィーネ側のメリットは逆に小さい。一番いい条件でも、グラファイトと対立しない代わりに完全聖遺物を1つ差し出すことになる。断られればその逆になり、途中で裏切られれば、彼と争う挙句に渡した聖遺物も無駄になるという最悪の結果になる。それでも彼女にとって、この条件を示すほどの価値があると彼は思われているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな、悪くない」

 

 

実際は数秒間なのだが、傍にいた少女にとっては数分間にも感じられるほどの沈黙を解き、グラファイトは口を開く。そして握っていた武器を消し、そのままフィーネに向かって静かに歩き出した。

 

 

「条件は何を選んでも俺に有利。また俺に対する考察を聞く限り、貴様の能力は確かなもののようだ」

「信用は得られたようで、何よりだわ」

 

 

それを確認したフィーネは、数歩前に出てグラファイトを待つ。

 

 

「極論を言えばその条件を受けた後、俺は何もしなくても確実に戻る手段を手に入れるということになる」

「その通り。後付け加えるなら別の形であなたと相対した場合、その時は遠慮なく攻撃してもらっても構わないわ」

「当たり前だな、それとこれは別の話だ」

 

 

お互いに言葉を交わしつつグラファイトは近づいていき、遂にフィーネの前にたどり着く。

 

 

「貴様は自分の計画に絶対の自信があるようだ。ならば、俺の目的が達成される可能性も高い」

「受けてくれるのならば確約しましょう。……では聞かせてもらおうかしら、あなたの判断は?」

「決まっている」

 

 

そしてグラファイトは右手をゆっくりと挙げていき――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「答えは、ノーだ!!」

「フィーネ!」

 

 

――右腕の鎧を解き、チェーンソーモードになっているガシャコンバグヴァイザーをフィーネの顔に向かって突き出した。

 

 

「あら、残念」

 

 

思わず少女が叫ぶも、フィーネはそれをわかっていたかのように障壁を展開。ギリギリのところで受け止めることに成功する。

 

 

「言ったはずだ、貴様らは目障りだと。一度でも俺の邪魔をした以上、俺の敵だ!」

「ッ、この力は……!」

 

 

チェーンソーと障壁がぶつかり合い、騒音が辺りに響く中、グラファイトは右手に力を込めつつ叫ぶ。徐々にフィーネの顔に近づいてくる刀身を睨みながら、あまりの力押しに思わず彼女は呟いた。

 

やがて耐えきれなくなったのか、障壁が音を立てて崩れ去る。障害がなくなったことでチェーンソーがフィーネの顔に迫るが、崩れる瞬間を見切っていた彼女はそらすことで頬を掠る程度で回避することができた。

 

 

「逃がさん!」

 

 

追撃を加えるために、グラファイトは振り抜いた右腕を外へ回す。チェーンソーで切り裂くように放たれたそれはフィーネの背後に迫るが、彼女は前方に跳ぶことでそれも回避。お互いに距離をとった所で再び相対した。

 

 

「交渉決裂…………そうね、理由を聞いてもいいかしら?」

「先ほど言ったはずだが?」

「それなら交渉を受けてギャラルホルンを手に入れてから裏切ればいい。不可侵条約そのものを断る理由には弱いわ」

「流石だな、この程度はやはり見抜いてくるか」

 

 

称賛するような言葉をフィーネに与えるが、グラファイトからは敵意が一切薄れていない。しかし今はこれ以上戦う気がないのか右腕に再び鎧を纏い、無手状態で彼女の前に立った。

 

 

「俺は以前、一度だけ人間と手を組んだことがある」

「…………」

 

 

グラファイトが話し、フィーネが黙ってそれを聞く。先ほどとは逆の状況だが、辺りを漂う雰囲気は物騒なものになっていた。

 

 

「貴様はな、同じなんだよ」

「その手を組んだ人間と、かしら?」

「あぁ、そうだ。あいつと……ゲンムと同じ目をしている。その目は――――」

「てめぇ、フィーネから離れろッ!!」

「ッ!?」

 

 

フィーネに対して言っている途中、少女の叫び声と共にグラファイトに多数の球状エネルギーが殺到する。いくつもの爆発音の後、周囲が土煙に覆われていく。

 

 

「くそッ、あいつはどこだ!?」

「……無駄よ。彼はもう、ここにいないわ」

 

 

フィーネの前に立ち、土煙をにらみつける少女。脱いでいた鎧を再び纏い、いつでも攻撃できるよう身構えてた彼女に対して、フィーネは静かに伝える。

 

もうあの気配を感じ取れない。おそらくあの土煙に乗じてこの場を脱出したのだろう。

 

 

「全く……今すぐそれを脱ぎなさい。絶唱を受けたダメージ分、あなたの身体への浸食が進んでいるのよ?」

「ぅ、わかってるよ……」

「えぇ、いい娘よ。それじゃあ帰りましょう、私たちの家に」

「!……うん」

 

 

交渉こそ失敗したが、元から失敗覚悟で挑んだものだ。計画に多少の変更は出るものの、その結末には一切の狂いはない。そう判断したフィーネは、ここにいる理由がなくなった。それに自分の期待を裏切った挙句、言いつけを守らなかった少女には教育が必要だ(・・・・・・)

 

少女が脱いだネフシュタンの鎧を持ち、彼女を伴ってフィーネはその場を後にする。その道中、土煙の中で彼女だけが聞こえたであろう、グラファイトの言葉の続きを頭の中で思い返しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――その目は、己を絶対者と信じて疑わぬ目だ。自分以外の存在を見下し、仲間すら己の駒としか思わない目だ』

 

『そんな者と、俺は決して相いれない!』

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※今回は特にありません。何かありましたら連絡していただけると幸いです。


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