紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第24話 『辿り着いたtruth』

 

地上からは隔絶された、地下深く。【記憶の遺産】と呼ばれる部屋、その入り口を監視できる場所でグラファイトは待機していた。

 

 

「――――ッ!」

 

 

いつ来るかもわからないので、グラファイトは常に周囲の索敵を行っていた。そして突然目を見開き、勢いよく立ち上がった。

 

 

「この気配……間違いなくデュランダル!」

 

 

グラファイトが感じ取った気配、それはこの世界では【フォニックゲイン】と呼ばれる物。彼はそれを感覚でだが感じ取ることができていた。

 

そして今回感じ取った量は、今までの経験の中でもトップクラスのそれだ。これほどの気配、ただの聖遺物では発せるものではない。それはつまり、この気配の持ち主が完全聖遺物であることを示していた。

 

 

「馬鹿な、運んでいる最中に発動させたというのか?」

 

 

なぜ作戦が上手くいかなかったのか、そんなことは後で考える。幸いにも気配が膨大なおかげで、すぐ近くまで移動ができそうだ。

 

そう判断したグラファイトはすぐさま移動を開始しようとする。が、ふと違和感に気づいてソレを取り出し、注視した。

 

 

 

彼が手に持つガングニール。それは以前よりはるかに激しく発光し、熱を帯びていた。おそらく以前と同様の共鳴反応なのだろうが、普通はこの距離で反応するわけがない。念のため周囲の気配を探ってみるも、響の気配は感じ取れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――それはつまり、この距離で共鳴する程のエネルギーを向こうのガングニール(・・・・・・・・・・)が発していることになる。

 

 

「ッ、暴走。そう言うことか!」

 

 

グラファイトは状況を察し、自らの不覚を恥じる。だがその事を反省している時間など、今はなさそうだ。

 

 

「間に合うかは五分といった所か……培養!」

infection! LET`S GAME! BAD GAME! DEAD GAME! WHAT`S YOUR NAME!? THE BUGSTER……!

 

 

怪人態へ変身し、グラファイトは目を閉じて集中する。そして、その場から移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウウウウアアアアァァァァァァァッ!!」

 

 

手に持ったデュランダルを上方へ振りかざし、人間とは思えない叫び声を上げる響。顔は荒々しく歪み、目が赤く光っていることから明らかに正気ではないことがわかる。

 

そしてデュランダルの形状も変わり、全体的に淀んでいた色は想起状態になったことで本来の色を取り戻している。そしてそれから放たれるフォニックゲインは質も量も尋常ではなく、ただ持っているだけだと言うのに周囲に小さくはない衝撃波を発生させていた。

 

 

「こいつ……まさかデュランダルを起動させたってか!?」

「あぁ…………」

 

 

この状況に少女は思わずうめくが、背後から聞こえる声に気づいて振り向く。そこには了子が呆然と立ち尽くしていた。

 

目の前の状況に圧倒されているのか、はたまたデュランダルが放つ眩い光に魅了されているのか。なんにせよ了子は恍惚とした表情で、デュランダルと響を見つめていた。

 

 

「ッ、そんな力を見せつけるんじゃねぇ!」

 

 

あまりにも突飛な状況にしばし混乱していたが、少女はようやく本来の目的を思い出す。そして未だに剣を振りかざして吠え続ける響に対し、右手に持つ杖を向けて叫んだ。

 

先端から光線が迸り、響の傍に着弾。彼女の周囲にノイズが出現する。これらと同時に攻めることで、一気に響を無力化しようと踏んだのだろう。

 

 

「――――――――――!」

「なっ!?」

 

 

 

 

 

――ただしその安易な行動が、響に気づかれてしまう原因となる。彼女は少女の方に振り向き、咆哮する。それに呼応したのかデュランダルから放たれる衝撃波が強くなり、それを近距離から受けたノイズは瞬く間に崩れ去った。

 

そして地面を踏みしめ、響は一気に少女へ肉薄する。以前とは比べ物にならないスピードに少女は反応しきれず、無防備な腹部に跳び蹴りをもろに喰らう。その勢いを止めることはできず、少女は後方にある壁まで吹き飛ばされる。

 

壁に激突し、ようやく止まる少女。その勢いとダメージの大きさは、壁にある凹みが少女の全長よりも数倍大きいことから察せられるだろう。

 

 

「っぐ、この……!」

 

 

しかし少女が纏うものもまた完全聖遺物。ダメージは決して軽くはないものの、立て直すことに成功する。

 

 

「――――――――――ッ」

「ふざけんじゃねぇ……お前を連れ帰って、あたしは!」

 

 

--NIRVANA GEDON--

 

 

頭に血が上っているのか、少女は感情の赴くままにエネルギーの球体を生み出して響に投擲する。それを見ても彼女は身動き一つとることはなく、それは着弾した。

 

 

「ハァ、ハァ……これでちったぁ――!」

 

 

爆発によって生まれた煙を眺めながら少女は荒い息を整えようとするが、目を見開いて驚愕する。

 

突如煙の中心地から光の柱が上空へ昇り、煙が一気に晴れていく。

 

 

 

 

 

「――――――――――――ッ!!」

 

 

――そしてその中心に立つ響は、無傷でデュランダルを振り上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(――あれ。なんで、身体が勝手に動いているの…………?)

 

 

 

――………………………!――

 

 

 

(あの時、確かデュランダルを奪われないよう握って、それから……)

 

 

 

――…………………セ!!――

 

 

 

(なに、これ? 頭の中に、声が響いてくる……)

 

 

 

――……………コワセ!!――

 

 

 

(頭が、痛い……!)

 

 

 

――……テヲ、コワセ!!――

 

 

 

(うぐ、あぁ……!)

 

 

 

――スベテヲ、コワセ!!――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こわ、す)

 

(すべてを、コワス)

 

(すべてヲコワス)

 

 

 

(……ジャアマズ、メノマエニイルコイツカラ――――!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――おっと、ギリギリだったな。それ以上はストップだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――状況は!」

 

 

移動が完了し、グラファイトは急いで現場の状況を確認する。

 

 

「完全聖遺物、デュランダル。これ程なのか……?」

 

 

グラファイトの目に映る風景、それはひどい有様だった。工場は半壊し、建物のいくつかがガレキと化している。そして崩壊した周囲で火災が発生しており、なにが起きたのか、想像するのは難しくない。そしておそらく爆心地と思わる箇所。そこは煙で覆われており、状況を確認することができなかった。

 

そこまで分かった所で、グラファイトはガングニールを取り出す。先ほどまでの激しさが嘘のように、ガングニールの発光は収まっていた。このことから予想できることは二つ。ガングニールの暴走が収まったか、暴走の余波で奏者ごと消し炭になったかだ。最悪の場合、デュランダル諸共消し飛んだ可能性もあるのだが――――

 

 

 

 

 

 

「……どうやら、五分の賭けには勝てたようだ」

 

 

煙の切れ目から一瞬だけ見えた光景。それを見逃さなかったグラファイトは、身体に走らせていた緊張を少し解いた。

 

そしておそらく煙の中にデュランダルはあると仮説を立てるが、既に多数の人間が工場に集結し始めているのを感じ取る。

 

 

「構わず突っ込むのも手だが…………つまらん」

 

 

確かに今行けば、ほぼ確実にデュランダルを手に入れることができるだろう。だが完全聖遺物の取得はグラファイトにとって、そこまで重要視している事ではない。それに周囲の気配を探る限り弦十郎と翼はおらず、ガングニールの更なる覚醒のために戦おうと思っていた響は、先ほど見た光景から察するに気を失っているだろう。

 

今現在、グラファイトが優先している事。それは弦十郎との闘争、翼との決着、彼が所持するガングニールの洗練化。

 

そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネフシュタンも生き残っているな。ちょうどいい、先に奴を潰すか」

 

 

――フィーネ勢力を殲滅し、ギャラルホルンを手に入れることだ。

 

先ほどから範囲を広げて探っているが、ネフシュタンの気配をうっすらだが感じ取れる。暴走したデュランダルの一撃をもろに喰らったというのに、どうやらいまだ健在のようだ。そして不幸なことに、今グラファイトが察知している存在の中で、少女は一番強い。

 

標的を定め、グラファイトはその場から去ろうとする。しかしピタリと動きが止まり、立った状態のままで口を開いた。

 

 

「なんの用だ、出てこい」

「――申し訳ありません、あなたに今動かれるわけにはいきませんので」

 

 

グラファイトが正面を向いたまま話すと、建物の影から出てきた男性――緒川が返答する。その手には拳銃が握られており、既に何度か引き金が引かれたその銃口はグラファイトの影に向けられていた。

 

声が聞こえる方向から居場所を察知し、グラファイトは振り返ろうとする。しかしまるでその姿勢で縫い付けられているかのように、彼の肉体は動かなかった。

 

 

「……アメノハバキリと同じ技か。貴様、何者だ?」

「特異災害対策機動部二課所属、緒川と申します。司令の指示により、あなたの足止めに参りました」

「司令…………あぁ、弦十郎か」

「はい、そうです」

「フンッ!」

 

 

緒川の返答を聞き終わるよりも早く、グラファイトは振り返りつつ双刃で薙ぎ払う。それは背後にいた緒川の胴体を真っ二つに切り裂くが、グラファイトは手ごたえに違和感を感じた。

 

 

「この感覚…………ッ、やはり偽物か!」

「影縫いをこうも簡単に……念のため普段の3倍撃ったんですが、無駄だったようですね」

 

 

切り裂いた対象が偽物であることにグラファイトは即座に気づき、すばやく振り向く。そして目の前に迫りくる弾丸のすべてを、双刃を用いて弾き落とす。その様子を見て、緒川は弾丸を装填しながら思わず呟いた。

 

 

「俺を舐めるな、あの程度で俺の動きを妨げられるとでも思ったか!」

「くッ!」

 

 

装填が終わったと同時に、グラファイトが緒川に肉薄する。そして振り下ろされた双刃を緒川はギリギリ回避するが、その直後に放たれる蹴りを喰らい、吹き飛んでいく。しかし攻撃が成功したにもかかわらず、彼は既に吹き飛んだ先を見ていなかった。

 

 

「……俺が気づかないほどの気配遮断。そして変わり身の次は分身ときたか」

 

 

グラファイトの周囲を囲む、6人の緒川。間違いなく本物はこの内の1人なのだろうが、その見分けを今付けることは今の彼には困難だった。

 

 

「確か貴様、緒川とか言ったな…………そうか、思い出したぞ!」

 

 

そう叫びつつ、グラファイトは正面にいる緒川に突撃し、攻撃する。それを緒川はまず避け、追撃を分身と連携することで更に回避。どうしても避けれそうにないものは分身が身代わりとなって消えるが、すぐ6人の状態に戻っていた。

 

 

「俺が手に入れた、デュランダル封印に関する運搬方法の計画書。そこに記されていたデュランダルを一人で搬送する人間、それが貴様か!」

「ッ、何を言って……!」

 

 

何者か聞いた時、奴はオガワと名乗っていた。名前は確定していないが、少なくとも一致している苗字。そして影の者と呼ぶにふさわしい継戦能力で、バグスターである自分に対して曲がりなりにも時間稼ぎは十分にできている。

 

間違いない、グラファイトはそう判断して後方へ跳躍する。緒川一人による包囲網から抜け、貯蔵タンクの上に着地した彼は構え、双刃を握る手に力を込める。

 

 

「どれが本物か判別できぬのなら、すべて同時に潰せばいい!」

「これは……!」

「吹き飛べ、激怒――

 

 

 

 

 

「っと、そこまでだ!」

 

 

――大技を放とうとした直後、屋上の扉が開く。そしてその中から男性が出てきて叫ぶ。その声を聞き、誰が来たのかすぐに判断できたグラファイトは技を中断し、入り口に視線を向けた。

 

 

「弦十郎、ようやく来たか」

「よう、待たせちまったみたいだな。……慎次、足止め感謝する」

「はい」

 

 

そうグラファイトに男性――弦十郎は返答し、二人のちょうど中間に位置取っている緒川に労いの言葉をかける。それに対し緒川は分身を解いて頷く。怪我は負ってないようだが、疲労の色が見え始めていた。

 

 

「む、シンジだと?……まぁいい、次の相手はお前か?」

「そのつもりだ。……が、その前にお前さんにちょいと聞きたいことがある」

「なに?」

 

 

標的が予想していた人物ではなかったことにグラファイトは少し引っかかるが、すぐに些事だと切り捨てる。そして弦十郎と、可能なら緒川と弦十郎の両名と戦う気満々だったのだが、予想だにしない言葉が聞こえて思わず反応してしまう。

 

敵である自分に対して質問だと? ふざけるなと一蹴しようかと思ったが、だが少なくとも弦十郎に戦う気は十分にあるように見える。それに、この質問自体が時間稼ぎであると言うわけではなさそうだ。

 

 

「先に言っておくが、俺は奴等の仲間などではない」

「だろうな。それはお前の今までの行動から把握できている」

「……ではなんだ?」

「俺は腹の探り合いは苦手でな。だから真正面から直球で聞かせてもらう」

 

 

そう言って、弦十郎は真剣な表情で口を開く。その内容を聞きおえたグラファイトは身動きせず、二人をじっと見つめる。

 

全身鎧のため、グラファイトの表情を見ることはできない。しかし彼の反応を見ていた弦十郎と緒川は、確かに笑っているように感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「現実世界、と言うのが正しい表現なのかはわからんがな。とにかくこの世界に来たお前は何が目的なんだ?」

 

 

――――狩猟ゲーム【ドラゴナイトハンターZ】の住民である龍戦士、グラファイト。

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※グラファイトの忍者知識……中の人(直喩)の知識。ただ表面的な事しか知らない。


ここまで読んでくださりありがとうございます。
シップスさん、無銘さん、sevenblazespowerさん、瑛松さん。感想ありがとうございました!
やまないしさん、評価ありがとうございます!
粘土aさん、誤字報告感謝です。
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