紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

27 / 42
卒研忙しすぎて書く時間なさすぎワロエナイ。

あと今回少し温度差が激しいかも。




第27話 『舞台を動かす―そのPreparation』

 

 

「……うん、後はあそこで買い物すれば最後かな」

 

 

持ってきたバッグの中に入っているものを見て、予定通り進んでいることを未来は確認する。今日の学校が午前中で終わったので、こうしてのんびりと買い物を楽しむことを彼女はできていた。本当は響も誘う予定だったのだが、今朝がたに用事があると言っていたのでしょうがないだろう。

 

 

「…………響」

 

 

立花響、彼女は最近何かに打ち込んでいる。以前は1つのことに集中することはあまりなかったが、リディアン音学院に来てからは何かに付きっきりだ。

 

本人はボランティア活動の一環で、力仕事があるから鍛えていると言っている。が、それが嘘なのを未来は感じ取っていたし、彼女も誤魔化しきれているとは思っていないだろう。と言ってもそこに関して、未来はあまり気にしてはいない。多少不安にはなるものの、ちゃんと毎日帰ってきてくれているので今のところは大丈夫だと未来は思っていた。

 

 

 

 

 

……そう、思っていたのだ。

 

 

(響、一体何があったの?)

 

 

響に何かあったのはおそらく、数日前の一日中外出していた日だろう。夕方頃に帰ってきた時点で、少し違和感はあった。ご飯を食べている様子はいつも通りだったのだが、それが表面化したのは寝る時だ。

 

 

『…………う』

『ん……、響?』

『……う、違う……』

 

 

背後から聞こえる声を聞きとって、未来は目を覚ました。そして寝返って響の様子を見ると、彼女はうなされていたのだ。

 

響は寝顔ではあるものの、苦しそうな表情で【違う】と何度もつぶやいていた。そのただならぬ様子を見た未来は後ろからゆっくりと抱きしめ、何度も大丈夫だよ、と言い聞かせた。すると効果があったのだろうか、響は少しずつ落ち着いていき、数分後には穏やかな寝顔に戻っていた。

 

最初はたまたま悪夢を見たのだと思っていが、その日から毎日のように響はうなされている。もしあの日気づかずにそのまま寝ていたら、彼女の寝つきはかなり悪くなっていただろう。

 

そこで昨日の朝、何かなかったか響に聞いてみたのだ。すると彼女は【何もないよ】と手を振りながら答え、そそくさと学校に行っていた。その様子から何かあったのは明白なのだが、どうも響はそれを未来に隠したいようだ。なのでこれ以上は聞くだけ無駄だと未来は判断し、せめてその問題が早く解決するよう、できるだけ響の傍にいるようにしていた。

 

 

「うーん…………あ」

 

 

考え事をしながら目的地に向かう途中、ふと近くの看板に目が留まる。そこにはいくつかのお店のチラシが張り付けられていて、未来の視線はその内の1つに向けられていた。

 

 

「ケーキ……あ、そういえば前に寺島さんが言っていたのも……」

 

 

学校の友人が以前言っていた、とても美味しいケーキ屋。彼女の話だけでそこのケーキが美味しいとわかるほどで、響に至っては少し涎が垂れそうになるほどだった。看板にあったチラシはそのケーキ屋ではないのだが、ちょうど未来はそのことを思い出した。

 

 

「……よし!」

 

 

これを響へのお土産に買っていこう。そう考えた未来は、目的地に向かって再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

部屋に散らばっているものを片付けていく響。その表情はここに向かっている時の笑顔とは打って変わっていた。

 

無言のまま、散らばっているものを片付けていく。そして枯れていた花は自分が持ってきたものと変え、水を入れた。

 

 

「…………」

 

 

服もまとめ終わり、次にタオルをたたんでいく。そしてその作業も終わり、収納棚に入れ終わった響はゆっくりと振り向いて口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はい、終わりましたよ。翼さん」

「あ、ありがとう……」

 

 

視線の先に映る、赤面して縮こまった翼を見ながら。

 

 

(いやー、ビックリしたー……)

 

 

 

 

 

 

響が部屋の惨状を見て驚き、茫然とした後。誰かに襲撃されて攫われたんじゃないかと思った響は急いで立ち直り、誰かに連絡しようと急いで部屋から出ようとした。

 

 

「――――きゃっ」

「あ、ごめんなさい!……って、翼さん!?」

 

 

部屋のドアが開いた時、響の目の前には翼が立っていたのだ。まだ全快ではないのだろう、右腕には点滴がつながっていた。ぶつかる寸前で何とか立ち止まることに成功した響は、急いで口を開く。

 

 

「翼さん! 大丈夫ですか、無事ですか!?」

「……入院患者に無事を尋ねるの?」

 

 

唐突に尋ねる響に対し、翼は冷ややかな目で問い返す。入院している時点で無事ではないのだが、なぜ今更それを聞くのだろうと彼女は思っていた。

 

 

「だって、これ!」

「…………あ」

 

 

それを聞いた響は、部屋の中を指さす。中の様子を見た翼は、驚きからか硬直している。それを見た彼女は、焦りを隠さずにそのまま続けていく。

 

 

「私、翼さんが誘拐されちゃったんじゃないかと思って!」

「っ!」

 

 

その言葉を聞いたのか、翼は顔を俯かせる。響がどうしたのかとその表情を見ると、どうにも赤面しているようだ。

 

 

「二課の皆が、どこかの国が陰謀を巡らせているかもしれないって言ってたし…………て、え?」

 

 

赤面、つまりは恥ずかしがっていたのだ。あの、風鳴翼が。

 

 

「……え? あの、翼さん?」

「…………」

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

(まさか、翼さんが片付けが苦手だなんて……)

 

 

そう考えながら響は後で洗濯機に入れる服をまとめる。その様子を見ている翼はまだ恥ずかしいのだろう、赤面しているままだった。そしてその表情を見られるのも恥ずかしいのだろう、響が翼の方を見ると素早く正面を向いて表情を隠す。

 

 

「私は、その……こういうところに気が回らなくて……」

「意外です。翼さんって何でも完璧にこなすイメージがありましたから……と、おしまいです」

「フ、真実は逆ね。私は戦うことしか知らないのよ」

 

 

そう苦笑しつつ呟く翼、そして振り向いて響を見る。ようやく落ち着いたのだろう、先ほどよりもいくらか雰囲気が和らいでいた。

 

 

「すまないわね。いつもは緒川さんがやってくれているのだけれど……」

「はい、私は緒川さんからお見舞いを頼まれたんですよ。だからお片付けを…………って、えぇ!?」

「?」

「緒川さんに……男の人に、ですか!?」

「はっ!」

 

 

サラッと放たれた言葉に、響は驚いて声を上げる。最初はなぜ驚いているのかわからず翼は首をかしげていたが、次に響が言った言葉で意味がわかったのだろう。再び顔を赤面させて、視線をさまよわせながら口を開く。

 

 

「た、確かに考えてみれば、色々と問題ありそうだけど。……それでも、散らかしっぱなしにしてるのは良くないから、つい……」

「は、はぁ…………」

 

 

どもりながら言い訳をする翼を見て、響はポカンとしつつ返答する。先ほどから今までのイメージとはかけ離れた行動をとり続ける彼女を見て、内心混乱しているのだろう。

 

そしてその内心に気づいているのか、翼はこの話題から切り替えるように一度深呼吸をして口を開いた。

 

 

「今はこんな状態だけど、報告書は読ませてもらっているわ。私が抜けた穴をあなたがよく埋めている、ということもね」

「え?……っ!? そ、そんなこと全然ありません! いつも二課の皆に助けられっぱなしです!」

 

 

翼に褒められたことに驚き、響は慌てながらそう返答する。彼女としては、二課のサポートをあれだけ受けてようやくノイズと戦えていると思っているのだ。照れ隠しも混じっているものの、この言葉には本心も含まれていた。

 

 

「……でも、嬉しいです。翼さんに、そう言ってもらえるなんて」

 

 

だが、褒められてうれしいと言うのも事実。照れながらもそう話す響を見て、翼も微笑みを浮かべていた。

 

しかし翼は、その表情をすぐに真剣な表情に戻す。彼女の様子の変化を感じ取ったのだろう、響も同じように彼女を見つめていた。

 

 

「でも、だからこそ聞かせてほしいの。貴方が戦う理由を」

「……戦う、理由」

「えぇ。ノイズとの戦いは遊びではない。それは今日まで戦い抜いて来たあなたならわかるはず」

 

 

そう響に問いかけるも、彼女は困ったように目を伏せながら頬を掻く。

 

 

「よく、わかりません……。私、人助けが趣味みたいなものだから、それで……」

「それで? それだけで?」

「だって、勉強とかスポーツは誰かと競い合って結果を出すしかないけど、人助けって誰かと競わなくていいじゃないですか」

 

 

翼の問いに対し、響は答える。その途中で何かを思い出したのか、翼から視線を外して窓から空を眺めつつ口を開く。

 

 

「……そうですね。きっかけは、やっぱりあの事件だと思います」

「――――ッ」

 

 

その事件が何なのか、翼にはもうわかっているのだろう。響の言葉を聞いて、彼女は目を伏せていた。その様子を横目に見ていたが、ここで中断しては自分の想いは伝えられない。そう彼女は判断して言葉を紡ぎ続ける。

 

 

「2年前、私を救うために奏さんが命を燃やしたあのライブ。……奏さんだけじゃありません。あの日、たくさんの人がそこで亡くなりました。でも、私は生き残って今日も笑ってご飯を食べたりしています。だからせめて誰かの役に立ちたいんです」

 

 

響の人助けと言う趣味、その始まりはここからだった。あの地獄から生還した、数少ないうちの一人。生き残ったのは運がいい上に、天羽奏が命を賭したからだ。その事を当時の響は知らなかったとはいえ、生き残ったからには何かしなければと彼女は思っていた。でもしないと、響が笑い続けることはできなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『響! 生きてる、生きてるよぉ……!』

 

『故に、一人になるのはお門違いだ。共にそれを背負ってくれる仲間がいれば、その想いはどこまでも貫ける』

 

 

 

 

 

「明日もまた笑ったり、ご飯食べたりしたいから。……だから私は、人助けをしたいんです」

 

 

――そして、大切な友人の笑顔を守り続けたいから。彼女との暖かい日常を、続けていきたいから。

 

あの日、あの人のおかげで思い出せた大切なこと。それを思い返しつつ、響は笑顔で翼に言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、確かここら辺にあるはずなんだけど……」

 

 

買い物も終わり、例のケーキ屋を探して未来は歩き続けていた。以前友人に聞いた話によると、そこは所謂隠れた名店と呼ばれる類であり、表参道から結構外れたところにあるらしいのだ。友人は道に迷った時に偶々見つけたらしいので、あまり知名度は高くなさそうだ。

 

詳細が分からないため、先ほど例の友人である寺島に電話をして、目印となる物をいくつか教えてもらっていた。メモに書いておいたそれを確認しつつ、未来は人気の少ない道を歩き続ける。

 

 

「ここを曲がって……あ、黒猫の看板。ということは、この先かな」

 

 

最後の目印を見つけ、角を進んでいく。そしてふと開けた場所に出て、目の前に西洋づくりのお店が見えてきた。

 

 

「すごい……本当にこんなところにあるんだ」

 

 

未来は道中、本当にこの先にケーキ屋があるのだろうかと少し不安になっていた。友人が嘘を言うとは思えないのだが、いくら何でも表参道から離れ過ぎていたからだ。けれど、彼女の視界には確かにお店が映っていた。

 

 

「いらっしゃいませ」

「わぁ……!」

 

 

店員の声を聞きつつ、店内に入る。ショーケース内にある多種多様のスイーツを見て、未来は目を輝かせる。その1つ1つがとても美味しそうで、友人が言っていたことは間違いないとその場で確信していた。

 

 

「これも、これも美味しそう……!」

 

 

ショーケースの前でしゃがみ込み、1つずつ吟味していく。恐らくだがここにあるスイーツのどれを買って行っても、響は大喜びで食べるだろう。

 

 

「うぅ、迷っちゃうな……」

「お客さん、お悩みのようだね」

 

 

迷い続ける未来を見て、先ほどの店員が声をかける。ベテランの貫録と言うのだろうか、パティシエと言うよりは職人のような顔をしているその店員は落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 

 

「あっ、はい。実はそうなんです……どれもとても美味しそうで」

「そう言ってもらえると嬉しいな。ここにある全てのスイーツは、僕の自信作でね。何回も改良を重ねて、納得のいったものだけを出しているんだ」

「そうなんですか……あ、じゃあ店員さんのおすすめを教えてもらえますか?」

「僕のかい? そうだなぁ……」

 

 

未来は軽く聞いてみたのだが、店員は真剣に悩んでいるようだ。顎に手を当てた状態で【あれか? いや、これも……】とブツブツ呟いている。このままじゃ話が進まなそうだ、そう判断した彼女はとりあえず声をかけるために手を伸ばす。

 

 

「あ、あの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――店主、いるか?」

 

 

そう問いかけた直後、カランと来客を告げるベルが入り口の方からなる。そして未来の背後から、男性の声が聞こえてきた。

 

 

「いや、やはりあれこそ…………ん? おや、もうこんな時間だったか」

「いつものだ」

「はいはい。マイティーシューにタドルタルト、バンバンショコラと爆走パフェだね?……と、これはナイスタイミングというやつじゃないか」

「……なんだ?」

 

 

未来の隣で交わされる、男性二人の会話。その様子をポカンと見ていたのだが、店員――男性曰く店主が、彼女の方に掌を向けて口を開いた。

 

 

「彼女さ、ここに初めて来た娘なんだよ。どうにもどれを買うか迷っているみたいでさ、相談に乗ってやってくれない?」

「え?」

「は? なぜ俺がそんなことをしなければ……」

 

 

突如放たれた言葉に、未来と男性の両方が声を上げる。そして案の定男性がその提案を拒否しようとするが、それを遮るように店主が人差し指を立てて口を開いた。

 

 

「新作スイーツ、ときめきプリンでどうかな?」

「っ……いや、何を勝手に―――――おい!」

 

 

その言葉に惹かれたのだろうか、男性の声が一瞬詰まる。それを見た店主はにっこりと笑って、それじゃよろしくねー、と奥に引っ込んでいった。男性はそれを止めようと手を伸ばすが、すでに彼の姿はない。

 

 

「…………ハァ、いつにも増して勝手な」

「あの……すみません」

「む、お前がなぜ謝る?」

 

 

巻きこんでしまったので未来が謝罪するも、男性は不思議そうに問い返す。不機嫌な顔だったものの、その矛先は店主に向けられているようだ。

 

 

「いえ、私が迷ったのが悪いのですし……」

 

 

男性としてはただ見ているだけなのだろうが、その眼光は鋭く未来は睨まれているように感じた。故に少し縮こまりつつそう答えると、彼はそれが気に食わないかのような表情で口を開いた。

 

 

「ち、無駄に気負うな。大方、奴に頼んでいたことが俺に投げられたとでも言った所だろう」

「はい……店主さん、どのスイーツも自信作みたいで迷ってました」

「だろうな。あんな性格だが、腕だけは確かだ」

「ですね、本当にどれも美味しそうで……」

 

 

そう言いながら未来は再びショーケースの中を見る。

 

その表情から本当にそう思っていることが男性もわかったのだろう。その様子をしばし見ていた男性は少し考える素振りをしていたが、やがてため息を吐いて口を開いた。

 

 

「ハァ……仕方ない。多少ならば付き合ってやろう」

「え……あの、いいんですか?」

「奴が戻ってくるまでは手が空いている」

「あ、ありがとうございます!……あの、私は小日向未来って言います。あなたの名前を教えてくれませんか?」

「ふん、馴れ合うつもりなど――「サキくーん、おまけにノックアウトチョコ入れとくよー!」…………」

 

 

恐らく名乗るつもりはなかったのだろう、男性はそう言おうとしていたが、奥から響いてくる店主の声によってそれも無駄に終わってしまう。その声を聞いた未来がゆっくりと男性の方に向き直ると、彼は額に手を当てて深くため息を吐いていた。

 

そして抗うだけ時間がかかると判断したのか、改めて未来の方に体を向けて、男性は口を開いた。

 

 

「……サキだ。ではまず聞くが、お前は今日なぜここに来た?」

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※ケーキ屋さん……原作には登場してません。ちなみにキャラ濃いですが、店長はただのモブ。


ここまで読んでくださりありがとうございます。
無銘さん、sevenblazespowerさん、ノッブブーンさん、シップスさん、瑛松さん。感想ありがとうございました!
イナズマ号さん、ケチャップの伝道師さん。評価ありがとうございます!


戦闘描写を書くのも楽しいですが、日常を書くのも楽しいですね。ただ全然話が進んでいないので、もっとあっさり書くべきが迷い中。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。