「響ちゃんとネフシュタンの少女、未だ交戦中!」
「周囲に散らばったノイズの状況は!?」
「市民の避難は完了、ノイズは炭化している個体が多数!」
二課の司令室。そこでは現在進行している戦闘の状況が、逐一弦十郎に伝えられていた。
「時間切れだな……翼、聞こえるか?」
『はい、司令。周囲のノイズは殲滅しました、これから立花の援護に向かいます』
「あぁ、それで問題ないだろう。……無理はするなよ」
『はい』
そして弦十郎が通信しているのは、現在戦場に向かっている翼であった。彼女は未だ全快ではないのだが、街へ解き放たれたノイズの対処と響の援護のために出撃していたのだ。
「響君の様子は?」
「映像はノイズがひどくて出せません。原因はおそらく……」
友里の言葉通り、眼前のモニターには何も映っていなかった。響が戦っている場所の映像は映らず、先程までは翼の様子が映っていたが、今ではノイズが走っていて見えない。それはおそらく、翼が響のいる戦場に辿り着いたからだろう。
そしてノイズの原因を知っている弦十郎は、確認もかねて口を開いた。
「間違いなくグラファイトだろう。響君かあの少女、どちらかと交戦しているのか?」
「いえ、音声から判断するにグラファイトはあの2人とは戦っていません。恐らく別の場所に……ッ、風鳴司令!」
「どうした!」
「新たにノイズが多数出現! 場所を特定……郊外付近、住民の避難が行われていません!」
「なんだとッ!?」
まずい、弦十郎はその報告を聞いて焦る。報告された郊外は、最初ノイズが現れていた箇所とは離れていた。故にノイズ出現の警報は流していたものの、避難は行われていなかったのだ。
響と翼は現在、クリスと交戦している。戦況はどうやら互角のようで、どちらかをノイズ殲滅に向かわせれば劣勢になる可能性は非常に高いだろう。だが、だからと言って街の住民を見捨てるわけにはいかない。
「翼に連絡! あそこから離脱させて、ノイズへの対処に向かわせろ!」
「ネフシュタンの少女とグラファイトの対処はどうしますか!?」
「俺が出る、状況が動いたらすぐ伝えろよ!」
そう言って弦十郎は司令室を飛びだそうと走り出す。確かにグラファイトを確実に相手できるのは、現状彼しかいない。司令室の面子もそれは承知していたので、それを止めようとはしなかったのだが――――
「ッ、ノイズ出現箇所に高出力エネルギーを感知!」
「波形を照合……ッ!? 風鳴司令!」
――解析を終えた藤尭が、焦った表情で弦十郎を呼び止める。その声はなんとか届き、扉近くにいた弦十郎は振り向いて答える。
「なにがあった!?」
「至急、報告したいことが。ノイズの出現地点に高出力エネルギーを感知しました。解析の結果――――」
そう報告しつつ、藤尭は解析の結果を正面モニターに映す。その内容を見た二課の面子は彼と同様の表情を浮かべている。それは解析結果の内容そのものよりも、その結果と現状を照らし合わせることで生まれる矛盾に対しての表情なのだろう。
そして藤尭の報告を受けた弦十郎もまた、驚愕と動揺の表情を浮かべていた。
「――アウフバッヘン波形、ガングニールと断定!」
「なんだとッ!?」
「……ハッ。死に体でおねんねと聞いていたが、足手まといを庇いに現れたか?」
「もう二度と、何も失うものかと決めているのでな」
弦十郎が藤尭の報告を受けている頃、響とクリスの戦場には翼が到着していた。クリスは自分の真の姿――イチイバルのシンフォギアを纏って響と交戦しており、響はそれに苦戦していた。
それも無理のないことだ。ネフシュタンの鎧という耐久を生かした近~中距離から、イチイバルによって生成できる様々な銃器を用いた中~遠距離へ。実戦経験の浅い響がこれまで戦えていたのも幸運だったのだが、ここにきて地力の差が生まれ始めていた。
そして両手に持つガトリング砲から生みだされた弾幕の嵐によって、響の体勢が崩れたところにミサイルがぶち込まれる。当たれば間違いなく致命傷となるコースだったが、それをギリギリ間に合った翼が、剣を巨大化させることで防いだのだ。
「翼、さん……」
地面に突き刺さる巨大な剣、その柄の部分に立っている翼を見ながら、響はその名を呟く。だがその表情は援軍が来たことへの安心感と言うよりも、翼の安否を心配している表情だった。
その表情を、振り向いた翼も確認する。無理もない、同日の昼に見せた翼の姿は入院服に点滴と、明らかに戦える状態ではなかったからだ。今は大丈夫そうに見えても、いつ傷が悪化するかはわからないだろう。
「やはり気づくか、立花?」
「そりゃ、まぁ……」
「あぁ、私も十全ではない……だから立花、力を貸してくれるか?」
「ッ!……はい、もちろんです!!」
翼の口から初めて放たれた言葉、それを聞いた響は疲労なんて吹き飛ぶ思いだった。そしてそれに応えるべく、立ち上がって構えをとる。それを見た翼は剣を元の大きさに戻し、彼女の隣に立って剣を構えた。
「2対1か、ちょうどいい。まとめて相手してやるよ……!」
並んで立つ二人を見て、クリスはその銃口を向ける。腰に携えているソロモンの杖を使えば数の差など簡単に埋められるが、以前の戦いで彼女は独りで戦えると慢心していた。
『クリス、今すぐソロモンの杖を上空へ投げろ!』
「ッ、フィーネ!?」
『はやく!!』
「なにがあって……ちぃッ!」
「逃がすか!」
しかしその思考は、突如聞こえてきたフィーネの声によってかき消される。普段の余裕そうな口調とは違い、明らかに焦っている声色。それを聞いたクリスはしばし混乱するが、次いで放たれた怒声にも近い声を聞いて即座に行動に移すことにする。
バックステップで距離を稼ごうとするも、翼がそれに反応して接近する。そして射程に入ると同時に剣を振るうが、クリスはそれをかろうじて回避。そして追撃を上空へ跳ぶことで避け、狙いを二人に定めた。
「この、吹っ飛べ!!」ーーMEGA DETH PARTYーー
放たれる大量のミサイル。それを翼は切り裂くことで迎撃し、響は走り回って回避する。しかし狙いの半分は地表そのものであり、着弾したことで土煙が周囲を覆った。
「これなら……フィーネ、投げるぞ!」
『えぇ……!』
返事が聞こえ、即座にソロモンの杖を上空に投げる。土煙を切って現れたそれを見て翼と響は困惑するが、突如現れた女性がそれを手に取ったのを見て表情を引き締めた。
「何者……?」
「フィーネ、何があった!?」
「ボサッとするな、来るぞ!」
クリスの問いにそう返し、ノイズを複数体生み出すフィーネ。生み出された鳥型のフライトノイズは素早く上空に展開し、クリスとフィーネを覆うように回りだす。それを見てクリスは一瞬疑問に感じるが、突如視界の外から迫りくる圧迫感を感じ取った。それは響は翼も同様であるが、フィーネはその正体を知っているが故に表情をしかめさせる。
「なにが……ッ!?」
「もう追いついたか……!」
「ドドド、黒龍剣!!」
その声とともに、上空から無数の剣戟が現れる。それは次々にノイズで形成されたシールドに着弾していき、わずか数発でシールドを崩してしまう。そして残っている剣戟が次々にクリスとフィーネの近くに着弾していった。
「うわああああぁぁ!」
「この力、イレギュラーにも程がある……ッ!」
「――逃がさんと言ったはずだ!!」
あまりの衝撃にクリスは思わず叫ぶ。フィーネは直撃こそ回避したが、衝撃波でまともに動けなくなっていた。そしてその隙を逃がすまいと、上空からグラファイトが高速で接近する。隕石にも匹敵する勢いの彼は、自らを弾丸としてフィーネに狙いを絞った。二人の間には何体もノイズが立ちふさがるが、彼はそのすべてを貫いていく。
「あぁッ!」
「ッ、クリスちゃん!」
だがしかし、時間稼ぎはできたようだ。回避不可能となる距離の直前で硬直が解け、フィーネはギリギリ回避が間に合う。そして狙いが絞られていたことで、クリスも直撃を免れた。しかしすぐそばに着弾したのも相まって、衝撃波で吹き飛ばされてしまう。そしてそれを見た響はすぐさま走り出し、空中に放り出されている彼女の身体を受け止める。だがその勢いは強く、二人して地面を転がっていった。
「お前、何やって……!?」
「えへへ……ごめん。クリスちゃんがぶつかりそうになっているのを見たら、つい……」
「ッ、このお節介焼きが……!」
「立花!」
ダメージが分散したことで、二人とも重傷は免れる。しかしそれでも、すぐさま体勢を立て直すことは難しそうだった。その様子を見抜いた翼はすぐ二人の元に行き、庇うように立って襲撃者――グラファイトの様子をうかがう。
「チッ、僅かに軌道を逸らされた」
「黒い、グラファイトだと……?」
「アメノハバキリか。随分と遅かったな……フン」
外見は間違いなくグラファイトだ。しかし鎧の色合いの変化と、以前よりも圧倒的に感じる存在感。それを見て感じた翼は、思わずそう呟く。そしてその声が聞こえたのだろう、グラファイトは彼女の方を振り返ってそう話す。しかしその途中で何かに気づき、詰まらなさそうに鼻を鳴らした。
「いや、まだ回復は完了していないか」
「なッ!?」
一瞬で見抜かれてしまう、翼の状態。だがグラファイトは翼へ武器を構えることはせず、周囲を見渡している。まるで自分を敵と思っていないようなその行動を見て、翼は睨みつけながら口を開く。
「なんのつもりだ、グラファイト?」
「手負いの身で、かつ後ろの二人を守りながら俺と戦えると思っているのか?」
「…………」
「お前と決着はつける。だが、それは今ではない――――そこか!!」
グラファイトからそう指摘されるも、無言で剣を構える翼。それを一瞥した彼はそう言葉を残しつつ、双刃を投げ飛ばす。勢いよくはなたれたそれは木々の隙間を塗っていき、フィーネの顔のすぐ横にある幹に突き刺さった。
「危ないわね、もう少しで当たるところだったわよ?」
「当てるつもりだったからな。……なるほど、ここに来たのはそう言う理由か」
そう言いつつ、グラファイトの視線はフィーネの足元に注がれる。そこには無数の破片が散らばっていた。
「あれは、私がパージしたネフシュタンの鎧……」
「えぇ、そうよクリス。私がここに来たのは、ネフシュタンの鎧とソロモンの杖を回収するため」
そう言いつつ、フィーネは右手をかざす。すると手は光だし、同じようにネフシュタンの鎧も光り出す。鎧の破片は彼女の手元に集まり、まるで帯のように吸い込まれていった。
「もうこの場に用はない。さようならグラファイト、さようなら二課の諸君」
回収を済ませたフィーネはソロモンの杖を使い、数多のノイズを呼び出す。既に目標も定められているのだろう、現れたと同時にノイズは身をねじらせ――――
「そして、さようならクリス」
「…………え?」
――4つの標的に向かって跳んでいった。
「はぁッ!」
「せい!」
グラファイトはノイズを拳を持って迎撃し、翼は切り伏せていく。しかしその間にもノイズは次々に呼び出されており、フィーネはその様子を微笑みながら見ていた。
「この量、間違いなくあの少女も狙っている……!」
このノイズはおそらくは時間稼ぎだ、しかし翼と響を狙うにしては量が多すぎる。それはつまり、翼が守っているもう1人も標的に含まれているということだ。
「ッ、しまった!」
普段の翼だったらこの程度の量、問題なく迎撃できていただろう。しかし病み上がりにも近い彼女はまだリハビリすら途中であり、長い間動かしていない身体はわずかながら鈍っていた。そのせいで生まれた空白を、1体のノイズが通り過ぎていく。
「立花、避けろ!」
「ぐ……!」
大分回復してきたものの、高速で迫るノイズを回避するにはまだ足りない。ノイズは一直線に響の顔へと迫り――――
「おらぁ!!」
――銃口から放たれた弾丸を正面から受け、炭化していった。
「……なんだよ。どういうことだよ、フィーネ!」
銃口を下ろしつつ、クリスは叫ぶ。それを聞いたフィーネはため息を吐きながら彼女を見る。その眼光はサングラス越しでもわかるほど、冷たいものだった。
「わからない? もうあなたに用はないということよ」
「ッ!」
「逃がすか……!」
その眼光を真正面から受けたクリスは、思わず身を震わせる。覚えている様子を見たフィーネは妖しく笑い、身をひるがえして歩き始める。それを見たグラファイトが追撃しようとするものの、翼に殺到しているノイズの倍以上を相手取っている為になかなか動けない。
「雑魚共が、調子に乗るな!」
そう叫びつつ、グラファイトは無理やり走りだす。無防備となった彼の背中にノイズが次々に攻撃するも、その鎧を貫くことはできなさそうだ。
そして先程までフィーネがいた場所までたどり着いたグラファイトは、突き刺さっている双刃を引き抜く。そして力を込めつつ振り返り、それを開放した。
「すべて吹き飛ばす……!ドドドド、黒龍剣!!」
先ほど放たれた、無数の剣戟。それが今度は一撃に込められ、巨大な剣戟となって放たれる。その予兆を感じ取った翼は、響とクリスを抱えてその場から退避した。そしてノイズ集団の中心に着弾したそれは、大きな爆発と衝撃波を発生させる。そして周囲を土煙が再び覆い尽くし、その中で先ほどの一撃を目視した翼は思わずつぶやいた。
「何と言う一撃だ……!」
「くそ、なんで…………この、離せ!」
「なっ!?」
「待てよ、フィーネ!!」
翼の腕に抱えられていたクリスが、大きく暴れる。片腕で持っていたためそんなことをされれば当然抑えきれず、彼女は思わず手を放してしまう。そして自由になったクリスは素早く立ち上がり、森の中へと走りだした。その数秒の後に、衝撃波によって生み出された土煙が晴れていく。
すべてのノイズは塵と消え、地面は大きく陥没していた。それを確認したグラファイトは索敵するものの、フィーネの気配はかなり遠くに、そして薄くなっていた。
「俺の追撃を許さぬためか……小癪なことをしてくれる。だが――――」
そして同じくこの場から遠ざかっている気配、それを感じ取っているグラファイトはニヤリと笑う。
「あの女、やはりネフシュタンだったか。……フィーネよ、あいつを殺し損ねたのは痛いぞ?」
この動きからして、クリスはフィーネの元に向かうはずだ。ならば追跡するのはたやすいこと。そう判断したグラファイトは移動しようとするも、後方から迫りくる剣を察知して素早く迎撃した。
「……先ほど忠告したはずだ。だが、死にたいというのなら話は別だぞ、アメノハバキリ!」
「立花は既に立ち直っている。そして確かに私は十全ではないさ……だが、それでも私は一刻も早く、おまえを倒したいのだ!!」
そう叫びつつ、翼は更に力を込めていく。鍔ぜり合っている今の状況。弾き飛ばそうとしているのにできない事に、グラファイトはわずかながら困惑する。
「馬鹿な、この姿になった俺と互角だと?……いや、そういうことか」
「グラファイト! お前を討ち取って、あの日失ったすべてを取り戻す!!」
「持ち主の想いに応じて力を増す。素晴らしい力だな、シンフォギア!」
翼の強さの秘密を見抜いたグラファイトはそう叫び、力任せに振り払う。彼女はその勢いを流しつつ後方へ跳び、響の隣に降り立った。十分な時間を稼げたことで、響も戦える状態まで回復していたのだ。
「その様子ならば、俺の正体の説明は不要か」
「あぁ」
「あの……本当なんですか? あなたがその、ゲームの世界から来たっていうのは……」
グラファイトの確認に対し、二人は肯定する。そして響が恐る恐る問いかけ、それを聞いた彼は構えていた双刃を下ろして口を開いた。
「信じるかどうかは勝手にするがいい。だが、お前たちにとって重要なことはそこではないはずだ。違うか?」
「…………」
「はい。あなたを倒せば、奏さんを取り戻せると聞きました」
確信の意が込められた問いかけに対し、翼は静かに構えることで、響はしっかりと返答することで対応する。ただし二人の中に巡っている同じ感情を、グラファイトは既に見抜いてた。
「……フ、未だ確信はないという表情だな」
「「ッ!」」
自らの心情を見抜かれ、二人の眼が驚愕で見開かれる。だがその反応を見ても、やはりと思うだけでグラファイトの態度はあまり変わらなかった。
「当たり前だ。いくら嘘を嫌うお前の言葉とて、そう簡単に信じることはできない」
「帰ってきてくれるのなら、私だってそうして欲しい! でも、死んだ人が生き返るなんて……」
この二人の反応は当たり前の物だ。一度死んだ人間は、決してよみがえることはない。嘘を言う性格ではないグラファイトの言葉を、二課の面子は真実だと思いたい。しかし確証がない以上、流石に信用し切ることはできなかった。
「まぁいい、お前たちがそう考えるのは想定していた。……だからこそ、お前たち二人が揃うのを待っていたのだ!」
「いざ、参る!」
「私だって……って、通信?」
その言葉と共に、グラファイトは双刃を再び構える。それを見た翼は素早く踏み込み、彼に向かって肉薄した。同じく響も行動しようとしたが、不意に通信機が光っていることに気づいて、それを起動させた。
『――響君、聞こえるか!?』
「師匠!」
『よし、繋がった。響君、教えてくれ。グラファイトは今どこにいる?』
「え?……今、翼さんと戦っています。私も一緒に戦うつもりです!」
『やはりか……!』
「……どうしたんですか?」
通信は弦十郎からだった。そして二人が会話をしているうちにも、グラファイトと翼の戦いは激化していく。ただし激しくなっているのは翼の攻撃だけであり、彼はその連撃をただひたすらに防いでいく。
そして数十回撃ちあったのち、再び鍔迫り合いになった状態で翼が口を開いた。
「何を待っている?」
「……流石にわかるか」
「狙いかまでは知らん……だが、その前に決着を付けるだけだ!」
そう叫びつつ翼は体を捻らせることで無理やり剣を振り抜く。そしてその状態でバク転し、無防備に見えた背後を切ろうとしたグラファイトの頭上を通り過ぎる。そして振り向きざまに放たれた一閃は、素早くしゃがんだ彼の僅か上方を通り過ぎる。そこに追加の斬撃を繰り出すが、それは双刃によって受け流された。
「翼さん!」
『響君、聞いてくれ!……数分前、そこから離れた箇所でガングニールの反応があった!』
「え!?」
その攻防を見た響は、翼の援護に向かうため走りだそうとする。しかし弦十郎の報告を聞き、思わず足を止めて通信機の方を見てしまった。
「――――来た」
「ッ、逃がさん!」--蒼ノ一閃--
そう呟き、不意に翼から距離をとるグラファイト。それを逃がすまいと、翼は剣を巨大化させて剣戟を放つ。しかしその剣戟を見ても、彼は迎撃体勢をとろうとはしていなかった。
翼の放った剣戟は、一直線にグラファイトへと向かって行き――――
『姿を確認しようとしたが、カメラはノイズで映らなかった。だから俺たちはそいつをグラファイトだと思っていたんだが……』
「でも、あの人はここにいる。師匠、それって……!」
『本当は新しく出現したノイズの対処に翼を向かわせようとしたんだがな、そいつがノイズを全滅させた。そしてそいつは今、高速でそこに接近しているぞ!』
「……ようやくか」
「ッ!?」
――突如現れた存在、その者が持つ槍によって切り裂かれた。
その姿を見た翼は、身体が硬直してしまう。フードを被っている為、乱入者の顔は見えない。しかし、彼女の勘が何か警報を発していた。
「なぜ俺がわざわざお前たちが揃うのを待っていたのか……それは、証拠を見せるためだ」
「証拠、だと……?」
翼の問いには答えず、グラファイトは振り向く。乱入者と背中合わせのように立った彼は、顔だけをこちらに向けて口を開く。
「俺はフィーネを追う」
「…………」
「こいつを使え。……思う存分、やりあうが良い」
その言葉を聞くが、乱入者は何も言葉を発しない。だがそれを意にも介せず、グラファイトはその場から姿を消した。
そして離れる前に渡されたそれを、乱入者は手に持って起動させる。
『ドラゴナイトハンター、Z!』
「それは確か……ッ!」
起動されたガシャットを翼は確認するが、次に乱入者の懐から取り出された物体――ガシャコンバグヴァイザーを見て素早く身構える。
あれはたしか、以前の戦いでノイズを変容させた機械だ。だが現在、周囲にノイズはいない。なにをするつもりなのか、乱入者の一挙手一投足を見逃さないように翼は警戒していた。
『ガッチョーン……』
「変身」
――その声を聞くまでは。
「まさ、か……!」
この時、彼女の中で全てがつながっていった。
乱入者の動きに対する既視感にも近い違和感、グラファイトの言葉の意味、通信機から聞こえていた弦十郎からの報告。これらの条件から導かれる答えなど、これしかない。
そう判断した瞬間、翼は全力で乱入者へ駆け寄ろうとする。しかしそれよりも早くガシャットが挿入され、乱入者の手が腰に巻かれたバックルに固定されているガシャコンバグヴァイザーのスイッチを起動させた。
『ガシャット!――BUGLE UP!』
「ぐぅッ!?」
「翼さん!」
ガシャコンバグヴァイザーから音声が放たれると同時に、翼の目前に全身を覆えるほどの大きさのパネルが出現する。それは勢いよく迫り、彼女はぶつかった衝撃で吹き飛ばされてしまった。それを後方から走ってきた響が受け止めることで無傷で済んだものの、その間も眼前の状況は変わっていく。
彼女たちの目前に現れたパネルは、今度は乱入者の方へゆっくりと動いていく。そしてパネルが身体を通り抜けると、乱入者の容姿は変化しており、顔はあらわになっていた。そしてその顔を見た響は、身体がピクリとも動かなくなってしまう。
「う、そ……」
「…………!」
それは間違いなく、目の前の光景を理解するのに精一杯だからだろう。翼は何とか立て直しているものの、明らかにその心は揺れていた。
『ド・ド・ドドド黒龍剣!』
『ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター……』
そしてその様子を眺めていた乱入者は、遂に変身を終わらせる。そして二人に向かってゆっくりと右手に持つ槍を上げていき、切っ先を突きつけたところで口を開いた。
「さぁ、ゲームの始まりだ。ノンストップで、飛ばしていくぜ?」
『――ガングニール!!』
≪See you Next game……≫
※バグスターバックル →初期グラファイトが腰に装着していた奴を使用。あれ本編では一度も使われてなかったけど、何か没になった案でもあったのだろうか……?
※例のライダー →スペックはどこかで説明します。見た目としては、例のギアの色合いがイグナイトverになったのを想像してください。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
無銘さん、sevenblazespowerさん、クロトダンさん、シップスさん、ロンギヌスさん、ルーキさん。感想ありがとうございました!
マシュマロさん、葡萄味さん。評価ありがとうございます!
……うん、まぁあれです。
ようやく出せたし、このために私は一度リメイクしました。大・満・足!