紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第31話 『奏者たちよ、Let's fight!』

 

 

現在、響と翼の目の前に立っている乱入者。その変身した姿を見て、二人は恐る恐る口を開く。

 

 

「…………かな、で?」

「奏、さん……?」

 

 

乱入者――天羽奏は、その言葉を聞いて静かに笑う。そして自分の姿を確かめるかのように、視線を下におろした。

 

その鎧はシンフォギアのそれと酷似している。だが所々に龍を模した装飾が入っていて、後方腰部からは鋭い尾が出ている。また手に握っていた突撃槍も形状が変化しており、鍔の部分には竜の顔が口を開いた状態で付き、その口から刀身が突き出ていた。これがもしシンフォギアだった場合、どこかの世界では【幻獣型ギア】と呼ばれていただろう。

 

だが幻獣型ギアとは明確に違う点が2つある。1つは幻獣型ギアで白色だった箇所が、全て黒く染まっていることだ。暴走しているようにも見えるが、それはシンフォギアだったらの話である。そしてもう1つ、今の奏の武装は槍だけではなかった。

 

 

「うし、問題ねぇな。久しぶり……でもないか。元気か、翼?」

「…………」

「あれ? おーい、翼ー?」

 

 

奏が確認を終え、翼に問いかける。だが翼は視線こそ彼女の方を向いていたが、表情は完全に呆けていた。グラファイトがそう言っていたので、少しだけだが希望はあった。だがこうも早く自分の目の前に姿を現すとは思っていなかったので、まるで心の準備ができていなかったのだ。

 

それを見た響は彼女がしばらく動けないことを察し、状況整理するためにも急いで口を開く。

 

 

「あの!……奏さん、なんですか?」

「ん、翼の後輩か……立花響だったよな? あの時は災難だったな」

「え……あの時、ですか?」

「そうそう。デュランダル持って暴走したんだろ、大丈夫か?」

「あ、はい。元気ですけど……」

 

 

そう奏に聞かれて、響は答える。その言葉を聞いた彼女はどこか安心したように微笑んだが、少し悲しそうに目を伏せて口を開く。

 

 

「ならいい。……あと、ごめんな。あのライブで私がヘマったせいで、胸にガングニールの破片が刺さったんだろ?」

「いえ! 確かに大怪我はしました。けれどその事があったからこうしてシンフォギアを纏えますし、今まで以上に人助けができますから」

「そう言われちゃ、これ以上謝るのは野暮か。……っと、そうだ。もうちょっと聞きたいことが――」

「待て待て待て待て!」

「お、戻った」

 

 

相対しているというのに、世間話を始める二人。しかし時間が経ったおかげで翼は再起動でき、奏を見ながら慌てて口を開く。

 

 

「立花、一応あの奏が偽物と言う可能性をだな……!」

「翼、まだ部屋の片付け緒川さんに任せているのか?」

「あ、本物みたいですね」

「ガハッ!?」

 

 

奏が口にしたのは、翼と親しい者しか知りえない情報。さらにそれを聞いた響が即決したこともあって、翼は二重のダメージを受けてしまう。

 

翼はフラフラと膝を折って両手を地につける。それを見た奏は笑いながら近くにより、肩に手を置いた。

 

 

「ハハハ、ごめんな。こうして会えたもんで、つい揶揄っちまった」

「……やっと会えたのに、奏はやっぱりイジワルだ」

「そう言う翼はガチガチだ。あの子のおかげでちょっとは柔らかくなったけど、まだ硬い」

 

 

そう微笑みながら奏はポンと頭に手を置き、再び立ち上がって二人から距離をとる。ある程度離れたところで振り返り、再び右手に持つ槍を前方に突き出した。

 

 

「ま、これ以上の会話も野暮だ。ここからは、こっちで語り合おうじゃないか?」

「待ってください! なんで私たちが戦わなきゃ……!」

「私がこの姿になる際に使った道具、忘れたのか?」

「それは……ッ、翼さん?」

 

 

戦いを拒否しようとする響に対し、奏は腰にあるガシャコンバグヴァイザーとガシャットを指しながら問いかける。それを聞いて響は言葉に詰まるも、いつの間にか立ち直っていた翼が剣を構えて口を開く。

 

 

「立花、無駄だ。ああなった奏は、テコでも動かない」

「でも……!」

「さっすが翼、話が早い」

「なぜグラファイトと共に行動するのか、聞いても答えないのでしょう?……私だって言いたいことがたくさんある。この剣と共に、全てぶつけさせてもらう!」

「おうよ!」

 

 

そう叫び、翼は奏に向かって突貫する。上段から振り下ろされた剣を、彼女は槍を持って真正面から受け止める。そして勢いのまま後方に弾き飛ばし、翼が着地すると同時に薙ぎ払いを仕掛けた。それを翼は剣を持って防御し、切り返して攻撃する。何度か攻守を交代しながら、二人は獲物をぶつけ合った。

 

 

「ずっと、奏に会いたかった!」

「あぁ!」

 

「また、奏と一緒に歌いたかった!」

「そいつは悪いな!」

 

「もっと、奏と一緒にいたかった!」

「私もだ!」

 

 

何度もぶつかり合いながら、言葉を交わす二人。戦っているというのに、響には二人の表情はとても晴れやかに見えた。

 

 

「おらッ!!」

「ぜやぁ!!」

 

 

振り下ろされた槍と、振り上げられる剣。それは二人の中間でぶつかり合い、激しい衝撃波を発生させる。しばらく鍔ぜり合うが、奏はニヤリと笑って口を開く。

 

 

「おっと、今の私の獲物はこいつだけじゃないぜ?」

「なっ!?」

 

 

その言葉を飲み込む前に、翼の目の前に銃口が現れる。それを見た翼は素早く槍をはじいて後方へ跳躍する。その直後、先ほどまでいた場所に弾丸が着弾して地面を抉った。

 

その隙を逃さず、超電磁砲の様な銃身を左肩に収納しながら奏は槍を構えて突撃する。それを翼は剣をうまくぶつけて受け止めるが、空中のため踏ん張りがきかずに吹き飛ばされてしまう。

 

 

「翼さん!」

「余所見たぁ余裕だな!」

「ッ!」

 

 

飛んでいった方向を見て響が叫ぶが、直後上空から迫りくる奏を見て急いで回避する。振り下ろした槍が空振りに終わり、奏は響を見ながら手の甲を向けつつ指を曲げて挑発した。

 

 

「お前さんも来な。何か言いたいことがあるんなら、一緒にぶちまけちまえ!」

「……はい!」

 

 

勢いよく返事をして、響は奏に向かって走り出す。それを見た奏は再び銃身を展開し、迎撃するために何発か撃ち出した。彼女はそれを左右にステップすることで回避し、直前で跳躍して上空から拳で攻撃する。奏はそれを槍の腹で受け止めるが、衝撃が強く足元は陥没していた。

 

 

「やあああぁぁぁ!!」

「ッ、こんのおおおぉぉぉ!!」

 

 

響はそのまま押し込もうとするが、奏もまた全力で耐える。しばしの間均衡するが、遂に響の勢いが弱まってしまう。それを察知した奏は力を込めて押し返し、弾き飛ばすことに成功する。

 

 

「グ、なら……!」

「…………」

 

 

響は何とか空中で立て直し、距離をとって着地する。そして両手を近づけてエネルギーを溜め始める。それを見た奏だが、攻撃せずにその様子を見守っていた。手のひらの中で形成されたエネルギー球、それは徐々に大きくなっていく。

 

 

 

 

 

「――あぁっ!」

「おぉっと!」

 

 

だがある程度大きくなった所で弾けてしまい、その衝撃で響は後方に飛ばされてしまった。その衝撃波は奏の元まで及び、思わず声を上げてしまう。そこまでダメージはないのですぐ立ち上がれたが、その表情はあまり明るくない。

 

 

「駄目だ、やっぱりまだ固定できない……!」

「……なるほど、まだアームドギアは展開できないか」

「はい……でも、私の想いをこの拳に込めることはできます!」

「へ、そうこなくっちゃ!」

 

 

響がまだアームドギアを展開できないことに気づき、奏はそう呟く。それに対し彼女は返事し、気を取り持ち直して再び突貫した。その様子を見た奏は笑い、今度は槍を持って迎撃する。

 

次々に振るわれる槍を響は時に避け、時に受け流して対応する。そして隙が生まれれば素早く反撃するが、それを奏は最小限の動きで回避していく。

 

 

「ま、近接戦主体だよな……なら、こいつはどうだ?」

「えぇ!?」

 

 

その言葉と共に、奏は左手を伸ばす。すると腕部の装甲が展開し、格納されていた刀身が姿を現す。

 

インド発祥の武器であるパタの様に固定された長剣と、右手に持つ槍。奏はその2本を使って猛攻撃を仕掛ける。嵐のように放たれる連撃に、響は徐々に防御が間に合わなくなっていき、少しずつ攻撃がかすり始めた。

 

 

「速い……!」

「おらおら、どうした! このままじゃすぐにゲームオーバーになっちまうぜ!?」

「……良いんですよ。私がこうして正面の連撃を押さえれば!」」

「――背中ががら空きになる!」

 

 

奏の猛撃に対して響は叫び、それと共に奏の背後からも声が聞こえる。その声に気づいた奏が顔だけ振り向かせると、上空にいる翼が巨大化させた剣を投擲する構えをとっているのが見えた。

 

すぐさま迎撃の体制をとろうとするが、両手がピクリとも動かない。急いで視線を正面に戻すと、一瞬のスキをついて両手の武器をつかむ響の姿がそこにはあった。

 

 

「なにッ!?」

「はあああああぁぁぁぁ!!」

 

 

--天ノ逆鱗--

 

 

無防備となった奏に背後に向かって、巨大化した剣と共に翼が突撃する。このままでは奏は避けることができず、直撃してしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なーんてな」

「うそっ!?」

「なんだと!?」

 

 

しかし奏はそれを回避した。両腕が塞がれたこの状況、全力で押さえている響を振り払ったのだ。それによって自由になった彼女は側方へ素早く跳躍し、翼の一撃をも回避する。

 

 

「ハハ、今のはマジで焦った」

「……それ、飾りじゃなかったのね」

「あぁ、生憎とな」

 

 

空振りに終わり、着地した翼は響を吹き飛ばした正体――大きな尻尾を見る。それを聞いた奏もまた尻尾を見て、ユラユラと動かした。どうやらあの尻尾は奏の意思に応じて自由に動かせるようである。

 

そして奏は視線を正面に戻し、展開していた長剣を格納する。それと同時に槍を肩にのせ、口を開いた。

 

 

「随分と強くなったな、翼」

「あの日からずっと鍛えていたもの。そう言う奏だって、あの時とは比べ物にならないわよ?」

「私も今日までの間、何もしていなかったわけじゃないからな。……それにお前さんも、結構使いこなせてるじゃねえか」

「え!?……そんなことないですよ。翼さんや奏さんみたいに、アームドギアを展開できていませんし」

「ふむ……ま、これくらいは良いか」

 

 

響の様子を見た奏は、しばし考え込むそぶりを見せる。そして結論が出たのか、顔を上げて口を開いた。

 

 

「先輩からのアドバイスだ。お前、どんなことを考えて戦ってる?」

「え?」

 

 

それを聞いて、響は困惑する。翼もまた奏の行動に眉を顰めるが、その行動を阻害しようとはしなかった。この行動は考えなしの物ではない、そう思ったからだ。

 

 

「いいから、答えてみろって」

「それは……自分の想いを伝えることです」

「そりゃどんな風に?」

「えっと……最速で、最短で、一直線に。アームドギアのない私は、この手でそれを伝えることしかできませんから」

「なるほど、なるほど……やっぱりな」

「え?」

 

 

合点が行ったような表情を浮かべる奏を見て、響は困惑の表情を浮かべる。だがそれを聞いた翼もまた、何かを思いついたような表情をしていた。

 

 

「いいか? アームドギアってのは、奏者の心を反映して形作るもんだ。別に私や翼のように、武器の形になることだけが正解じゃないんだよ」

「そうなんですか?」

「奏、それって……」

「あぁ……自分の奥底の想いをよく思い出してみな。すると自然と見えてくるはずだぜ、立花響のアームドギアが」

ガッシューン……

 

 

そう言って後方へ跳躍する奏。少し距離を開けて着地した彼女は、バグヴァイザーに刺さっているガシャットを引き抜いた。

 

 

「さて、そろそろタイムアップが近いんだ。ラストスパートと行かせてもらうぞ!」

ガシャット! キメワザ!

 

 

そして槍の鍔、龍の頭にある挿入口にガシャットを突き刺す。そして音声が響くと共に、龍の眼が光って動き出した。

 

 

『――――――――ッ!!』

「翼さん!」

「あぁ! 行くぞ、立花!」

 

 

響の声にそう返し、翼も剣を構える。その間に龍は咆哮を上げ、その口から炎を吹き出す。それは刀身にまとわりつくように展開し、大きな突撃槍の刀身を形作る。それを見た響はクリスの時と同様にエネルギーを右手に込め、翼は剣を巨大化させて刀身と脚部のブースターを起動させた。

 

力を溜め続ける3人、それが完了するのは全く同タイミングであり、3人は同時に走り出した。

 

 

 

 

 

ーーDRAGOKNIGHT CRITICAL FINISH!ーー

 

ーー双星ノ鉄槌-DIASTER BLAST-ーー

 

 

 

「おらああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「いけええええええぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

奏の放つ炎を纏った一撃に対し、響と翼はそれぞれの武器を同時に振るう。それらはぶつかり合い、大きな爆発音とともに周囲を凄まじい衝撃波で覆っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったか」

「あぁ。ありがとうな、あいつらと戦わせてくれて」

 

 

そう言いながら、奏はソファに身を投げ出す。流石にはしゃぎ過ぎたようで、全身に心地よい疲労感が巡っていた。

 

その様子を横目に、グラファイトは武器の手入れを続ける。進化したことで双刃も強固になった。だが久々のレベルアップもあって、念のためメンテナンスをしているのだ。

 

 

「構わんさ。アメノハバキリは十全ではなく、ガングニールはまだ未熟だからな」

「翼もあの子も、大丈夫そうだった。……私の頼み、両方やってくれたんだな」

「元より1つ目は博打、上手く行く保証などなかった。……それ以前に、人間から借りを作った挙句1つも返せないなど俺自身が許せん」

「その私はもう人間じゃないんだけど……まぁいいや。で、そっちの首尾は?」

「上々だ。奴の拠点を突き止めた、明日にでも襲撃する」

 

 

グラファイトのぶっきらぼうな声を聞き、仰向けに寝返った奏はそう返す。そして彼の成果を聞くために問いかけ、それを聞いた彼は微笑を浮かべてそう返した。

 

それを聞いた奏は上半身を起こし、楽しそうに笑って口を開く。

 

 

「そいつはいい、私も行くぜ」

「好きにしろ。だが、俺の足は引っ張るなよ?」

「大丈夫だって。このまま連戦するならともかく、行くのは明日だろ?」

 

 

そんだけ時間があるなら回復しきるさ、奏はそう言い切った。それを聞き終えたあたりでグラファイトは手入れが完了し、立ち上がる。

 

 

「これで十分だな。……おい、渡していた物をすべて返せ」

「あいよ」

 

 

奏はそう返してガシャットとバグヴァイザー、バックルをグラファイトに向かって投げる。それを彼は全てキャッチし、バグヴァイザーを起動させた。

 

 

infection! LET`S GAME! BAD GAME! DEAD GAME! WHAT`S YOUR NAME!? ――THE BUGSTER……!

「俺は朝まで鍛錬する。そこにあるものは好きにするがいい」

ガッチョーン……ガシャット!

「いってらっさーい」

 

 

怪人態に変身したグラファイトは、バックルを腰に巻いてバグヴァイザーを固定する。そしてガシャットを刺して、背後に現れるパネルを見ながら奏にそう話す。そして奏の返事を聞く前に、パネルの中に入っていった。

 

恐らくグラファイトは【ドラゴナイトハンターZ】の中に入り、現れる敵キャラを相手に鍛錬するつもりなのだろう。その様子を見送りながら、彼女はそう考えていた。

 

 

「さて、なにしようか。この身体になったせいか、疲れても眠くなりはしねぇし……お?」

 

 

そう奏が考えていると、ふと視線の先にあるものが止まる。それを見た彼女はニヤリと笑い、それに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「好きにするも何も、私がここまで持ってきたんだっての…………あー、やっぱ美味い」

 

 

久しぶりに味わったパフェの甘味は、何となく体に染み込んでいくように感じた。

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※仮面ライダーガングニール(仮名) →外見は前話の説明通り。銃の格納及び展開方法は、ガンダム種のランチャーストライクみたいな感じ。またガングニールを持った状態で変身すると、鍔がガシャットホルダー付の龍の顔になる。
※グラファイトの奏に対する態度 →彼女の終盤のセリフに注目。……つまりはそういうこと。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
ロンギヌスさん、Zarathustraさん、通りすがりの錬金術師さん、瑛松さん、無銘さん、sevenblazespowerさん、シップスさん、作家の観測者 主さん、クロトダンさん。感想ありがとうございました!
ノッブブーンさん、マイン05さん、十埜さん、作家の観測者 主さん、匿名さん。評価ありがとうございます!


奏の前だと防人じゃなくなる翼さん、控えめに言って大好きです(真顔)。


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