紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第4話 『Resetされたパワー!?』

 

 

彼女たちとの話し合いも終わり、結果的にグラファイトは1週間の間ここに留まることとなった。ナスターシャから部屋を提供すると提案されたが、彼はそれを拒否。用があればこちらから出向く、とだけ言って施設を出ていった。

 

断った理由は普通に人間嫌いというのもあるが、バグスターという種族は睡眠も食事も必須ではないため、住居を持つ意味もないからだ。F.I.Sの場所を認知した以上、その気になれば瞬間移動で向かうことはできる。そこで彼は適当な場所で1週間を過ごすつもりだった。

 

そう、何事もなければ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラファイトがこの地に現れてから3日後。朝日がまだ昇ったばかりの早朝に、彼は森の中で鍛錬を行っていた。

 

 

「フン、ハァッ!!」

 

 

己が相棒である双刃を振るい、上下左右へと飛び回る。そこには彼一人しかいなのだが、彼の眼には確かに敵がうつっていた。その相手は二人おり、一人は剣を、一人は重火器を用いて彼に迫りくる。

 

彼はその猛攻を時には防ぎ、時には受け流し、時には避けていく。そして隙を見つけると次はこちらの番だとでも言うように双刃を振り、拳や足をぶつけていく。その動きの激しさに草木は切られ、周りの地面は荒れていく。予めこうなるとわかっていたので偶然見つけたこの空間を使っていたのだが、それでもこの有様だった。

 

そして攻防が始まってからどれほどの時間が経っただろうか。上段に振りかぶった双刃を下ろす直前、グラファイトの動きがピタリと止まった。

 

 

「…………ここまでか」

 

 

そう呟き、ガシャコンバグヴァイザーを外して変身を解く。そのまま深呼吸をし、いまだ昂っている感情を抑える。しかし焦燥感を拭うことはできず、握った拳が震える。

 

 

「まだだ、こんなものでは足りない……。どうすれば……?」

 

 

そのまましばらく考え事をしていたが、何かを思いついたように顔を上げる。しかしその表情はしかめっ面であり、いやしかし……などと呟いていた。

 

そしてそのまま考え事を続けてなんと1時間後。なにか覚悟を決めたかのような表情のグラファイトはその場を後にし、とある場所に向かって移動し始めた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鍛錬方法、ですか?」

「あぁそうだ。状況が状況でな、今までならば常に実践の中で鍛錬してきたのだが……」

 

 

場所は変わってF.I.S.研究所の外庭。そこでグラファイトは呼び出したセレナにそう問いかけた。

 

この数日間、二人はなんだかんだ交流を続けていた。あのナスターシャとかいう女性から言われたのか、はたまた自分の意志なのか。それはわからないがセレナは積極的にグラファイトに話しかけてくる。あの日のやり取り以降、多少は彼女のことを認めたのか、こうして質問をしに訪れる位には態度が柔らかくなっていた。

 

そして途中言葉を濁したグラファイトを見て、セレナはその続きを察した。

 

 

「なるほど、ここではその相手がいないと言うわけですか」

「……まぁ、そう言うことだ。しばらく考えては見たが埒が明かん、何か心当たりはあるか?」

「そうですね……。えーと、あるにはあるんですけど…………」

「……やはりか」

 

 

どうにも歯切れが悪いセレナの反応を見て、グラファイトはわかっていたかのように顔を歪ませる。今朝思いついた内容はまた別であり、今回彼女を呼び出したのはあくまでその確認だ。

 

 

「一応聞きたい。それは?」

「……戦闘訓練用シミュレーターです、研究所内にある」

 

 

この返答を聞き、グラファイトは自分の予想が正しかったのを少し恨む。そして同時に思う、なぜあんなことを思いついてしまったのか、と。

 

 

 

そもそもなぜグラファイトが鍛錬をしているのか、それにはとある理由がある。しかし周りに敵はおらず、できることと言えばかつての好敵手をイメージし、それと戦うぐらいだ。しかしイメージはイメージ。最初こそ鍛錬にはなったがすぐに限界が訪れ、彼は行き詰ってしまった。そこで何か方法はないかと考えているうち、彼は思いだしたのだ。セレナ達F.I.S.のことを。

 

あそこでは何かを研究している。その一環があの怪物であり、セレナが纏っていた鎧だ。そして怪物が暴れていた時、奴らはセレナに鎧をまとわせて抑制しようとしていた。

 

つまりあの鎧は力を持った武具ではないか? そしてそれを扱う以上、何かしらの訓練を行える環境があるのではないか?

 

その発想に至った時、グラファイトは自分自身を恨んだ。多少譲歩する事にこそしたが、基本的に彼と人間の関係は敵対だ。その敵であるはずの人間の施設を扱うなど、奴らを多少評価しているとはいえ彼には到底許容できなかった。

 

だがしかし、現状それ以外の手段が思いつかないのも事実。彼は長時間悩みに悩んで、やるかどうかはともかくまずはそれが可能であるかを聞きに行くことにしたのだ。

 

 

 

 

 

――――そしてその結果が先ほどの会話である。

 

 

「あの、やっぱり人間は嫌いですか?」

「……当たり前だ」

 

 

悩んでいる理由が分かっているのか、セレナは少し悲しそうな表情でグラファイトに問いかける。それに対し彼は少し歯切れが悪そうに答える。別に隠すつもりなど微塵もないが、暗に彼女も嫌いと言ってるようなモノだ。流石に何も感じないわけではなかった。

 

 

「そう、ですか……」

「――ッ」

 

 

そしてその予想はあたり、セレナの表情は暗くなる。別にこんなことを話しに来たわけではないのに、なぜこうなってしまったのか。彼女にどんな言葉をかけるべきかわからず、グラファイトは頭を掻く。

 

この状況はまずい。どこからともなく仲間の『そんなんじゃ女の子は振り向かないよ?』なんてキザな台詞が聞こえてきそうなくらいにまずい。

 

とにかくこの状況を打破すべくグラファイトは口を開こうとするが、セレナが何か考えているのを見てそれが止まる。

 

 

「……うん、ならこうすれば――――よし。マムには何とか説明して…………」

「……おい」

「じゃあ問題は…………そうだ、あの時間帯なら…………」

「おい!」

「……え、ひゃっ!? って、あぁごめんなさい!」

 

 

声をかけるが反応せず何か呟いてるのを見て、グラファイトは少し強い口調でセレナを呼ぶ。それに驚いたのか彼女の肩が少し跳ねるが、今まで彼をほったらかしにしていたことに気づいて慌てて謝った。

 

 

「それは別にいい。その、なんだ…………この話は忘れろ」

 

 

それに対するグラファイトの反応がこれだ。このまま泥沼と化すのを恐れたのか、話をなかったことにしようとする。原因を突き止めるため新たな鍛錬方法を見つけたいが、もし日本に戻り、仲間と合流できるのならその必要はなくなる。未だにこの世界がそうであるかが分からないため少々博打になるが、もうこれしかないと彼は判断した。

 

そしてそれを言い終えたのち、この場を離れようとする。しかし慌てた様子でセレナがその腕をつかんだ。

 

 

「あの、待ってください。あなたは人が作ったシミュレーターが嫌なんですか? それとも私たち人間に見られるのが嫌なんですか?」

「何を言って…………」

「答えてください、お願いします!」

「…………後者だ」

 

 

確かに前者の理由もある。しかしそれ以上にグラファイトにとっての懸念は、シミュレーターを行う過程で自身のデータを記録されてしまうのではないかということだ。未だに情報不足である以上、出来得る限り自身の痕跡は消しておきたいというのが彼の考えであった。

 

 

「じゃあ誰にも見られず、記録などにも残らずにできるのなら、シミュレーターは使いたいですか?」

「おい、何を企んでいる?」

 

 

セレナの問いには答えず、逆にグラファイトが彼女に問いかける。しかしそれは暗にyesと返答していることを示しており、その反応を見たセレナは嬉しそうに両手をぐっと握る。

 

 

「一つ、それができるかもしれない方法を思いつきました。では、私は準備をしてきます!」

「っ、質問に答えろ! 勝手に話を進めるな!?」

 

 

少しだけ待っていてくださーい! と言い残してセレナは研究所内へ走っていく。あまりにも突然な行動に、グラファイトの右手は標的を見失って空中を漂っていた。

 

 

「なんなんだ、あいつは…………」

 

 

そして戻ってきたセレナから告げられる内容を聞いて、グラファイトが呆れ返るのはもう少し後の事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は過ぎて、現在の時刻は○○時。静まり返った敷地内の片隅で研究所の扉がゆっくりと開き、そこからセレナがこそこそと出てくる。その表情は緊張しており、常に周りの様子を気にしているかのようだった。

 

そして周囲を見渡し、目的の人物を見つけたところで笑顔になって右手を振る。結果的に強引に誘ったので来るのかどうかはわからなかったが、なんだかんだで彼は来てくれたようだ。

 

 

「こっちです!」

 

 

なお大声を出しているかのように見えるが、もちろん小声である。今この場にセレナ達がいることは誰にも知られてはならないのだ。

 

 

 

 

 

――――そう、この○○時。まごうことなき深夜なのである。草木も眠る時間を過ぎたあたりと言ったところか。

 

 

「……で、あの時言っていたことは本当にできたのか?」

 

 

研究所内を歩きながらグラファイトはセレナに尋ねる。それを聞いたセレナは恥ずかしそうに手を組んで口を開く。

 

 

「はい、なんとか……。マムに事情を言ったら、特別に許可してもらいました」

「そうか……」

 

 

今更自分のした行動に恥ずかしがっているのだろうか、彼女の顔は赤い。

 

セレナ自身、こうも積極的に行動ができるようなったことに驚いている。以前の彼女は穏やかと言うよりは大人しい性格で、自分から行動し、主張するような人間ではなかった。それがこうして変化が生じているのには、もちろんきっかけが存在する。

 

それは現在セレナの少し後ろを歩いている者……そう、グラファイトであった。あの怪物――アルビノ・ネフィリムをも圧倒する力を持ち、自分自身に強い一本の芯が通ったかのようなブレのなさ。人間を嫌っているようだが、嫌いな人間である自分とこうして話をしてくれる器の大きさ。

 

端的にいうとセレナは、グラファイトに憧れているのだ。そこで彼に少しでも近づくため、このような変化が生まれている。なお、それを察知したとある人物がグラファイトに対して敵意を抱くのだが、それはまた別の話であり、セレナはそのことに一切気づいていない。

 

 

 

 

 

「……あ、着きました。ここがシミュレーションルームです」

 

 

そうこうしている内に目的地に着き、セレナは機器の前に座っている女性の元に駆け寄る。グラファイトは一瞬警戒したが、その女性に見覚えがありすぐにそれを解く。

 

 

「どうやら問題なく来てくれたみたいですね、セレナ」

「うん! ……ところでマム。私は何をすればいいの?」

「基本的にはシミュレーションの開始と終了。後は難易度の調整だけですよ」

「……本当に問題ないのだろうな?」

 

 

操作を教わっている様子を見ながら、グラファイトはナスターシャに問いかける。それに対して彼女はしっかりと彼の顔を見て答えた。

 

 

「えぇ、話はセレナから聞いています。ここは完全防音になっていますので絶唱……いえ、街を丸ごと破壊するような一撃を放たない限りは音は漏れません。加えて既に使用痕跡は消してあります。何か起きない限り、このシミュレーターが最後に起動したのは昨日の18時になるでしょう」

「……そうか」

 

 

つまり、情報隠蔽は完璧だということらしい。乗り掛かった以上、この船を下りる気はグラファイトにはない。だがそれでも警戒するに越したことはないのだ。

 

 

「……はい、こちらの準備はできました。ではセレナ、後は任せましたよ」

「はいマム。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

 

 

そう言葉を交わし、ナスターシャは部屋を出ていった。操作説明をセレナにしていたことから、これはグラファイトに配慮しての行動だろう。

 

それを見届けたグラファイトはシミュレーションルームの中に入る。周りを見渡す限り、ただの少し広めの部屋にしか見えないが、様々な機械が取り付けられていた。

 

 

『あーあー、テスト。聞こえていますか?』

 

 

部屋に声が響いてくる。セレナが操作室からアナウンスしているようであり、グラファイトは聞こえていることを頷くことで示した。

 

 

『はい、では始めますね。ステージ3:街郊外、セットアップ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――その瞬間、周りの景色は一変した。

 

 

「ほぅ、これは……」

 

 

無機質な部屋は青空が広がる近代都市へと変貌する。試しに走ってみるが端にたどり着く様子はない。どうやら何かを気にする必要はなさそうである。

 

 

『準備は大丈夫ですか?』

「問題ない。始めろ」

『はい。では対ノイズ戦シミュレーション、レベル5を開始します』

 

 

セレナからの問いに返答しつつグラファイトはガシャコンバグヴァイザーを取り出し、ボタンを押す。低い電子音が鳴り響く中、彼は周囲へ意識を集中させる。

 

 

「――――っ!」

 

 

瞬間、グラファイトは左へ跳んだ。そしてその直後、先ほどまで彼がいた場所へなにかが突撃する。

 

 

「随分とせっかちだな……培養!」

『infection! LET`S GAME! BAD GAME! DEAD GAME! WHAT`S YOUR NAME!?』

 

 

その言葉と共にグラファイトは変身する。彼の全身を細かいブロックが覆い、その姿を戦装束へと変えていく。

 

しかし敵は一体ではないようで、同じような存在がもう一体、変身中のグラファイトに向かって突っ込んでくる。その勢いはとても素早く、一直線に彼の頭部へと向かい――――

 

 

 

 

「甘い!」

『THE BUGSTER……!』

 

 

――――その手に持つ双刃によって、地面へ叩き潰された。

 

 

「随分と素早いようだが、その分制御は甘いな。軌道さえ見切れば、たやすく撃ち落とせる」

 

 

叩きつけたそれが消滅したのを確認し、グラファイトは改めて周囲を見渡す。すると視界の端々で同じような存在が次々に現れる。

 

その数、優に100は超えているだろう。そのうち10体ほどが身体をねじれさせているのを見て、彼は双刃を構える。

 

 

「少し侮っていたが、これはなかなか楽しめそうだ。……さぁ、来いっ!!」

 

 

そう叫び、敵の集団に向かって突っ込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

場所は変わって操作室。戦闘している様子を俯瞰で見ていたセレナはふと違和感を感じた。

 

そこで仮想敵相手に大立ち回りをしているグラファイトをズームしてみる。すると、その違和感にすぐ気づくことができた。

 

 

 

 

 

「あの鎧、赤じゃない…………緑?」

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※今回独自設定は特になし。なにか違う点があれば感想等で教えていただければ幸いです。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

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