タイトルのネタがほぼ尽きた……ヤベーイ。
――時間はさかのぼり、数十分前。
「リディアンの破壊、依然として拡大中!」
「学生の避難状況は!?」
「未来さんたちの協力で被害は最小限に抑えられています!」
「流石にゼロではいられないか……!」
二課の司令室、そこは慌ただしい状況となっていた。
超大型ノイズの出現に伴って響と翼を派遣したところ、戦闘が始まった直後にリディアン音楽院周辺にノイズが追加で出現したのだ。さらにジャミングがかけられたのか、現在は彼女たちにも通信がつながらなくなっていた。
「4人の奏者がノイズとの戦闘を開始したタイミングでの通信妨害に、慎次から送られてきたこのデータ……関係がないはずがないか」
「風鳴司令、これはあちらが仕掛けてきたということなのでしょうか?」
現状を振り返りつつ、通信が途切れる寸前に緒川から送られたデータを眺める弦十郎。そして自分の仕事をこなしつつ、藤尭は彼に問いかける。
おそらくな、そう弦十郎は答えつつ席を立つ。そして振り返って司令室の扉へ向かった。
「ノイズの対処は任せた。一課と協力しつつ学生と周辺住民の避難を最優先! お前たちもヤバくなったらすぐに脱出しろよ!」
「「「はい!!」」」
背中越しに司令室のメンバーからの返事を聞き、安心して弦十郎は指令室から出ていく。そのまま廊下を突っ切り、目的地に向かって走り出した。
「天に届くほどの高さを、地下に伸ばすことで確保した塔。……そんなもの建てられる場所なんざ、ここしかないわな」
そして数分も経たないうちに目的地に付き、そう言って弦十郎は立ち止る。そして通信機をセンサーにかざすことでロックを解除し、扉を開けて中に入った。
彼が通り抜けると扉は締まり、個室ごと下に降りていく。今彼が乗っているのは二課内で使用されるエレベーター、その中でもリディアン内部と繋がっている最も規模が大きいものだ。
「…………了子」
ここも含め、二課の施設建設の監修をしていたのは了子だ。緒川の予測通りだった場合、隠蔽しながらカ・ディンギルを建設することは容易いだろう。
そう考えつつ、弦十郎はネクタイを緩める。そして袖を改めて巻くって動きやすい格好にし、目を閉じて軽く深呼吸をする。それを何度か繰り返した後で目を開き、前を見た。ちょうどそのタイミングでエレベーターは止まり、扉が開く。
「デュランダルの元へは行かせんよ」
「……漏洩した情報を逆手に、上手くいなせたと思ったのだが」
「調査部だって無能じゃない。米国政府のご丁寧な道案内でお前の行動にはとっくに行き着いていた」
正面に立つ存在が呟き、廊下を歩きながら弦十郎は問いに答える。その瞳には戦意を宿し、拳は握りしめられていた。
「後は燻り出すため、敢えてお前の策に乗りシンフォギア奏者を全員動かしてみせたのさ」
「フ、陽動に陽動をぶつけたか。食えない男だ」
目の前の存在はそう言って笑い、弦十郎の方へ振り向いて両手の鞭を持つ。それを見た彼もまたファイティングポーズをとり、いつでも始められる準備を整える。
「1つ聞きたい、慎次はどうした?」
「あぁ、あの男か。無謀にも私に牙をむいたのでな、その対価を支払ってもらった」
「……そうかい」
互いに動かぬまま、数秒間睨みあう。そして相手が動き出すのを察知した瞬間、弦十郎は正面に向かって飛び出した。
「ネフシュタンの鎧と完全なる融合を果たしたこの私を、止められるなどと思い上がるな!」
「女に手を上げるのは気が引けるが……。一汗かいてから後で話を聞かせてもらおうか、フィーネ……いや、了子!!」
迫りくる鞭の起動を見極め、体を捻らせることで最小限の動きで回避する。そしてその勢いを維持したまま拳を振りかぶり、正面の存在――フィーネの胴体を狙って突き出す。それを彼女は引き戻した鞭を盾状に展開して正面から受け止めた。
「ほぉ……お前はまだその名で私を呼ぶのだな」
「まぁな。ネフシュタンの鎧と混じったことで大分変わっちまったが、それでもお前の気配は間違えんよ!」
「ッ、減らず口を!」
弦十郎は至極真面目に答えたのだが、フィーネはそうは受け取らなかったようだ。軽く目を見開いてから彼を力任せに吹き飛ばし、追撃するために鞭を振るう。それを見た彼は天井を殴ることで無理やり方向転換し、壁に跳んでさらに蹴りつけることで再びフィーネに突撃する。
「おおおおおぉぉぉッ!」
腕を振りかぶり、渾身の力を込めて放つ。それはフィーネに再び回避されてしまうが、直前まで彼女が立っていた地面を打ち抜いて大きな穴をあける。それを見た彼女は反撃しようとするが、あることに気づいて後方に跳躍した。
距離をとって着地したフィーネは、肩部の鎧を見る。そこは弦十郎の拳が近くを通りすぎただけなのだが、僅かながらひびが入っていた。
「……チッ、肉を削いでくれる!」
それを確認したフィーネは忌々しそうに舌打ちし、両腕を振り上げて両方の鞭を狙って振り下ろす。それを見た彼は両足を踏みしめ、両手を広げてそれを握り止めた。
「なッ!?」
フィーネは目の前の常識外れの光景を見て、思わず思考が固まる。その隙を彼は逃さず、全力を込めて引き寄せる。そして引っ張られたことにより無防備になった彼女の腹部を狙い、全力でアッパーを放った。
「ガッ……!」
「…………」
拳を最後まで振り抜き、フィーネは弦十郎の背後に飛ばされる。うつぶせで彼女は倒れ込むが、どうにか上半身だけでも起こそうと身体に力を込める。その様子を見つつ、彼は先程の手の感触を確かめていた。
(人間とは明らかに違う感触。……ネフシュタンの鎧と融合した、ていうのは本当みたいだな)
「完全聖遺物を、退けるだと……? 一体どういうことだ!」
「なんだ、知らないのか?」
上半身を起こすことに成功し、フィーネは弦十郎を睨みつける。その視線を真正面から受け止めて、弦十郎は再び構えをとって口を開いた。
「飯食って、映画見て、寝る! 男の鍛錬はそいつで十分よ!」
「……なれど、人の身である限りは!」
真剣な表情で弦十郎は叫び、それを聞いたフィーネは顔をしかめて両腕を前に突き出す。すると今度は鞭が自動で動き出し、不規則な軌道を描きながら連続で攻撃を始めた。
その様子から受け止めることは難しいと弦十郎は判断し、迎撃する方向にシフトする。連続で迫りくる鞭の順番を見極め、一つ一つを拳で撃ち落としていく。
お互いに立ち止まっているが、その間では激しい攻防が繰り広げられる。だがフィーネは鞭は自動で振るわれている為両腕が空いており、その手に懐に納めているソロモンの杖を抜き取った。
「ッ、させるか!」
杖が突き出されたのを見て、フィーネがノイズを呼び出そうとしていることを察知した弦十郎。彼はそう叫んで鞭を地面に叩き落とし、足元を壊す。そしてその衝撃で空中に浮きあがった石の破片に狙いを定め、蹴りを放つ。
高速で飛ぶ石の破片。それは正確にソロモンの杖に命中し、彼女の手から弾き飛ばした。
「チ……ッ、しまった!?」
「ノイズさえ出させなければ!!」
背後に飛ばされたソロモンの杖に視線を向けるが、弦十郎の声を聞いてフィーネは急いで正面を見る。するとそこには生まれた隙を逃さずに鞭の嵐を切り抜け、再び彼女に肉薄する弦十郎の姿があった。
溜めていた力を開放し、全力で拳を振るう弦十郎。それはフィーネが何かを話す前に顔面に直撃し、彼女を吹き飛ばす。勢いよく飛ぶ彼女は突き当りの扉にぶつかることでようやく止まり、ズルズルと座り込んだ。
「……こいつは慎次の分だ、了子」
そう言いつつ、彼女の元まで歩く弦十郎。
いくら完全聖遺物と融合したとはいえ、今のフィーネの気配は大分薄くなっている。未だ弦十郎は健在であり、ノイズを呼び出せるソロモンの杖は彼のはるか後方に落ちている。現状彼女に打つ手はほとんどないだろう。
「なぜ止めを刺さない?」
「……防衛大臣の殺害手引と、デュランダルの狂言強奪。そして本部にカモフラージュして建造されたカ・ディンギル。俺たちは、全てをお前の手の平の上で踊らされてきた」
「なら……」
「だが、それでも同じ時間を過ごしてきたんだ。その全てが嘘だったとは、俺には…………」
フィーネの前に立ち、動こうとしない彼女の呟きに弦十郎は答える。その時の表情を見た彼女は、僅かに笑みを浮かべて口を開いた。
「――全く、本当に甘いわね」
「言ってくれるな……性分だよ」
苦笑しながら弦十郎は手を差し出す。それを見たフィーネは表情を崩さぬままその手を見つめ、そしてゆっくりと自分の手を伸ばして掴んだ。
『今すぐ彼女から離れてください、風鳴司令!!』
「ッ!?」
――その瞬間、フィーネの口から男性の声が響く。しかもその声には聞き覚えがあり、弦十郎は目を見開いて驚愕した。
「その声、慎次か! 何でお前がッ!?」
急いで事情を聞こうとするが、声が聞こえるのと同時にフィーネが弦十郎に抱き着く。先ほどの緒川の忠告もあって一先ず引きはがそうとするが、先程までの鈍さが嘘のように、その腕はピクリとも動かない。
「この……!」
このままでは離れることが難しいと感じた弦十郎は、無理やりにでもはがそうと力を込め始める。しかしその視線が彼女のある一部分を見た瞬間に止まり、その箇所を凝視した。
先程までは気にしてなったが、その部分は彼女が纏うネフシュタンの鎧の肩部。
弦十郎の攻撃によって入った罅が、修復されてなかったのだ。
『――その甘さがお前の最大の弱点だ、風鳴弦十郎』
「ッ!」
再びフィーネから言葉が放たれる。それは間違いなく彼女本人の声なのだが、抱き着いている彼女の口は動いていなかった。
その瞬間、弦十郎は己の失態に気づく。目の前のフィーネの気配が変わっていたのは完全聖遺物と融合したからではない。
『私自身のクローンを用いて作った自信作だ。そして、これは耐えれるか?』
――半分以上が機械でできている、フィーネが生み出した
その事に気づいたが、もう遅い。フィーネの全身が光り、二人を中心として爆炎が廊下全体を駆け抜けた。
コツコツと、彼女は廊下を歩く。その途中に落ちている杖を拾い、更に歩みを進める。
いや、ここからは最早廊下と呼べるのだろうか? 周囲はガレキでまみれ、無事な箇所を探す方が難しい様相となっていた。
「……あの男、まだ動けたのか。更に痛めつけるべきだったな」
そう呟いて、彼女は足元を見る。そこにはフィーネの頭部だけが転がっており、他の部分は吹き飛んだようで周囲にはない。
だがその断面からは火花が散っており、それが人間ではないことが分かる。
「思考能力は敢えて残さなかったが、間違いなくこれも私だ。それを気配だけで半ば勘付くとは……」
扉の前に立ち、周囲を見渡す。すると視界の端に瓦礫が動いているのを捉え、その場所へ歩み寄る。
「………………」
そこには瓦礫に埋もれて重傷を負っているが、確かに生きている弦十郎の姿があった。だがそれを見ても、フィーネが表情を変えることはない。
なぜなら、敢えて弦十郎を生かす程度に爆発の威力を抑えたからだ。そしてその理由は、彼が持つ通信機が必要だからだ。
「殺しはしない。……お前たちに、そのような救済など施すものか」
そう呟き、弦十郎の懐から通信機を取り出す。そして改めて扉の前に立ち、センサーに彼の通信機をかざす。するとセンサーが光、扉がぎこちないながらも開いた。流石は聖遺物を補完する部屋の扉だ、間近で爆発を喰らったというのにその機能は健在のようである。
歩みを進めて部屋の中に入り、両手を前に出す。するとコンソールがフィーネの前に現れ、それを操作し始めた。
「目覚めよ……天を衝く魔塔。彼方から此方へ現れ出でよ!!」
「皆さん、大丈夫ですか!」
「小日向ちゃん!? どうしてここに?」
「ハァ、ハァ……学生の避難が終わって……響や翼さんは後どの位で、到着するのか確認したくて……」
司令室の扉が開き、未来が走って入ってくる。その様子を見た友里が驚いて声をかけるが、全力で走り続けていたようで彼女は息も絶え絶えの状態で中々滑らかに話せない。
「なるほど……とりあえず深呼吸して落ち着いて。もう少しでつながるはずだから」
「スゥ、ハァァ…………あの、向こうの様子は?」
「ノイズがリディアンに現れたのと同時に、通信妨害が入ったんだ。今はその対処中……と」
だが言いたいことは伝わったようで、代わりに藤尭が答える。そして未来が落ち着こうとしている間も手を動かし続け、彼女からの質問に答えたと同時にその操作を一度止めた。
「これで繋がったはずだ。……響さん、聞こえますか?」
『はい』
「響!」
音声だけとはいえ通信を回復させることに成功し、響の声が指令室に響く。そしてその声を聞いた未来は急いで藤尭の隣に行き、大きく口を開いた。
『あれ、未来!?』
「学校が、リディアンがノイズに襲われてるの! それで――――」
だが、それ以上未来の言葉が響に届くことはない。突如司令室の照明が落ち、通信が無理やり中断させられたのだ。
「え……?」
「どうした!?」
「本部内部からのハッキングです!」
「こちらからの操作……受け付けません!」
「なんだって!?」
周囲の職員からの報告を聞き、藤尭は急いで画面を開く。そこには画面がどんどん消えていくのが見えており、急いで彼が対処しても時間稼ぎくらいしかできそうにない。
焦る藤尭の頬に、汗が流れる。それはこのハッキング自体への焦りもあるのだが、このやり方に心当たりがあるのも大きな要因だった。
「こんなこと、了子さんしか……!」
そして藤尭の奮闘も虚しく、システム全体が掌握されてしまう。ノイズで埋め尽くされた正面モニターを茫然と眺めながら、未来は呆然と呟いた。
「あぁ、響…………」
「うそ……」
「一足、遅かったか……」
「おいおい、こりゃあ……」
「これは……ひどいな」
その光景を龍の背中から見て、4人はそれぞれ茫然と呟きながら見続けている。
まだ午前中だと言うのに太陽の光は届かず、まるで夜の様に空では星の光が瞬いている。さらに視線の先にあるリディアン音楽院はかつての姿は残っておらず、まるで震災の直撃を受けたかのようにボロボロになっていた。
「とりあえず、降りるぞ」
「……お願い、奏」
「……あぁ」
奏が声をかけ、翼とクリスがかろうじて反応する。響は崩壊している学校を茫然と見ており、反応はなかった。
そして龍はリディアン音楽院から少し離れた場所へゆっくりと着地し、4人は地面に飛び降りる。
「……よし、やることはわかるな?」
「――――――」
「おっしゃ、んじゃ行ってこい!」
「――――――――ッ!」
奏が龍を見つめ、暫くすると龍は了承するかのように1度うなずく。そして彼女の声に合わせて1度鳴き、再び翼を広げて飛び立っていった。
「奏、あの龍をどうしたの?」
「ちょっとお手伝いをお願いしといた」
「それって?」
「お迎え……っと、それは後でもいいだろ? 今は早くリディアンに行こうぜ」
既に響とクリスが向かっているのを見て、奏は話を切り上げて2人に追いつくために走り出す。それを見た翼も走り出し、ちょうどリディアン音楽院に着いた時には合流することができた。
「未来ー! みんなー!」
響が声を上げながら歩いていくが、反応はまるで帰ってこない。周囲に人の気配はなく、今の形相も相まって廃墟のように見えていた。
「リディアンが……」
「やりたい放題やってくれちゃって…………ッ」
翼は顔を険しくしながら呟き、奏は内心怒りを抱きながら話す。だがその途中で奏が立ち止まり、他の3人がこれ以上進まないよう手で制した。
「奏さん?」
「いるんだろ? さっさと出て来いよ」
「…………」
険しい表情を崩さず、奏はある一点を見て話す。するとその場所の物陰から1人の人物が現れ、4人の前に姿を見せた。
「了子さん!?」
「櫻井女史!?」
響と翼は、目の前にいる人物――了子を見て驚く。彼女は様子こそ普段通りだったが、身に纏う服からは出血したであろう跡が何カ所からか見て取れた。
だがその様子を見ても、微塵も警戒を緩めない人物が二人。その内1人が一歩前に出て、口を開く。
「フィーネ、これはお前の仕業か!」
「フフフ…………ハハハハハ!」
フィーネと呼ばれ、了子はただ笑い続ける。その様子を見て彼女の正体に気づいた響と翼はさらなる衝撃を受け、確認するためにも翼がクリスの隣まで歩みを進めて口を開く。
「そうなのか……? その笑いが答えなのか!? 櫻井女史!」
「それで間違いねえよ、翼」
そう声を荒げる翼の横を、奏が通って前に出る。そして未だに笑い続ける了子を睨みつけ、ガングニールの切っ先を向けて口を開いた。
「あいつこそ、私たちが決着を着けなきゃいけないクソッタレ! フィーネだ!!」
≪See you Next game……≫
※vsOTONA、フィーネがクローン爆弾 →完全オリジナル設定。OTONAと戦っている間にもフィーネは別の場所にいた。偽物だとばれないよう様々な仕組みが施されており、専用の通信機を使うことで会話を成り立たせることができるのもその1つ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
ウルト兎さん、通りすがりの錬金術師さん、sevenblazespowerさん。感想ありがとうございました!
おもちたりあさん、評価ありがとうございます!
次回からやっと1期最終戦です。やtttttっとグラファイトのちゃんとした戦闘描写を書けそうだ……。