紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第41話 『限界無きDreamer!』

 

 

了子は眼鏡を外し、髪をほどく。そして目を閉じると彼女の全身を光が包む。

 

そしてその光が収まった時、その姿は櫻井了子から、フィーネへと変貌していた。

 

 

「……嘘、だ」

 

 

フラフラと、響は前に進む。そして了子の方を見ながら茫然と呟く。

 

 

「嘘ですよね、了子さん? だって、何度も私たちを助けてくれて……」

「あれは信頼を得るための演技だ。あの日とて、希少な完全聖遺物であるデュランダルを守ったまでのこと」

 

 

響の問いに対し、即答するフィーネ。その台詞は言外に、響たちを守ろうとはしていないと言っているようなものだった。

 

 

「でも……了子さんがフィーネだっていうのなら、本物の了子さんは?」

「櫻井了子の肉体は、先だって食い尽くされた。いや、意識は12年前に死んだと言っていいか」

 

 

そう答え、フィーネを上空を見る。いや、上空を見ると言うよりは、遠い昔の記憶を思い起こしていると言った方が正しいだろう。

 

 

「超先史文明期の巫女フィーネは、遺伝子に己が意識を刻印した。そして、自身の血を引く者がアウフバッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶……能力が再起動する機能を施していたのだ」

「アウフバッヘン波形……ッ、まさか!?」

 

 

その言葉を聞き、翼が目を見開く。そしてその様子を見たフィーネは笑みを深め、口を開く。

 

 

「その通りだ、風鳴翼。12年前にお前が偶然引き起こした天羽々斬の覚醒。それは同時に、実験に立ち会った櫻井了子の内に眠る意識を目覚めさせた!……その意識こそが、この私」

「あなたが了子さんを塗りつぶして……」

「……まるで過去から蘇る亡霊だな」

 

 

真実を知り、唖然とする響。そして奏はフィーネのその姿をそう例え、吐き捨てるように呟いた。

 

 

「フフフ……亡霊と言うのなら貴様もそうだろう、天羽奏?」

 

 

それを聞いたフィーネはそう返し、奏の方に視線を向ける。その眼には黒い感情が込められており、忌々しげに彼女を見ている。

 

 

「あれからどうやって生き延びたのかは予測はつく。……グラファイトと同じ化け物になってでも、私を討ちたいのだろう?」

「まぁな。おかげさまで、こうして相対するだけでお前に貫かれた個所が疼きやがる……!」

 

 

力強く言いながら、奏は腹部に手を当てる。そして一度目を閉じ、忘れもしないあの日の光景を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ッ、あぶねぇ!!――

 

 

――……私はあの日、お前に助けられた。だから、今度は私が助ける番だっただけ……で……――

 

 

――……そうだな。翼のこと、たまにでいいから見てやってくれないか? それに、私が助けたあの子も……無事に日常に戻れたか、一度でいいから様子を見て……――

 

 

――……たいに、生きたいにきまってるだろ! 私はまだ、こんな所で死にたくない!!――

 

 

 

 

 

――そうだ、それでいい。……これは賭けだ、精々上手くいくよう願っていろ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だから這い上がってきた。フィーネ、お前をぶっ飛ばすためにな!」

 

 

目を開き、そう叫んでから手に持つガングニールをフィーネに向かって突き出す。

 

 

「私が開発したシンフォギアを用いて、私を殺すか?……所詮、為政者からコストを捻出するための玩具に過ぎぬそれを!」

「ッ、お前の戯れに、奏はその身を散らせたのか!?」

 

 

フィーネの言葉を聞き、翼は激昂して一歩前に出る。そしてそれに続くようにクリスが横に出て、口を開く。

 

 

「あたしを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのもそいつが理由かよ!?」

「そう……全ては、カ・ディンギルのため!」

 

 

そう答え、フィーネは両手を広げる。すると地響きが鳴り始め、4人は足元から何かがせり上がってくるのを感じる。

 

 

 

数秒後、フィーネの背後からそれは姿を現す。その塔は彼女達よりも、リディアン音楽院よりも、何よりも天高く昇っていく。

 

 

「これこそが、地より屹立し天にも届く一撃を放つ――――荷電粒子砲、カ・ディンギル!」

 

 

――その名は、カ・ディンギル。フィーネの悲願であり、計画の集大成である。

 

 

「カ・ディンギル、こいつが……!」

「そうだ。これで今宵の月を穿つことで、世界は再び一つとなる!」

「なっ!?」

「月を……穿つと言ったのか?」

「あぁ」

 

 

そして語られる、フィーネの過去。

 

あの御方へと思いを届けるために建てられた、天まで届く塔。しかしそれは逆鱗に触れ、神罰を下される。そして塔と共に、人類は交わす言葉も奪われた。

 

その呪いの名は、バラルの呪詛。そして月が古来より不和の象徴とされているのは、月こそがその源であるからだ。そうフィーネは語った。

 

 

「故に、人類の相互理解を妨げるこの呪いを! 月を破壊することで解いてくれる!」

「そして世界を1つに戻す……冗談じゃねえ、それはお前が支配者になるってことだろうが!」

 

 

目的の先を見抜き、クリスが吠える。結局のところ、世界を統べた後に待っているのはフィーネによる独裁だ。

 

 

「安い、安さが爆発している!」

「永遠を生きる私が、余人に歩みを止められることなどあり得ない」

「……どうやら、これ以上は話すだけ無駄みたいだな」

 

 

そう言い放ち、とても人間を見ているとは思えない眼付きで4人を見下ろすフィーネ。

 

その視線から交渉は不可能と判断したのか、はたまた最初から分かっていたのか、どちらかはわからないが奏は前に出てそう言った。そして懐からガシャットを取り出し、起動スイッチを押す。

 

 

ドラゴナイトハンター、Z!

「行くぞ!」

「はい!」

「あぁ!」

「言われなくても!」

 

 

奏の言葉に続くように、3人は胸元のペンダントを握る。そして目を閉じ、奥底から湧き上がってくる言葉を詠う。

 

 

Balwisyall nescell gungnir tron――――

Imyuteus amenohabakiri tron――――

Killter ichiival tron――――

「変身!」

ガシャット!――BUGLE UP! ド・ド・ドドド黒龍剣! ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター……ガングニール!!

 

 

そして4人全員は戦装束に着替え終わり、同時にフィーネに向かって飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ッ」

 

 

何かが頬を撫で、薄れていた意識が徐々に戻る。目の前は真っ暗であり、最初はわからなかったが、時間が経つにつれてそれが地面であることが分かる。

 

 

「ここは…………、ッ!」

 

 

なぜ自分がここにいるのか考え、すぐにそれを思い出す。そして急いで身を起こそうとするが、全身に激痛が走ってその行動は中断せざるを得なくなった。

 

 

「……僕は、生きているのか」

 

 

そう呟き、自分の周辺を確認する。

 

彼はうつぶせに倒れており、顔を上げると目の前にはもう動かない機械が見える。そして周辺は激しい戦闘の影響でボロボロになっており、壁や天井には大きく穴が開いていた。彼が最初目を開けた時、頬を撫でたのは風だったのだ。

 

 

「……全く、わかっていたとは言えこれは辛いですね」

 

 

なんとか体の向きを変え、仰向けになった状態で彼――緒川は呟く。

 

 

 

 

 

あの時、彼は死を覚悟してフィーネと戦った。念のため持ち出していた道具を使い、死力を尽くして時間を稼いだのだ。

 

……しかし、それでもできたのは十数分の時間稼ぎが精々だ。完全聖遺物を相手にしているのだから大健闘だと思うだろうが、それでも結果的に傷一つ付けることはできなかった。その事実は、彼の胸に重くのしかかる。

 

 

「司令は無事でしょうか……?」

 

 

倒された後、緒川は今の前にも一度だけ意識をとり戻した。その時、目の前の機械から弦十郎の言葉が聞こえてきたのだ。その内容を確認するため全身に鞭を討って機械のところまで移動したのだが、その画面には弦十郎が映っていたのだ。

 

よく見てみると、その画面はまるで誰かの視界をそのまま映したかのように動いている。そして、聞こえてくる声は彼以外にもう一人。

 

 

『今すぐ彼女から離れてください、風鳴司令!!』

 

 

気づいた時には、画面に向かって叫んでいた。そしてその言葉が届いたかどうかわかる前に身体が限界を迎え、再び意識を失ったのだ。

 

 

 

 

 

――そして現在。確認しようと機械を見るが、その画面にノイズが走っていることに気づく。

 

フィーネから妨害が入ったのか、はたまた別の要因か。何にせよ、先程のが何だったのか確認することはできなさそうだ。

 

 

「とにかく、二課に戻らないと……ッ!」

 

 

体調は相変わらず最悪だが、動かせないほどではない。体を無理やり起こし、壁に手をついて緒川は歩き出そうとする。しかしその行動は即座に中断され、彼の視線は上空へと向くこととなる。

 

遠くから、何か音が聞こえるのだ。それは少しずつ大きくなっており、こちらへ近づいているのが分かる。

 

まるで何かが羽ばたいているような、そんな音が――――

 

 

「―――――――」

「なッ!?」

 

 

そしてそれは上空に現れ、緒川を見下ろす。それは彼よりもはるかに巨体であり、鋭い瞳は爬虫類を思わせる。全身を覆う黒い鱗が光を反射し、口からはわずかに火が漏れ出ていた。

 

 

「黒いドラゴン……司令の言葉にあった、グラファイトの手によって変容したノイズ。何故ここに……?」

「――――――――ッ!」

「ッ、問答無用ですか!」

 

 

なぜ奴が現れたのか、緒川は疑問に感じる。しかし、龍がこちらを睨みつけながら咆哮するのを見たところで思考を中断して構える。

 

とは言え、状況は最悪と言っていいだろう。こちらの身体はボロボロで、武器はすべてフィーネとの戦闘で損傷している。加えて相手は弦十郎ですら手こずった黒龍、しかも報告よりはるかに大きい個体だ。正直、勝負になるかすらわからない。

 

だがらと言って、無抵抗でやられるわけにもいかない。どうにか隙を見つけて逃げ出そうと、緒川は相手の動きをよく観察した。

 

 

「――――――ッ!!」

「ッ……!」

 

 

そしてしばし浮遊していたが、黒龍は再度咆哮して上空へ浮上する。そして一旦緒川と距離を話したところで方向転換し、彼がいる箇所へ向かって加速した。その勢いは止まる事がなく、また減速する様子も全くない。

 

 

「まさか、このままぶつかる気ですか!?」

 

 

その狙いに気づいた緒川は思わずそう叫び、急いでその場から離脱する。もう体が悲鳴を上げ続けているが、そんなことは関係ない。いくら体当たりと言えど、あの巨体で放たれればそれだけで1つの兵器となる。直撃はもちろん、掠っただけでも今の緒川ならば容易くその命を奪うだろう。

 

全力で走り、建物から飛び出す。そしてその直後、彼がいた場所に黒龍は着弾した。その衝撃はすさまじく、緒川は踏ん張る間もなく吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ガッ……!」

 

 

空中へと放り出され、しばしの浮遊感の後に壁にぶつかって地面に落ちる。ただでさえ限界だった身体はそれを超えたようで、もう指一つ動かない。壁を背にした状態で視線だけを動かし、着弾点を見る。しかしそこに黒龍はおらず、大きな穴だけが開いていた。着弾時の速度から予測するに、あの穴はかなり深そうだ。

 

その事を目の前を見ながら考えていたが、建物全体を地響きが覆う。最初大きかったそれは徐々に小さくなっていくが、暫くすると再び鳴りだし、今度は徐々に大きくなっていく。

 

 

 

――それはまるで、地下に潜っていったナニカが戻ってきたかのようで。

 

 

「ッ、来る!」

「――――――――ッ!!」

 

 

緒川の呟きの後、穴から黒龍が飛び出す。それは再び空中に出た後、その場にとどまるように浮遊した。しかしその視線は緒川に向けられることはなく、穴だけをじっと見つめている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザク、ザク、ザク。穴の奥から、何かが地面を踏みしめる音が聞こえる。

 

恐らくそれは歩く音なのだろうが、その反響してくる音はかなり鈍い。また聞こえ始めてから時間が経っていることから、結構な距離があるのだろう。

 

 

「…………」

 

 

そして音が聞こえ始めてから数分後、遂にその者は地表に姿を見せる。音の持ち主は男性で、彼よりも大きな物体を片手に抱えている。そして視線は上空にいる黒龍に向けられており、黒龍もまた静かに彼を見つめていた。

 

 

「まさか、あなたは……?」

 

 

彼を緒川は今まで見たことがない。だがその雰囲気は、間違いなく彼だ。そう考えた緒川は、正面の彼に向かって声をかける。

 

その声は小さいものだったが、彼の耳には届いたようだ。彼は緒川の方へと視線を向け、その様子を見て薄く笑う。そして口をゆっくりと開いた。

 

 

 

「……随分と揉まれたようだな、緒川?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「開幕から飛ばしていくぜ!」

CRITICAL BRAZE!

「初手より奥義にてつかまつるッ!」

 

 

ーー蒼ノ一閃ーー

 

 

巨大化した龍の口から放たれる炎と、巨大化した剣から放たれる剣戟。それは途中で1つとなり、巨大な炎の剣戟となってフィーネに迫る。それを見た彼女は鞭を大きく振るい、正面から迎え撃った。

 

剣戟と鞭は空中でぶつかり合い、激しく火花を散らす。数秒の間は拮抗していたが、ついに耐え切れなくなったのか剣戟が爆発する。フィーネの視界を土煙が覆うが、彼女の視線はある一点に注がれていた。

 

 

「喰らえッ!!」

 

 

ーーMEGA DETH PARTYーー

 

 

煙の外でクリスが吠え、ミサイルを大量に発射する。それはフィーネの上空を通り、カ・ディンギルへと向かって行く。しかし煙の中から鞭が飛び出し、次々に空中のミサイルを撃ち落としていく。

 

 

「無駄だ。その程度、私が見抜けないとでも……ッ!」

「おりゃああああああぁぁぁッ!!」

 

 

全て爆発したのを確認し、嘲るかのようにフィーネが話す。しかしそれを言い終えるよりも早く煙の中から響が飛び出し、彼女に向かって拳を振るう。それは反応が間に合って回避に成功し、次いで放たれる蹴りは受け止めることで防御する。

 

 

「まずは貴様から……なッ!?」

 

 

目の前の響から仕留めようと考え、フィーネは自由な右手で鞭を振ろうとする。しかし、その前に響は地面に手を当てて支えとして無理やり足を振り抜いた。力ずくで不利抜かれたことで左手はかち上げられ、体勢が崩れるフィーネ。そしてその隙を逃すまいと、翼が剣を基の大きさに戻して突貫した。

 

 

「はあああああぁぁぁッ!」

「チッ!」

「隙ありだ!」

 

 

冗談から振り下ろされる剣を、フィーネは後方へ跳ぶことで回避する。そして鞭を剣のように伸ばした状態で固め、続けて放たれた切り上げを受け止めた。

 

鍔迫り合いの状態になるが、空中へ飛んだ奏が長銃から弾丸を放つ。その弾丸は正確にフィーネだけを狙い撃ち、その衝撃に思わず彼女は数歩後退する。その勢いのまま押そうと翼は剣を握る力をさらに込めるが、鞭が薙ぎ払われたのを見て刀身を立たせて受け止める。

 

 

「もう一つだ!」

「ッ!」

 

 

その様子を見て、フィーネは反対側から鞭を振り抜く。翼はそちらも受け止めようとするが、受け止めていた方の鞭が剣に絡まっていることに気づく。そして鞭は動き、彼女の剣は上方へかち上げられた。

 

だが翼は冷静に判断し、姿勢を低くすることで鞭を回避する。そしてそのまま脚部のブレードを展開し、逆立ちして彼女に切りかかった。

 

 

--逆羅刹--

 

 

「甘いッ!」

 

 

だがそれを、フィーネは鞭を回転させることで相殺する。何度も彼女たちの間で火花が散り、拮抗していることが分かる。このままではそのうち翼の勢いは衰え、フィーネから一撃をもらうだろう。

 

 

 

――しかし、それは1対1の場合の話だ。

 

 

「翼ッ!」

「たああああああああぁぁ!!」

「……そこか!」

 

 

彼女の名を呼びながら奏は長銃を構えて走り出し、引き金を引く。単純に手数が増えたことでフィーネも対応を速めていくのだが、そこを狙うかのように響が横から殴りかかる。

 

奇襲ともいえるタイミングだったが、声を上げたことでフィーネは方向を即座に判断する。そして鞭の防御はそのままに、腕を上げることで響の一撃を受け止めた。

 

 

「もう間もなくカ・ディンギルは発射される! お前たちの行動は、全て無駄だッ!!」

 

 

そう叫び、響を力づくで飛ばす。後方へ彼女は飛んでいくが空中で体勢を立て直し、翼の隣に着地した。

 

 

「だとしても、やることは一つだ!」

 

 

そう叫び、力を溜めていたクリスは2発の巨大ミサイルを形成する。そしてその内1発をフィーネに向けて発射する。それをフィーネは躱そうと空中を駆けるが、ミサイルはどこかにぶつかることなくひたすら追いかけ続ける。

 

 

「そんでもう一発!」

 

 

そしてクリスはもう一つのミサイルを構える。彼女の視線の先には、カ・ディンギルが映っていた。

 

 

「ッ、させるか!」

「それはこっちの台詞だ!」

 

 

クリスの行動を妨害しようと、フィーネは彼女に向かって駆け出す。しかし奏の強襲によって防御せざるを得なくなり、その隙にもう一発が発射される。

 

だがまだ間に合うと考え、フィーネは急いで両手で鞭を振るう。一方は奏のガングニールとぶつかり合い、もう一方はフィーネに迫りくるミサイルを切り裂いて爆発させる。そして空中でぶつかり合ったことで互いに弾かれ、奏は一回転して着地した。

 

 

「もう一発のミサイルは……!」

 

 

邪魔はなくなったとフィーネはもう一発のミサイルを探すが、ガ・ディンギルを見てもミサイルの姿はない。急いで周囲を見渡すが見つからず、もしやと思い上空を見ると、そこには煙を引いて空へ上がっていくミサイルの姿があった。そしてさらに驚くべきことに、その先端にはクリスの姿がある。

 

 

「クリスちゃん!?」

「何を?……ッ、まさか身一つで止める気か!?」

「ッ、あの馬鹿!」

CRITICAL BRAZE!

 

 

その動きは3人にも予想できていなかったが、まず真っ先に翼がその目的に気づく。そして続いて奏も気付き、急いで彼女を追うように空を飛ぶ。しかし追いかけるタイミングや先ほどまでの戦闘によるエネルギー消費。これらが相まって彼女との距離は縮まらない。

 

 

 

 

 

「あいつ、やっぱ追いかけてきやがった」

 

 

上空へ向かって飛ぶミサイル。その先端に手をかけ、共にに上がっていくクリスは下から聞こえる声に小さく呟いた。

 

その声は、ここ数日ですっかり聞きなれてしまった声。あの地獄を味わってから、初めてフィーネ以外で自分の傍に立った相手。しかしフィーネとは違って何かを押し付けることはせず、あくまで自身の意思を尊重させてくれた相手。

 

立花響の先輩であり、風鳴翼の相棒であり……そして、グラファイトと同じ力を持つ彼女。

 

 

「……だからこそ、一回くらい見栄を張らせてくれよ」

 

 

決して彼女には届かない声量でつぶやき、遂に成層圏を突破する。そこでクリスはミサイルから飛び降り、ちょうど地球と月の間へ移動する。ここからでも、ある一カ所が激しく光っているのが見える。おそらくあれがカ・ディンギルであり、後方の月を今まさに穿とうとしているのだろう。

 

あれほどの規模の建物だ。蓄えられるエネルギー量は半端なものではなく、生半可な一撃では拮抗する間もなく月ごと撃ち抜かれてしまうだろう。

 

 

 

 

 

なら、生半可ではない一撃を撃ち込むだけだ。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl――――

 

 

その歌をきっかけに、クリスのイチイバルは変化する。銃身は巨大な電磁砲のような形状になり、それを両肩で固定する。そして力を込めていくが、それは超大型ノイズを仕留めた時のそれよりもはるかに大きい。

 

それもそのはず、今のクリスの歌は奏者への負荷を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に撃ち放つもの。対価が大きいものほど、放たれるエネルギーは絶大なものになる。

 

 

 

 

 

――その名は、絶唱。

 

 

(……あれから、何度も考えた。そして、やっとわかったんだ)

 

 

力を込めながら、クリスはふと思い出す。あれからずっと考えていた、彼女の両親が音楽を届けていた意味。わざわざ危険な戦争地域で、しかもクリスを連れて行っていた意味。

 

きっと、両親はクリスに伝えたかったのだろう。夢は叶うという、揺るがない事実を。あくまで予想でしかないし、その正誤を答えてくれる人はもうこの世にはいない。ただこの答えにたどり着いた時、不思議なほどスッと滑らかに彼女の胸に落ちたのだ。

 

 

(私は……パパとママが、大好きだ)

 

(だから、二人の夢は私が引き継ぐよ)

 

 

そう考えているうちに、エネルギーの充電が終わる。後はガ・ディンギルの発射に合わせて撃つだけだ。真正面からぶつかれば勝ち目は薄いが、一点に集中して撃ち抜けばまだ勝機はある。

 

 

(平和をつかみ取る。……だからまず、何もできないと思い込んでるフィーネに一泡ふかせてやる!)

 

 

――Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

「クリスーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

(だから聞いて? 私の歌を)

 

 

歌い終わり、目を閉じる。そしてその銃口から、極太の光線が放たれた。

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※今回は特にありません。何かありましたらご連絡していただけると幸いです。

ここまで読んでくださりありがとうございます。
瑛松さん、sevenblazespowerさん、邪神イリスさん。感想ありがとうございました!

最終戦長すぎるので3話位に分けます。ま、まぁ原作通りですね()


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