紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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今回はオムニバス形式での小話になります。




第6話 『Sub stageは突然に:前編』

鍛錬の末、制限されていた力の一部を開放することに成功したグラファイト。なおその時行われたレベルXのシミュレーションはあまりにも無謀な難易度だったため、研究所では使用禁止となった。しかし彼自身はレベルXを気に入り、日本へ旅立つまでの間に何度か使用したという。

 

そしてここから記すのは、グラファイトが研究所付近に滞在している1週間の間に起きた出来事をいくつかピックアップしたものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Case1-1:龍戦士とおさんどん娘】

 

 

 

グラファイトがその2人のうちの1人と知り合うきっかけとなったのは研究所の敷地内にいた時だった。

 

 

「じーーー」

「…………」

 

 

その日はいつもよりも鍛錬が早く終わり、グラファイトは少し暇を持て余していた。そこで彼と戦ったあの怪物について調べてみようと思い立ち、研究所内に瞬間移動してきたのだ。もちろんセレナ達には何も言っていない。

 

そして研究員に見つからぬよう行動しつつ、資料室へ侵入。付属してあるPCをハッキングし、怪物――どうやらアルビノ・ネフィリムと言う名らしい――についての情報を手に入れることができた。

 

目的を果たし、ここから離れるために瞬間移動をしようとする。しかし後ろを向くと、いつの間にか入り口に見慣れぬ少女が立っていたのだ。一体いつからそこにいたのかと内心驚きつつ、自分がいるということを知られないようにするため、少女に近づく。しかしその少女は驚くことも後ずさることもせず、グラファイトが近づくのをただじっと見ていた。

 

 

「じーーー」

「……おい」

 

 

そして目の前に立ったはいいが、相変わらずジーーと少女はこちらを見つめ続けている。そして業を煮やしたグラファイトが声をかけた。

 

 

「なに?」

「お前、なぜここにいる?」

 

 

とりあえずなぜ少女がここにいるのかグラファイトは聞く。本来その言葉がかけられるのは彼自身の方なのだが、そんなことは棚に上げているのだろう。

 

 

「1人に、なりたかったから」

「1人に……? まぁそれはいい。おい、俺がここにいたことは誰にも言うな」

 

 

いいな、とグラファイトは脅すように念押しする。鋭く力強い気配も相まって子供が見たら泣き出す光景なのだが、少女は顔色一つ変えない。

 

それが少し気になったがグラファイトはここから出るため、周囲の気配を探る。何人かが施設内を走り回っているようだが、ちょうど資料室の周りが空いていた。そして誰かが近くに来る前に部屋から出ようとして――――

 

 

「待って」

 

 

――――少女に袖をつかまれ、立ち止まった。初対面なうえ、脅された相手に対し呼び止める行為。その気になればすぐにでも振り払えたが、少女が放つ妙な雰囲気が気になり、グラファイトは少女の方に振り向いた。

 

 

「……なんだ?」

「あなたがいたことは黙る。けどそのかわり、私がここにいることも黙っていてほしい」

「お前は……」

 

 

何を言っている? そう言おうとして、グラファイトはあることに気づいて一度口を閉ざす。

 

恐らくだがこの少女、自分を研究所の職員と勘違いしているのではないか? と。

 

そこまで予想し、この状況を利用するためにグラファイトは少女から話を聞くことにした。

 

 

「なぜお前の存在を隠す必要がある。お前がここにいても妙なことはないだろう?」

「切ちゃんと喧嘩しちゃったから。……私も熱くなっちゃったし、しばらく頭を冷やしたいの」

 

 

年齢の割には冷静だ。少女の話を聞いていたグラファイトはそう思ったが、すぐに頭を切り替える。

 

切ちゃん、というのが誰のことを指しているのかはわからないが、おおよその状況は把握できた。ならば後は約束を守ると言って、ここから脱出するだけだ。

 

 

「……ふん、いいだろう。ならば――――」

 

 

 

 

 

『調-! どこにいるのー!?』

「「ッ!?」」

 

 

その声が聞こえた瞬間、二人の肩が跳ねた。1人は人が近くに来たことの緊張感から、もう一人は近くにいるであろう存在を知っていたから。

 

 

『調ー?』

「……セレナ」

「ッ、やはりか……!」

 

 

これはまずい、グラファイトは策をめぐらせる。セレナに出会ってしまったら、自分が職員であるという誤解を晴らされる可能性があるのだ。かと言って人間の前で瞬間移動するわけにはいかない以上、この部屋内でどうにかするしかない。

 

 

『……声が聞こえた。ここにいるのね?』

「おい、こっちに来い!」

「っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調、切歌と喧嘩したって本当なの……って、あれ?」

 

 

いない……、と部屋に入ったセレナは周囲を見渡す。絶対いると思っていた部屋の中には誰もおらず、本棚の隙間や机の下なども探してみるが、人ひとりいなかった。

 

 

「んー、気のせいだったのかな……?」

 

 

最後に部屋を見渡して、セレナは資料室を出ていく。そして再び調という少女の名を呼びながら、その声がどんどん小さくなっていった。

 

 

 

 

 

――――そしてその声が完全に聞こえなくなった時。グラファイトは腕に抱えた少女と共に天井から飛び降りる。

 

なんとこの男、セレナが部屋に入ってくる直前に少女を抱え、忍者よろしく天井に張り付いていたのだ。

 

 

「なんとかなったか……」

「……あの、ありがとう」

「?……あぁ、気にするな。約束を違えぬためだ」

 

 

お礼を言う少女にグラファイトはそう返しつつ、再び周囲の気配を探る。そして誰もいないことを確認し、今なら安全に脱出できると判断した。

 

 

「ではな。俺は行く」

「うん、またね」

 

 

少女が最後に何か言っていたがグラファイトはすぐに部屋を出ていったため、その言葉に気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うん。ビックリするぐらい真っ直ぐで、意外なほど不器用」

 

 

セレナの言ったとおりだね。そう呟きつつ少女――――月読調は、喧嘩した親友とどうすれば仲直りできるのか、1人資料室で考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Case1-2:龍戦士とデース】

 

 

 

「…………はぁ」

「どうしたんデス?……は、まさかこんな美人と一緒にいられるからってうれしすぎるため息デスか!?」

 

 

(ゴッ!!)

 

 

「殴るぞ」

「も、もう殴ってるデス……」

 

 

なぜこうなった。この時のグラファイトの感情は、これに尽きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例の研究所侵入の次の日。以前見つけた崖の上で休んでいた所、グラファイトがいる方向へ歩いてくる存在を感じ取ったのが始まりだった。

 

ここは道から大分外れた場所にあり、普通に考えて人間は通らない。不審に思ったグラファイトはその気配の持ち主が見える場所に移動する。そして木の上から覗いてみると、そこにいたのは1人の少女だったのだ。その少女の服装は動きやすそうではあるがラフな格好であり、間違ってもここのような森林に入る服装ではない。なおかつその少女は荷物を1つも持っておらず、更には常に周りを見渡しながらおどおどと進んでいた。

 

そこまで確認した時、少女が今どんな状態なのかはグラファイトでもわかった。間違いなく彼女は今、迷子なのだろう。

 

 

「…………ふん」

 

 

彼女は迷子である。グラファイトはそう判断したが、助けに行こうとはせずに木の上に留まっていた。眼下に移る少女は無害に見えるが、かといって無条件で助けに行くほど彼は善良な存在ではない。しばし観察した後、この場を去るつもりであった。

 

 

「うぅ~、ここはどこデスか……? 勢いで出ちゃったとは言え、こんな所マムやマリアから聞いたこともないデスし……」

 

 

風に乗って少女の声が聞こえる。何やら独特な口調だが、今の言葉で彼女が迷子なのが確定した。見た限りでは幼いため、感情に流されるまま家出をした。とでも言った所だろうか。

 

そしてその内容より気になる内容が1つ。それは少女の言葉にあった人物名だ。

 

 

「マム、それにマリアだと?……まさかあいつ、研究所の奴か」

 

 

以前セレナから、自分も含めて研究所には何人もの子供が住んでいることを聞かされていた。研究所こそ自分たちの家であり、だからナスターシャのことをマムと呼んでいるのだとも。そしてマリアと言えば、セレナの姉の名が確かそれだったはずである。

 

それにしてもそれが本当なのだとしたら、随分と走り続けてきたことになる。この森林は町はずれにあり、研究所もまた町はずれにあるとはいえ、その直線距離は結構長い。少女ほどの体格では1、2時間はかかる距離ではなかろうか。

 

 

「き、きついデース……行けども行けども森ばっかり。どっちに行けば研究所に帰れるデスか……?」

「…………」

 

 

……待て、今俺は何をしようとしていた? 自然と降りそうになった足を止め、グラファイトは思いなおす。

 

俺には関係ない。迷った挙句少女が死ぬのなら、それが自然の運命だ。そう己に言い聞かせ、早めに立ち去ることにしたグラファイトは瞬間移動を使おうとして――――

 

 

「もしかして、私もう帰れないデスか?……もう、みんなに会えないデスか? マリア、セレナ、調、みんな……」

「…………」

 

 

瞬間移動を――――――

 

 

 

 

 

「っ、えぐ……あぁうぅぅ……」

「……っ、えぇい!」

 

 

――――その行動を取りやめ、グラファイトは少女から離れた場所に飛び降りた。そして彼女の元へ歩いていき、背後から話しかける。

 

 

「おい、ここで何をしている?」

「…………ふぇ?」

 

 

少女は振り返る。その顔は不安からか涙があふれ、鼻水まで出ている有様だった。

 

 

「見た所、森林浴ではなさそうだが。……成程、迷い子か」

「…………デ、デースッ!!」

「なっ!?」

 

 

どうすればさっさと研究所まで送れるか、そんなことを考えていたグラファイトは突如腹部に衝撃を受ける。どうやら感極まった少女が腰にタックルをかましたようだ。

 

 

「救世主デス、ヒーローデス、英雄デスゥゥゥ!!」

「えぇい離れろ! 顔をつけるな! どさくさに紛れて俺の服で鼻をかむなっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさいデス。もう駄目だと思っていたところに来てくれたので、つい……」

「全くだ……で、お前は迷い子でいいのか?」

「うっ、その通りデス……」

 

 

少女は歩きながら目をそらす。その様子を見たグラファイトはそうか、とだけ言って歩き続ける。

 

そしてとくに会話もなく数十分後。森林を抜け二人は道に出ていた。

 

 

「お、おおおおぉぉぉぉ! 道に出たデス!」

「そうだな、それでお前の拠点はどこだ? 場所が分かるのなら道を教えるが」

 

 

舗装された道路を見ただけで大きなリアクションをとる少女に対し、グラファイトは淡々と問いかける。それを聞いて少し少女がガクッとなるが、すぐに姿勢を戻して身振り手振りを交えて説明をする。

 

 

「研究所デスよ。こーんなにデッカイのデス!」

「……なるほど、あそこか。ならばこちらだ」

 

 

正直、まるで説明になっていない。しかし、あたかも少女の説明でわかったようなふりをして、グラファイトは研究所の方向に向かって歩きだす。それを見た少女は上機嫌でにその後をついていった。どうやら少女は自分の言葉をしっかりと理解してくれたこと、自然から人工物に戻ってきた事による安心感などから、大分調子が戻っているようだ。

 

その傾向だろうか、少女は道中グラファイトに様々な話題で話しかけてきた。それに対し彼は適当に返事をしているだけだったのだが、彼女にとってはそれでも構わないようである。

 

 

 

 

 

――――その話をいくつか交えた結果、最初のようなやり取りが行われる位にぞんざいな扱いをするようになってしまったのだが。

 

 

後ろからピーピー何か言っている気がするが、グラファイトはそれを無視する。そして前方の景色を注視していると、人工の建造物が見えてきていた。

 

 

「もうすぐだ、このままいけばじきに街にたどり着く」

「話を聞いて……って、もうこんな近くまで来てたんデスか」

 

 

どうやら少女はあの町のことは知っていそうだ。ならば街に着いた時点でグラファイトの役割は終了するだろう。というより、正直彼はさっさと道案内を終えたがっていた。ハイテンションでずっと話しかけられるのは結構疲れるみたいである。

 

そして案内し始めてから1時間半。街の入り口へたどり着いた少女は腕をぐ~っと上へ伸ばす。

 

 

「暁切歌、街へ帰還デス!」

「後の道はわかるな?」

「はい、もうバッチリデスよ! ここまで案内してくれてありがとうデス!」

 

 

そう言ってグラファイトに少女――――切歌は頭を下げる。それを聞いたグラファイトは気にするな、とだけ答えた。

 

 

「……あ、そういえば自己紹介がまだだったデスね。私は暁切歌デス! お兄さんの名前は何デスか?」

「名乗るつもりはない、俺はただ案内をしただけだ」

 

 

自己紹介も何も先ほど自分で言っていた気がするが、そこは華麗にスルー。妙な情報が研究所内へ流れないよう、グラファイトは名乗らずに街から出ようとする。しかし切歌がそれを許すはずもなく。

 

 

「良いから教えるデス! 私は受けた恩は一生忘れないデスから、いつかお兄さんがピンチになった時に颯爽と助けに行くデスよ?」

「そんな時は決して現れん、さっさと帰れ!」

 

 

切歌が腕にしがみついてきたので素早く振りほどき、グラファイトは建物の裏へ走る。そして切歌を含む人間の視線が途切れた一瞬のスキをついて瞬間移動を使い、別の建物の屋上へ移動した。

 

 

「……なんだったんだあいつは」

『どこいきやがったデスかー!!』

「…………」

 

 

町中へ響く声を聞き、再び出そうになったため息を抑えてグラファイトは街から離れていった。なお瞬間移動を行う彼の背中にどことなく哀愁の雰囲気があったがそれは気のせいである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――その後、研究所内で切歌が家出中に迷子になったことが判明した。その際に道案内をしてくれた男の姿を切歌が話したのだが、とある少女二人がその正体に感づいたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

≪See you Next Sequel……≫

 

 

 




※ハッキング……バグスターは人への感染能力を持ったコンピューターウイルスなのでハッキングして情報を抜きだすことぐらいはできるんじゃないかと思いました。


ここまで読んでくださりありがとうございます。
sevenblazespowerさん、シップスさん。感想ありがとうございました!
sevenblazespowerさん、評価ありがとうございます! 

書いた小話があと2つあるのですが、基本的に1話5000文字辺りでやりたいので前後編に分けました。なので続きは後編です。
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