紅蓮激唱シンフォギア   作:zelga

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第9話 『動き始めるGame!』

 

 

太陽が昇り、今日も人々は動きだす。

 

ある人は学校に、ある人は会社に、ある人は遊びに、ある人は趣味を謳歌しに。目的がバラバラだが様々な人間が外を出歩き、朝から街は騒がしかった。

 

 

 

 

 

そしてその一角にある図書館、その二階。そこは今日が平日なのもあって人は少なく、閑散としていた。

 

そこの隅。ただでさえ少ない人間が更に少なくなる個別勉強室、そこにグラファイトは座っていた。

 

 

「…………」

 

 

パラリと本のページをめくりつつ、パソコンの画面を眺める。1時間前からグラファイトはここで調べ物をしており、それも終盤に差し掛かっていた。

 

そして数十分後。調べ物が終わったのかグラファイトはパソコンの電源を落とし、読み終えた数冊の本を返却ボックスにいれる。そして周りに人の目がないことを確認し、彼はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、とある建物の屋上。安全面の観点より立ち入り禁止になっているその場所の貯水タンクの上に座り、グラファイトは手に持つ紙を眺めがら考え事をする。

 

 

 

日本へ戻り、セレナと別れてから1週間。グラファイトは日本中を移動し、様々な手段で調べ物をしていた。時に本を読み、時にハッキングして情報を集め、そして時には自身の記憶にある場所へ立ち寄った。

 

今回の調査で調べたこと、それはグラファイト自身の記憶にある要素はこの世界に存在しているかどうかである。日課の早朝鍛錬以外はすべて調査に費やし、グラファイト自身でできる限界まで行った。故にこの結果にはかなりの信頼度があるだろう。

 

そしてグラファイトが見ている一枚の紙。そこにはこの世界にも存在する要素が単語でいくつも記してある。

 

一部を抜粋すると『マイティアクションX』、『タドルクエスト』、『バンバンシューティング』、etc,etc……。これらは元いた世界同様、ゲームとして発売されていた。もちろんその中には『ドラゴナイトハンターZ』もあり、攻略ページを見た所、敵キャラであるグラファイト自身に関する記述もあった。また発売会社が『幻夢コーポレーション』であることも同じだったが、社長は少なくともグラファイトの知る人物ではなかった。

 

 

「そして、この世界に存在しない要素……」

 

 

それがこれか。とグラファイトは紙を裏返して、そこに記されてある単語を眺めていく。

 

その単語は『聖都大学附属病院』、『電脳救命センター』、『衛生省』、『仮面ライダークロニクル』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして『ゲーム病』に『バグスターウイルス』。

 

これらが示す真実は、一つだった。

 

 

「ここは俺がいた世界ではない、か」

 

 

紙をクシャリと握りつぶし、確かめるかのように呟く。意外なことにこれを確信した時、あまりグラファイトの心は揺れなかった。

 

正直なところ、薄々感づいてはいたのだ。アルビノ・ネフィリムにセレナが纏っていた聖遺物、ノイズと言う未知の敵に怪人態となったグラファイトを見た時の彼女たちの反応。あれは確実にバグスターと言う種族を知らないからできるものだ。いくら海外進出しなかったとはいえ、あの出来事は日本国内で秘匿できるものではない。

 

アメリカにいた時から感じていた違和感。それが今回、明確な形となって彼の前に現れただけだったのだ。

 

 

「わかっていた。わかってはいたんだ……」

 

 

だがしかし、それでもグラファイトは心のどこかで期待していたのだ。仲間たちと再び出会い、肩を並べて戦う事を。

 

心の整理を付けるため、彼は瞬間移動する。そして移動したとある山奥、人ひとりいないその場所にとある岩の上に座り、目を閉じて瞑想する。

 

わかり切っていた真実を受け入れるため、これからの行動に支障を来さないため。再び目を開けた時にはいつもの自分に戻れるよう、今の彼には静かな時間が必要だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ここか」

 

 

日も暮れ、草木も眠る時間帯。グラファイトは街に戻り、とある場所を訪れていた。

 

それを見つけたのは偶然で、きっかけはF.I.S研究所に侵入した時に得た情報。そこにはノイズや聖遺物に関する記述があり、その先駆者が日本人であるといったこと等が記されていた。

 

そこでグラファイトが注目したのは聖遺物だ。はるか昔より存在し、神が作ったと伝えられている武具。これを手に入れることができれば、さらなる強さを得ることができるのではないか。そう彼は考えていた。

 

そして聖遺物に関する研究を行ってきた日本の機関。それを改組した組織の拠点が今、彼の視界に入っている。

 

 

「特異災害対策機動部二課……随分と長い名称だな」

 

 

さて、どうするか。とグラファイトは侵入するための作戦を練る。

 

最初はネットワークから特異災害対策機動部二課のサーバーにハッキングしようかと考えた。が、そこは流石に国直轄。情報管理は徹底されており、付け入るスキがなかった。

 

 

 

ならば直接叩くまで。グラファイトがその発想に至るまでにかかった時間は長くなかった。

 

そんな訳でこうして件の建物までやってきたわけだが、案の定警備員が出回っている。周囲を探っていくが、警戒網の網に隙間はない。

 

 

「誰にも気づかれず行くのは無理か。……ならば」

 

 

ならば、手段を変えるまで。攻略法を決定した彼は、再びその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は満月か。いつものコースを回りながら、男性は夜空を見上げる。

 

都会の中に建っているとはいえ、ここは夜空が綺麗に映る。今夜は晴れであり、星と月が爛々と輝いていた。

 

 

「おい、油断するな」

「わかっているさ。仕事はしっかりこなすよ」

 

 

空を眺めているのがばれたのか、隣を歩く同僚から注意を受ける。それに対しては男性は気を緩めていないことを伝え、再び周りに目を向ける。

 

第二次世界大戦後から存在する風鳴機関、それを改組した特異災害対策機動部二課が新設され二年。ようやく軌道も安定し、引き継ぎもほとんど完了したこの時期。一番緊張していた時期が過ぎたことで、男性は少しだけ緊張感が緩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして幸か不幸か、この隙は彼にとって決定的なものだった。

 

ドサリ、と後方から音が聞こえる。男性はそれを聞いた瞬間すばやく振り返り、音の発生源を探す。

 

そしてその発生源はすぐ近くだった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

倒れていたのは、先ほどまで一緒に歩いていた同僚だった。それを確認し、緊急用の通信機を使うために手を伸ばす。

 

 

 

 

 

「なかなかの判断力だ。だが、一手遅い」

 

 

そして伸ばした腕は、側方より出てきた腕につかまれる。その腕は緑色の鎧に包まれていて、明らかに一般人のそれではない。

 

誰だ、声の主に警告しつつ、男性は懐の拳銃を取り出そうとする。しかしその言葉を発することはなく、同僚と同じ様に意識を暗闇に落とされていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多くの星がちりばめられた満天の夜空。それを見ながら、グラファイトは考えをまとめる。

 

欲しいものは手に入った。後はこれを基に、場所を突き止めるだけ。

 

あの資料を見る限り、聖遺物は世界中に散らばっているらしい。研究報告書はもちろん、伝承されている神話や現地民にのみ伝わる御伽噺など。それらをまとめたことで聖遺物がありそうな場所はいくつか目星がついた。

 

 

 

そしてその他にグラファイトが得た新情報はもう1つ。それは聖遺物が納められている遺跡には、奪われることを防ぐための防衛機構があるという事。そしてそれは旧文明の技術力で作られており、どれもこれも一般人ではどうする事も出来ない危険物であるということだ。

 

 

「宝を得るにはまずその門番を倒す必要がある、か。むしろこちらから挑戦したい程だ……!」

 

 

それを知り、グラファイトは歓喜した。ちょうどここ最近、新たな鍛錬相手を欲していたのだ。

 

やはり実戦の中でこそ、己が力は磨かれる。そう思っているグラファイトにとって、それはむしろ朗報だったようだ。

 

 

「では行こう。まずは……あそこからだ」

 

 

そしてグラファイトは姿を消した。新たな力を得るために。そして、新たな強者と戦うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、衝撃の事実が日本政府に伝えられる。その内容は特異災害対策機動部二課に侵入者が現れたというものだった。

 

警備員を全て行動不能にしたその侵入者。そのあまりの手際の速さに、事態が発覚したのが定時連絡の時だったという。しかし聖遺物が盗まれた報告はなく、データが盗まれた形跡も何かしらの機器が接続された痕跡も一切ない。そして監視カメラに姿は映っておらず、警備員が無力化された際の映像には激しいノイズが走っており確認する事も出来なかった。

 

静かに現れこちらの戦力をすべて無効化し、何か奪うわけでもなくその場を去る。それはまるで『お前たちのデータなんていつでも奪える』と、日本政府に対して宣戦布告をとっているかのように思えた。

 

これに対し日本政府は秘密裏に警戒態勢をとることを決定。今現在、特異災害対策機動部二課はノイズ対策における先端組織であり、そのアドバンテージを失うわけにはいかない。これをきっかけに安全性が見直され、施設までの侵入路は少なくし、移動手段を絞ると言う改装措置が行われたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして何より気になるのは、その侵入者と相対した警備員からの証言だ。

 

 

「奴は人間じゃない。俺が対応しようとした時、奴は何もないところから現れた」

 

 

彼曰く、まるでドラゴンが人の形をとったかのような姿。力はとても強く、握られた右腕はピクリとも動かなかった。そして痛みを感じる間もなく、一瞬で意識を刈り取られたとのこと。もしそれが本当なのなら、相手はいったい何者なのだろうか?

 

 

 

突如現れた正体不明、目的不明のその存在。

 

ただ一つ分かること。それは、そいつの力量はこちらを上回っているという事実だけだった。

 

 

 

 

 

≪See you Next game……≫

 

 

 




※今回は特にありません。何かありましたらご連絡していただけると幸いです。


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