二
「綱吉は、本当に武器を買わなくて大丈夫なの?」
「その、防具だけでも買っておいた方がいいと思います。綱吉さん」
銀色の双子が心配そうに聞いてくる。
「エルゼさん。武器はちゃんと持ってるから大丈夫だよ。リンゼさんも心配してくれるのは嬉しいけど大丈夫だから」
昨日のギルド登録を決めたときから、何度も二人を宥めているため、慣れてしまった。
刀を買った冬夜が戻ってきた
「お待たせ」
「二人とも冬夜が来たし、そろそろ行こう」
「...そうね」
「...はい」
二人はまだどこか納得してないみたいだけど、依頼の一角狼討伐に行けそうだ。
やっぱり俺この世界に来なくて良かったんじゃないですか?神様......
「やあぁぁ!!」
「はっ!」
「炎よ来たれ、赤の飛礫、イグニスファイア」
一瞬にして三人が一角狼を倒した。
エルゼさんはガンドレッドで殴り飛ばし、冬夜は刀で切り伏せ、リンゼさんは炎の魔法で焼き尽くす。
「冬夜やるじゃない。依頼は5匹討伐だったけど一匹多く仕留めちゃったわね」
冬夜とエルゼさんが話している間に討伐箇所を採取しとこ俺だけ何もやってないし。
「あっ、手伝います」
「ありがとう。リンゼさん」
「あ!ごめん二人とも」
慣れない作業に時間がかかる俺に対して、慣れた手つきの双子の少女を見て情けなく思ってしまう。冬夜もすぐ終わらせてるし。はあ...
「最後はあの離れているのだけだし私がやるねお姉ちゃん」
「リンゼ、お願い」
二人の言葉から、本当に信頼しあった様子がわかる。仲の良い姉妹だな。
「ごめん。俺何もやってないし今回の報酬は三人が貰って」
「そんな気にしなくてもいいのに」
冬夜が励まそうとしてくれるけど、やっぱり俺異世界でもダメダメだ。
はあ、と溜め息が出てしまう。
「きゃあ!!!」
リンゼさんの声の方へと振り向く。そこに見えたのは一角狼だ。ただ違いはさっきの一角狼より一回りも二回りも大きくとても筋肉質なところだろう。
リンゼさんはいきなり現れたそいつに驚き落としてしまった。
一角狼はリンゼさんに勢いよく襲って行こうとする。
「リンゼ!!!」
エルゼさんはリンゼさんの所に駆け出す。冬夜もその後に続いた。しかし、距離が少し離れているためこのままなら間に合わない。そう直感して、俺はすぐにグローブをはめた。
sideエルゼ
「え?」
一角狼の攻撃がリンゼの触れる前に消えた。
急いでリンゼの姿を探したがすぐに見つかった。リンゼがいたところより少し先の場所だ。
安心したと同時に彼がただ者じゃないことを確信した。昨日一瞬だけ感じた違和感に納得する。
昨日やさっきまで話していたなよなよとした雰囲気はなく、ただそこに居るだけで周りを圧倒する存在感。今の私じゃ手も足も出せないような感覚。
額と両手に着けているグローブが燃えている。
「あれ、綱吉よね?」
「ツナだと思う...」
トウヤもまるで別人のように変化した綱吉に驚いている。綱吉あんたって本当に何者なの?
side綱吉
「大丈夫か?」
リンゼの顔を覗くと少し赤くなっていた。
「え!?だ、だ、大丈夫ですよ!!つ、綱吉さんですよね?」
「ああ」
始めてみる人からは二重人格に見えるからな。
赤くなっているリンゼを下ろす。
「下がっていろ」
「はい」
何処かボーッとしている声だが言われた通り少し下がってくれた。
「グァァァァ!」
「遅い」
下に潜り込み上に上げて、直ぐ様空中に飛び、背後から思いっきり地面に向けて踵落としを決める。
一角狼を見ると口から血を吐きながら絶命していた。
「ごめん」
命を奪ったことに対して、拳を握り祈るように言葉を呟く。
「ふう」
超死ぬ気モードを解く。流石にこの世界で初めての戦闘は緊張した。ボンゴレギアがない以上予想以上に力が出なかったがどうにかなった。
「ツナ!」
「綱吉!」
冬夜とエルゼさんが駆け寄ってきた。
「何よあれ!」
エルゼさんが思いっきり詰め寄ってきた。って
「近い!近いですから!」
「そんなのはいいからさっさと吐きなさい!さっきのは何なのよ!」
「お願いだから落ち着いて、エルゼさん!」
「あはは」
「(ボ~)」
冬夜見てないで助けて。リンゼさんも!
その後問い詰められたのがこの後数十分も続いた。
「で?あれは何なの?貴方の無属性魔法?」
「魔法じゃなくて、えっと俺の国に伝わる技...かな?」
「イーシェンにそんな技が有るんですね」
「なら、冬夜も使えたりして?」
「僕は使えないよ。ツナと合うまでそんな力が有るって知らなかったからね」
戻ってきて夕飯を食べながら、俺の力のことはかなり誤魔化して説明し、納得してもらえた。
実力もある程度有るって理解してもらえたし、後の問題はハイパーモードの質力が大幅に下がっている所かな?あのレベルまでならまだどうにか対処できるけど、あれ以上の相手には今のままだと厳しい。
「そうだ、二人に頼みがあるんだけど」
「頼み?」
「うん、僕に読み書きを教えて欲しいんだ。やっぱり文字が読めないと、不便でさ。これからやっていくのが大変そうで」
「あー、確かにね。依頼内容がわからないんじゃねえ。」
「出来れば俺もお願いします」
「うーん。そういうことならリンゼに教えてもらうといいわ。この子頭いいから教えるのも上手だし」
「そ…そんなこと…ないけど…。私でよければ…」
「ありがとう。助かるよ」
「ありがとう。リンゼさん」
「そうだリンゼ。ついでと言ったらなんだけど、魔法も教えてもらえないかな。僕も使いたいんだ」
「「え?」」
ピッタリ息があった声に、流石双子と思ってしまう。それにしても魔法を教わるのは驚かれるの?
何でも魔法を使うには適正が必要らしい。リンゼさんは、水・火・光の三種類なのに対して、エルゼさんは強化魔法と、血の繋がりがあっても違うみたいだ。
適正が有るかは、リンゼさんがポーチから出した7つの石で適正が分かるらしいけど。
「で?冬夜は適正は有るの?」
「適性ねえ…うん、でも大丈夫なんじゃないかな。ある人が、お前ならすぐ魔法を使えるようになれるって太鼓判押してくれたし」
「誰よ、その人?」
「あー…とっても偉い人?かな」
ああ、確かに冬夜は、神様から言われてた気がする。
「ふーん。ねぇ、なら綱吉は?」
「え?」
いきなり、エルゼさんが話を振ってくる。
「魔法の適正のことを言ってるの。冬夜使えるなら、あんたもその偉い人に聞いてるって思ったんだけど?」
「ああ、なるほど。...俺は多分使えないと思う」
「手や額から炎出していたし火の魔法適正が有るって思ったんだけど」
あれは、死ぬ気の炎だから魔法じゃ無いんだけどな。
横で冬夜が、石の使い方を聞いて実行しようとしている。
「水よ来たれ」
「って、うわぁ!!」
「うぉわッ!?」
テーブルが水浸しになっていた。
冬夜も慌てて石から手を離したから、これで済んでいるけど、もう少し手を離さなかったらテーブル下まで濡れるところだよ!
「場所変えましょうか」
エルゼさんの意見にリンゼさんがこくこくと頷いている。お店の人に謝ってから、銀月に戻り、庭を貸してもらった。
「火よ来たれ」
「土よ来たれ」
「風よ来たれ」
「光よ来たれ」
「闇よ来たれ」
銀色の双子が同じ顔をして驚いている。何でも、複数の属性を使える人はかなり珍しいとのこと。
俺たちの世界で言えば獄寺くんの5属性の死ぬ気の炎と同じ扱いなのかな。
「あれ?この石は何の属性なの?」
無色透明な石を持ちながら、聞いてみる。
「あ、それ僕も聞きたかったんだ」
「これは、無属性魔法の魔石です。無属性魔法は個人魔法と呼ばれていて同じ魔法を使える人は早々いません」
「無属性魔法は詠唱がないの。魔法名を言えば発動できるのよ」
「例えばお姉ちゃんの身体強化だと、「ブースト」って唱えれば発動します。その他に筋力を増加する「パワーライズ」、珍しいものだと遠くに移動できる「ゲート」なんてのもあります」
へぇー。何か凄そう。でも、冬夜なら何となくできそうな気がすけど。
「…でも、自分がどんな無属性の魔法を使えるかなんてどうやってわかるの?」
「あるとき、ふと思い付くのよ」
「じゃあ今すぐ無属性の適性があるかはわからないのか…」
「いえ、魔石を手にして何か無属性の魔法を使おうとしてみればわかります。魔法が発動しなくても、魔石がちょっと光るとか、少し震えるとか、なにかしらの変化はあるはずですから」
「変化が無かったら?」
「…残念ながら無属性の適性はありません」
冬夜が、適正が無いなら仕方ないみたいな表情してるけど、あの神様のことだから、もしかしたら複数の無属性魔法を覚えさせていると思うんだけど。
「ゲート」
冬夜の空間がゆれ、森が写し出された。
石が光るのは予想できたけど、魔法まで発動するなんて、これってたまたま使える魔法を言い当てた?もしかして、魔法名が分かるなら全部使えるとか無い...って思いたい。
エルゼさんリンゼさんの二人は驚き過ぎて真ん丸の目になってる。
「はー、それにしても全属性使えるって…。あんたちょっとおかしいわよ」
「全属性使える人なんて聞いたことありません。すごいです、冬夜さん」
エルゼさんは呆れたように、リンゼさんは感心してようにと違う反応をしている。
「もしかして綱吉?貴方も全属性使えるんじゃないの?試してみなさいよ」
「う、うん。リンゼさん試してもいいかな?」
「は、はい!どうぞです」
リンゼさんは昨日から話すと照れ臭そうに顔を赤らめている。も、もしかして惚れられたり!.....無いな。俺ダメダメだし...。
「えっと、水よ来たれ」
しーんと何も反応がない。そこから冬夜と同じ順に石を持って唱えてみたけど、どれも反応はなく...
「綱吉さん、げ、元気出してください」
「そうよ。冬夜がおかしいだけで、別に適正が無いのだって普通よ?」
「あれ何か僕、disられてない?」
うわぁ...。神様、本当に俺要らないだろ。
身体能力の向上に、全属性の魔法適正、それにここまで会ってきた人達の出会いの運が明らかに良すぎる。
金銭に、宿に、仲間。これはまるで何かに引き付けられているかのように作為的に思えてくる。はあ...。
あの後宿の食堂で夕飯を食べているとあれは、ミカさんと誰?
「この子はアエルって言ってね、街で「パレント」って喫茶店をやってるんだけど…」
「ああ、昨日行きました。いい雰囲気のお店ですよね」
冬夜が答える。ああ、あの水浸しにしたところの店か。
「その店で新メニューを出そうかと考えているんだけど、あんたたちにも聞いてみたいと思ってさ。別な国の人なら、なにか珍しいメニューを知ってるかもと思ってね。」
「なにかいい料理があれば教えて欲しいんです」
「僕らでよければ。どんなものを出したいと思ってるんですか?」
「そうですね…やっぱり軽く食べれるもの、ですかね。デザートというか、女性受けするものならさらにいいんですが…」
「女の人が喜びそうなもの、かあ。クレープとか、アイスぐらいしか浮かばないけど…」
「後は、ケーキ好きな人多いからその方向で考えるのもいいと思いますよ?何か作れたかな?」
「え?」
「え?」
「「「え!?」」」
あれ?俺が作れるっておかしい!?
驚かれた後、何を作るか検討していると、
「ケーキは分かりますが、アイス? 氷ですか?」
「いや、そっちじゃなくて。アイスクリームの方」
「アイスクリーム?」
「どんな料理なんですか?」
「えーっと、甘くて冷たくて、白い…バニラアイスって知りません?」
「いえ。聞いたこともないです」
知らないんだ。そう言えば冷蔵庫や冷凍庫は無かったから当たり前か。
「作り方はわかりますか?」
「いや、作り方までは…確か牛乳を使って作るってことぐらいしか…」
「あ、俺一度作ったことありますよ」
「有るんだ!」
「教えて綱吉くん!」
うわ!近い近い近い!美女と呼べるくらいの容姿が二つも近づかれて顔を赤くなってしまう。
「わ、分かりましたから、離れてください!」
そう言うと不思議そうな顔をして離れていく。この二人は鈍感なんだな。
「厨房見せて貰っても良いですか?材料確認したいので」
「いいよ~。何の材料も好きに使っていいからね!期待してるよ!」
「あはは」
期待できる程の出来にはならないと思うんですけどね...。
牛乳、卵に砂糖と...生クリームはこれかな?バニラエッセンスは無いから、んーん、あ!カカオかな?これが有るなら二種作れるし使わせて貰おう。後は、
「リンゼさんって氷の魔法は使える?」
「使えますけど...」
「手伝ってくれないかな?」
「はい!手伝います!」
「私も手伝うわよ!」
「僕もやらせてよ」
「私たちもやるからね!」
「お願いします」
そこから先は俺が指示を出して、皆と一緒に作っていく。
途中リンゼさんが以外と大雑把な事が分かった。
後は、一晩掛ければ完成かな?
次の日に、木箱に引き積めた氷をどけ、中の入れ物を取り出す。
「どうですか?」
「これがアイス...」
「ひんやりしてる」
「美味しい」
「美味しいねお姉ちゃん」
「良かった」
「これはお店出せる味だと思うよ。ツナ」
俺達が作ったのはミルクとチョコの二種のアイスだ。
良かった~。みんな喜んでくれた。リボーンに無理矢理作らされてあのときは文句をグチグチ言われたから、自信無かったんだよな。
「ありがとうございます!このアイスならお客さんも満足してくれます!」
「他には他には!何かお勧め出来るのってないの!?」
昨日と同じく詰め寄られてあたふたする。
「綱吉って戦闘以外でも意外と凄いのね」
「あはは、僕も最近知り合ったばかりで、頼りない弟分に思っていたよ。」
「むぅー」
「どうしたの?リンゼ?」
「綱吉さんがデレデレしているところを見てると何か胸の奥がムカムカして。お姉ちゃん何でかな?」
「(これってあれよね!?リンゼが綱吉にその....)」
「(惚れてるね。確かにハイパーモード時でのツナは男の僕から見てもかっこよかったけど、多分ギャップ萌えで落とされたね。今のところは無意識だろうけど)」
「(ど、どうしたらいいかしら!?)」
「(今は気づくまで、そっとしておこうよエルゼ。その方が見てるこっちは面白いし)」
「お姉ちゃん?冬夜さん?」
「わ、私は分からないかなー(棒)」
「いつか分かるときが来るよ。きっと」
「何ですか!二人して!お姉ちゃんは棒読みだし、冬夜さんは暖かい目で見てるし、絶対に何か知ってますよね!教えてくださいよ!」