もしもなのはに双子の妹がいたら?   作:赤いUFO

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フルバの透が入院中の話


おまけ2:姉紹介

 その日の昼頃。入院していた本田透の部屋にノック音がした。

 誰だろうと透は疑問に思う。

 今日は平日で友人達は学校の筈だ。

 一番可能性が高いのは、居候している家の家主である草摩紫呉か。

 もしくは父方の親戚か。

 しかし、その予想は裏切られる。

 

『透さん。入ってもいいかな?』

 

 その声には聞き覚えがあった。

 

「よつばさん!? はい! 開いてますです!!」

 

 透が入室を許すと、個室の扉が開いた。

 

「お邪魔します」

 

 入ってきたのは、駅前の喫茶店の看板娘である高町よつば。

 そしてその後ろにはよつばによく似た、髪型が少し違う少女が立っていた。

 彼女は透に向かって会釈する。

 

「はじめまして。本田透さん。私、よつばちゃんの双子の姉の、高町なのはと言います」

 

「これはご丁寧に! 私は本田透、です! よ、よつばさんにはいつもお世話に!」

 

 ペコペコと頭を下げる透によつばが容態を聞く。

 

「ところで身体の方はどう? 頭打ったって聞いたけど」

 

「はい! 病院の方々がとても良くしてくれて。へっちゃらです」

 

 満面の笑みを見せる透だが、気になる事があり、よつばに尋ねる。

 

「あの、今日はどうして? それに学校は……」

 

「あぁ。魚谷さんと花島さんから透さんが入院したって聞いて。お見舞いに行かなきゃと思ってた矢先になのちゃんが帰って来たから、ついでに紹介したいなって思って。これ、差し入れです。後でどうぞ」

 

 シュークリームの入った箱を渡すと透がありがとうございます! と渡した側が戸惑うくらいにお礼を言ってくる。

 

「で、今日学校はサボっちゃいました!」

 

「えぇっ!? あ、あの! 私の為にそんな畏れ多い!?」

 

 透の反応によつばが手をヒラヒラさせて違う違うと返す。

 

「なのちゃんが帰って来るからどっちみち休むつもりだったんです。明日の朝には帰っちゃうから。そこに透さんの入院も重なったから、姉の紹介も兼ねてお見舞いに行こうって思って。それにほら、友達のお見舞いって言えば普通のサボりより体面が良いから」

 

 ウインクするよつばになのはが苦笑する。

 

「もう。よつばちゃんたら……」

 

 よつばなりに透が気を遣わないように話している。

 

「おトイレのついでに、何か飲み物を買ってきますね。2人は何が良い?」

 

「そんな……」

 

「いいからいいから」

 

 よつばがそう言うと、2人はそれぞれ飲み物を注文すると、病室を出ていく。

 なのはは透の了解を経て椅子に座った。

 

「改めてはじめまして、透さん。よつばちゃんがよく、貴女のことを話してたから、会ってみたいってずっと思ってたんだ」

 

「よつばさんが……」

 

「うん。とても不思議な人だって。あ! 変な意味じゃないよ!」

 

 なのはが両手を振って勘違いさせないように振る舞うと、透も分かってますと笑う。

 透はよつば同様になのはにも好感を抱く。

 

「あの。外国でお仕事をされていると聞いてますが」

 

「うん。明日の朝にはこっちを発って向こうに戻らないといけないかな」

 

「大変お仕事なんですね」

 

「まぁね。でも、楽なお仕事って無いと思うし。子供の頃に比べて体力はついた筈なのに、実家の喫茶店をたまにお手伝いするとヘトヘトで」

 

 高町夫婦が経営する喫茶翠屋は人気店である。

 目も回る注文数を早く客に届けなければならない。

 特にお客の多い時間帯ではなのはも目も回る勢いで忙しく、仕事が一段落した頃にはぐったりしている。

 

「でも、崖から落ちたって聞いたけど、本当に大丈夫なのかな? 頭以外は?」

 

「そこまで高い崖ではないです。頭を打った以外は擦り傷だけですから。退院した後も少しの間は通院が必要らしいですが」

 

「そっか。何にせよ、大事にならないならそれに越した事はないよね。よつばちゃんの時は、本当に大変だったから」

 

 双子の妹の片腕を切除するまでの事態になった過去の事故を思い出す。

 そこで透もよつばの右腕が義手なのを思い出した。

 本物の腕と大差ない動きをするし、傍目には分かりづらい見た目なので忘れがちになるが。

 そこでよつばが戻ってきた。

 

「おまたせー。売店が意外に混んでたね」

 

 そう言いながら、頼まれた飲み物を渡す。

 微妙な空気になっている事に気付いてよつばが首を傾げる。

 

「どうかしました?」

 

「あ、いえ。それより、前に嬉しそうになのはさんの事をお話ししてましたが、仲が宜しいんですね」

 

「えぇ。だって言葉通り、生まれる前からの付き合いですから」

 

 透の言葉によつばが冗談交じりに返すと3人は笑う。

 

「私は兄弟姉妹が居ないので羨ましいです!」

 

 透を姉のように慕ってくれる女の子はいるが、やはり実の姉妹とは違うだろう。

 そこからなのはとよつばの幼少期の話となる。

 よつばは小さい頃からパティシエとしての母に憧れて、喫茶店を継ぎたいと思ってたこと。

 対してなのはは自分のやりたい事が分からず、妹のよつばが羨ましかった事。

 それでも小学生の頃のある出会いが切っ掛けでその職種に興味を持ち、中学卒業後はその関係の仕事に就いた事も。

 

「お2人とも、スゴいのですね。尊敬します! 目の前の事でいっぱいいっぱいで、やりたい職業と訊かれても困ってしまいます」

 

 透も就職組に位置するが、特に将来の夢とか考えているわけではないだから夢に向かって歩く姉妹が眩しく映る。

 

「そうですかね? あ、でもわたし、透さんに確かめたい事があったんですけど、良いですか?」

 

「え?」

 

 自分に確かめたい事とは何だろうか? 

 首を傾げていると、よつばが質問してくる。

 

「透さんってあのオレンジ頭のぉ……草摩夾さん? と付合って……えぇ!?」

 

 質問の途中で透の目から涙が落ち、よつばは動揺する。

 

「え、え? ごめんなさい! 気軽に訊いちゃいけませんでした?」

 

「あ、いえ。すみません」

 

「その人と何かあったの?」

 

 なのはが頬に伝っている涙を拭ってあげると透が話し始める。

 

「実は、少し前に夾くんに、私の気持ちを伝えて……それで幻滅だって、言われてしまいました……」

 

 力なく笑いながら結果だけを話す透。

 細かなところを話すと色々と厄介だし、透自身が説明ベタな面もある。

 しかしよつばがその事に疑問を抱く。

 

「本当ですか? 昨日、ウチの店に来てお見舞いの品をかって行ってくれたんですよ。だからてっきりわたし……」

 

「いえ。夾くんは、来てませんよ?」

 

「ん~?」

 

 何か食い違っている2人の話にお互いが首を傾げる。

 実を言うと、草摩夾はお見舞いに来ようとしたが、透の友人2人に脅しをかけられた上で止められて渋々引き下がったのだが、それを知る人物はここにはいない。

 そこで話を聞いていたなのはが口を挟む。

 

「えっとね。事情はよく分からないけど。お見舞いに来ようとしてくれるくらいならまだ諦めなくていいんじゃないかな? もちろん、透さんがまだ好きなら、だけど」

 

「なのはさん……」

 

 不安そうにする透になのはが話を続ける。

 

「私もね、ある子に本当の気持ちを伝えられないでいるの。本当は友達になりたかったのに、色々とあって、疎遠になっちゃったから」

 

 思い出すのは、妹の事故の原因となった金髪の少女。

 なのはは未だにあの子と向き合えないでいる。

 

「言葉にした事が全部本心だとは限らないよ。透さんが諦めきれないなら、もう一度くらい確かめてみてもいいんじゃないかなって……ごめんね、無責任なことを言って」

 

「いえ、そんなことは──―」

 

 そこで、病室のドアがノックされる。

 許可を経て入ってきたのは透が居候する家主である草摩紫呉だった。

 

「おや? もしかしてお邪魔だったかな?」

 

 紫呉は3人を見て頭を掻く。

 平日の昼なら、来客も居ないと思ったのだろう。

 アテが外れた紫呉は申し訳なさそうに高町姉妹と話す。

 

「お見舞いに来てもらって悪いんだけど、今から透くんと大事な話があるから、席を外してもらってもいいかな?」

 

「あ、はい。わたし達も長居し過ぎました」

 

 謝るよつばに、紫呉はいえいえ、と手を振る。

 

「それじゃあ、透さん。お大事に」

 

 そう言って部屋を出ようとする高町姉妹。

 それを透が呼び止める。 

 

「あ、あの!!」

 

「?」

 

「わ、私、もう一度夾くんとお話ししてみます! その勇気を下さって、ありがとうございます!」

 

 頭を下げる透に2人は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、上手く行くと良いね。事情はよく分からないけど」

 

「そうだね」

 

 笑い合いながら帰路に着く2人。

 そこでよつばが話題を変える。

 

「はやてちゃんから聞いたけど、今度はやてちゃんが作る部隊に、あの人も来るんだよね?」

 

「……うん。優秀な人だからね」

 

 なのは自身、彼女との折り合いが未だについておらず、一緒の部隊になって上手く接せられる自信がない。

 もちろん、仕事に私情を持ち込む気はないが。

 それを理解していて、よつばはなのはの肩に手を置いた。

 

「上手くいくと良いね。本当に」

 

「……うん」

 

 

 遅れたはじまりは、もう少し先の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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