いまさらリリカルなのはでクロスオーバー?って思うけど、やっぱり自分の原点に立ち返るっていうのは大事かなって。
あとこれは念を押しておきたいことですが、僕は仮面ライダー1971-1973を題材にしないと小説を書く気はおきないタイプです。
あしからず。
静謐に支配された空間でふたりの男が睨み合う。
ひとりはギリシャ彫刻に魂が宿ったかのような人間離れした美しさを持つ青年。
もうひとりは首に深紅のマフラーを巻き、異形の仮面を被った男。
互いに言葉を交わし合い、進み出る。
仮面の男の拳はすべてかわされる。
青年の無造作に放った拳が仮面の男の胸を痛烈に叩く。
仮面の男は吹き飛ばされる。
だが、仮面の男はすぐに立ち上がり、前方に立つ青年を睨む。
そして、言った。
仮面の男の口から出た言葉は、青年を揺さぶった。ふつふつと怒りを混み上がらせた。
激した青年は、仮面の男めがけ恐るべきスピードで肉迫する。
仮面の男もまっすぐ走る。
迎え撃つ。
ふたりの拳がお互いを狙う。
そして。
その戦いの末に彼は――“何者”でもなくなった。
――彼は、自分を、失った。
◆◆◆◆
魔法少女リリカルなのは×仮面ライダー
未来2010
◆◆◆◆
「俺、もうすぐ死ぬんだよ」
男が静かに言った。
再生される記憶の映像、それは驚くほど鮮明に映る。
懐かしい。
これはすべての始まりだ。
覚悟を決めたあの日の記憶。
「絶望だな。死ぬよりひどい。だけど、そんな俺に――最後の希望だ。――それはおまえだ」
ああ。そうだ。
おまえはこんな俺を希望にしてくれた。
俺のことを想い、死の絶望を乗り越えた。
いや、絶望どころではない。
「――俺の寿命が保たないことがわかった。だから――根性、で、なんとかするってな」
おまえは、俺の存在のために死そのものを超えてみせた。
「なんとかなったぜ――。おまえと会うために、俺は生きた。生き続けた。――寿命を超えて、俺は生きた。生きられた。おまえがいたから、俺は生きられたんだ」
おまえが死を凌駕するほど影響を受けたように、俺もおまえとの出会いが影響を与えた。
今の俺があるのは、おまえのおかげなんだ。
「もしも――年に千人の人間の命が奪われるとしたら。その中の百人でいい。いや、五十人でも、十人でも……ひとりでもいい。たとえ、ひとりが守りきれなかったときがあったとしても、それでもいい。守り続けろ」
その言葉は、俺の胸を打った。
なにもかも忘れても、忘れそうになるほどボロボロになろうと、それだけは覚えている。
覚えている――。
「せめて、見たかったな。もう少し先の世の中を」
おまえは笑った。
今にも命が途絶えようとしているのに、平然と。相変わらずの、屈託のない眩しい笑顔を浮かべた。
「未来は、いい世界になってるだろう。……そうだよな」
おまえは手を差し伸べる。
俺はその手を握りしめる。
「そうさ。未来になれば、変わるかもしれない。俺たちは……」
◆◆◆◆
――俺たちは。
「……」
男はそこで目を開けた。
夢を見ていた。これまでなんどもなんども見てきた夢だ。
きっと、最も大切な“自分の過去”なのだ。
だから繰り返し繰り返し頭の中で再生する。
男は体を起こし、しばらくベッドに腰掛けて動かずにいた。
記憶の整理は彼の日課だ。
「おはようございます」女性の声がした。「今日はいい天気ですよ。雲も少なくて、空は真青。日差しも気持ちいいです」
楽しそうにくすくすと笑う。
シャワーから戻ってきた彼女の長い髪はまだわずかに濡れており、タオルで髪を丁寧に拭くとシャンプーの甘い香りが漂う。
それからすぐに、女は黒いレディーススーツに着替え、男の隣にちょこんと座った。
そして、愛おしいものを見る目で、こちらの顔を覗き込んできた。
そんな彼女に対して、男はなにとはなしに苛立ちを覚えた。
いや、苛立ちの理由はわかっている。
ただ到底普通ではない憤り方をしているので、それが可笑しいということだ。
だがそれはいつものことである。
この女性を殺したい。
憎い。
殺す。
ただそう思うだけだ。もはや慣れた感情だ。
「……また夢を見た」感情を押し殺して彼は口を開いた。
「いつもの夢、ですね」
「そうだ」
「そろそろはっきりしましたか? 自分のこと……」
女はその美しい顔に微笑を浮かべ問いかけた。
男は首を横に振った。
「まだ実感は湧かない。ずっと記憶にもやがある。あれが、本当に自分だったかどうかの確証がない。そもそも、俺はただこの記憶を有しているだけの全くの別人だと。いつもそう思ってしまう」
「そうですか」
「……この話は、前にも、したか」
「ええ。もうずっと。百を越してから、数えてません……なんて、ウソです。あなたのことならなんでも覚えてます。教えて差し上げましょうか?」
「いや、いい」
面白そうに彼女は笑った。そしていつもの問答に入る。確認するように。「あなたの実感がないのなら、すべて、おやめになりますか?」
そう聞くと、彼はいつもこう答える。声を絞り出すように、呻くように想いを吐露する。
「そうはいかない。俺は……俺は、それでも……俺が――なのは、絶対に間違いないんだ。だから投げ出せない。俺は、彼だ。俺は――でいなくちゃならないんだ」
「……ええ。その通りです」
女は男の頬に手を添え、顔をまっすぐ見合わせる。そして、そっと唇を奪った。
「それでいいんです。そうやって……一生懸命生きてくださいね」彼女は柔らかく微笑んだ。どこまでも優しく。どこまでも不気味に。「私、そんなあなたを愛していますから」
「……」
彼女に頭を撫でられる。彼はそれを鬱陶しそうに払い除けて、立ち上がった。
ちょうどそのとき、卓上に置かれた小型の端末が音を鳴らした。無線だ。
「どうした」男は気持ちを切り替え、無線に出た。
「任務だ。出動して欲しい」
「……おまえが連絡を寄越すのは珍しいな。ドクター」
「手の空いている者がいなかっただけだ。で、どうなんだ。出れるか」
「無論だ」逡巡もなく答え、彼はすぐに着替え始める。「場所はどこだ」
「海鳴市だ。〈芽〉と思われるターゲットの調査が任務だ。もし〈芽〉であることが確定したならば、あとはいつも通りだ」
「海鳴市……遠征になるな」海鳴市のマップを端末で表示、確認しながら、彼は着替え終える。
「資料は送っておくから目を通せ。ターゲットには不明な点が多い。第一小隊、第二小隊だけでなく、大隊長自ら出向く。不本意だが、私も〈博士〉を連れて同行する」
「……ずいぶんと大がかりだな。それに出不精のおまえまで行くのはどういう風の吹き回しだ?」
「……私にもいろいろある」
「ふぅん……まぁいいが」
「とにかく来てくれ。すぐに出発しなくちゃならないからな」
ぶつりと無線が乱暴に切られた。
男はふぅとため息をついた。
「海鳴市へ行くんですか?」女は彼の荷物をまとめたリュックサックを手渡しながら尋ねた。
「ああ。だが……どうにも大事になりそうな予感がする」
「うふふふ。あなたの勘はよく当たりますから、きっとそうなんでしょうね。それにしても、海鳴市ですか。私、まだ行ったことがないので、同行したいんですけど……頼まれた仕事があるので」
「別に来なくていい」
「まぁ、冷たいですね。私がいればいろいろ役立つと思いますよ?」
「だとしても、おまえが来るのは面倒だ」
ぶっきらぼうに言い放ち、男はマンションの玄関へ向かう。
「わかりました。では、後から向かいますね」女はいたずらっぽく笑う。「〈スマートブレイン〉に顔を出して、その後は〈ZECT〉との打ち合わせ……大事な仕事を一任されているので、遅くなると思いますけど……必ず追いつきます」
「……おまえにはなにを言っても無駄だな。まぁいい。勝手にしろ」
「ええ。そうします」
ひらひらと手を振って見送りをする女に視線をくれず、男はそそくさと外に出た。
「ん……」
なるほど、彼女の言った通り今日はよく晴れていた。
そして目の前を見ればとある建造物が目に留まる。
彼の住むマンションの部屋を出ると、必ず対面することになるその建造物。
風都の象徴たる風都タワー。
それに備わった巨大な風車が春風を受けてぐるぐると回転していた。
東京に隣接する街、風都ではよく風が吹く。いつものように街の風を全身に受けながら、タブレット端末を取り出して資料に目を通す。
「高町なのは。フェイト・T・ハラオウン。八神はやて」
ターゲットの名前を口に出す。
その名を噛み締めるように、ゆっくりと。
そして男は歩き出した。
――吹きすさぶ風がよりいっそう激しさを増した。
風都ってモロに名前出しちゃうのどうなのよ、って自問自答しましたけど「海鳴市っていう架空の舞台でストーリー進めるんだから風都の存在がリアルか否かなんてどうでもいいでしょ!」と……。
それと風都が東京の隣街なのは、ドライブで語られたことですね?そういうことです。
ここに投稿するときは毎回タグつけとあらすじ書くのに苦労してます。
何書くのさ、あれ。
あと、今作から横書きの見やすさを考慮した書き方を取り入れてみました。
どうかしら。うーん、見やすいですかね。