白猫プロジェクトNega 学舎の英雄 集決編   作:鳥面ダス

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Stage.03 penalty part4

避難を終えたブレイズ(俺たち)が戻ったときには、魔物はあらかた片付き、(ルーター)も破壊されていた。結局、ラセツがみんなやっつけたかんじか…早期解決は良いことだとシャルロットは言ったが、内心、だいぶ楽できたとか思っていそうだ。

 

「アレックス、もう限界だよ。戦場(ここ)には立たせてもロクなことがない」

『処遇は...任せる』

 

なにか通信で会話していたラセツが俺たちのところの向かって歩いてきている。

 

「相楽勝磨、いや...ブレイズ」

「...」

「即刻接続(コンバート)を解除、コンバーターをこっちに返却しろ」

 

quest3-3 巣くった痺れ、切れた痺れ

 

突如言い渡されたコンバーター返却命令。それはすなわち、俺たち二人に対する戦力外通告と、解雇通知にほかならなかった。理由を問いたださずにはいられなかったのだが、ゲドーはその理由を事細かに提示した。

 

「まずシャルロット、貴様のものぐさを俺が知らないとでも思ったか」

『ぬ…っ!』

 

もともとシャルロットは、アレックス司令『光焔の御子』としての能力の爆発力を見込んでスカウトしたのだが、依然発現したコネクトスキルが安定しない原因は、十中八九彼女の性格に起因しているという結論が、幹部内で出ていたようだった。身体を動かすのが相楽()であることに胡座(あぐら)をかいていたということだった。そそてあの能力さえ使えれば、ゲドーなしでも早期鎮圧はできたはずであることも追い討ちに付け加えられた。

 

読者様方の知る彼女の性格上完全に図星である。シャルロットは何も答えられなかった。

 

「次に相楽、この戦闘お前は何を失敗した」

「みんなを避難させなかったこと…でも、次はもっとうまくやる!」

「7割5分ハズレだ...守るために戦ってる俺たちが『次』を望んでどうする!」

「...!」

 

赤点。守るために戦ってた...と思っていた。戦いが日常になってから初心が抜けて思考がすっかり凝り固まって、敵の殲滅、強くなると目的を取り違えて、クラスメイトを危険にさらした。もっと根底的な部分が抜けていたのである

 

揚げ足を取られたようで、完全に俺が掘った墓穴だった...

 

「逆に新たな『(タスク)』が発生したとして、うまくいったからと、今回の失敗(ミステイク)も良い教訓(マニュアル)として納得(インストール)する気か?」

「じゃあ聞くが俺たちは、おまえの身勝手であと何人見殺しにすればいい!」

 

二人の成長のために人の命を差し出すことが正当化なんてふざけたことがあってはならない。もし俺が間に合わなかったら、いきなり家族を失った遺族の無念、悲しみ、虚しさ、怒りを俺たちは背負うことになる、そう聞かされて、俺は今、身内に言われて良かったと思ってしまった。

あのままでは「もう同じことを繰り返さないから水に流せ」なんて、被害者遺族に言っていたかもしれない...

 

襲撃に居合わせたあの三人も、パニックを未然に防ぐためすでに記憶封印処置が決定していることも伝えられた。

 

それでも、まだコンバーターを手放そうとは思えなかった。思いたくなかった。でもまた墓穴を掘りそうで口から言葉が出てこない。それを見かねて再び共鳴接続(コンバート)したゲドーが、とある提案を持ちかけてきた。

 

「俺に一撃食らわせてみろ。それで今回は目をつぶってやる。敵と思って打ってこい!」

 

 MISSION START

 

 ラセツ があらわれた!

 

栄光の一閃(グローリーフェンサー)を再び召喚する。一撃でいい、とにかく剣を振るい、振るい、振るった。それをラセツが裁き、かわし、受け流す。当たらない。全く当たらない...!まだまだ!

 

不本意な形ではあるけど、一度、自分の本気がどこまでこいつに通じるか、試そうと思ったことはある。

 

「燎焔斬!」

 

必殺の一撃が...入った!いや…

 

「敵と思って打て、と言ったはずだが?」

 

燎焔斬が、今の全力が完全に止められた...右手の親指と人差し指で...生ゴミでも摘まむように...

 

『おい、冗談じゃない!こんな...』

 

ため息をついて、

 

「もう少し譲歩してやる。俺の一発を受けて接続を維持してみろ!」

「なにを...!」

 

ラセツがまっすぐ突っ込み、腕を振りかぶる。まっすぐの...最短距離。軌道は簡単に読めた。避けてはいけない、避けてカウンタースラッシュを狙っても対応されるだろうし、それではゲドーも俺を認めない。

 

「シャル、正面から燎焔斬だ!右腕を真っ二つに...っ!」

「...アクション...」

 

当たる、押し返せると読んで放った燎焔斬は、たちまちすかと空を切った。ゲドーがしゃがんでよけた...いや紫の光の奔流となって、高速で地を這っている!

 

 

『後ろだ、ショーマ!』

「防げ...!」

 

一瞬にして懐に入り、熱波を伴って拳で上に打ち上げた!

吹き飛ばされた拍子、接続が解除。シャルロットが出てきてしまった。そして近くに落ちていたスマホを拾い上げたゲドーは親指を下向きに立てる(リバース・サムズアップ)とともに

 

「気持ちも経験も判断力もない。かといって自分の言い訳を押し通す実力もない。まったくもって最悪だよ」

 

「いいね」の真逆、最大の意趣返しを食らわせるのだった

 

そのあと、俺たち二人はけがの手当を受けたあと、シャルロットは有用な能力をもつことから、謹慎処分で済んだが、俺は組織を追い出されることとなってしまった。

 

「俺たちも一緒にかけあうぜ?相楽少年!」

「ほんとに出て行くこと無いと思う...!」

 

マギー、巽さんのそんな言葉に対しても、何も返すことが出来なかった。戦う力、スマホを奪われた以上に、突きつけられた、ゲドーとの差、圧倒的な実力と確固たる信念、覚悟に、負けを認め、屈服してしまったのだ。完膚無きまでに...もう悪い例えばかりが頭を占めてしまっていた。

 

そんな失意の内に組織の名簿から、俺の名前が、消えた。俺は、元のいち高校生に戻ったのである。

 

ー ー ー

 

ゲドー()とシャナオウ基地をあとにする勝磨を一瞥していた。シャナオウは、手を貸したとはいえ、戦力のロスと、敵以上に徹底的に追い詰めるやり方に一周回った疑問を向けられた。

 

「当然だ。未熟なまま勝手に死なれても困る...完全な勝利しか、守りたいものを守れるものはないのだから...!」 

 

きっぱり返して、自室に戻ることにした。

 

...しかしブレイズを殴ったときの、あの硝子を突き抜けたような手応えはいったい何だったのか...

 

✳ ✳ ✳

 

「ここ最近、妙な魂が増えているな」

 

冥界の玉座に佇む帝王は今日も魂を裁いていた。死した人間の魂の偏りとその言い分はその時代に何が起きているかを如実に示している。吸血鬼として永い時を生きてきた彼だからこそわかることだ。

女や幼い子どもとともに、軍人の魂が多くなり、爆発やら銃撃戦やらに巻き込まれたと口を揃えたならば、地域紛争が激化しているのだとわかる。

 

しかし、最近多い魂は、これまでの魂とは、どこか波調(・・)が違った。

 

「あの新しい島、我も出向く必要がありそうだ...」

 

✳ ✳ ✳

 

草木も眠る丑三つ時。月光に冴える白い衣を纏った乙女は、魔物を前にし杖を構える。

 

『ここにも...いないね...』

「大丈夫。あいつが出るまで戦いつづけてやる...」

 

ジャスミン

「お前らも...違う...」


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