story2-1 戦いの翌朝
朝七時。
しかし、改めて考えると大変なことに巻き込まれてしまった...シャルロットと再会して、
とりあえずおなかも空いたので朝飯をすませる。
そういえば、としわの寄ったズボンから昨日巽さんからひったくったままのスマホを取り出す。左手には焼き付いた剣の痣。あの戦いも、あの再会も、あの魔物もみんな、夢なんかじゃない。現実なんだ...
小説やラノベではよくある話だが、当事者になってみると思いのほか気は乗らない。
ファンタジーの世界に行ってみたい、現実よりゲームの世界の方が気楽だ、そんなこと考える奴っていうのは、どうもそんな世界の良い面だけしか享受していないからなんだな…そんな実感が不意に沸いてしまった。
でも...もしこの力で、世界を変えられたら...よし!
相良 勝磨
「
昨日みたいにはいかない。案の定というか、シャルロットがいないと変身できないらしい。
というか...俺、こんな朝っぱらから恥ずかしいこと言った...俺は....マギーとは...違う...!
ー ー ー
真木 逸己
「っへぶしっ!...んあ?」
真木逸己くしゃみで目が覚める。なんか締まらない起床である。目覚ましを見る...朝の6時...あと一時間...
ー ー ー
剣の痣は幸い手の甲にあったので、できるだけポケットに突っ込むことにして、今日も今日とで校門をくぐる。昨日あんなに激しく戦ったというのに、その痕跡は跡形もなく消えている。マジでか!?
教室。いつになくクラスが揃うのが早い。そして各々がみんな、新聞の号外の話で持ちきりだった。周りのクラスメイトの記事をちらと覗きこんだ俺は一瞬ドキッとした。というのも、その号外の内容が、新たな冒険者が学校に侵入した魔物を撃破したことであったからだ。学校に持ってきていたのを覗き込むと、思いの外記事の内容が正確で、添えられた写真には、その新たな冒険家が載っかっている。
シャルロットとコンバートした俺当人だ。
昨日あの周囲に人がいなかったはずだが、かなり近いアングルで撮影されている。顔は分からなかったのでそこは助かった。しかし、どこから撮られたのだろうか。そんな雰囲気をよそに、HRに入った。
山ノ下先生
「放課後、すぐに一階の職員室に来てくれ」
担任の山ノ下先生からそう呼び出された。何の用だろうか。宿題とかも出しているし、今のところ検討もつかない。かといってボイコットするわけにもいかないので顔を出すことにした。
* * *
んで放課後!いいね!この三分○ッキングスタイル!
山ノ下先生
「おっ、来たな。お前に会って欲しい人がいるんだ。ついてきてくれ」
まだいまいち状況を飲み込めない。が、先生にくっついていくことにした。
職員室隣の倉庫の奥。先生が壁を少し探ると、カチ、という音と共に棚の一つが、西洋扉のごとく回転し、金庫みたいなものものしい扉が現れたかと思えば、その横のパネル、暗証番号式のドアロックのボタンを、軽快に押していく。
その1から0までのボタンの横に、カードリーダーもある。こっちだけの方が、ロックが固い気がするのは俺だけだろうか。
見た目に違わず、重い音を立ててドアが開く。目に入ってきたのは閉鎖空間、いやエレベーターだ。先生に促されたので取り敢えず乗る。
巽 静流
「先生」
山ノ下先生
「お!巽か!んじゃこっから先は任せて良いな」
巽さんもあとから乗ってきた。
巽 静流
「はい。ここからは大丈夫です」
山ノ下先生
「OK!んじゃそういうことで!」
相良 勝磨
「はい?」
ドアが閉まり、エレベーターが動き出した。巽さんと二人っきり。昨日について話すなら、絶好の機会だろう。
相良 勝磨
「巽さん、昨日いろいろあって聞けなかったけど、スマホのことや
巽 静流
「...昨日も見たと思うけど、そのスマホ、私にはうまく使えないから、いざって時とかには使える人が持ってた方がいいって。そのまま持ってて良いよ。あと、私が何者なのかっていうのは、多分すぐにわかる。もうすぐ着くよ」
相良 勝磨
「...」
巽さんがそう言い終わった直後、本当に到着した。
エレベーターから汚れ一つない綺麗な廊下に出る。さっきのエレベーターといい、まるで秘密基地だ。
廊下を抜けると、広い部屋に出ると、いきなり入ってきた光景に釘付けになった。
前にはでかいモニターが3つ。その一つには、昨日の戦いが映っている。
あとの二つも、戦闘記録のようだが、そこにいるのは、黒い鎧、というよりは機械的な装甲に近いものをまとった、長い白髪を結んだ、赤鬼の仮面の男だった。
その戦闘は、二つとも、昨日と比べてかなり大規模で、燃え盛る戦場に、その戦士が立ち尽くしている。壮烈な光景だった。
さらに片方は、女性だろうか、炎の奥から誰かを抱えて歩いているようにも見える。ただ、夜の暗さと炎の逆光で顔まではよく見えなかったが、どこかで見かけたような...
モニターに沿う形で長机が二つ並行に並び、その上にパソコンがずらりと並び、ヘッドセットを着けた人達が、キーボードを操作している。
マンガとかで見るような指令室のイメージと合致していた。
しばらくその光景にあっけにとられ、立ち尽くしていたが、人の気配を感じて横を向いて驚いた。
アレックス
「巽、御苦労だった。あとは私が説明しよう。そして...相良勝磨くん...だね?」
昨日通信機越しに聞いた、低く落ち着いた声(通信機などの性質上正確にはちがうが)。そこには、背の高く、薄い金髪の髪をオールバックにしてまとめ、黒い軍服を着ている男性と、シャルロットが立っていた。
相良 勝磨
「はい..そうですけど...」
アレックス
「私はアレックス・B・ジョンソン。秘密組織Orionの総司令だ。よろしく」
と握手を求められた。突然入ってきた片仮名の羅列に戸惑いながらもなんとか理解した。この人こそ、先生の言っていた、『会ってほしい人』であるのだ。
それがわかったので、前に出された、がっしりした手を握り返し、
相良 勝磨
「えっと、ジョンソン司令...ですね。昨日ぶりです」
アレックス
「アレックスでいいよ。まず昨日の件について、礼を言わせてくれ」
シャルロット
「昨日は助かりました...ですけど...」
と言いかけて押しとどまった。やっぱりここでは御子モードらしい。
事実、俺が来なかったら、事態の収束が遅れていた。でも確かに、もともといち生徒である俺は避難するべきではあった。
相良 勝磨
「...そこに関してはすんませんでした!なんていうか...その...あん時はほっとけなくて...」
シャルさんはいきなり謝罪を返され、向こうもそれとなく先手を打たれたようで、どうも反応に困っていた。いくらか沈黙が続いたあと、少し間をあけてシャルロットが切り出した
シャルロット
「...あくまで昨日は、運が良かった...」
相良 勝磨
「...え?」
シャルロット
「怪我の功名というか、なんというか...昨日勇敢に戦ったあなたに救われた人も多かったはずです。ここでの再会も何かの縁。改めて、よろしくお願いしますね!」
また握手を求められた。さっきした司令との握手とはまた意味合いが全く違う。少し変な気分がしたが、それを握り返した。か弱さを感じるきれいな手だった。そして...
シャルロット
「あたしもこれからショーマって呼ぶから。昨日のあれはここじゃ内緒だから。つーこって!」
と耳打ちされた...昔のよしみもあるのか打ち解けた...でいいことにしておこう...
相良 勝磨
「...んじゃ、改めて、よろしく!」
メルディオ
「雨降ってなんとやら、ですね。よかったよかった」
口元をニマニマ、常に目を閉じた長く白い髪を垂らし、狐のような耳が頭にぴょこんと生えた男が、二人の関係が良くなったのを見るや、おっとりとかつねっとりと呟いた。痩せ気味な姿だが声を聞けばすぐ男だとわかった。
メルディオ
「申し遅れましたね、私、メルディオ・ファウンデーションCEO、メルディオ・ホワイトと申します」
と名刺を出された。
巽 静流
「メルディオさんは、この組織だけじゃなく、学校や街の運営にも資金援助をしてくれてるの」
巽さんが補足しながら戻ってきた。
巽 静流
「グラウンド、きれいだったでしょ?毎回の戦闘の後始末の人材派遣と出資もしてくれてる」
メルディオ
「ありゃ?全部言われちゃいましたね...それでは私はこの辺で。あとは司令にお任せします」
メルディオさんが話を終えたの見て、司令が本題を切り出した。
アレックス
「単刀直入に言おう。この組織に加入してほしいのだ。
メルディオさんのcvは故・藤原啓治さんを予定していたんです...上げる前に亡くなるとは思いませんで...いち声優オタクとしてご冥福をお祈りいたします...