蒼の始まり。
渚とリアスの出会い。
これは序章とも言える半年前の物語。
始まりの物語《Halfe Year Before Prologue》
──戦いに於いて何が重要か?
兄にそう問われたのはリアスが上級悪魔に選出され、『王』となる資格を得てから少し経った後だ。
その時、彼女が出した答えが"人材"。
知に優れた将、戦に秀でた武、統率する優秀な王。それらが揃えば負けないと頑なに信じていた。
しかし兄は、まったく別の答えを提示する。
『リアス、戦いに於いて最も大事なのは情報だよ』
敵を把握し万全の体勢を整えて的確な戦法で戦う。
それが王者に必要な資質だと教えてもらった。
そして、その言葉は重くリアスにのし掛かる。
●◯
駒王町郊外、深夜。
暗い森の奥に響くは、つんざくような爆音と奇声。
木々は軽々と薙ぎ倒す巨体は人
人が踏み入れることは許されない魔境がそこにはあった。
月明かりに紅の髪を照らすリアス・グレモリーが舞う。美しさ際立つ少女の手に複雑な紋様を描いた陣が構成されると昏い波動を放つ。
『滅び』の理を宿した魔力の波動は、軸線軸上にいる複数の"はぐれ悪魔"を纏めて消し飛ばした。
だが終わりではない。
森の合間合間から"はぐれ悪魔"が攻撃の隙を狙ってリアスに飛び掛かる。
迫る脅威から『王』を守るため、彼女の『騎士』と『戦車』が立ちはだかった。
『騎士』である木場 祐斗が手にある魔剣で切り裂き、『戦車』である搭城 小猫の拳が殴り打つ。
鋭い剣と鉄壁の拳に怯んだ"はぐれ悪魔"の集団が動きを止めた。
そこに狙ったようなタイミングで目映い電光が降り注ぐ。
『王』の側近を勤める『女王』、姫島 朱乃による雷撃である。"はぐれ悪魔"を広範囲に渡って焼き付くした朱乃がリアスのすぐ横へ降り立つ。
リアス、朱乃、祐斗、小猫が互いを守り合うように背を預ける。
互いをフォローしながら戦う絶妙なチームワークは、"はぐれ悪魔"が何十いようと敵ではないだろう。──それでも、相手が何百となれば些か不安が残る。
「皆、ご免なさい」
リアスの謝罪に誰も何も言わない。敵は凡そ五百を越える"はぐれ悪魔"の集団。
決してリアスたちは弱くはない。……が戦力差が圧倒的過ぎた。
このままでは、いずれ数に圧されてしまう。それでもリアスたちは、この軍団とも言える敵対勢力を排除する必要がある。
彼女たちの背にある町には何も知らずに夜を過ごす人々がいる。
こんな数えるのも馬鹿らしくなる異形たちが攻めいれば、瞬く間に平和な駒王の町は地獄という餌場となるが明白だ。
リアスはギリッと唇を噛む。
今日の討伐は、こんな大規模なものではなかった。
いつものように"はぐれ悪魔"単体を滅ぼして終わる筈だったのだ。
町の管理者であるリアスは自身の不甲斐なさに憤慨する。
こんなにも大量の"はぐれ悪魔"が駒王近辺に潜んでいることを見過ごした。
監視をかまけた訳ではない、常に"はぐれ悪魔"の動きにも注意を払っていた。
ただ敵の方が情報戦で上手だっただけ……。
リアスたちの監視網を徹底的に調べ、発見されないギリギリの場所に拠点を置き、見つからないように仲間を集めた。
正直言って既に詰みである。
これほどまでの戦力を集められていると知っていれば事前に救援要請も出せた。兄であるサーゼクスに頼み込めば最強の女王であるグレイフィア・ルキフグスを貸し与えたかもしれない。だがすでに後の祭りだ。
最早、リアスに出来る事は少しでも派手に暴れて数を減らすしかない。
即ち、ここはリアス・グレモリーにとって予期せぬ死地となったのだ。
全ては自分の不徳とするところだ。今さら後悔しても反省する時間は与えられないだろう。
ただ罪悪感が酷く自分を責める。自らのミスで愛しい眷属たちも死戦に巻き込んでしまった。
『逃げて』と言いたいが、一人でも欠けたらそれこそ瞬時にリアスの陣営は瓦解する。
リアスは戦いながら葛藤していた。
眷属だけでも逃がすか、それとも皆で戦って死ぬか。
究極の選択。
管理者ならば眷属を戦わせるのが正解だ。リアスと連なる以上、それは義務ともいえる。だが主としての"情"が『助けてあげて』と叫ぶ。
「朱乃、祐斗と小猫を連れてソーナの下へ走りなさい。彼女に現状を話して、冥界からの援軍を呼んで貰うの」
「リアス、貴方はどうするつもり?」
「責務を果たすわ。このままでは全てが終わる、だからお願いね」
朱乃はリアスの言葉に一瞬だけ考え込み、答えを返す。
「はい、分かりました。では祐斗くん、小猫ちゃん。──二人は行ってください」
「朱乃!」
「『女王』が『王』から離れては格好が付きませんわ」
「朱乃先輩。それは『騎士』である僕も同じです。剣が無くなっては戦えないでしょう?」
祐斗が言いながらリアスの敵を剣で両断する。退く気の全くない戦い様だ。放っておいたら敵陣へ一人で突っ込んでいきそうですらある。
「祐斗……」
「すいません、部長。僕はもう仲間の死を見過ごしたくないんです」
「本当に、それでいいの?」
「勿論です。けれどソーナ会長への伝言役は絶対に必要だと思います」
祐斗の視線が小猫へ移る。
「……い、嫌です。私だけ逃げるなんて出来ません」
小猫が首を横に振って断固拒否するようにリアスの服にしがみつく
「小猫、お願い。誰かがやらなければいけないの」
「……部長」
「リアス、敵が来るわ」
鋭い朱乃の言葉。
闇夜に染まった森が再び殺意に震える。時間はない、相手は悠長に待ってはくれないだろう。
「なら私たちを助けて? 貴方が帰ってくるまで決して負けないから」
「……本当ですか?」
「ええ、約束するわ」
嘘だった。小猫がこの場に戻ってくるまで持つ筈がない。
それでも小猫には行って貰いたかった。
嘘を笑顔で隠すリアス。
迷う小猫。わかっているのだろう。帰ってきてもリアスたちが生きている保証はないと。だがここで動かなければ確実に終わるとも理解している。
小猫は意を決したように頷く。
「良い子。さ、行って!」
走り出す小猫を守るように三人は構える。
ここから先は誰も通さないとそう思った最中だった。
ゾクリとリアスの肩が震えた。理性を削る気味の悪い気配が森の奥より近づいてくるのを感じたからだ。
「困ぁりますねぇえ~。こぉこでぇシラけさせるような事はしないでいただーきたい!」
狂気を孕む声を伴い現れたのは、黒いローブを身に纏う男性。死人のように色ない肌、骨のように痩せた身体。
教会の神父に似た格好だが、その姿は邪教の司祭と言った方がしっくり来るほど不気味だ。
「誰?」
「クヒ、わたくしぃ、『喰らい』のネクロ・アザードと申します。以後お見知りおきをぉ」
"はぐれ悪魔"たちが静まる。
そして気づく。まるでネクロが『王』と言わんばかり頭を垂れていた。
主を持たない"はぐれ悪魔"の異様な行動にリアスが背筋が寒くなった。
──危険な男。
率直な感想である。
強いとかそういう次元では図れない異質さを持つネクロに強い警戒心を向けるリアス。
そんな彼が歓喜に彩られた表情で手を大きく広げ月夜に仰ぐ。
「素晴らしい出会いだ……。あぁ美しい駒王の支配者よ。確か名はリアス・グレモリーと申しましたか。あなたの気高さに感銘いたしました、その美しさに免じて条件を二つほど飲んで頂ければ、町には被害を出さないと誓いましょう」
いきなりの申し出だ。
ネクロはリアスの答えを待たず、骨ばった指で祐斗をさした。
「一つ、そこの──呪われた少年の"自刃"」
「な!」
リアスの驚愕を無視するネクロ。そして……。
「二つ、あなたとそちらのお嬢さんの方の魂と肉体の提供……クヒッ」
リアスと朱乃に死ねというだけでなく、死体を寄越せと狂人染みた事を言ってのけた。
祐斗が無言でネクロに迫る。疾風を思わせる踏み込みは他の"はぐれ悪魔"が何をするにも間に合わない速さ。
主を貶めようとした狂人を祐斗の魔剣が捉える。
「なに!?」
筋肉などないに等しい痩せた男が、祐斗の剣を掴む。
肉が削げた片手で、血が吹き出すのを楽しむように、笑いながら、大切そうに、憎むように剣を握りしめる。
「いたい、痛いですねぇー。呪われた者は短気で怖い怖い。クヒヒ、我らが総主様も大変お怒りでしょう。このような……」
急にネクロがうつ向くと、わなわなと身体を震わせた。
「こ・の・よ・う・なぁ!! このような物がぁ、世界中に分布してるなどぉ! お許しになるはずがないぃ!」
血走った瞳と嘆くような叫びが森を震撼させた。
狂気がいやでも伝わる。ネクロは目から赤い液体をこぼしながら祐斗を笑いながら睨む。
強烈な危機感にリアスは反射的に声を荒らげる。
「祐斗! 逃げなさい!!」
「偽りの器めが、真の器足るわたくしの闇にィ、飲・ま・れ・な・さぁい」
ネクロの背中から影を塗り固めたような巨大な両腕が這い出る。禍々しい翼にも見える巨腕が捕らえようと蠢くが、祐斗は間一髪のところで魔剣を身代わりにした。
素早く離脱するとリアスを庇うように立つ。ネクロの黒い翼腕に囚われた魔剣が熱した氷のように朽ちた。もしも祐斗が判断を誤っていれば……そう思うとリアスは恐怖に駆られる。
あの黒い翼腕は──マズイ。
「部長、悔しいですが僕らの手に終えるレベルじゃありません」
祐斗が小さく震える声で言う。そんな事は重々承知だった。あの男は間違いなく自分達よりも強い。
四本腕の邪教徒が道化のように小刻みな拍手を祐斗に送った。
「素早い! お見事! わたくし感激いたしまぁした。それでお美しいグレモリー嬢、さっきのお答えは?」
「バカにしているの? ここまでされてイエスと答える者はいないわ」
「おー、我らが総主よ! これも試練なのですね! 分かりました、ならば我が内にて"頂く"としましょう」
禍々しい影の腕が延びる。
その腕に触れたものが次々と溶けるのを見てリアスが自身の魔力で練った光弾で迎え撃つ。
「愚・か・し・い」
魔力の光は意図も容易くもぎ取られると跡形もなく消えた。
「魔力も溶かすと言うの!」
「リアス、一旦引きます。不確定要素が大きすぎる」
「殿は僕が勤めます」
『王』を守るため『女王』と『騎士』が動くが、
「お邪魔です」
黒い腕から放たれた凄まじい衝撃波が三人がバラけさせた。
ネクロは朱乃と祐斗に目もくれずリアスだけを見ている。
「では……頂きます」
全てを溶かす黒い腕がリアスの眼前に迫る。
どう動いても間に合わないと分かるタイミングで──背中を押された。
後ろを見れば、小猫がばつの悪そうな顔でリアスを見ていた。
「え? 嘘……、小猫?」
「……ごめんなさい。やっぱり、皆といたいです」
「おや、小さいお嬢さんじゃないですか。食べ堪えのなさそうですが、前菜にはいいでしょう」
「──やめ」
物が蒸発するような音が聞こえた。熱したフライパンに水滴を垂らすような音だ。
搭城 小猫が黒い腕に捕まった瞬間、その存在は喪失する。
漠然とだが分かる。小猫はあのネクロという男に"喰われた"のだ。
「ふぅむ、中々に美味。あとはゆっくり消化──」
味わうような顔をしていたネクロの足が消えた。
「わ、わたくしの足がぁああああああああ!!」
「殺す……殺してやる!」
のたうつネクロを涙に濡れた瞳で睨むリアス。周囲には光る魔方陣が複数同時展開されている。
泣いて許しを乞うても決して助けてはやらない。
塵一つ残さず消失させても、リアスの悲しみは晴れないだろう。
「おおおおおおおお! 足がぁ!」
「たかが足の一本ぐらい何よ、そんな物が無くなったくらいで騒がないで」
「足の一本ぐらいだと! 足の一本、たかが……うーん、言われてみれば、そうですね」
背中にある腕を足がわりに立ち上がるネクロ。丸い目玉をギョロギョロと動かしながら最終的にリアスを見下す。
「ご助言、感謝します。確かに足一本ぐらいなら騒ぐこともありませんでした。あ、そうそう……オグェ」
ネクロがいきなり自分の右手を口のなかに突っ込むという異常な行動に出た。
奥へ、奥へ、上腕を全て飲み込んだ辺りで引き抜き始める。
リアスは一瞬怒りを忘れて、その意味不明で不気味な行為に釘付けになった。
「オブェエ! はい、これはお返しします♪」
べちゃりと地面に落とされたのは、黒い唾液にまみれた駒王学園の制服だ。
いうまでもなく小猫のものだ。リアスの思考が真っ赤に染まる。
「大丈夫、ゆっくりと、吟味して、我が内で溶かし尽くすんで安心してください……クヒ」
「その腹部、裂かせて貰う」
祐斗の斬撃がネクロを切り裂く。噴水のように血が吹き出す。
「クヒ、クヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
「何がおかしい」
「哀れだと思いまして。あの少女はすでに霊子分解されました、どう足掻いても物質になっては帰ってこない、奇跡でも起こさない限りねぇ!! どうです、我らの総主様に祈れば叶うかもしれま──」
「……黙れ」
十を越える剣筋が走る。
腕が跳び、脚が割れた。四肢を失ったネクロは痛みを感じていないのか狂ったように笑い続ける。
「甘美ぃなぁ、痛みです! そうだ、絶望と喪失は甘美ですか? 教えてくれませんか?」
「消えて無くなりなさい!」
「炭にしてあげますわ!」
リアスが全霊の攻撃を浴びせるが背から生える黒い翼腕に溶ける。朱乃の怒り猛る雷も同様だ。
「く、異能の性質が読めない。いったい何をしているの!?」
「お、いい質問です。黒髪のお嬢さん」
悔しそうに顔を歪める朱乃にネクロは上機嫌ぎみに言う。
「わたくしは、あなたがたより上のステージに立っているのです。悪魔? 天使? 下らない、我が総主様に比べれば塵芥に等しい。神を名乗る愚かしい連中もそうです。そしてその寵愛を承ったわたくしにとって──あなた達は"食料"にすぎない」
「朱乃、逃げなさい!」
黒い手が朱乃へ延びる。
その身体を包もうとした時だった。
──強烈な風が森を駆け抜けた。
誰も彼が驚きに包まれる。
リアスも、朱乃も、祐斗も、はぐれ悪魔も、そしてネクロすらも。
暗い夜の空に割るように現れたのは蒼い太陽。
煌々と輝く蒼に誰もが看取れる。
蒼炎の太陽が徐々に砕けると中から出てきたのは"人"だった。
白雪が如く少女を抱いた血塗れの少年。
少年が地に降り立つと吐血する。
明らかに死に掛けと分かる少年が白銀の少女の頬を撫でると安堵したように息を吐いた。
「何とかなったか……。いや、そうでもないみたいだ」
満身創痍の少年が周囲を見渡す。
皆が注目するなか、その姿が一瞬で掻き消えリアスの前に現れる。
驚く間もなく、リアスの瞳を覗き込む少年。すると納得したように小さく頷いた。
「なるほど、こっちが良さそうだ」
「え?」
「状況は見えないが戦況は把握した。アンタらに助勢してもいい、条件を飲んでくれたらな」
「じょ、助勢ってあなた自分の状態が分かっていないの?」
明らかに重症な少年を見て、リアスが寒気だった。傷がない場所を探すのが難しいほどボロボロの体なのだ。致命傷だと思える傷からは今も出血が続き、死へのカウントダウンが始まっている。
戦うどころか今すぐに医療施設に連れていかなければ危うい。
「ご心配どうも。けど今ので決定だな、人間型以外の者を排除すればいいのか?」
「そんなことより」
「時間がないんだ。──いいから答えろ」
瞬間、恐ろしい戦慄に襲われた。鋭い少年の瞳が刃のように心臓を貫く。死に体が放っていい覇気ではない。
悪魔の本能が告げてくる。この少年に逆らうな、お前ではクビリ殺される……と。
だが同時に「助けてくれる」という大きな安堵が胸に宿る。それはまるで魔王に、兄が目の前にいるような頼もしい感覚だった。そこからはリアスの思考は高速化する。この未知の存在に懸けてみようと決断した。
小猫を奪ったあの狂人を殺せるかもしれない可能性に……。
「……イケるの?」
「なんとかする。助ける条件はそこで寝てる女の保護だ、いいか?」
地面で人形のように眠る白雪の少女を指す少年。
「契約ね。わかったわ」
「よし」
少年がゆっくりと立ち上がる。
「会って早々悪いがアンタの敵になった」
「貴様、何者です。我が総主の寵愛が……貴様に、貴様を……!」
「総主? 寵愛? 知らんな、いま来たばかりでそっちの宗教には疎いんだ。──始めよう」
少年が離れた場所にいたネクロの前に立つ。動く気配すら察知させない移動術。
「中にいるのは
見透かすように言うと、ネクロの心臓付近に少年の腕が飲み込まれた。
「グゲガガガガガァ! わたくしの中にぃ、わたくしの中にぃ異物がぁあああ!」
「他者を飲み込み糧とする。……
「な、なななな、わたくしの中で何をしている!
「造る? 酷い勘違いだ、オレはお前が奪って剥ぎ取った者を元に戻しているに過ぎない」
「戻す!? バカな! 霊子まで分かたれた者を復元するなど総主様にしか許されない行為──」
「うるさい、傷に響く」
「あ、ヴぇ、ひぎゃああああああああ!!!」
四肢を千切られても嗤っていたネクロが断末魔の声で叫ぶ。
少年がネクロの内から腕を引きずり出す。その腕には黒い粘液にまみれた小猫が掴まれていた。
「……思った以上に小さいな」
少年が小猫に付着した粘液を吹き飛ばす。そして白い布地を造り出すと優しく小猫をくるむ。
「こ、小猫!?」
「生きてます、生きてますわ!」
「よかった。本当に……!」
リアスたちがが気絶した小猫に近づくと頬を愛しそうに触れる。
それをリアスに渡す少年。
「なんてお礼を言ったらいいか……」
「さっきの言葉を守ってくれれば、それでいい」
そんな少年とリアス一行の会話をネクロが遮る。
「ギザマァアアアアアア! 寵愛を受けた子を! わたくしから取り上げたなあああああ!!」
「ああ、問題あったか?」
「殺します! 死に晒せ、この異分子を殺せなさい!! 死せよ、死ね、シネシネシネシネ」
凄まじい勢いで周囲の"はぐれ悪魔"に命令を下すネクロ。
そこに余裕はない。リアスはネクロの中に恐怖を見た。狂人が恐怖する少年が言葉を綴る。
「総力戦か……。見ての通り死に掛けなオレには時間がなくてね。戦う事が出来ないんだ。──だから、圧倒させてもらう」
轟ッ!
少年を中心に輝かしい蒼い波動が渦巻く。
魔力でも光力でもない圧倒的で理解不能な"力"。理解出来たのはただ一つ。それはひたすらに巨大だということ。
「引退戦だ、最後に大きな花火でもあげよう。──
少年の言葉と共に蒼が全てを飲み込んだ。
夜天すら貫く巨大な柱と化した光は"はぐれ悪魔"を滅却するには十分な破壊をもたらす。
やがて光は収束へ向かう。
破壊する光の中から生還者はリアス一行と白雪を思わせる少女。そして傷だらけの少年、後に蒼井 渚と名乗る少年だけだった……。
これが渚の評価が高い理由です。