「真っ赤な空だ」
拠点とした廃墟の屋上で祐斗は血のように赤い夕暮れを眺めていた。
春にしては冷たい風が頬を撫でる。
まるで彼の行動を避難しているような寒さだ。
リアスの元を離れて二日、未だに聖剣には出会えていない。
やった事と言えば聖剣探索の中で見つけた"はぐれ悪魔"を何体か斬ったくらいだ。
今はそんな無駄な戦いをしている場合ではないと分かっていても見過ごせないのは、ここ何年かで着いた癖のようなものだ。
リアスの刃であろうとする自分が、彼女の領地である駒王に被害をもたらす敵を討てと言ってくる。
「未練……なのかな」
彼女に絶縁しても構わないと言って出てきたのだ。
今さらリアスの元には戻れない。
そういう道を選んでしまった祐斗だったが後悔はなくても罪悪感はある。
とても善い主だったのだ。同士を殺した相手へ復讐することしか考えていなかった祐斗がここまで更正出来たのはリアスのお陰と言って過言ではない。
自ら手放したものの大きさに祐斗は自嘲し、廃墟へ戻ろうと昇降口へ体を向けた。
「よ、イケメン王子は夕日も似合うな」
「……渚くん」
いつからいたのか。
渚がドアの前で挨拶してきた。
祐斗に驚きはない。寧ろ二日も放置されてたのが不思議な位だ。
彼は気配探知に優れた人物。きっと悪魔の気配を辿って来たのだろう。
祐斗は連れ戻される事を警戒して身構える。
だが渚は右手に下げていたビニール袋を見せつける。
「ふぁ~~。お腹、へってね?」
渚は眠そうな顔で欠伸をしながら床に座るとコンビニのおにぎりを食べ始めた。
黙って見ていた祐斗だったが渚は袋から出した新たなおにぎりを差し出してくる。
急な食事の誘いだったがリアスと別れて何も食べていない。
それを思い出すと空腹感が込み上げて来た。
「安心しろって部長の元に連れてこうなんて思ってないから」
「……何故?」
「今のお前を連れてっても意味がないかんな、どうせ直ぐに同じことになる」
「ならどうして僕に接触したんだい?」
「食べたら教えてやるよ」
モグモグと口を動かす渚はこれ以上は話すつもりはいと黙り込む。
祐斗は諦めた様子でおにぎりを取ると隣に座る。
「……いただきます」
「
丁寧にラッピングを解いておにぎりを食べる。
妙に美味しく感じるは空腹だからだろう。
一つ食べ終わると渚が次を差し出してきたので手にとって食事を続ける。
それが何回か続いて渚がゆっくりと口を開く。
「祐斗、俺は駒王にあるエクスカリバーを追う事にした」
「君が? どうして?」
「そうした方が丸く収まるからなぁ」
「丸く収まる? 何を言ってるのか、分からないよ」
祐斗は渚の行動の意味が分からない。ただ彼はお人好しだから自分の手伝いをしてくれようとしているのは解った。
だが今からやろうとしてるのは復讐。
自分のためにやる利己的な戦いだ、そんなものに他人は巻き込めない。だからリアスとも決別したのだ。
説得しようとした祐斗だったが渚の言葉がそれを
「復讐は悪かな、祐斗」
突然の問いだった。
復讐は悪かなど決まっている。なんであれ誰かを害そうとする行為は罪だ。
自分の事を棚に上げて祐斗は頷く。
「悪だよ。大多数の人をそう思うに決まっている」
「そっか、ステアも道徳的には悪って言ってたな」
「どうして、そんな質問をしたんだい」
「んー、なんでかな。ただ俺が求めてた答えがソレじゃないからだと思う。なんにしても道徳的にアウトなら祐斗の味方は少ないって事だな」
「そうだよ。孤立無援の戦いだ、君まで付き合う必要はない」
祐斗が言うと渚は遠い目で夕方の空を見上げた。
どこか違う場所に馳せているような瞳が瞑目するが次の瞬間には視線を落とす。
「悪いけどお前の過去は聞いた。"聖剣計画"で大切な人を理不尽に奪われたんだって……」
「だからこそ僕は強くなった。あんな行為を平然と出来る者を葬るため、元凶になった聖剣を壊すために!」
「なら協力し合うのが効率的だな、とっ!」
飛び上がるような勢いで渚が立ち上がる。
そして驚くほど澄んだ目で祐斗を見てきた。
「復讐は悪かもしれない。けどさ大切な者を理不尽な理由で奪った存在に怒りを向けるのは当然であって間違いなんかじゃない。そこに関して正しいと俺は思う」
心が震えた。
復讐を、自分自身も悪と思っていた行為を肯定してきたのだ。
正しい怒りだと、捨てる必要など無いと。
目尻が熱くなる。
全て承知で手を差しのべてくれる者がいるなんて考えてもいなかったのだから……。
「僕の助けになってくれるのかい、君は?」
「助けない。俺は俺のために動いている、進む道がお前と一緒なだけだ」
下手な嘘だ。
蒼井 渚はいつだって他人のためにしか動かない。
一誠の時も、アーシアの時も、リアスの時も、彼の刃には常に他人への想いが宿っていた。
きっと彼は自分も助けてくれるのだろう。
ここに来て、渚が皆に慕われる理由を理解する。
彼がいるだけでこんなにも頼もしい。
そんな祐斗の気持ちを知ってか知らずか、渚は子供のような笑みを浮かべて手を差しのべてくる。
「それじゃあ、いっちょ復讐しに行こうぜ」
後ろ向きな目的に対して、その姿があまりにも前向きだったので祐斗は思わず笑ってしまう。
冷たかった心臓が少しだけ熱を持った事を自覚しつつ、祐斗は渚の手を取る。
●○
渚はここ二日間ほど寝ていない。
答えは簡単でリアスの下を離れた祐斗を監視していたからだ。
聖剣への復讐に囚われた祐斗は己を省みずに行動する恐れがあった。
だからこそ遠くからバレないように、何かあればすぐに駆けつけられる体勢で祐斗に対して目を光らせていたのだ。
おかげで学校は無断欠課である。加えていつも一緒だったアーシアを男にナンパされるという失態まで起こした。彼女を保護してくれたレイナーレから携帯越しに毒を吐かれたが感謝はしている。
ともせず渚がこのタイミングで祐斗に声を掛けたのは理由がある。
一誠からゼノヴィアとイリナに接触できたと連絡が来たからだ。渚と一誠は協力して祐斗の今の状況をなんとかしようと画策している。
全ては彼をリアスの下に帰すためだ。
「ここだな」
祐斗を連れて廃墟を出た渚は町のファミリーレストランに足を運んだ。
「この場所で何があるのか聞いても?」
「そうだな、会う前に言っておくか。……この中にはイッセーがコンタクトを取った例の二人がいる」
その言葉を聞いて祐斗が殺気立つ。
渚は一つため息をこぼすと更に大きな戦意をぶつけて殺気を押し潰した。
「くっ」
「悪い。けど町中でそう殺気を剥き出しにするなって。とりあえず話をする、聖剣に関して聞きたい事があるからな。急に喧嘩をふっかけるなよ?」
「……善処するよ」
渚は入り口から店内に入る。
探し相手はすぐに見つかった。
一誠と小猫、ゼノヴィアにイリナ、そして何故か匙 元士郎までいる。元士郎の存在も気になったが、それ以上に聖職者二人の現状に
「何してんの?」
渚は一誠たちが座る席に近づくや問うてしまう。
テーブルの上に置いてある食事を無我夢中で食べる聖職者がそこにいたからだ。
「町中で
「なんでだよ……」
「イリナが騙されて高い絵を買わされたんだと」
流石に呆れる。
確かに聖職者二人の隣には妙な絵が置かれていた。
あれを買うために予算を使いきったのというのか? 外国からの遠征だ、恐らくそれなりの経費を渡されているはずだ。もしかしたら紫藤 イリナは
祐斗もあんまりにも状況にコメカミを抑えていた。
確かに自分を負かした相手が
「それで匙はどうしてここにいるんだ?」
「兵藤に引っ張られたんだよ! ちくしょう、こんな厄介ごとに巻き込まれるなんて……」
「悪かったって、知ってる悪魔で協力してくれそうなのが匙くらいだったんだよ」
「だからって俺を巻き込むなよ! お前らのリアス先輩は優しいかもだけどよ、ウチの会長は怖いんだぞ!」
どうやら無理矢理連れて来られたようだ。
半泣きなところから本当にソーナが怖いのだろう。
「猫の手も借りたいんだよ。部長は町の管理者だから迂闊に動けないし朱乃先輩も同様だ。アーシアは顔に出るからな」
「……ありがとうございます、匙先輩」
「くそ、断れねぇ」
小猫の感謝に元士郎が
見えないように一誠と小猫がサムズアップし合っている、小猫の可愛らしさを使ったエグい攻略である。
ともせず元士郎は諦めて協力してくれるようだ。
渚はゼノヴィアを見る、食事を終えた彼女は渚の視線に気づいた。
「なんだ?」
「いや、以前の件を気にしてない様子だったから」
「気にはしているさ。だが今は目の前の事に集中するべきだと思っている」
さっぱりとした性格なのだろう。
今は頭を切り替えて問題に挑む姿勢は好ましい。
凛とした表情だが、ほっぺに付いた米粒のせいで台無しだった。
「それで私とイリナを呼びつけた理由はなんだい?」
「アンタ達のエクスカリバー破壊に協力したい」
「私たちだけでは不安だからか?」
「ここは俺たちの町だ、戦わないって理由こそない。それに相手は神話の堕天使、戦力は多い方がいいだろう」
渚の言葉を聞いてイリナがゼノヴィアに目配せする。
「どうするの、ゼノヴィア」
「……そうだな、ここは受け入れるのが賢い選択かもしれない。元々、コカビエルと三本ものエクスカリバーを排除するのは難しいからね」
思いの外、あっさりとOKされる。
「いいの? いくら一誠くんだからって、相手は悪魔なのよ?」
「あぁ悪魔なら問題だろう。だから人間に協力を頼むのさ、
ゼノヴィアが渚を見る。
いい考えだと思う。
協力申請したのはリアスの眷属ではなく、渚の仲間。
それなら幾らでも誤魔化せるだろう。
「うーん、いいのかなぁ」
「私たちの任務は聖剣の破壊だ。最悪、それだけを達成して逃げればいい。それでも生還率は三割程度だけどね」
「分かっていてこの任務を受けたのでしょう」
「自己犠牲で任務達成もいいが、やれるならベストな形で終わらせたい。私の信仰は柔軟なのが自慢なのさ」
「あなたね、前々から思ってたけど信仰心がちょっとずれているわ!」
「かもね。だが考えて見ろ、戦いで散ってしまうよりも生き残って戦い続けるのが真の信仰者じゃないのか?」
「そうだけど……」
「だから悪魔の手を借りずに人間の手を借りるんだ。ほら目の前の男は私とイリナを撃破したんだ、戦力しては使える」
渚を見た後に一誠へ視線を移す。
「それに悪魔になっているとはいえ赤龍帝もいるとなれば頼りたくもなるだろう? 倍加を高めていけば魔王クラスになれる。その力なら聖剣破壊も可能なはずだ。彼はイリナの顔馴染みなんだろう、信用できないのか?」
「うぅ分かったわよ」
渋々といった感じで了承するとゼノヴィアが笑みを浮かべた。
「商談成立、かな。そっちの先輩もそれでいいのか?」
ゼノヴィアが祐斗へ言う。
一瞬考えて祐斗は了承した。
「問題ないよ、僕は聖剣が破壊できればそれでいい」
「私たちの聖剣はいいのか?」
挑発的な言葉に祐斗は敵意を剥き出しにする。
「勿論、壊すさ……と言いたいけど渚くんが許さないだろうから(今回は)止めておくよ」
「そうか、彼がいるなら私たちも(今回は)君に刃を向けなくて良さそうだ」
「おい蒼井、なんかこの二人から黒いオーラが見える気がするんだが何かあったのかよ」
「前に少し揉めてな。今は大丈夫だ、多分」
事情を知らない元士郎に渚が答える
不穏な笑みを浮かべる二人の会話の裏にカッコがあった気がしたが渚は無視した。
そんな友好的ではない状況でゼノヴィアが祐斗に言う。
「ところで君の憎悪の対象は聖剣なのか?」
「どういう意味だ?」
「こう言ってはなんだが所詮、聖剣は物に過ぎない。君が恨むべきは"エクスカリバー"でも"聖剣計画"でもなく、計画の責任者であるバルパー・ガリレイではないのか?」
ゼノヴィアの放った名前に祐斗がピクリと反応した。
冷たい憎悪が瞳に宿る。
「それが僕たちを処分した奴の名前なのか? 今は何処にいる?」
祐斗の問いにはイリナが答えた。
「えっとね、彼は"聖剣計画"の被検体を虐殺した罪から教会から追放された身なの、"皆殺しの司祭"とも呼ばれていて教会も探しているんだけど何処にいるかは分かってないの」
「その情報は僕にとって重要な意味を持つ、感謝する」
話が纏まったのを見計らって渚は手を叩く。
すると全員の視線が集まった。
「聖剣破壊の共同戦線は結んだからには全力で事に当たろう」
「そうね、こうなっちゃたら存分にあなた達には働いて貰うんだからね!」
「……言われなくてもそうします」
「うぅ会長にバレないようにしないと……」
イリナの言葉に小猫が賛同し、元士郎がぶるぶると震えた。
「共同戦線をするんだったら僕も一つ情報を開示するよ。君たちが部長と接触する前に僕はエクスカリバーを持つ者に襲われた」
「初耳だぞ、祐斗」
「僕が倒したかったから黙っていた、ごめん」
祐斗の謝罪。
気持ちは理解できるが少し無謀でもある、悪魔の身で聖剣に挑むなど危険だ。
「たく、それでソイツの特徴は?」
「いや、特徴というよりも名前をいった方が早い、相手はフリード・セリゼンだ」
元士朗以外の者が表情を変えた。
レイナーレの下にいた神父でアーシアを殺そうとした"はぐれ神父"。あのふざけた口調の神父は二度と会いたくない人物だ。
教会も二人組も顔を難しくする
「フリード・セリゼンが絡んでいたのね」
「なんだ? イリナも奴の事を知ってんのか?」
一誠がそう言うと複雑そうな表情を見せるイリナ。
「うん、有名人だからね。僅か13歳でエクソシストになってヴァチカンの法王庁の直属まで上り詰めた天才、多くの悪魔や魔獣を滅ぼした功績は大きかったんだけど……」
「そう、奴は実力はあった。だが異常なまでの戦闘執着と人外に対する敵意と殺戮衝動、加えて人を殺す事にも迷いがない。結果、教会からも異端扱いされ、討伐部隊が送られたが……」
「……失敗して"はぐれ神父"になった」
小猫の言葉にゼノヴィアは頷いた。
実力がある分、性格に難があるフリードは厄介者でしかない。
あんな神父が駒王にいると思うだけでゾッとする。
渚が預かり知らない所で知人が襲われてでもしたら後悔しか残らないだろう。
特にアーシアは危険だ、フリードも彼女が生きていると知れば優先的に殺しに来るかもしれない。
「俺はフリードを追う、アイツは野放しには出来ない」
「そうか、では私たちもそうしよう。今のところは手かがりもないしね」
こうして渚たちは動き出す。
聖剣破壊という随分な罰当たりな目的を成すために……。
●○
渚たちが暗くなった道を歩く。
一誠、祐斗、小猫、そして元士朗。
これからの方針が決まって今日は帰宅する事になったのだ。
黙って歩く五人だったが祐斗が急にポツリと口を開く。
「どうして君たちは僕のためにここまでしてくれたんだい?」
急な質問に即答したのは一誠だ。
「部長が悲しむからだ。まぁ俺も既に迷惑かけちまってるけどお前が"はぐれ"になるよりはマシだろ」
納得できない様子の祐斗。
そんな時だ、小猫が小さく呟いた。
「……私は祐斗先輩がいなくなるのが寂しいからです」
少しだけ寂しげな口調と表情。
いつもは無表情なだけに誰もが驚く。
「お手伝いします、だから行かないでください」
懸命な訴え。
祐斗は真っ直ぐ見つめられて苦笑した。
「ははは、小猫ちゃんがそこまで言ってくれるんだったら無茶は出来ないな」
そう言うと祐斗が渚へ視線を向けた。
質問の答えが欲しいのだろう。
「俺は一誠とほぼ同じだ。ただ復讐を手助けしたいってのもある。だからこそお前の口から聞きたい、どうしてそこまで聖剣を憎むのかをな」
「ナギ、それは部長が話してただろ?」
「俺は祐斗の口から真実を聞きたい、俺の選択が正しいかを知りたいんだ」
渚が祐斗の言葉を待つ。
すると控えめな仕草で手をあげる元士朗。
「あのー、完全に俺が
祐斗は観念したように脱力した。
「……なら少し話そうか」
それはリアスから聞いた内容よりも生々しく凄惨だった。
"聖剣計画"は聖剣を扱える人間を排出するためにカトリックが秘密利に
被験者は主に剣に関する才能と神器を持った幼い子供たちだったという。
来る日も来る日も非人道的な手術と薬物投与が続く辛い日々を過ごした。その過程で命を落としたものも居た。
それでも子供たちは命を懸けて夢を見ていたのだ、いつか来るだろう「その日」を……。
いつか神様の祝福を受けて特別な存在、……聖剣の担い手なれると信じていたのだ。
何年も幽閉され、自由なく体を
そして行き着いた先が──処分という結末だったのだ。
「皆、殺された。救いなどなかった、何も悪いことなどしていない、『聖剣に適合できなかった』という理由だけで僕らは生きたまま毒ガスで殺処分さ。その後なんて瀕死の子供たちを足蹴にして生死を確かめていたよ。生きていた者を見つけたら『アーメン』なんて言いながら息の根を止めるんだ。血を吐いて、地面を這いつくばって、もがき苦しみながらも、みんなは神に救いを求めていた。……本当に馬鹿だよ、その神の手下が僕らを殺しているっての言うのにね」
祐斗の話を渚たちは黙って聞く。
何も言える筈がない。祐斗の目は怒りと悲しみ、そして後悔に染まっていた。
「僕だけが逃げた、いや逃がされた。最後に守ってくれた子がいてね、当時の僕よりも小さな女の子だったんだ。今でも覚えているよ、忘れられるはずがない。彼女を殺したモノを僕は一生忘れてはいけないんだ!」
沈痛な面持ちの祐斗。
ふと急に、すすり泣く声が聞こえた。
元士朗だ、顔をクシャクシャにして泣いていた。
「うぅう木場ぁ、お前、大変だったんだなぁ! 辛かったんだなぁ! 俺は今、お前に同情している。酷い話だ! 聖剣を恨む気持ちもよく分かった! 俺にも是非手伝わせてくれぇ!!」
うんうんと強く頷く元士朗。
思った以上に良い奴なんだと渚は思う。
祐斗も困ったように笑みを浮かべていた。
「祐斗、復讐は何も生まないって言うけど前に進むためにはお前の過去は重すぎる。その荷物が少しでも軽くなるなら手を貸したい」
「ナギくん、それに匙くんもありがとう」
少しだけ困ったような笑みを浮かべた祐斗。
それは久しぶりに見たいつもの爽やかな表情だった。