アーシアの心を切り開くお話です。
容赦のないアリステアさんを嫌わないでほしい作者です。
朝、7時。
4人ほどが座れるテーブルの上で渚は眠そうな顔で頬杖をついていた。
隈が取れてない瞳の向く先はキッチンだ。いつもなら自分が立って朝食を作っている筈なのに今日は違う。
腰まで伸びた金髪の少女がレシピを見ながら料理に勤しんでいるのだ。
彼女の名はアーシア・アルジェント。
昨日、アリステアの部屋に泊まったシスターで、訳あってリアスと共に匿っている。
「なぁステア」
「なんですか?」
渚はすぐ隣に座るアリステアに問い掛ける。
白雪めいた美少女は、驚くべき事に銀色の
テーブルの上にも5発の弾丸が綺麗に整列している。言うまでもなくアリステアが持つ銃の物だ。
思わず頭を抱えたくなった。
「色々と聞きたい事はあるけど、まず一つ」
「ええ、どうぞ」
銃のシリンダーを横にスイングアウトさせると、空の弾装を一つ一つチェックしながらアリステアは先を促した。
「起きたらアルジェントさんがキッチンで調理をしている件について」
「お世話になるのだから何かさせてください……と
「そか、いい子だな」
どうして自分の部屋で作っているのかは聞かない。アリステアにとっては、
「もう一つよろしいか?」
「ええ、どうぞ」
シリンダーの汚れを拭き取って1発1発、弾丸を込め始めたアリステアに戦慄を覚えつつも聞いた。
「その威力だけを重視したようなデカい銃は……?」
アリステアが食卓に銃を持ち込んだ事も問題だが、その銃自体もおかしい。
渚の知っているリボルバーよりも大きいのだ。絶対、人に向けちゃダメなタイプである。
「知っての通り、"S&WM500"です。さらに言うならば、これはコンペンセイターやマウントベースが付いた10.5inバレルカスタムになります。口径は50のマグナム弾。本体構成を
「
淡々と難しい単語のオンパレードで渚をまくし立てるアリステアにツッコミをいれてしまう。
全てを理解することは出来なかったが、相手を壊すと言ってる時点で威力はお察しである。
我が家でなんて物を磨いているのだと訴えるが、アリステアはどこ吹く風と渚の言葉を受け流す。
渚の刀といい、アリステアの銃といい、警察に家宅捜索されたら終わりである。
「出来ました!」
キッチンでアーシアが声を上げる。どうやら調理が済んだようだ。
渚が運ぶのぐらいは手伝おうとアーシアに近付く。ここで初めて渚の存在に気づいたのかアーシアが朝の挨拶をしてきた。
「蒼井さん、おはようございます!」
「ああ、おはよ」
「あの……勝手にキッチンをお借りしてしまいました、申し訳ありません」
「いいよ、ステアが使えって言ったんだろ? あ、もしかして俺の分もあるのか?」
「も、勿論です」
「ありがとな」
皿に乗った三人分の食事を渚とアーシアが運ぶ。
朝食らしい目玉焼きとベーコンだ。
テーブルに皿を置いて席についた渚だったが、何故かアーシアが座ろうとしない。
「どした?」
「あ、いえ。私、ここに座ってもいいのでしょうか?」
渚とアリステアが顔を見合わせる。
言ってる意味が分からない。しかしアーシアは恐る恐るといった感じだ。
「アーシア・アルジェント、3人分の料理があって3人分の席がある。これでダメな理由があるのでしょうか?」
「もしかして俺たちに問題あった?」
「い、いえ。教会では1人だったもので、こうして他の人と並んで食事するのは、とても久しぶりなんです」
「久しぶりってどれくらいだ?」
「……7年ぶりです」
「な、7年……?」
「これはまた」
7年も1人きりで食事を続ける環境など渚は想像できなかった。
「詳しく聞いてもいい話か?」
「はい、大丈夫です」
「とにかく座ってくれ」
「失礼します」
アーシアが自らの過去は話し出す。
彼女は欧州の貧しい村の生まれで、すぐに口減らしのため教会直属の孤児院に預けられたと語る。
そして8歳の頃に傷を癒す神器に目覚めてからは、カトリック教会の本部ヴァチカンに移送されて"聖女"として扱われる。望んだ立場ではないがアーシアは全力で人々を治し続けた。
それから数年の月日が経つ頃には"聖女"の噂は広がって有名となる。その間、世話をする者はいたが”聖女”という名が人を遠ざけていたようで個人的な交友は絶無だったという。
優しくしてくれる人もいた、大事にも扱われた。けれど裏にあった真意にアーシアは気づいていた。
「理解はしていたのです。私は"人を治療できる生物"、そう見られているのだと……」
異質とも言える治癒能力の高さから人間扱いされなかったのは悲しいと感じた。一人くらいは自分を見てくれる人が欲しかったのが本音だ。
そんな小さな望みも心の奥底に仕舞い。"聖女"という人を癒す装置であり続けた。
「それが"力"を授かった私の使命だと思いました」
アーシアは微笑みながら言う。想像以上に壮絶だったアーシアの過去に渚は黙り込む。
教会は彼女を信仰を得るための都合の良い道具としか見ていないと想像に
勿論、アーシアの口からは教会への不満は一言も出ていない。
しかし、そこに渚は危険さを
「アルジェントさんは、今の状況に追い詰めた教会についてどう考えてるんだ?」
「……きっと今回の件も神の試練なのです。私がダメなシスターなのでもっと祈りを捧げなさいと仰ってるんです」
アーシアは教会の悪意を受け入れてしまっている。
その瞳は悲しいほどに
ふとアリステアの目が冷たくなるのを渚は見た。
「神とは乗り越えられない試練を与えるのですか?」
「決してそのような事は……!」
「ならば貴方は今の状態を自身で乗り越えて勝ち取ったというつもりですか? ……だというのなら軽蔑します」
アリステアが無機質な視線を跳ばす。冷たい瞳を向けられたアーシアは肩を震わせた。
「アーシア・アルジェント。貴方は神でなく"人の意志"に助けられてここにいる。この街に巣食う堕天使は神器を集めている。ならば"
「そ、それは、きっと祈れば神の祝福が……」
「神に祈り続けた果てが、良いように利用されて都合が悪くなったら捨てられるという惨状なんですよ。いい加減、神を崇拝して己の気持ちを誤魔化すのは辞めなさい。──目障りです」
アリステアの突き放した言い方にアーシアは意気消沈して言葉を返せなくなる。
「ステア、少し踏み込みすぎだ」
「ナギ、優しいだけでは助けられない事もあります。今はまだ少し度の過ぎた洗脳ですが、いずれ狂う時が来る」
薄々感じていたアーシアの危うさにアリステアは踏み込もうとしている。しかしソレがアーシア・アルジェントの精神を揺るがす危険な
「信仰は救いとなると同時に命すら簡単に捨てさせる毒にもなり得ます」
「ど、毒ですか……?」
「このままでは近い将来、貴方はその毒に殺される」
「し、信仰は私を殺したりはしません!」
アーシアには珍しい大きな声での否定だった。
「今回、貴方は教会に"処刑"されそうになった所を見逃されて"辺境"の駒王に来たと言いました。──では聞きましょう。その"処刑"を決断させた根底の理由はなんですか?」
「わ、私が……悪魔を助けてしまった、からで……」
緊張したように呼吸が速くなるアーシア。彼女は自分を卑下するが本来は聡明だ、きっと今ので
渚がアーシアの予想した言葉を口にする。
「違うよ、アルジェントさん。──教会は信仰を守るために君を殺そうとしたんだ」
まさに渚の言う通りだ。
アーシアを殺そうとしてのは信仰そのものだ。
だが当人はそれを自覚せず、未だに信仰が絶対だと認識している。盲目的といっていいほどに……。
「このままでは死する瞬間ですら
アーシアが黙って俯く。
言い返せないのは思い当たる節があるからかもしれない。彼女は信仰こそが絶対だと育てられた可能性が高い。それでも抗う術がない危機を"試練"として受け入れるのは人間として間違っている。それは信仰でなく、根底にあるのは"
「──神を敬愛する行為を否定するつもりはありません。それが貴方の精神を形作る源泉だと分かりますし、今更無くせるモノでもないでしょう。しかし盲信には気をつけるべきです。その先には狂信という魂の牢獄しか無いのですから……」
アリステアは信仰を捨てろと言っているのではない。盲目的に肯定して思考を停止させるなとアーシアに厳しく指摘しているのだ。
他人の世話を焼くタイプじゃないアリステアがこうも干渉するのは、彼女自身がアーシアを好意的に見ているからだろう。
「……で、ですが、私にはそれ以外に何もなくて、そうしないと自分を保っていられなくて……独りは辛くて……だから……」
アーシアは血を吐くように自身の心に溜まっていたモノを晒け出す。
彼女の孤独が痛いほど伝わる。誰にも本心を言えず、神だけを心の寄り所にしていた。
その精神性は決して弱いとは思えない。
「アルジェントさん」
「……はい」
「一緒にいるよ」
「え……?」
「俺は気軽な気持ちで友達になろうなんて言えない。そういうのは積み上げた時間の中で作られると思ってるからな。けど、独りが辛いって言うなら近くにいる。誰かと話したいと思ったら俺が付き合う」
「居てくれるのですか? ……私の側に?」
「ああ、アルジェントさんみたいな良い人なら歓迎だ」
「おしゃべりもしてくれるのですか?」
「たくさん語り合って、それでいつか俺と友達になろう」
宝石のような
二人のやり取りを黙って見守る渚。
その後に三人で取った朝食は、長話もあって冷めていたが優しい味がした。
○●
アーシアが渚の住むマンションに来て一週間ほど経つ。
あれから彼女は少し変わった。控えめで信仰心が溢れる性格は健在だが、神に祈るだけでなく自らの行動で道を切り開くようになった。
今では管理者であるリアスに教会を建てる許可を申請している最中だと渚は聞いていた。
リアスにとっては遠慮したい案件だろうが"悪魔の要求は可能な限り受け入れる"という(珍妙な)理由でお願いしてくるアーシアに苦戦しているらしい。
信仰を
「アーシアさんとの生活はどうだい、蒼井くん?」
「賑やかになったな、それにアルジェントさんは掃除やら料理やらを積極的にやってくれるから助かってる」
四角い盤上に並ぶ丸い駒をひっくり返しながら渚は祐斗の質問に答える。
状況は3:7で渚の優勢だ。
学校から帰宅した渚は、現在リビングで祐斗とオセロの対戦中である。
テレビとソファーのある場所へ目を向ければ小猫と一誠がアーシアとジェンガで遊んでいた。
これは一誠が、アーシアと親睦を深めようと企画した遊びで祐斗と小猫も護衛という指示の下で一誠に付き合っている。
いつも渚の部屋で
「木場の番だぞ?」
「うん、じゃあこうかな。それにしても良かったよ」
「何がだ?」
「上手くやっていけそうで」
安堵した素振りを見せる祐斗。
渚は少し考えてから口を開く。
「正直、お前はアルジェントさんを匿うのに反対すると思ってたよ」
「それは僕が神父……いや、教会にいい感情を持っていないからだよね?」
「まぁ、ぶっちゃければそうなる」
少し前に祐斗が神父に対して攻撃的な面を見せたのを思い出す。アレはちょっとやそっとの恨みじゃない。
だから教会に連なるアーシアも恨みの対象になるのではないか、と渚は密かに懸念していた。
しかし蓋を開けてみれば、祐斗はアーシアに友好的だ。杞憂に終わって良かったが少しだけ理由が気に掛かる所ではある。
「彼女はある意味、僕と同じだからね」
「……そうか」
「話せ、とは言わないんだね」
「お前の過去も重そうだ。今はアルジェントさんの分で懲りてるから、また今度聞かせてくれ」
「……機会があれば、ね」
悲しげな目をする祐斗。
その心の奥には渚の予想も出来ない感情があるのだろう。
祐斗が話したいと思うまで、その領域には決して触れないで置く。
「さ、君の番だ」
「ああ、……って角が全部取られてる」
盤上を改めて見ると白と黒が逆転していた。
祐斗の性格上、ズルは有り得ないので狙ってこうなるように仕組んでいたいのだろう。
「すんなり勝てると思ったらコレか」
「悪いね、少し
「参った、降参」
両手を上げて負けを認める。
三勝五敗の負け越しだが、そろそろ飽きてきた。
祐斗と一緒にジェンガ組の方を観察するとアーシアがプルプル震えた指先でブロックを引き抜いてる最中だった。
「はぅ、指の震えが止まりません」
「……あまり力まない方がいいです」
「は、はい」
小猫の助言に頷くアーシア。それがいけなかった。
白い指先が狂い、ジェンガのバランスが崩壊。
床にブロックの残骸が飛び散る。
「た、倒してしまいました……」
「ドンマイだぜ、アーシア」
一誠が落ち込むアーシアを慰めながらブロックをまた集める。
そんな一誠を見た祐斗がジェンガ組に聞こえない声で言う。
「兵藤くんって意外と面倒見がいいんだね」
「学校じゃエロ関係で嫌われてるけど、根っこは真っ直ぐな善人だよ」
小猫とアーシアの二人と遊ぶ一誠の姿はいい兄貴分に見える。
今は天野 夕麻の事で異性に向ける煩悩が抑えられているのかもしれない。
いつもの一誠を知ってる身としては少し寂しく思う。
バカみたいにエロ方面に突き抜けた一誠の方が、なんだかんだで彼らしく感じるのだ。
「あ、あの、蒼井さんっ」
アーシアがトコトコと渚に近づくと身体をモジモジさせながら上目遣いをする。
可愛らしい態度に自然と笑みがこぼれる。
「なんだ?」
「よろしければ一緒にやりませんか?」
「ジェンガ?」
「はい。私、蒼井さんとも遊びたいです」
そこまで言われて断る筈もなく、渚は祐斗の方を向く。渚が抜けるとなれば祐斗の相手が居なくなる。
家主として客人を暇させるのは不味いと思うが祐斗は笑顔で渚に言う。
「僕の事は気にしないで。ゴメンね、アーシアさん。蒼井くんを独占しちゃって」
「いえ、そんな事はありません」
「なら全員でやるか」
渚の提案にアーシアが表情を輝かせる。
こうして五人でジェンガをする事になり、一同がブロックの塔を囲む。
隣に座る一誠が渚を睨む。
「ナギ、アーシアとは随分と仲良さげだな」
「家も近いし、普通だろ」
アーシアはアリステアの部屋に居候しているので実質、お隣同士だ。
事実だけを述べたのに一誠が悔しそうな顔をする。
「金髪美少女シスターと睦まじいお前が憎い。……というわけでナギが負けたら罰ゲームな」
「お前もリスクを負えよ?」
「いいぜ、崩したら何を支払う?」
「一つだけ言うこと聞く。……でどうだ?」
渚が適当に提案すると小猫とアーシアが目を見開く。
「……賛成です」
「が、頑張ります!」
「少し本気で行こうかな」
小猫、アーシア、祐斗の順に参加を表明する。
「いや、君らは参加しなくていいからね。特に女子はその賭けに乗っちゃダメだかね?」
「アーシアと小猫ちゃんがなんでも言うこと聞くとか。……負けらんねぇ」
そして一誠が妙にやる気だった。
「おい、お前は辞めさせる役だろ」
「ばっか! 小猫ちゃんは犯罪臭するけどアーシアだぞ? 見ろ、あの金髪美少女がなんでも言うこと聞いてくれるなんて日本中の高校生が羨ましがるぞ!?」
渚の首に腕を回して小声で力説する一誠。さっき祐斗と話した煩悩
アリステアの用意した白いワンピース姿のアーシアは、女の子らしい横座りで渚の視線を受け止めると「何か私に用ですか?」と可愛らしく首を少しだけ傾けた。
「くそ、可愛い」
「だろだろ。好きにしたいだろ? おっぱい触りたいだろ?」
一誠の煩悩に汚染されつつ同意する。
あんな美少女になんでもしていいなぞ夢のようだ。
しかし良心で欲望を
「いいか、アルジェントさん。女の子がな、簡単になんでもしちゃダメだ」
「なぜですか?」
純粋すぎて説得が難しい。渚が頭を悩ませると祐斗が横から割り込んで来た。
「なら、ジェンガを倒した人に何をしてもらいたいかをハッキリさせて置けばいいんじゃないかな?」
「あー、なるほど」
それなら変なお願い事を後から実行させる心配はない。
「それで行こう。じゃあ俺は飯関係で頼む、学校組が倒した場合は昼飯を奢ってもらう、アルジェントさんだったら夕飯を作ってもらう、かな」
「欲がねぇな、蒼井 渚。勿論、俺は倒した人の胸を──」
「……えっちなのは禁止です」
「こ、小猫ちゃん……?」
「禁止です」
拳を握って脅す小猫にガクガクと肯定するしかない一誠。刃向かえば"はぐれ悪魔"が如くボコボコにされると理解したのだろう。そもそも願いの対象はジェンガを倒した者なので渚や祐斗が罰ゲームを受ける場合、一誠は男の胸を触るハメになる。
「塔城は?」
「私は、甘い者を一緒に食べに行きたいです」
小猫の金色の瞳が、じいーっと渚を捉え続ける。
対象が一誠と同様に限定されている気がした。
「へぇ、つまり小猫ちゃんとデートって訳か……負けても当たりじゃね?」
「……兵藤先輩。私、沢山食べるのでお金は多く用意してください」
「えと、どんくらい?」
「……破産させます」
「絶対勝つぜ!」
一誠の態度が急変して勝利を渇望する。勿論、渚も青ざめる。小猫は小さい身体のわりによく食べるのだ。
財布が本気で心配になった渚の服を小猫がちょんちょんと軽く引っ張ってくる。
「……渚先輩の場合は罰ゲームになっても安くしてあげます」
「俺とナギで扱い違いすぎない、小猫ちゃん……」
「……兵藤先輩は下心があるので。だから安心して負けてください、渚先輩」
「とりあえず安心したよ、搭城」
"はぐれ悪魔"討伐の懸賞金でお金には不自由していないが色々と先行きが不安な渚にとって無駄な散財は避けたい……というのは建前でアリステアに叱られるのが怖い。最悪、今よりも"狩り"の頻度が上がる。そうなったら本当に将来が真っ暗だ。
「僕も対象は限定されるんだけどいいかな」
「こっち見て言うなよ……」
祐斗もまた渚を見ていた。対象が女の子でなく渚であることからある程度予測は出来た。
「君と剣を合わせたい」
「模擬戦がしたいと?」
「そう
「なんして?」
「君が振るう剣術に興味があるんだ」
「適当に素人が刀をブン回してるだけだぞ……」
「何度も君の戦い方を見てきたけど。──巧いよ」
「不味いの間違いだろ」
「そんな事はない。君が時折見せる剣の冴えは素晴らしいよ。無駄を削ぎ落とした足運び、洗練された体裁き、先の先を読んだような見切りの良さ。その全てが宿った刀による一撃は同じ剣士として目標だ。……堕天使カラワーナに放った二連撃は見事だった」
祐斗の過大評価ぶりに渚が唖然とする。
まさか騎士から剣の腕を褒められるとは思いもしなかった。渚からしたら本能的に刀を扱ってるだけで技術も何もない。それでも同じ刃を使う者からの賞賛は嬉しい物がある。
「じゃあ木場のはソレで、アーシアは?」
渚がアーシアに問うと意を決したように拳を作り、こう言った。
「私は、また皆さんでこうしてお喋りしたり遊んだりしたいです」
無欲なシスターの要求に彼女以外の全員が自身の欲深さに苦笑するのであった。
はい、私はアーシアが大好きです。
だって可愛いじゃないですか。