ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
結構間が空いてしまいましたね。
活動報告の方にも書きましたが、これからももう少しだけ忙しくなりそうなので、次回更新はいつになるのやら……。
「…………ふん、随分と無用心だな」
遠目に見える浦の星女学院の校門を注意深く観察した後、タクミは木陰に身を潜めながら懐へ手を伸ばす。
この物騒な国情のなかでガーディアンはおろか護衛の1人も配備していないとは。……平和ボケしてやがる。
そういえばスクールアイドルでの平和活動に一番貢献していたのは東都だったな。奴らにとって、今の日本は最悪の環境だろう。
「この
今回の任務は極秘に行われるものだ。故に北都のガーディアンやスマッシュは連れてきていない。
取り出したスクラッシュドライバーを腰に巻きつけ、スクラッシュゼリーを構える。
これから俺は……また一つ“平穏”を壊すんだ。
「…………変身」
◉◉◉
「よっ!やっぱりお前らもいたか。ナイトローグと一緒に出向いて正解だったみたいだな」
「スターク……」
研究所に侵入してきた2人の戦士——ナイトローグとブラッドスターク。
立ち向かうのは数十人の兵士とガーディアン……そして2人の仮面ライダー。
「おいお前!西都の人間じゃなかったのかよ!?」
「んん……?」
凄まじい剣幕で怒号を飛ばすリュウヤを一瞥し、スタークはたじろぐことなく普段通り冷静な調子で答える。
「オレが一言でもそんなこと言ったか?」
「……ッ!テメェ……!!」
「クハハ…………悪いな、オレはオレの意思でしか行動しない。西都の味方になった覚えはないぜ?」
「じゃあ、どうして万丈にスクラッシュドライバーを渡したんだ?……いや、そもそもあれは誰が作ったものなんだ!?」
「知りたいか?いいだろう。————ただし」
《エレキスチーム!!》
「「……ッッ!?」」
突如として繰り出された電撃の波をそれぞれ左右に避け、キリオとリュウヤは瞬時にビルドドライバーを取り出した。
「オレ達に勝ったら教えてやるよ」
キリオ達の背後で待機していたガーディアン達は電撃を回避しきれずに爆散。それを一目見て焦った兵士が首相を連れて施設の奥へと退避していく。
「上等だァ!!」
「万丈、お前はコウモリ——ローグをやれ」
「あ……!?なんで————」
「頼む」
キリオの瞳のなかで静かに燃える怒りの炎。リュウヤは彼の表情を見た途端、ただならぬ雰囲気を察し、舌打ちをしつつ渋々頷いた。
「わーったよ」
「よし、いくぞ」
2人がビルドドライバーを装着すると、スタークはリュウヤの方だけを見て怪訝そうに首を傾けた。
「なんだ、スクラッシュドライバーは使わないのか?」
「お前らなんかこれで十分だよ。————来いッッ!!」
《◼︎◼︎◼︎◼︎!!!!》
リュウヤの呼び声に応えるように、どこからともなく滑空してきたクローズドラゴンが彼の手の中で止まる。
(……こいつらを、倒す……!!)
ライダーシステムに必要なのは一定のハザードレベルだけではない。
使用者の感情————特定の強い想いが閾値を超えなければ変身することすら叶わない。
キリオの場合は平穏を望む心。
そして今のリュウヤは——————
《ウェイクアップ!》
《クローズドラゴン!》
ドラゴンフルボトルをクローズドラゴンにセット。そのままドライバーに装填。
拳をもう片方の手のひらへ打ち付け、眼前の敵を睨む。
(…………葛城)
ライブイベントの夜に起きた襲撃事件。思えばあれが全ての始まりだった。
会場をめちゃくちゃにされたあの時の…………ユイとミカの顔が、頭の中にこびりついて離れない。
だから————!!
《Are you ready!?》
「変身ッッ!!」
《Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!!》
《Yeah!》
ドラゴンの成分が装甲を練り上げ、前後からリュウヤの身体を挟み込むと同時に翼を模したアーマーが出現。蒼い炎と共に彼の胸部を包んだ。
「ほう……?」
「……これは」
先ほどまで口を開くことのなかったナイトローグと、スタークが驚愕の色を含んだ声を漏らす。
「おお……?おお!!」
「“仮面ライダークローズ”。……うん、我ながらいい出来だ」
「なるほど、ボトルの成分を二倍にしたってわけか。さっすが天才物理学者!!」
「軽口叩けるのも今のうちだ」
《ラビット!》
《タンク!》
《ベストマッチ!!》
《Are you ready!?》
「変身!!」
《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!》
緊迫した空気が辺りに充満する。
両者がじりじりと距離を縮めるなか、最初に打って出たのは————
「っしゃァ!!負ける気がしねぇ!!」
リュウヤだった。
向かってきたナイトローグの銃撃を躱しつつ打撃でカウンターを狙う。
「オラッ!オラオラオラオラ……!!オラァ!!」
「…………!」
相手に反撃の隙を与えない。蒼い炎を纏った拳を何度も叩き込む。
防御の体勢から動けないでいるローグへ肉薄し、腹部に最大級の一撃を放った。
「ぐっ……!」
「どうしたどうした……!!こんなもんかよ!?」
リュウヤは身体を激しく動かしつつも、自分が戦闘の最中でもはっきりと意識を保っていることに驚きを隠せずにいた。
(キリオが言った通りスクラッシュドライバーよりも出力は低い……けど————)
「はああッッ!!」
「うぐっ……!?」
頭が嘘みたいにすっきりしている。変身中のはずなのにこんなに清々しい気持ちでいられるなんて。
「ははははッ!最っ高っ!だな!!」
「調子に……!乗るなァ!!」
「うおっ!?」
スチームブレードによる大振りの横薙ぎ攻撃がクローズの胸部を掠め、その隙を見逃さなかったローグが一気に間合いを詰めてくる。
《フルボトル!》
「……!?」
《スチームアタック!!》
トランスチームガンに1本のボトルが装填され、すぐさま発砲。弾丸が曲がりくねった弾道を描きながらリュウヤへ殺到する。
「うっ…………おおおおおおおおッッ!!!!」
《ビートクローザー!》
「……なに……!?」
無我夢中で振り抜いたリュウヤの腕と連動するように、ビルドドライバー内部から一振りの剣が飛び出してきた。
勢いよく振るわれた刃は左斜め上空から飛来してくる弾丸に直撃。迎撃された瞬間に小さな爆発と衝撃を引き起こした。
「ヘヘっ……サプライズってわけか?」
少し離れた場所でスタークと戦っているであろうキリオに対して心の中で礼を言い、休むことなくローグへ接近する。
「ぐっ……!」
「そろそろ決めてやるぜ……!!」
「はッ!ぜやッ!!だああッッ!!」
「ハハハ……!!良い、良いぞ……!!」
1、2、3………………。
一方、スタークとビルドは拳と蹴りによる激しい攻防を延々と繰り返し、研究所の外までやってきていた。
「ハザードレベル3.9……!やっと調子が出てきたみたいだな……キリオォ!!」
「相変わらずわけのわからないことを……!!」
「オレはお前達が成長してくれることが嬉しいのさ。そう…………何よりもな!!」
鮮烈な一撃が顔面に迫る。
身体をひねりつつそれを回避し、スタークの背後へ回り込んだキリオは瞬時にドライバーのボトルを交換し、
《海賊!》
《電車!》
《ベストマッチ!!》
《Are you ready!?》
「ビルドアップ!!」
《定刻の反逆者!海賊レッシャー!!》
ベルトから生成された弓形の武器“カイゾクハッシャー”を手に取り、奴の背中を弓部分での斬撃を浴びせる。
「新たなボトルか……」
「一気に決めるッッ!!」
スタークの強みは相手の攻撃パターンを瞬時に読み取る分析能力と、わずかな時間でそれに対応する適応能力。
少々脳筋気味なのは自分のスタイルとして気に入らないが……こっちのパターンを読まれる前に奴を倒す。
…………と、見せかけて。
《各駅電車!》
《急行電車!》
《快速電車!》
連続で放たれた三連撃のエネルギー弾がスタークを襲うも、奴はそれらを蛇に似たトリッキーな動きを駆使して全て回避してみせた。
楽しそうに笑いながら再度こちらへ迫ってくる。
「この程度は予測済みだぜぇ……!」
「で?」
「————!?」
《海賊電車!》
スタークの不意を突いた“4発目”を奴の至近距離から解放。
カイゾクハッシャーで生み出せる最高のエネルギーを込め、四肢のど真ん中に撃ち込んでやった。
「ガハ……ァ……ッ!!」
「まんまと引っかかってくれたな。……動きが読まれることをあらかじめ把握していれば、タイミングをずらして不意の一撃を叩き込むこともできる」
先ほどのスタークとの打撃戦では、キリオは無意識を装って
そう、“3発目”までは。
「“相手が自分の手の中で踊っている”と……そう思ってる馬鹿にしか効かない手段だがな」
「ハッハハハ!!……言ってくれるねぇ」
倒れ伏したスタークはコンクリートの上で大胆にも大の字になり、不気味な笑い声を響かせた。
「フルボトルによる変幻自在の攻撃、か……。確かにトランスチームシステムとライダーシステムじゃあ差がありすぎるな」
「…………どうしてパンドラボックスを狙う?」
「それもオレに勝ったら教えてやるよ。……勝てたらな」
露骨に苛立たせるような声音で語りかけてくるスタークに、キリオは仮面の下で歯ぎしりを立てる。
「……いいさ。乗ってやるよ、その挑発に……!!」
《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!!》
《Ready go!!》
《ボルテックフィニッシュ!!》
流れるような速さでボトルを入れ替えたキリオは、自分が持つ最上級の攻撃を加えようと走り出す。
「くらえええええええええッッ!!!!」
「確かにボトルの扱いじゃお前の方が幅が広い。だが————
——オレには
「——————え」
刹那、視界が赤い輝きに染め上げられる。
全身に迸る鋭い痛みと、頭部の鈍痛。吹き飛ばされて頭を打ったのか。
——————————————
耳鳴りがひどい。
身体が動かない。声も出ない。それどころか前だってよく見えな——————
「……っ……!……ッッ……!!ぁ……ッ!!」
やっと出た声は……声というよりも悲鳴に近いものだった。
「おっとっと、少し張り切りすぎたか?」
「い……ま……のは……」
「お前もよく知る……“火星”の力さ」
「なん……だ……と……」
いつの間にか変身は解除され、身動きが取れないでいるキリオの前へしゃがみ込み、スタークは続けた。
「……さっきの打ち合いで、お前も一度“解放”した形跡があるのはわかっていたが……この様子じゃ、やはりまだまだのようだな」
「……なにを……いっ……」
「————さて、そろそろ頃合いか」
スタークは立ち上がると、マジシャンさながらに何もない空間から携帯電話を取り出すと、そのまま誰かと会話を始めた。
「……そうか、浦の星女学院に…………わかった」
キリオは奴の発した単語で目を見開かせ、力を振り絞って上半身を立たせる。
「お前……今度はいったい何を……!!」
「お前の勤め先がグリスに襲われているらしいぞ」
「なっ……!」
「落ち着け、オレがけしかけたわけじゃない。奴は政府の指示で動いているからな。……だがオレも鬼じゃない、罪のない少女達が傷つくのはとてもとても……悲しいことだ」
「心にもないことを……!うっ……!!」
痛みに耐えきれずに再び倒れたキリオを尻目に、スタークは飄々と歩み出した。
「安心しろ。今からオレが向かって、助け舟を出してやるのさ」
スチームブレードの刃を丁寧に手でなぞりながら、スタークは霧と共にその場を去ろうとする。
「グリスを退けられるかどうかは……
目を覚ませ僕らのアイドルがスタークに侵略されてるぞ!(語呂最悪)
作者自身ちょっとスターク下衆くしすぎたかなぁ……と反省しております。
Aqoursが4thライブで頑張っているというのに僕はなんて話を書いてるんだ……。
あ、今まで通り新しいボトルがバンバン出るのは構成の都合なので見逃してくださいお願いします(焦)
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。