オバロ転生憑依もの   作:しうか
<< 前の話 次の話 >>

10 / 19
バルブロ:主人公。名前覚えるのが苦手
ラナー:ヒロイン。兄を慕うかわいい女の子
騎士:常識人が希少
従者:超真面目。ある意味最強

先に言っておきます……。今回のお話は、とてもご都合主義です。サブタイトル迷ったくらいご都合主義です。


10 王城までは何マイル?

 この場所に来てからすでに3ヶ月が経った。バルブロが言うレアモノに遭遇した後は騎士が皆疲れたように眠り、記憶も曖昧で翌日もほとんどがぐったりとしていた。しかし、都合8度のレアモノとの戦闘で騎士たちも戦闘自体は慣れてきた。

 

 しかしレアモノは希少性が高く、騎士アントンと騎士トロワはまだレアモノに出会った事がなかったため、誰もレアモノがスケリトルドラゴンだと気付いていなかった。

 

 そして当初は天幕と簡易的な厩があっただけの場所は、ラナーの思惑とパナソレイの機転とアインザック組合長の冒険者愛が重なり、レエブン候の出資により徐々に人と物資が増え始め、カッツェ平野に対する冒険者組合の最前線補給基地として様相を変えていっていた。

 

 

 

 この世界の住人の朝は早い。基本的に日が暮れる頃には床に就き、日の出と共に活動を開始する。しかし、王族や貴族に仕える者が主人より早く床に就くことはできず、主人より遅く起きる事は許されない。故に一人の騎士に仕える従者同士でのチームワークはかなり重要だった。

 

 王国騎士団が設立され、騎士に仕える従者から騎士見習いとなった彼もその待遇が変わることはない。むしろ騎士見習いになったことで文字を覚えたり、作法を覚える時間が必要となり眠りの時間はどんどん削られていった。

 

 騎士見習い達は未だに従者を名乗っていたが、これは彼らの主人達に由来する。実は騎士達も王国騎士団に編成された際、準男爵を叙勲した。しかし、彼らは未だに騎士を名乗っている。

 

 それは彼らの主人、バルブロ第一王子殿下が未だに騎士と呼んでいるからだった。殿下からお褒めの言葉をもらう事はよくある。平民や従者ですらお褒めの言葉をいただけるほどだ。しかし殿下は基本的に名前を覚えない。大貴族の名前すらたまに間違えるほどだ。殿下に名前を覚えてもらえる事は大変名誉な事なのだ。

 

 故に準男爵たちは自らを騎士と呼び、騎士見習い達は自らを従者と呼ぶ。

 

 スレイプニールの世話を任されている従者たちは元々騎士達の従者から選出されていたため、顔ぶれは変わらなかった。彼もそのうちの一人だ。

 

 生あくびをかみ殺し、同じ役目を負う同僚と共に水を汲み、仮設の厩へと向うと信じられない光景を目にした。そっと水を入れた瓶を地面に下ろすと目を擦り、頬を叩き、同僚達の顔を見る。同僚達も同じような行動を取っていた。

 

「おい……。あれ……」

「ああ……。殿下のスレイプニールがいる場所だよな?」

「またか……? またなのか……?」

「いや、何かもう色々おかしくないか?」

「ああ……。もはや馬じゃないな……」

「いや、ぎりぎり馬でいいんじゃないか?」

「いや、どう見ても馬じゃないだろ……」

「何食うんだろ……。干草で大丈夫なのか?」

「いや、どう見ても肉食だろ……」

「いや、元々は草食だろ……?」

「と、とにかく騎士アントンに来てもらおう」

「あ、ああ……。そうだな……」

 

 従者たちは覚えていた。バルブロが初めてスレイプニールに乗った日の事を……。故に王子殿下が現れる前に行動する必要があった。

 

 騎士アントンはすでに起床していた。王子の騎士となってからというもの気の休まる日はなく、慣れない事務仕事もこなし、従者たちの指揮を取っていた。同僚のトロワも同じ仕事をしているが、慣れない仕事に単純思考の騎士ドゥリアンがうらやましく思う事が多くなった。

 

「騎士アントン、非常事態です」

 

 従者の焦る声にアントンは眉をひそめた。特に騒がしい音はない。カッツェ平野が近いとはいえ充分な距離があり、アンデッドが近づいてきた際は見張りが大声を上げる事になっている。つまり、何かしら別の問題が起きたということだ。

 

「ふむ。何が起こったのかね?」

「え、っと……。その、見ていただいた方が早いです」

「見る? 何か―――」

「スレイプニールです! 殿下のスレイプニールがスレイプニールじゃないものになりました!」

「まさか! すぐに行く、お前は騎士ドゥリアンと騎士トロワを厩へ呼んでこい」

「はっ!」

 

 アントンは剣を腰に佩き、盾を左手に持つとダッシュで厩へと向った。厩では変化を無視して仕事に取り掛かっている従者達がいた。アントンも彼らと同じものを見た瞬間、彼らと同じように無視していつもの仕事に戻りたくなった。

 

「……なんだこれ?」

 

「ふぁうぅ……。どうした騎士アントン」

「ふむ……。鷲の上半身に獅子の下半身……。鷲獅子(グリフォン)ですな」

 

 アントンのつぶやきに遅れて来た騎士ドゥリアンと騎士トロワが答えた。

 

「いや、なんでグリフォンがこんな所にいるんだ?」

「あー。頭がぼんやりする。まぁ、気にするな騎士アントン。前にも似たような事があったろう。足の代わりに翼がはえただけだ。大した事ないだろう……」

「いや、これは危険だ……」

「うむ……、騎士トロワの言う通りこれは危険だ。どうしたらいいのだ? こっそり入れ替えるか?」

「いや、一応殿下に見てもらう必要があるな……」

「騎士アントン、騎士トロワ。どこが危険なんだ? どう見ても頭と体がちょっと変わって翼がはえただけだろう?」

「くっ、騎士ドゥリアンが羨ましい……」

「騎士ドゥリアン……。殿下が乗って落ちたら大変な事になるぞ?」

「いや、騎士トロワ。さすがに殿下もこれには乗らんだろう」

「あまい、認識があまいぞ騎士ドゥリアン。殿下ならきっと『ふむ。試してみるか』とかおっしゃって絶対乗ろうとするはずだ!」

「いや、まぁ……。お乗りになりたがるかもしれないな……」

 

 結局騎士三人はバルブロが乗りそうになったら止める事に決め、起きて来るまで仕事をする事にした。

 

 

 

 side バルブロ

 

 あー。何か疲れが抜けない。もう少し寝ていよう。

 

 あふぅ……。なんか久しぶりに二度寝したなー。うーん、昨日遊びすぎたか? 確かにはっちゃけた記憶はあるが、何か最後にでかいレアモノを狩ってから記憶がぼんやりしてる……。まぁいつもの事か……。今日はみんなも疲れているだろうし、俺ももう少し寝よう。寝る子は育つのだ。

ぐぅ……。

 

「殿下。起きていらっしゃいますか?」

「んあ? うむ……。今日は寝る日だ。何かあったか?」

「い、いえ……。殿下のスレイプニールが……」

「ん?」

「殿下のスレイプニールがグリフォンになりました」

 

 騎士アントンが何を言っているのかよくわからない。馬からスレイプニールはいいとしよう。足が四本はえただけだ。だがグリフォンはないだろう。馬成分はどこへ消えたんだ? 生物の進化に喧嘩売ってるのか?

 「ザクⅡを進化させたらΖガンダムが出来ました」って言われたくらいビックリだ。Ζガンダムですら頭がザクだった事もあるのに……。まだペガサスとか言われた方がわかるわ……。

 

 ふむ、なるほど、これはまだ夢の中か。どうせなら騎士アントンじゃなくてラナー様の夢がよかった……。ペガサスだったらラナー様の方が似合うだろうな……。

 

「うむ。まぁ(夢の中なら)そんなこともあるだろう。取りあえず気にするな」

「は? はっ! ではまた後ほど!」

 

 いや、ラナー様ならユニコーン……―――

 

 

 

 ―――何かすごい夢を見た気がする。うむ、ユニコーンとラナー様のセットはすごく絵になった。今度チャンスがあったらユニコーンを探しに行こう。というかどこかで売ってないかな?

 

 そんな事を考えながら着替えて外に出たらすでに昼だった。とりあえずお昼を食べて装備を整え、遊ぶ気満々で騎士アントンと騎士トロワを連れて厩へ行った。騎士ドゥリアンは調子が悪そうなので休ませた。というか昨日一緒に遊んだ騎士はみんな休ませた。

 

 まぁ、当然遊ぶためであるからして、体調不良を引きずってまで無理をすることはないだろう。二騎や三騎でもゴブリンやオーガなら余裕だ。……ん?

 

「ふむ……。鷲の頭と翼があるな……。しかも胴体が獅子……。どうやらまだ寝足りないらしい」

「いえ、殿下……。夢ではありません」

「いや、どう見てもおかしいだろう。騎士トロワはどうだ?」

「はっ! 私にも鷲の頭と翼が見えます」

「―――マジか……。馬成分はどこへ消えたんだ?」

「いえ、私にも分かりません」

「殿下、試さないでくださいよ?」

「うむ。さすがにこれは無理だと俺にもわかる。というか鞍とかどうやって付けるんだ? このまま飼い殺しか?」

 

 遊ぶつもりで完全武装で来てよかった。ラナー様の署名入りランスがあれば一撃くらいは耐えられるだろう。ヘルムをかぶって恐る恐るグリフォンに近づいた。

 

 うん、興味はあるんだ。なんせファンタジー御用達のグリフォン様だ。翼を燃やされて落下したりする事もありそうだけど世界中で愛され、紋章や彫像になるほどの生物だ。さすがに乗ろうとは思わないけどな……。

 

 いや、アインズ様やアウラさんなら初見で簡単に乗れそうだな……。むしろ喜ぶかもしれない。ナザリックが転移してきたら上納しよう。いや、ユグドラシルにもいたしレベル低いからいらないとか言われるかもしれんが……。

 

 近づいたらグリフォンが伏せた。元々が優しい王国のお馬さんなのでグリフォンになってもその気性が受け継がれているのだろうか。

 

 これなら触るくらいはいけるかもしれない! ここはタッチアンドダッシュだ! 周りからどう見えるかなどどうでもいい。王族の権威とかより身の安全が優先だ!

 

 盾を外してそーっと近づく……。

 焦らなーい。焦らなーい……。

 そーっと、そーっと……。

 (パクッ……ひょいっ)

 

「あん?」

「え?」

「え?」

 

 一瞬で伸ばしていた腕をクチバシで挟まれて気付いたらグリフォンの上にいた。何を言っているのかわからない。

 

「……」

「……」

「……オロシテプリーズ」

 

 きっと誰にもわからない。とりあえず降ろしてもらおうと声を出した。硬直していた騎士アントンと騎士トロワもそーっとグリフォンに近づいて抑えようとしてくれた。

 

 でもなんとなくわかったんだ……。

 なんでこんな事をしたのか……。

 コイツが何をしたいのか……。

 

 なんてカッコ付けてる場合じゃねぇ!

 

「ちょっ、まっ!?」

「殿下ぁぁぁああああ!」

「スレイプニールを用意しろ! 全員起こせ!」

 

 いきなり走り出したグリフォンの首根っこにしがみついた。すっごい揺れるしスレイプニールとは比べ物にならないくらい速度が出てる。片手じゃ怖いけどラナー様署名入りランスは手放せない! どちらを取っても命が危険だ。ならばラナー様を信じる!

 

「お前、飛ぶ気か? マジで? アントォォォン! アトハマカセター!」

「――殿下ぁぁぁぁあああ!」

 

 もはやこれだけ速度が出ていたら飛び降りる事もできない。それに飛行機だって離陸滑走中は揺れるものだ。ちょっと揺れるレベルが違いすぎるが滑走路がないのだからしょうがない。たぶんきっとしょうがない。ランス片手に全力でしがみつくしかない!

 

「よし、往くぞグリフォン! 見せてもらおうか! ファンタジー生物の性能とやらを!」

 

 うむ。このエースコンバットで鍛えた操縦テクがあれば離陸などどうという事はない! 充分に速度がのったところでグリフォンが翼をバサッと広げた。そして体がフワッと浮いたと思ったら少し地面が遠くなっていた。

 

 大丈夫大丈夫大丈夫……――やっぱ怖い。マジ漏らしそう……。そもそも誰がコイツにALICEシステム載せたんだ!? むしろ完全制御システム搭載の戦闘妖精かッ!? ってソレイタダキマスじゃねぇよ! ハイレートクライムとか無理だから! 落ちる落ちる落ちる! 俺もお前も無理だから! 失速するから! 速度全然足りな……――

 

「ぬぁぁぁああああ! マジか! マジでか! 死んだらラナー様に勇敢に戦ったとお伝え(〈伝言(メッセージ)〉)ください! うおおおおお! 〈突撃(チャージ)〉! 〈突撃(チャージ)〉〈突撃(チャージ)〉〈突撃(チャージ)〉〈突撃(チャージ)〉〈突撃(チャージ)〉!―――」

 

 あー。なんか頭がぼんやりと……。とりあえず、すいへいひこうだ。ぐりふぉん……。

 

『お兄様!? 一体どうなされたのですか!? ご無事ですか!?』

「ああ、ラナーの声が聞こえる……」

『お気を確かに! 諦めないで!』

「ラナー、それは死亡フラグだぞー?」

『しぼうふらぐ? 一体何をおっしゃっているのですか!?』

「ララァ、私にも(とき)がみえるぞー」

『お兄様! わたくしはラナーです! ララァではありません!』

「はっ!? だ、大丈夫だ。何も心配する事はない。足なんて飾り……偉い人には―――」

『ああっ! お兄様、お怪我をなさったのですか!? お兄様! 何としてもラナーの下へ帰ってきてくださいませ!』

「僕にも帰れる所があるんだ……―――スヤァ……」

『お兄様! お兄様! ―――』

 

 

 

 気がついたら王城にある自室のベッドの上だった。ふむ。これが夢オチというものか。もう少し寝よう……。ぐぅ……。

 

 

 

 




鷲獅子(グリフォン)
 鷲の上半身と獅子の下半身を持つファンタジー生物。多分馬より大きい。きっとアインズ様が呼んだケルベロスより小さい。どこかの神話で馬車を引いてた気がする。同じ仕事をするお馬さんが大嫌い。原作では名前だけ出てくるが騎乗用に飼い慣らすのはとても難しいらしい。
 なお下半身がネコ科になったのでダイナミックニャン子座りが可能なもよう。

鷲馬(ヒポグリフ)
 グリフォンと雌馬の掛け合わせて生まれるファンタジー生物。前が鷲、後が馬。グリフォンよりも飼いならしやすい。お馬さん大嫌いなグリフォンがオスを食べメスを孕ませたことで産まれた感じだったかと……。
 帝国の近衛隊『ロイアルエアガード』で採用されている。激風ニンブルさんが運ばれてたイメージしかない。

ペガサス
 馬に翼がはえたファンタジー生物。白いお馬さん。ガンダムでは戦艦のクラス名。

ユニコーン
 処女しか乗せないとか角が薬になるとか血を飲んだら呪われるとか色々設定の多いファンタジー生物。二本角のバイコーンがアルベド様の騎獣になっている。

ハイレートクライム
 戦闘機で使う離陸方法のひとつ。クライムくんとは関係がない。滑走路でちょっと浮いたあと速度を出して一気に上昇して高度を稼ぐ技術。実は滑走中の操作手順が多い。通常は350ノット、迎角40度くらいだった気がする。ブルーエンジェルスのハイレートクライムはいつもおかしい。

完全制御システム搭載の戦闘妖精
 戦闘妖精雪風に出てくる戦闘機……違った、爆撃、いや、戦術偵察機……でしたっけ? B-503雪風というコードで親しまれている。スーパーシルフからメイヴになって色々とやんちゃするようになった。
 実はオバロにスーパーシルフ雪風の外装データを使った戦闘機型のゴーレムオリキャラをモモンガさんと一緒に転移させる小説も書こうと思ってた。

オリキャラ♀「ここどこ!? 燃料ナイ。モモンガさんタスケテー」
モモンガ「任せろ! マーレよ、ナザリックの近くに滑走路を作るのだ!」
マーレ「はい、わかりました。モモンガ様」
モモンガ「オリキャラさん、滑走路できました」
オリキャラ♀「ありがとう! ぎゃー! センサーブレード擦ったああああああ!」
モモンガ「えー……」
という感じでした。うん、オリキャラの最後のセリフを書きたかっただけだったんだ……。話が続かなかったので一話だけ書いて消しました。


 い、いかがでしたでしょうか。今回初の三人称視点を採用しました。戦闘シーンなんかにも使えるといいかなーと思ってます。
 えっと、ご都合主義のグリフォン進化ですが、最初はヒポグリフにしようと書いていたのです。しかし、途中でグリフォンを抜かすのは気が引けてきまして……。かと言ってペガサスじゃ普通すぎるかなと思い、悩んだ末グリフォン採用しましたorz

 一人称ではちょっと表現できなかったので捕捉しますと、バルブロが飛んだあと頭がおかしいのは武技の使いすぎと酸素不足が原因です。むしろよく生きているなと……。

 あ、夢オチじゃありませんから! 普通に続きますから! まだ考えてる途中だけど! たぶんきっと……。

 すいません、後書き長くなってしまいました。消すのもなんなのでこのまま投稿します(遠い目

黒帽子様 クオーレっと様 音駆態様
誤字報告ありがとうございます。







感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。