オバロ転生憑依もの   作:しうか
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バルブロ:たぶん主人公。最近見てみないフリが多い
ラナー:たぶんヒド……―――まだヒロイン。最近アグレッシブ
ニンブル:帝国騎士。未来の激風さん。最近女性不審になりかけ
帝国兵:ポスト従者。従者としての性能は低め
ジルクニフ:皇帝になりかけ。最近抜け毛が多い。一部が光りかけ
ロウネ:ジルの秘書官。超優秀。平民から秘書になったばかり

シグルイネタが入りましたので後書きに説明いれておきます。


15 帝都散策

 

 馬車での帝都観光も明日はジルクニフさんの戴冠式があるため今日が最終日である。

 

 お買い物はすでに終わり、馬車でひたすらグルグルと帝都内を回っている。そもそもラナー様は欲しい物をリストにして渡してある。買い物と言っても思いついたら馬車を回して貰うだけだ。基本的にニンブルさんの解説と共にグルグル回り、馬車を降りるのは食事や休憩をする時くらいだ。

 

 唐突かもしれないが、日常的に接している家族でも、接する時間や場所が変わると気になる所が出てくる事はないだろうか。食事をする時にいつも目の前に座っていた家族が、部屋の模様替えなどちょっとした事で隣に座って食べる事になった時、今まで気付かなかった事に気付いてしまい、それが気になってしょうがない。そういった感覚だ。

 

「あら、お兄様。首輪が曲がっていましてよ。お直しいたしますわ。ハァ、ハァ―――」

「うむ。すまんな妹よ」

 

 隣に座るラナー様もそのような感じなのだろう。馬車に乗ったあと、そして降りる前に必ず俺の首にかけられた首輪が気になるご様子だ。自分では分からないが他国の貴族の前で首輪と言えど曲がっていては失礼にあたるのだろう。

 

 同乗するニンブルさんがその度に目を逸らすがそれほどすぐに曲がってしまうのだろうか。確かにネクタイがちょっと曲がっていただけで気にする人もいるだろう。今までは遊んでばかりいたので気にしなかったが、貴族は衣装の着こなしにこだわるものなのだろう。

 

 ラナー様に首輪を直してもらうたび、チェーンの擦れるチャラリという音や、カチャリという不穏な音が聞こえるが決して確認してはいけない。確認した瞬間きっと表情に出てしまうだろう。当然、目を逸らすニンブルさんのツッコミを期待しても無駄だ。すでに何の抑止力にもなっていない。

 

 クライムくんがいれば彼が代わってくれたかもしれない……。危険だからとクライムくんを王国に置いてきてしまったツケが回ってきたと諦めるしかない。

 

 だからそういう事にしておくしかない。世の中には知らない方がいい事もあるのだ。

 

 まぁ馬車の中だけなら問題ないだろう。幸い見ているのは顔を逸らすニンブルさんだけだ。ラナー様もクライムくんで遊べなくて鬱憤が貯まっていたに違いない。むしろ今まで犠牲になっていたクライムくんはどう思っているのだろうか。

 

 うむ、クライムくんにお土産を買っていこう。うーむ……、剣と盾しか思い浮かばない……。ん? 剣……? 剣か……。ランスチャージごっこばかりやっていて気付かなかったが剣大好きな人間が何人かいたな……。

 

 ここはバハルス帝国の帝都。もしかしたらドワーフ製のルーンの刻まれた剣があるかもしれない! 将来アインズ様に献上するためにも数本買っておいた方がよいかもしれん。ううむ……、王国ならツケ払いもできそうだがお小遣い足りるだろうか……。いや、行くだけ行ってみよう。

 

「ニンブル殿。そういえば帝国はドワーフの国と交流があると耳に挟んだ事があるのだが……」

「え、ええ。昔はあったと私も耳にした事があります」

「ふむ、今はないのか……。ドワーフが作った剣が欲しいと思ったのだが……」

「そうでしたか。それでしたら使いをやってみましょう。まだ独自のルートを使って扱っている所もあるかもしれません」

「おお、そうか。是非頼む!」

「はっ! おい、―――」

 

 ニンブルさんにドワーフ製の剣が欲しいと言うと、お店にあるかの確認に何人か送ってくれるそうだ。こういう時はネットの在庫確認が懐かしくなるものだが、あるかないかドキドキしながら待つのも悪くないだろう。

 

 ニンブルさんのやり取りを見ながらそんな事を考えていたらラナー様が左腕にギュッと抱きついた。当ててるのよ! というやつだろうか。当るような胸はないがラナー様の柔らかい身体が……。いや、まだギリギリ兄に甘える妹の範疇だろう。

 

「あら、お兄様。剣に興味がおありでしたの?」

「いや、俺が使うのではないぞ? クライムや部下にどうかと思ってな。それに今後のために何本かそういう剣があった方がよいだろう?」

「ふふっ、そうでしたか。お兄様は博識でいらっしゃるのね」

「う、うむ……。聞きかじり程度の知識だったのだがな……」

 

 そう、年齢的にもまだセーフなハズだ。いや別の意味でアウトかもしれない……。ただ、ドロリと崩れた目が「わたくしの署名入りランスだけでは不満ですか?」と訴えているようでちょっとかわいらしかった。去年の時点なら顔全体がドロリと崩れていてもおかしくなかったのだが、ラナー様の成長をうかがわせる。

 

 ニンブルさんのお使いで出ていた帝国兵が取り扱っているお店を見つけてきた。ただちょっと隠れた名店というか、冒険者やワーカー相手の実用性を重視した買取がメインのお店だったらしく、ちょっと治安の悪い所に立地しているらしい。

 

「その、少々歩く事になりますがいかがいたしましょう」

「うーむ……。そうだな……」

 

 俺ひとりなら問題ない。いや、別の問題があるかもしれないが、帝都は治安がいいし帝国兵(プロ)の護衛もいるので問題ないだろう。しかし、王国の宝であるラナー様をひとりにするのは色々と問題があるだろう。だがラナー様をそんな所に連れて行っていいものかどうか悩む。

 

「お兄様、わたくしもご一緒しますわ」

「そうか? うーむ、では行ってみるとしよう。ニンブル殿、お願いする」

「はっ! ではそのように」

 

 馬車がギリギリ通れる程度の帝国にしては細い路地の前に馬車が止まった。入っていくことはできても馬車が途中で壊れたり、向こうから同じ馬車が来たら立ち往生間違いなしだろう。こんな所に馬車を止めて大丈夫だろうか。

 

「お兄様。首輪が曲がっていましてよ。お直ししますわ。―――ハァハァハァハァ」

「う、うむ。すまぬな、妹よ」

 

 馬車が止まった瞬間ニンブルさんは即座に脱出なされた。二人きりになった車内でラナー様はリードをくいくいと引っ張ったあとずれた首輪を戻してくれた。首輪の位置も調整されたので俺も脱出するべきだろう。ラナー様かわいいとかラナー様のいい匂いで頭がボーっとするとか考えてはいけないのだ!

 

 帝国兵に囲まれ、20mほどラナー様に腕を貸して両手にラナー状態で歩くとニンブルさんが言ってたお店があった。

 

 ううむ、天井が低い。これは確かに問題だ。ニンブルさんが確認を取ってくるのもわからなくはない。壊さないように注意しよう。

 

 ラナー様の署名入りランスをできる限り寝かせて肩に担いだまま入店すると、店内はまさしく武器屋といった様相だった。ランスはないが長ものもいくつかあった。先端に斧と槍が一体化したハルバードなど男の子の心を鷲づかみにするようなものまで置いてある。

 

 しかし、ハルバードがいくら魅力的であっても見とれてはいけない。なぜなら隣にラナー様がいるからだ。デート中に目移りするような愚を犯してはならぬのだ……。ハルバードいいなぁ……。遊び仲間に買っていくなら問題ないかな……?

 

「このような場所へようこそいらっしゃいました。お探しの品はこちらにご用意させていただきました」

「うむ。意外とあるものなのだな。大変結構」

「は、はい。ありがとうございます。偶然、私どもの所に流れて来た品でして―――」

 

 目元に傷のある厳つい店主が丁寧に接客してくれた。普段はきっと「ああん? ガキの来る所じゃねぇ! 帰ンな!」とかそんな感じなのだろう。帝国兵万歳、王子万歳である。

 

 ルーン技術によって作られた剣は様々な効果がある。剣に雷や火を纏わせたりするような派手なものから、刃こぼれくらいなら自動修復してくれるような手間要らずな物まで様々だ。ひとつひとつ説明を聞いて、クライムくん(推定7歳)でも使えるような長さの剣と、おもしろルーン武器をできる限り買いしめた。帝国に来るまでに稼げてなかったら危なかった。お小遣いが消滅した。

 

 帝国兵に荷物を持ってもらい、ニンブルさんを先頭にお店を出て馬車とお店の真ん中くらいまで来ると、街中に溶け込むような目立たない色のローブを頭からすっぽりと被った人達に囲まれた。ひのふの――八人もいた。

 

「何者だ! 貴様ら!」

「帝国騎士、ニンブル殿とお見受けする」

「無礼な!」

 

 どう見ても暗殺イベントです、ありがとうございます。ニンブルさんが言葉を発したあと囲んでいた人たちがナイフを投げた。ただ、暗殺者たちの能力は低いのか投げられたナイフは全部俺の所に飛んで来たため、ランスの根元で全部逸らした。

 

 ニンブルさんは暗殺者に狙われるほど嫌われているのだろうか……。まぁジルクニフさんが鮮血しまくった後だし、明日は戴冠式。きっとその辺りの絡みもあるのだろう。

 

 ニンブルさんの顔は真っ青だ。帝国兵も動揺している。うむ、ここはちょいと消えたお小遣いの補給をさせてもらおう。

 

「ふむ、暗殺者か。ニンブル殿、ここは俺がいただいてもよろしいだろうか」

「え? え、きょ、協力していただけるのなら……、いえ、王子はおさがり―――」

「まぁ、下がっていたまえ。ゆくぞ、諸君!」

 

 ラナー様に汚いものを見せないよう抱きかかえたあと、担いでいたランスを寝かせる。

 

 この世界に転生し、この肉体を得て、毎日ランスチャージごっこに明け暮れた。お馬さんがスレイプニールになり、グリフォンになった時、グリフォンに乗るのが怖かった。ランスチャージごっこというお遊びが封印されたとき、取れる手段はそういくつもなかった。

 

 毎日ラナー様の署名入りランスで練りを繰り返し、何度も手からすっぽ抜けたランスが室内と隣部屋を壊し、堅く室内稽古での使用を禁じられしこの技を使う時が来た。

 

 長大なランスでこの技を使う事が出来るのか。

 ラナー様を抱えたまま戦う事が出来るのか。

 出来る。

 出来るのだ。

 

 虎眼流、流れ……。

 

 と、いうわけでお小遣いが補充された。

 

 ラナー様は怖かったのかギュッと首筋に抱きついてハァハァと荒い息を吐いていた。馬車までそのまま運んで隣に座らせようとしたのだが、「お兄様。しばらくこのままで……ハァハァハァハァ―――」との事だったので屋敷までラッキースケベを楽しんだ。

 

 

 

 side ジルクニフ

 

 明日は戴冠式だというのに気の休まる時がない。式自体は問題ない。原因は王国から来た王族たちだ。疲労の色の濃いニンブルからあいつらの報告を聞くたびにゴリゴリと心が削れる。しかし、今日でこの心労から開放されるはずだ。

 

 ニンブルには言っていないが今回は金をかけた。イジャニーヤを雇ったのだ。当然他の貴族を使ったので万が一にも失敗したとしても問題ない。ククク、明日の戴冠式は晴れ晴れとした気分で臨む事ができるだろう。

 

 そんな事を考えていたら秘書官のロウネが入ってきた。イジャニーヤからの報告だろう。高ぶる気持ちが抑えきれないかもしれない。

 

「陛下……。ニンブル様から言伝をいただきました」

「ん? どうした? どこぞの王子でも死んだか?」

「いえ……、その……」

「ククク、そう気負うな。何でも申せといつも言っておるだろう?」

 

 ロウネは使える秘書官なのだが、未だに平民であった頃の癖が抜けていないらしい。今回の計画やイジャニーヤへの依頼もロウネは関わっている。他国の王子を暗殺した事を気に病んででもいるのだろうか。

 

「はっ、では……。ニンブル様の言伝によりますと、本日、ニンブル様が謎の暗殺集団に襲われたそうです」

「ふむ」

 

 直接他国の王族を狙うのは少々問題だろう。そこでニンブルを暗殺するフリをして王国の王族二名を消せと依頼した。

 

「しかし、八人いたイジャニーヤの暗殺者集団は全員死亡。こちらの被害はゼロだそうです」

「え?」

 

 アイツの武器は馬鹿でかいランスだけだろう? 大体狭い路地であのバカみたいに長いランスは使えないだろう。買っただろう武器は帝国兵が持ち運ぶよう言ってある。無理やりランスで一人殺したとしても突っかかるだろうし、その間に残った七人で襲えば普通に暗殺できるんじゃないのか? ああ、なるほど、そういう事か。

 

「ふむ。ニンブルが活躍してしまったのか……。アイツの嘆願を聞いた時は半分嫌がらせでそのままにしたが、重爆に事情を知らせて彼女を付ければよかったか?」

「いえ……、バルブロ王子がランスの一振りでイジャニーヤが壊滅したそうです。ついでに向いにあった建物が倒壊しました。成り行きを見守っていた特殊部隊もそれに巻き込まれ現在生死不明の状態です。

 幸い王子暗殺に気付いたのはニンブル様だけのようで、当の本人はお小遣いが増えて喜んでいたそうです。いかがなさいますか?」

 

 いかがなさるも何も、イジャニーヤが失敗するとは思わなかった。ヤツから護衛とグリフォンを引き剥がし、金を使ってエサを用意して襲撃地点までおびき寄せたというのにこれ以上どうしろというのだ。じいを当てるか? いや成功するとは思うがさすがにそれは不味いだろう。

 

「ふ、ふむ……。確かにイジャニーヤをこれ以上当てる事はできまい。そうそう機会もないだろうしな……」

「いえ、それもそうですが、今回の件で名目上はバルブロ王子がニンブル様を暗殺から守った事になってしまうのですが……」

「……そうだな」

 

 ……殺そうとしている相手にお礼をしなければならないほど屈辱的な事があるのだろうか。お礼の品はあれだろ? アイツが欲しがってたヒポグリフとヒポグリフの装備一式だろう? わかってはいる。しかし、これから戦争しようとする相手に贈るものじゃないだろう!

 

 くっ、まさかアイツはこれも読んでいたのか? ありうる……。そもそも最初からヒポグリフの装備が欲しいなどと言い出すのはおかしいと思っていたのだ。どう考えても貰えるなどと思わない物を口に出しておいてこちらを油断させ、今回の事を予見して差し出させるつもりだったのだ。

 

 バカなフリもラナーとのアレやコレもすべて欺瞞だったのだ。クソッ、すっかり騙された。しかし、次はないぞ! バルブロッ!

 

 

 

 side ラナー

 

 ハァハァハァハァ、こ、これはいけませんわ……。た、確かに吟遊詩人の話に姫を抱きかかえながら戦う騎士の話はありましたが、これは想像以上です。

 

 しかもお兄様の服はいつものような柔らかいお召し物。ギュッと抱かれたらそれはもうあってないようなもの……。ああ、わたくしはこのままお兄様の腕に抱かれてどこまでも連れ去られてしまうのですね……。ラナーはもう……。

 

 はっ、気をやってしまうところでしたわ……。これはいけません。外ではあるまじき行為かもしれませんが、離れないようお兄様の首輪にわたくしの手綱をつけておきましょう。

 

 ああ、ジルクニフ、許してください……。わたくし、お兄様の暗殺を企てるアナタに殺意を抱いておりました。でもこんな状況を作り出していただいたことに深い感謝を感じております。これからも末永く見守っていてくださいね……。

 

 ハァハァハァハァ、あら、鼻血が……。ハァハァハァハァ、いけません、いけませんわ……。お兄様のお召し物にわたくしの血が……。ハァハァハァハァ―――

 

 

 





練り
 ちょーでっかい木刀でひとつの動作を30分かけて行う鍛錬法。ぶっちゃけ無理。多分見られると恥ずかしい。それを乗り越えられる猛者だけが行える。

虎眼流 流れ
 中目録以上で教わるすごい技。刀を担ぎ、神速の一刀を繰り出す。その際、手を緩めて柄頭を握ることで射程を延ばす。マネをするとすっぽ抜けて壁に穴が空く非情の技。避けられたらピンチに陥る。


いかがでしたでしょうか。帝国でやりたい事(ラナーの進化)は終わったので惰性でお茶会をするか王国に戻るか迷い中です。しばらくお待ちください。

タチャンカ様、対艦ヘリ骸龍さま、黒祇式夜さま
誤字報告ありがとうございました。




 あ、一応、整理のためR-18版オバロもアップしました。あっちはまぁ、オススメしませぬ。ラナーほとんど出てこないし、ラナーのエロシーンないし、たぶんメインはニニャだし、色々ひどいし……。18歳以上でそれでもよいという方はどうぞ……。







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