オバロ転生憑依もの   作:しうか
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バルブロ:主人公。ラナー信奉者。ランスチャージが大好き
ラナー:病み始め。夢と愛と理想のため原作よりも影でモリモリ動いてる
エリアス・ブラント・デイル・レエブン:今回の被害者その1。大貴族。貴族派閥で王位を狙っている。宮廷事情にはとても詳しい。
ボウロロープ侯:大貴族。貴族派閥のトップになるお方。現在40代。軍隊大好き
ランポッサⅢ世:今回の被害者その2。国王陛下。色々とがんばってるけどガゼフがいないから心労がそろそろ厳しい。



3 婚約話

 ラナーとお茶しているとき、ついに父王に呼び出された。いや、半年放って置かれただけでもある意味すごいがきっとラナーが色々してくれていたのだろう。

 

 ここ半年でかわいい笑顔を見せるようになったラナーも呼び出しのおかげで目がどろりとしてるし、きっと嫌なことなんだろうな……。行きたくないでござる……。でも父上のところで見た近衛兵が二人も扉のところで待ってるのでござる……。

 

 連行される前に我らがラナー先生に指示を仰ごう!

 

「ラナー、その表情も好きだけど機嫌が悪くなってしまったかな? なでなで」

「あら、顔に出てしまいましたか? いけませんわね……」

 

 ラナーの頭をなでなでしたらラナーは自分の顔をくにくにし始めて表情を戻した。きっと表情筋の調子が悪いのだろう。唯一存在するラナーの欠点ではあるが、個人的にはこういうところも嫌いじゃない。ただ、妹なんだよなぁ……。

 

 アニメで見たクライムくんも結構好きなキャラだから彼とラナーがくっつくのは個人的にも応援したいところだ。うむ、俺の将来のためにも応援するべきだろう。

 

「ところで嫌な事でも起こるのかな? なでなで」

「ええ、きっとお兄様のご婚約の話かと……」

 

 そう言いながらラナーが上目遣いで覗き込んできたけど、妹よ、兄のフラグを立ててどうする。嬉しいこと甚だしいが兄とは結婚できんぞ? 

 

 さて、原作の俺(バルブロ)には妻がいる。名前だけでしか出てこなかったと思うが、確か貴族派閥のボロローブ候(ボウロローブ)の娘を娶っていて王国分裂の一助になっていたはずだ。

 

 このルートを突き進むと王国弱体化→貴族派台頭→貴族派がアインズ様に接触してアインズ様げきおこルートに突入してしまうのでガゼフ召喚して鮮血帝の如く貴族派の首狩りしていくくらいがちょうどいいのかもしれない。

 

 ただ、ナザリックが原作通り転移してこなかったらそれはそれで危険な道だ。なんせ、ボロローブ候は軍事力王国一だし……。

 

 ふむ。しかし、俺はすでに一度王位継承権を捨てると父上に言っている。つまるところ、ソレを聞いていた人間も少数だがいるわけで、それが宮廷内で噂になっていてもおかしくない。そんな人間を貴族派の旗頭にするだろうか? いや、しないはずだ(反語)

 

 となると、他国だろうか。王家の人間として継承権抜きで安全に出荷できるわけだから、この手を外交で使わない手はないだろう。少し考えてみよう。

 

帝国→鮮血帝が即位してるかわからない→即位前だったら暗殺されるだろうし、してても多分捨て駒。いくつも幸運が重なってようやく王国併合後の傀儡。でも用が済んだら暗殺されそう

法国→王子の必要性がなさそう→あったとしても用が済んだら暗殺されそう

聖王国→情勢不明だけどキレイな聖王女様がトップになる→未来のマッチポンプ劇場で殺されるかスクロールの原料になりそう

竜王国→女王様が見た目ロリらしいしパンチラには興味ある→死亡フラグ乱立しすぎでソレすら困難→行くだけでも途中で逝く可能性が高い→俺tueeeee系主人公しか輝けない

 

 はっはっは、我が王国の安全性は圧倒的ではないか! すでに公式リアルチートラナー様の助力を得ている状態で他国に行くなどありえないだろう。いやマジで行きたくない……。

 

「ふむ、もしかして他国かな?」

「いえ、他国はないでしょう。恐らくボウロロープ候あたりの縁だと思いますわ」

 

 恐る恐る聞いてみたら違うらしい。よかった。あ、ボウロロープだったのね。ボロローブだと思ってた。

 とりま、ラナーの言葉で近衛兵の表情が動いたって事はラナーの読みどおりなのだろう。さすがは公式チートのラナー様である。とりあえず他国でなければ大丈夫だろう。よほどのアタリを引かない限り無能をさらけ出してお断りするだけだ。

 

 そう、王国にもまだアタリはいるのだよ! 青の薔薇(未定)のラキュースさんとか! 青の薔薇(未定)のイビルアイさんとか! 青の薔薇(未定)の三つ子ニンジャさんとか! カルネ村のエンリさんとか! どっかの村のツアレさん(攫われる前に遭遇できなきゃ手遅れ確定)とか!

 

 しかし、冷静に考えると貴族はラキュースさんしかいないではないか……。しかも婚約した瞬間に青の薔薇が無くなりそうだ。青の薔薇がなくなると王国が色々ヤバイ。うん、無理ダナ……。まぁ、ナザリックが転移してこなかったら権力使って適当に見た目のいい子探して愛妾にでもしよう。

 

 もし転移してきたら~なんて考える必要はない。答えはもうすでに決まっている。当然アインズ様に五体投地して保護を求めつつシャルティア様の眷属にしてもらえるよう全力を尽くす所存!

 

「なるほど、俺のどこに魅力を感じたのかはわからんが、取り合えずお断りしてくるとしよう。ラナー、昼食には戻るよ。なでなで」

「はい、お待ちしておりますわ。お兄様」

 

 特に訂正も助言もないしラナーの笑顔が戻ったので正しい選択なのだろう。「案内頼むよ」と近衛兵に頼んだら前後に挟まれて父上の下まで連行された。行くと言っているというのに脱走するとでも思っているのだろうか。まぁ前科はあるが解せぬ。

 

 

 

 

 

 父上の執務室に入ったら他にも何人かいた。「父上、婚約の話ならナシな!」と先制して終わらせようと思っていたのに大誤算だ! しかし王族とはいえ俺は不利な状況ならば撤退も厭わない! そう、これは勝つための撤退! 一度撤退してラナー様に知恵を授けてもらわねばどうしようもなさそうなのだよ!

 

「父上、お呼びにより参上しましたが、どうも遅れてしまったようですね。申し訳ありません。また出直しますのでどうぞご歓談ください」

 

 お客さんがいるから帰りますね。と丁寧に伝えて即撤退。返事を聞く前なら間に合うはずだ! 扉の前に陣取る近衛兵に「帰るよー」と伝えようとした所、父上から言葉が発せられてしまった。

 

「まぁ、待てバルブロ。改めてお前に紹介しておこう。我らが王国を支えてくれる六大貴族の二人、ボウロロープ候とレェブン候だ」

 

 二人にそれぞれ自己紹介と軽い挨拶を受けた。未だ原作の10年以上前だと思われるので二人ともまだ若い。ボウロロープ候はまだ40代の働き盛りでゴツイ体に覇気のみなぎる顔をしてるし、レェブン候もまだ子供を持っておらず、ヘビのような顔で王位簒奪を狙っている時期だろう。二人とも貴族派閥のキーマンで王族派が誰かは忘れたが、対抗勢力のないこの状況はかなり不味い。

 

「ご存知かとは思いますが、私はバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフ第一王子でございます。お目通りの機会に感謝を。では―――」

 

 よし、卑屈になってしまったが王子っぽい挨拶もしたしこれで撤退できるに違いない。総員撤退! ハリーハリーハリー!

 

「まぁ、待てバルブロよ。此度はボウロロープ候から縁談の話があっての。余としてもこの話は悪いものとは思っておらぬ」

 

 くっ、父上だけならば「だが断る!」と言って終わりにできそうなのだが、どう見ても武闘派のお偉い貴族の目の前でそんな断り方ができるはずがない。こういうときこそラナー様のお知恵を拝借したい所なのだが、自力でなんとかするしかない。最悪何とか年齢を理由にしての先延ばしでもいいからこの場を乗り切らねばこの先が危うい。いや、何とかなるかもしれないが危険がいっぱいになってしまいそうで怖い。

 

 レェブン候はたぶん仲介役といったところか。ボウロロープ候はこういったことに弁が立つとは思えない。今の貴族派閥では一番の弁達者だろう。

 

 しかし、父上も貴族派もなぜこのような縁談に乗り気なんだ? もしかしてその辺りに断れる材料があるかもしれない。

 

 前提として現在、一応俺にも王位継承権はある。無論いつでも投げ捨てる気ではいるが、ラナー様の超理論ではまだ時期尚早らしい。

 

 王位継承権放棄の噂は広がっていると思うのだが、ただの噂として放置されるか、駒として使うかであれば持ってるだけで貴族派の人間にとっては問題ないのだろう。しかし、王になりたくない人間を王にした所で貴族派が俺に恩を売ることができるとは思えない。

 

 つまり、俺とボウロロープ娘の間に子供が出来ない限り意味がないものなのだ。まぁ、ボウロロープ娘がかわいければできちゃうかもしれない。できちゃったら俺を暗殺してしまえばボウロロープ候としても孫を王にして万々歳かもしれない。怖い……、かわいくても我慢しよう。案外原作のバルブロに子がいなかったのはこの辺りも絡んでるのだろうか。いや、断るつもりだが!

 

 父上としては俺をエサにボウロロープ候とレェブン候を引き込めると思ってるのだろう。すでに二つに割れ、蝕まれている王国を、次期国王を力のある貴族に関わらせる事でひとつにまとめる事ができると考えたのだろう。その考えは短絡的に見えて個人的には正しいように思える。

 

 しかし、引き込みに使うには条件があるのだ。ひとつは両者の仲がよいか圧倒的に王家に力があること。そもそも必要ないが、より王家の力が増すだろう。父上はこれを狙っているのだろうが、すでに二つに分かれており、王家が無視できないほどの力を貴族派が持ってる時点で条件が揃わない。

 

 もうひとつはバルブロの結婚と同時にバルブロに王座を明け渡す。これなら王家も存続できるし王国もまとまりやすくなる。まぁ貴族派の勝利に終わるのだが、ひとつにまとまる事に変わりはない。ただちょっと滅亡までの時間が短くなるだけだ。

 

 そして最後にスパイとして送り込む場合。残念ながら原作のバルブロも俺も父に対する忠誠度が足りない! ラナー様がやれとおっしゃるのならやるがなっ!

 

 実際、俺がしっかりした人間で王国万歳、国王陛下万歳な人間で調整力がある人間だったなら実現の可能性も皆無ではないだろう。だが、王位継承権を放棄すると言い出したり毎日妹と遊んだりランスチャージごっこに明け暮れている人間に任せるのはどう考えても人選を間違えている。

 

 まぁ、色々考えた所でそもそも俺はラナーの頭脳に全て賭けている状態なので実現しない。

 

 しかし、弟のザナックならばどうだろうか。原作では確かに彼は能を隠しており、ラナーや王派閥に戻ったレェブン候と王国の危機脱却のため動いたが、それまで冷遇されていたという条件も加味されるべきだろう。

 

 ここで「ザナックを俺の代わりに」と、言って降り、実現した場合、彼の野心はそこで満たされてしまい、今後は転がり込んできた自分の地位や権力を維持する方に動き、結局は原作のバルブロのように貴族派の意見を取り入れ王国を真っ二つにする未来もありうる。むしろバルブロより優秀な分、貴族派の力が増しそうだ。

 

 まぁ、ぶっちゃけそれでも俺としては多分問題ない。原作のバルブロの代わりにザナックが死ぬだけだ。ただ、それだと俺の代わりにラナーの傀儡王になる人間がいなくなるのが問題だ。なるほど、それでラナーは俺の継承権破棄を時期尚早と言ったのではなかろうか。さすがはかわいい天才である。

 

 しかし、困った。ラナーの反応で断るという結果は確定している。しかしこれでは継承権破棄を匂わせて断ることもザナックに話を投げることもできない。能天気なおバカを演じた所で相手が欲してるのは王子という名の軽い神輿だ。むしろ乗り気になられそうだ。

 

 詰んだか……? やはりラナーに断りの文句を聞いておくんだった……。いや、諦めたらそこで終わりですよって昔から言われているではないか。ここは玉砕覚悟で突っ込むしかないッ!

 

「ふむ。お断りします」

 

 「だが断る!」とはさすがに言えなかった。それでも断った瞬間レェブン候は眼を細めたし、ボウロロープ候は睨みを利かせたし父上は顔に皺を寄せた。こえぇよ! しかし用件はこれで済んだはずだ。撤退しよう。退却だ退却!

 

「まぁ、待てバルブロ(本日三回目)。お前はなんと言うか、もう少し考えて話をした上で動くという事を学ばねばならんようだ。取り合えずお前に理解できるかわからんが、話を聞きなさい。レェブン候、頼めるか?」

「はっ、バルブロ殿下、現在の王国の状況ですが―――」

 

 と、レェブン候が貴族仮面をかぶりながら優しい言葉で説明してくれているのだが、ざっくりまとめると『俺(バルブロ第一王子)と貴族の中でもトップを争う力を持つボウロロープ候の娘が婚約すれば未来の王国はひとつになって安泰ですよ。お得ですよ。みんなが幸せになれるすばらしい事なのですよ。というかホントは王族や貴族の子供に拒否権はないんですよ。それに殿下のお年なら婚約者がいてもおかしくないのですよ』という話だ。ほとんど逃げ道をふさがれた。

 

 原作を知らず、状況を知らず、ラナーがいなかったらこちらからお願いしたいくらい良い話だったかもしれない。父上もこれで貴族たちを懐柔できるのであればと首を縦に振ったのだろう。レェブン候の話はさすがに王位を目指すだけあって説得力も抜群だし脅しも上手く織り交ぜられている。未来の王とか王子としての自覚があったら首を縦に振ってしまうだろう。

 

 だがしかし、残念ながら俺にそんな物は存在しないのだ。俺に首を縦に振らせたかったらラナーを連れて来るんだったな! はっはっは! どうしよう……。

 

「頭が悪いなりに大体の事はわかりました。とても良い話のようですね。ですが今はお断りします」

「ほぅ、理由をお聞かせいただいても?」

 

 ボウロロープ候は「わかったのならなぜ首を縦に振らん!」とでも言い出しそうなほど怒ってるし、父上はあきれてる。レェブン候もちょっと怒り気味だけど他の二人が口を開く前に理由を聞いてきた。

 

 彼の言葉通り俺に拒否権がないのであればこの三者で決定し、決まった事を俺に伝えるだけで済むのだ。ただ、俺の意思の確認をしてきたあたり、俺が自分達の駒になるか確かめたかったのだろう。素直に首を縦に振るならばよし、振らなければ暗殺し弟のザナックに話を持っていくだけだ。だが、王族の暗殺となると手間がかかる上に、今後に差し支えるはずだ。俺を従順な駒に仕立てる方法を模索したいのだろう。

 

 それゆえに理由を聞いてきた。そう考えると断りきる事は難しいだろう。そもそもよく考えたら、今完全に断ったらザナックに話がいくではないか。ここはなんとしても猶予を得る方向で乗り切らねばならない。しかも、相手にそれなりの期待を抱かせつつ期限が不確定な猶予が必要だ。

 

 そんな事不可能に思えるだろう。しかし、一枚だけその条件を満たせそうなロイヤルカードが存在する。できれば切りたくない……。どう考えても俺の名声が地に落ちる。―――切りたくないのだが……、切らざるを得まい。

 

「ええっと、そのですね……。大変言いづらいのですが……実は好きな人がおりまして……」

「おや、そうでしたか。お名前をお聞かせいただいても?」

 

 お断りの常套句である。レェブン候としてはボウロロープ候の娘という大きな札を使うより、俺の惚れたどこぞの相手を自分の札にして利用した方が色々とお得だと計算したのだろう。俺が接触した事のある女性の数などたかが知れているし、それがメイドとして送り込んでいる手のものであれば文句なく最高だろう。

 

 俺がなんとか言わずに済ませたいなと言いあぐねていると、誰にも漏らしませんからとか、可能ならば協力しますからとか、レェブン候が押しに押してくる。

 

 何か嫌な予感を覚えたのか父上は顔を青くしている。「今ならまだ間に合いますよ。俺もできれば墜ちたくないので止めてください、父上」とチラチラと目で訴えてみたがアイコンタクトは失敗したようだ。止めてくれる気配がまったくない。

 

 「本当に誰にも言いませんか?」と三人に確認を取るが、頷くだけ……。もはや本当に切るしかないようだ……。

 

「ラナーです」

 

 場の空気が凍った。父上はうつむいてしまったし、ボウロロープ候は首をかしげて理解が追いついていないようだし、レェブン候は完全に固まった。

 

 方便に使ってしまってすまない、ラナー……。誰かから聞いてもできれば嫌悪感を抱かないでください。誤解なんです。お願いします。

 

 いや、むしろお断りの理由にしたと自分で報告すればそこからよい妙案を授けてくれるかもしれない。それに聡明なラナーなら誤解もしないだろう。意外と俺も傷つかずに済むかもしれない。そう考えるとちょっと楽しくなってきた。追撃しておこう。

 

「妹のラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフです。あの輝くような金髪。美しい瞳。そして時折見せる魅力的な素の表情。誰よりもかわいい存在である事に間違いはないでしょう」

「しかし、ラナーはお前の妹。血がつながっているのだぞ? どんなに想おうともお前と結婚はできぬのだぞ?」

 

 いち早く復帰した父上が俺の説得に動くがそんな事はわかっている。それにラナーは隠れ蓑だ。俺が言うのもなんだが、そんなに心配しないでいただきたい。

 

「ええ、わかっております。しかしまことに自分勝手ではございますが、この気持ちに整理が付くまで、せめてラナーを諦める事ができるようになるまで婚約の話はお待ちいただければと……」

 

 貴族同士でも近親でのそういった話がないわけではないのだろう。それにおっさん貴族が若い側室を持つ事もある。きっとロリコンもセーフだったのだろう。そこまで酷い眼差しを向けられることはなかった。いや、落胆は隠せないようだが……。

 

「そうでしたか……。ではこの話はまた後日という事にしましょう」

 

 もう少し粘ると思っていたのだが、お流れにしてくれた。まぁ、実際、正室をボウロロープ候の娘にして側室を娶ればいいじゃんってな事をボウロロープ候の前で言えるわけがない。別の策でも思いつき、これから仕込みに入るのだろう。

 

 どんな手を打ってくるのかは範囲が広すぎて絞り込めないし、俺が考えるよりラナー様に聞いた方が早い上に正確だろう。取り合えずお開きとなりようやく開放された。

 

 

 side エリアス・ブラント・デイル・レエブン候爵

 

 全く酷い話だ。バルブロがあそこまでバカだとは思ってもみなかった。やはり第二王子のザナック殿下にしておくべきだったのだ。

 

 だがあのボウロロープ候も今回のあれで諦めただろう。そう思ったのだが、会談が終わったあとボウロロープ候が言ったのは「見た目が気に入ってるのであろう? ならばラナー殿下に似た人物を近づければよいだけではないか?」だ。そんな人間そうそういてたまるか。

 

 バルブロ殿下が毎日何をしているかは私も知っている。ボウロロープ候が自らの私兵を送り込み、バルブロ殿下の能力の高さを買っているのも、自らの私兵が上手く取り込めていない事実に焦りを感じている事も知っている。だから私もこの話に期待したのだ。

 

 しかし、ラナー殿下だけはない。あのどろりとした目、光を失ったような瞳、歪んだ表情、弱冠5歳にして出してくる政策や法案の数々。まさしくバケモノだろう。あんな得体の知れぬバケモノを好むような人間がいるとは思わなかった。それに皆が皆、ラナー殿下の異常性はわかっているはずなのだ。なのにあのバカだけはそれを褒め称えている。バカどころか頭がおかしいとしか思えない。

 

 金を使い、人を使い、時間を使い、周到な根回しを行い、あとはバルブロが頷くだけですべてが解決し、むしろ今後どうするかという話し合いまでされていたというのにこれはないだろう。

 

 次の話し合いではボウロロープ候の言う通り、ラナーに似た人物を探し、ある程度の地位を与えてバルブロの近くに置くか、神輿をザナックに移すかという話になるだろう。だが、今の時点でザナックに移した所で、なんだかんだ言って王の覚えがめでたいのは今の所バルブロだ。

 

 いや、案外今回の件でさすがに呆れたかもしれないが……。しかし、ボウロロープ候の言う通りラナー殿下に似た人物を探し、手駒に仕立て上げるのも悪くない。私の歳の離れた従妹(いとこ)ということにでもすればかなり道を短くできる。

 

 取り敢えず動くか……―――

 

 








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