むーたいりくと申します。
ssを書くこと自体がだいぶ久しぶり、なおかつ東方の作品を触るのは初めて。と自ら壁にぶち当たりに行くスタイルでお送りしていこうと思います笑
最後に、完全不定期での更新になるかと思いますので申し訳ございませんがご了承ください
...ん?
どこだ...ここ
自分の口から発せられた呟きは一瞬の音を鳴らし、そして何の回答が返ってくるわけでもなく木々の隙間に吸い込まれていってしまう。
目に映るのは緑一色。しかしそれは木漏れ日によってさまざまな色へと形態を変える
ここはどこかの森なのだろう。
自分は今首を曲げているわけでもない、だが今その木々の葉たちを見ているということは今、仰向けに寝ていることになる。
いや、寝ているというよりは倒れているといった方がいいのだろうか?
そんな自分の状態すらわからないほど今の状況について掴めていない。
「いや、何を俺はこの状態で考えこもうとしてるんだ...」
男は体を起こす。
「...っ」
痛みが身体のいたるところから鈍く信号として送られてくるのを感じる。
直接、ここが痛いというようなものがない。強いて言えば文字通り全部が痛いのだ。
その痛みをできる限り無視し、今度こそ身体を起こす。そして座ったままあたりを見渡す。
特別気になるようなものは見当たらない。「森」という字がぴったりくるような風景が広がっているだけだ
見るだけ「木」「木」「木」。
少なくとも見覚えのある風景ではないことは確かだ。
それになんだかこの風景を眺めている...と...
「...おい、ダメだダメだ」
混濁しそうになる意識に首を振って反発する。...しかしそれも虚しく視界はだんだんと狭くなっていく。
首を振ろうと頬を叩こうとも気休め程度、起こしていた身体が重力に引かれる。
ここで狭くなりつつある視界の隅に何か動くものを見つけた。
目を凝らしてよく見たいがここまでせかくなった視界では凝らす余地などない。
さらに人を見つけたという安心感なのか、意識が今か今かと飛び立とうとしている。
俺は『意識』に向かって大きく手を伸ばす。だがその甲斐虚しく『意識』は飛び立ってしまった。
俺の視界の最後に映ったのはこちらに向かって走ってくる何者かだった。
さっきは安心なんていったが、今考えてみれば何者かもわからない。それに加えて自分はこんな状態。不安がこみあげてくるが今となっては何もかもが手遅れだ
その考えにたどり着いた瞬間、俺は意識を失った...
『晴天』まさにその2文字がぴったりくる天気だろう
大きく伸びをすれば心地よいけだるさと共に朝の涼しさが体の熱を奪っていく
昨日までの嵐と比較してしまうせいか、いつもより増しで天気が良く感じる
「さて、さっさと終わらせちゃいましょうか」
今日はお昼くらいから魔理沙がうちに来るらしい。対して汚れもしていない境内の掃除だ、さほど時間がかかることもないだろう
「ん...?」
髪が少し強めの風になびかせられる
そして何の気なしに風の吹いてきた方、森に視界が吸い寄せられた
古くから博麗神社の脇にある森だ。特に何も変わらないいつもの森、しかしなぜか今だけはここが気になってしまう
「......」
霊夢は空に視線を向ける、日はまだそれほど高くない。今から見に行ったとしても十分間に合うだろう
「...行こうか」
相変わらず見事な森だ。自分が物心つく前からあった場所だがここはなんとも苦手な場所だった
幼いころは怖いという感情があり、成長した今となってはさすがに怖いまではないが幼いころの記憶というものは恐ろしいものでこの森はなんとなく苦手...といったところか
今回もなんとなくの直感というか好奇心というか。それがなければ行くようなことはなかった
まぁ、そんな苦手な場所であっても気になってしまうこの『何か』を確かめたいということでもあるのだが...
霊夢は一人森の中を進んでいく
上を見上げれば一面が葉の緑に覆いつくされており、一見暗がりに見えるのだが日の光が木漏れ日となり森の中を明るく照らしている
ここだけの話、霊夢以外には人気な場所でもある
自分の奥底にある恐怖のフィルターさえ外してしまえば立地的にも環境的にも静かで落ち着いた雰囲気のいい場所なんだろう。
(確かにそう考えるとここ怖くなったのっていつからだっけ...!)
そう考えに耽っていた霊夢の視界にわずかだが動く物体が映る。一瞬霊夢の体が硬直を示す
ここは神社の外とはいえ博麗が代々受け継いでいる神聖な場所だ。そう何者かが好んで立ち入るような場所ではないし、少なくとも幻想郷の住人である程度常識を有している者であらば無許可で博麗の私有地に入るような
つまり侵入者の場合、少なくとも友好的なものではないだろう...
警戒は最大限張った中でじりじりと近づいていく。朧気だったシルエットがだんだんと鮮明になっていく
「人...?って!ちょっとあんた大丈夫!?」
ある程度近づいた霊夢の視界に飛び込んできたのは倒れた青年だった
すぐに警戒を解き、駆け寄る
「脈は...ある!ちょっと、大丈夫!?聞こえたら反応して!」
弱々しくはあるが息もある。しかしこちらの呼びかけには全く応じる様子がない
服装からして近くの村人とは思われるのだがここから村へは到底近くといえるような距離ではない。果たしてそこまで持つだろうか
(いや、流石に危険ね。それだったら...ん?)
霊夢はそう結論付けるとその青年を抱え上げ、飛び上がろうとする。すると先ほどまでは影になっていて見えなかったが青年の傍らに細長く中ごろで折れている包みがあった
これもこの青年の物だろうか...一瞬そんなことが頭に流れたが今はそれどころではない
(とりあえず持って行って違ったらここに戻せばいい)
そう考え、霊夢は地面を強くけりだした。そしてその足が地面へと再び着くことはなかった
『空を飛ぶ程度の能力』それがこの幻想郷で霊夢に与えられた能力だ。
名前の通り、様々な物体から飛び上がりそのまま自由に空中を行き来できるという力だ。古くから空を飛ぶというのは人類の夢だとか人間として重力に逆らうことが...など言われているが正にこれこそが『不可能を可能にする世界』足る所以か...
とはいえ自分より重い物を運ぶ、しかも人間なんてことはまずないし、慣れないので少し飛びにくく慎重な操作が求められ、速度自体は少々遅めだ
流石に森の中を飛び回るのは至難の業なので一度森の上空まで上がる。
とても常人が到達しうる高さではないので、もしその間に目を覚ましたら...とも思ったが幸いにも目を覚ます様子は未だ無い
幸いにも今日の天気は快晴ともいえる天気だ。霊夢は上空に上がったことでもう目と鼻の先に見えている神社に飛び込む勢いで入っていった...
「気がついた?」
「...ん?」
薄く差し込んだ光に釣られ、目を開けようとすると女性の声が響く。
声の方を向くと一人の少女が自分のそばに座っていた。場所も先ほどの森からどこかの屋内に映っているようだ。
紅白の衣装に身を包んだ少女、俺の記憶が確かであれば巫女衣装だっただろうか。つまりここは神社、もしくはその近辺なんだろうか
「気失ってたみたいだけど」
「そうみたいですね、ここにはあなたが?」
俺は体を起こし、問いに答える
見た目から察するに年齢は自分と同じ...いや少し下くらいだろうか
「ええ、そうよ。あとその敬語出来ればやめてもらえる?見た感じ年下には見えないし、そもそも私が苦手なのよ。使うのも使われるのも」
「そうか、わかった。えーと...」
「私は博麗霊夢。見ての通り、ここ博麗神社の巫女よ」
「霊夢だな、よろしく」
「え...」
「え?」
俺は至極、普通な挨拶をしたつもりだったのだが当の霊夢の反応は俺の想像とは違い、驚愕といった表情を浮かべている。
「え...俺なんか変なこと言った?」
「いやいや、『博麗』って聞いて何も思わないの!?」
男は首をかしげる
「幻想郷!わかる?」
「いや、悪いが全く見当がつかない」
霊夢は大きくため息をつく
「幻想入りね」
「幻想入り?」
「ええ、説明すると...」
それから霊夢に最初言っていた『博麗』とは、幻想郷のこと。そして幻想入りに関して説明を受けた
一見、とんでもないことを言われているのはわかるがなぜか霊夢の言葉はすんなり入ってくる。
見ず知らずの人間だ。めちゃくちゃなことを言われてるんであらば疑うのが当然だろうが霊夢の言葉にはそういった疑いのかけらも感じないような説得力を感じた。
霊夢の言う、幻想郷を管理し、人々を導く存在がなせる業なのだろう。
「えーと...つまり、俺はもともと別世界の人間で何かしらの原因でその『げんそーいり』ってのをしちゃったと...」
「まぁ、そういうことなんだぜ」
「じゃあ、俺はどうしたらいいんだ?」
「そうだな...って痛っ!?」
霊夢の手がしなりを利かせ振るい、金髪が踊る
「なに、しれっと入ってきてんのよ魔理沙」
「いや、会話の流れ的に入るタイミング今しか無いかなって...」
『魔理沙』と呼ばれた少女は叩かれた頭を押さえながら霊夢と言い合いになっている
霊夢の巫女服と対称的な印象を持つ白黒な衣装に身を包んだ少女
年齢こそほぼ同じに見えるが対称的なのは衣装だけではなく、黒髪に対しての金髪、印象としても霊夢が比較的落ち着きがあるように見えるのに対して活発な印象を受ける
「それにあんたも自然な対応してるんじゃないわよ」
「いやぁ、ちょっとあまりにすんなり来たもんだから」
「はぁ、ほら魔理沙これじゃお互いよくわかんないまんまだから自己紹介しなさい」
「はいはい、お母様の言うことは聞きますよ」
「...はぁ?」
(霊夢さん目が笑ってないです...)
「ははは、じょ冗談なんだぜ...」
本当に冗談かどうかなんてことを聞くのは魔理沙の死刑宣告を決定付けるだけなので触れずにおいておこう
「さて、もうわかるとは思うが私は霧雨魔理沙だ。霊夢とはそうだな幼馴染...まぁ腐れ縁だな。一応魔法使いだなんか困ったことがあればなんでも言ってくれ安くしとくぜ」
「あぁ、よろしく魔理沙」
魔理沙との自己紹介を終える、どうやら魔理沙も霊夢と同じく敬語を嫌う人種なんだろう。そっちの方が気楽だ
「おう、そういえばお前の名前を聞いてなかったな」
「あ、そうね、私も聞いてなかったわ」
「そういえば、そうだったな。俺は...」
短い沈黙が三人を襲う。
霊夢、魔理沙の二人は頭の上に?が浮かびつつあり、当の本人は滝のような汗に襲われていた
「...ない」
「ん?」
「わから...ない...」
「「え...?」」
「名前が思い出せないってことか?」
魔理沙の問いにもうまく返答ができない
忘れてるとか思い出せないとかそういうレベルじゃない。そもそも名前なんてなかったんじゃないとすら感じる。
まるでその記憶がすっぽりを抜け落ちてしまったようなそんな感覚
「はぁ...はぁ...!」
「お、おい大丈夫か!?」
次第に呼吸が荒くなっていく。
聞いた話で人間は何か異常があったとしても自身で認識するまではその影響は半分以下らしい。しかしそれを認識してしまった瞬間からその影響を直に受けてしまう、その負担は計り知れない
戦争で片腕を失った兵士は、腕がないことに気付いてから痛みを認識するのはよく聞く話だ
しかしそれを身をもって体験するとこんな風になるのかと実感する
『名前』いやそれだけではない、それも含めた自分に関しての記憶が抜け落ちている。自分が何者なのか。それすらわからない...
驚愕、焦り、絶望...いろんな感情が中で渦巻いている。あぁ...視界も揺らいでくる
「しっかりしなさい!」
「っ!ゴホゴホ...」
急な背中からの衝撃に思わずせき込む
「れ、霊夢...」
「気にしすぎよ、記憶なんていつか戻る、全部あんた次第よ。それがこんな状態でどうするの」
「...」
「それにここは、幻想郷。不可能を可能にする世界よ。不可能なんてないわ」
気付けば俺の呼吸の乱れは収まっていた。
「...そうだな、悪い助かったわ」
唐突に背中にも魔理沙に叩かれる
「私だって手伝うぜ!」
どうやら俺はこの二人には敵わないようだ...
心はしっかりと定まった
「二人ともありがとな」
俺は立ち上がった。物理的なものだけではない、これは精神的にも俺という存在がいま立ち上がったことを証明するものだ
俺の揺らぎは収まった、ここまでくれば相当のことでは崩れない。確証はないが自信がある。
...しかし
ガタッ
「「あ...」」
再び床に突っ伏す
身体はまだ立ち上がれなかったようだ...
最後までご閲覧ありがとうございました!
久しぶりの作成だったので緊張しましたがなんとかまず投稿までもっていくことができました笑
これからも更新できるように頑張らなくては!
もし気に入っていただけましたらコメント、評価等々、かなり更新のモチベになりますのでぜひぜひよろしくお願いいたしますm(_ _)m
またもしよろしければ活動報告欄もちょこちょこと更新していこうかと思いますのでよろしくお願いします!