アニメでいうと6話あたりです。
原作の方も色々と見ながら作っていってるので原作の方が色濃く出てるかもしれないです。
これからもそのスタイルでいこうと思います
それではどうぞ
「…」
「えーと、えーと…」
車の中では軽車両なのに6人という大所帯で、かつレイとショッピングモールの生存者であった直樹美紀という女生徒との空気が悪すぎてみんな困惑していた。
「…あ、あー。由紀姉。遠足どうだった?」
「へ?う、うん!楽しかったよ!また次もやろーね!」
「はい、そうですね。めぐねえも、その時はまた助力お願いします」
「え、ええ。わかったわ」
レイは、少しでも気を紛らわそうと、話をするがみんなたどたどしい。
しかしそれもすぐ終わり、直樹美紀はすぐに眠りについた。
よほど疲れていたのだろう。
しばらくして学校に着いた。
来た道は覚えていたため行く時よりは断然早く着いた。
生存者はりーさんに背負ってもらって俺が先頭を担当し胡桃さんに殿を務めてもらう。
夜だからあんまりアイツラはいなくて、本気で駆け上がり、緊急事態にもならず安全地帯へたどり着くことができた。
そこからは流れ解散だった。
シャワーを浴びる人、ご飯を食べる人、寝る人、勉強をする人、お菓子を食べる人と様々だった。
俺はシャワーを浴びることにした。
熱いものではなく、冷水を頭からぶっかける。
多少落ち着いたとは思うがそれでもまだ生存者のことを思い出すと途端に体が震えてうまく動かなくなる。
帰ってくる時も危なかった場面が多々ある。
コンコン
「ん?」
冷水を浴び初めて十分くらい経った頃だろうか。遠くの方の扉、シャワー室の更衣室へ入るための扉がノックされた。
「レイ君、今大丈夫かしら?話したいことがあるのだけれど」
耳を澄まして聞くとりーさんだった。
「ああ、構いませんよ。あとで生徒会室行くんで待っててください」
聞こえるように、大きく喋る。
すると『わかったわ』という声と共にまた音はシャワーの音だけになる。
「っと、この傷もようやく塞がりかけてるか?ようやくかよ」
体を拭いているときに左足首をよく見ると、血が固まりかけているのがわかった。
まだベトベトしてはいるが。
今までは止血を常時施さなきゃいけなかったからまだマシになった方だろう。
拭き終わり、ジャージを着て生徒会室へ向かう。
「どうも、りーさん。ただいま見参いたしました。…っと、めぐねえも一緒とは」
生徒会室にはりーさんとめぐねえがいた。
まああの生存者と会った時から少なくともめぐねえには話さなければならないだろうと覚悟していた。
「レイ君、今日のあの生き残ってた子についてなのだけれど…」
「ええ、でしょうね。胡桃さんから聞いた、って感じですかね」
そう言うと二人とも頷く。
「…えーと、何から言えばいいのか。とりあえず先に謝っておきます。二人とも、自分のせいでみんなを危険にさせてしまってすいませんでした」
「ちょ、あれはしょうがないわよ」
「そ、そうよレイ君。レイ君は何も…」
「いえ、そうであっても体が動かなかったのは俺自身の心の弱さ故です。これからはもうないよう、精進します。…さて、前置きはこの辺でいいですね。
…二人とも、俺のここでの一年生までの過去を知っているはずです。だからなんとなく察しはついているのでは?特にめぐねえは俺の一年の頃の名簿にも目を通していたのですから」
より一層、二人の顔は深刻になる。
「あの生存者の名前は、記憶が確かなら『直樹美紀』。俺が一年の時の同じクラスの人間です。運命って面白いですね。こうまで自分に縁のある人と会うんですから」
「同じクラス、と言うことはあの子もレイ君をいじめていたの?」
「もし仮にそうなら、私はあの子を受け入れられないかもしれないわ」
めぐねえは例えそうであっても受け入れなければ、そう思っているのに対しりーさんは違うようだ。もし自分の思うような人だったら受け入れるのを拒否する。そう言う言葉だった。
「正確には違いますね。直樹美紀といつも一緒にいた人間が…確か『圭』って呼ばれてたかな。クラスメイトではなかったですが、よくそっちの圭って方の人間が俺を見るたびに、気持ち悪い、とかそんな蔑んだ目で見てましたよ。直樹美紀の方は、それを窘めつつも軽蔑してたような、よくわからないものを見る目で、可哀想だと言う目で見てたから余計印象的でしたよ。虐めるわけでもなく、助けるわけでもなく、ただ傍観する。そんな明確な意思を持っていじめてくる人間よりも気持ち悪く、そしてなぜ助けてくれないのか、という何故憐れんでいる癖して何もしないのか、俺はそんな奴が不思議でなりませんでしたよ。だけど他の奴らよりはマシだったから、そんなに憎しみを抱いてないんでしょうね。
それでも、俺の体は拒否をした。
出会った瞬間に、本能的に体が恐怖を思い出した、って言えばいいんですかね。
そんな感じになって体が動かなくなって、震えて、過呼吸になって。
胡桃さんがいなければ割とマジであの場で全滅があり得ました。
全滅とは行かなくても俺は確実に死んでいた。
みなさんを危険にさせてしまった。
守ると言っておきながら自分のことで何もできなくなってしまった。
本当にすいません」
「ちょっ、話が変わってきてるわよ⁉︎」
「そ、そうよ!レイ君は謝るようなことなんてないわよ。その…しょうがないと言うか…」
顔を上げると二人ともオロオロとしていた。
めぐねえはともかく、りーさんは珍しいな。なんというか得した気分だ。
「ただ、一つだけお願いがあります」
「「?」」
「俺をちゃんと見張ってて欲しいんです。すぐに見境なしに、怒る可能性があるんで」
「ど、どういうこと?」
「レイ君、ちゃんと説明して欲しいわ」
「はい。もし仮に直樹美紀が俺自身を馬鹿にする、軽蔑するなどをするのは、まあ構わないです。ただ、めぐねえ、由紀姉、りーさん、胡桃さんを馬鹿にするような、侮辱するようなことをしたのなら…俺は直樹美紀を許さないです。学園生活部から追い出す、または問答無用で喧嘩まで発展する可能性もあります。だから…そうなったら止めてください。俺は、皆さんのことになると見境なしになる傾向があるので」
もし仮に、めぐねえを馬鹿にした暁には、アイツらの中に放り込む、くらいはする気がする。
由紀姉を泣かしたら、それこそ他の人が(とくにりーさんが)放っておかないと思うし。
「丈槍零君」
「?」
突然めぐねえにフルネームで呼ばれる。
「貴方が過去に辛い思いをしていたのは知っています。
だから…それらを全て忘れてみんなと仲良く、今を精一杯生きて、なんてそんな事はいいません。
トラウマと向き合うのは生半可な覚悟でできるものでもありません。
だから…もし自分を見失いそうになったら、私たちを頼って欲しいの。私でも、悠里さんでも、胡桃さんでも、由紀さんでも構いません。辛いことを一人で背負わず、皆がいるということを、忘れないで。
貴方は、一人じゃない」
……ずるいです。急にそんなこと、言うなんて。
僕、何も言えなくなっちゃいます。
やっぱり慈さんは、すごいです。
僕が欲しい言葉を、いつもくれる。
そんな貴女を…僕は……
「…はいっ、わかりました。佐倉先生。本当に辛くなったら、先生を、みんなを頼ります。それじゃあ…俺はもう、寝ますね。最近夜更かしをしてるのか起きれなくなってきてるのでしっかりと生活リズムを戻さないと」
「ええ、ゆっくり休んでちょうだい」
「また明日ね、レイ君」
「はい、おやすみなさい。佐倉先生、悠里先輩」
そうして俺はベットの置いてある社会科教室へ向かった。
正直言うと、佐倉先生に最近嫉妬ばかりしている気がする。
多分それをするようになったのは、レイ君が来てから1ヶ月が立ちそうな頃からだったろうか。
すぐにレイ君を元気づけられるところや、レイ君が安堵する言葉を、欲している言葉をすぐにあげれるところ。
彼に、レイ君に愛されていること。
わかっている。これはどうしようもないエゴだ。
でも…どうしても感じてしまう。
嗚呼、もし私がずっと彼と一緒にいてあげれたのなら、と。
嗚呼、もし彼が私を好いてくれたなら、と。
嗚呼、もしこの世界に私と彼の二人だけだったなら、と。
…わかっている。これは、私のなかの、ドス黒い
結局のところ、私も愚かな人間なのだと思う。
そうだ、そんなことを考えるくらいなら、もっと他のことを考えなければ…。
〜次の日〜
「zzz…」
時は午前7時。
場所は社会科準備室。
この場には一人しかいない。
「…レイ君、まだ寝てるわね」
「昨日、一昨日と一番働いたのはレイだからな。多少はしょうがないさ」
「でも…ここ最近、レイ君の眠る時間が増えていっているのよね…」
その様子をそっと覗いていた悠里と胡桃はそう呟く。
とくに悠里はレイの体のことを知っていたからかレイの眠る時間が長くなってきているのを心配していた。
「そういえば、えーと…直樹美紀、だっけ。あっちの方はどうしたんだ?」
「めぐねえと由紀ちゃんが行ってくれているわ。めぐねえがいるから大丈夫だとは思うけれど…」
由紀は新入部員が入ると喜び、とてもはしゃぎながら早起きをしめぐねえを引き連れて直樹美紀の元へ行っていた。
「ん…。……ふぁあ…」
そうしているとレイがもぞもぞと動き出した。
半目で起き上がり、しばらくその場でじっとしていた。
そして何かを思い出したかのように時計を見、慌てて準備をし始めた。
着替えを始めたあたりから二人は慌てて視線を外し扉の外で待っていたが。
「ふふっ…レイがあんなに慌てんのは珍しいな」
「そうね。ちょっと得した気分だわ。由紀ちゃんやめぐねえの知らないレイ君を知ってるもの」
部屋の中からドタバタと聞こえてきてしばらくすると落ち着いた。
すると教室の扉が開く。
「「おはよう」」
「…おはよう、ございます」
レイはすぐ外にいた二人に驚きながらも挨拶を返す。
それを見て二人はくすくすと笑っていた。
レイは何が何だかわからず、釣られて笑っていた。
「さあ、ご飯にしましょう。もう準備はできてるわよ」
「申し訳ないです。…最近、起きれなくなっていってるなぁ…」
「疲れすぎてんだよ。レイは働き過ぎなんだっつーの。もう少し要領よくやったらどうだ?」
「みんなの命がかかっているのに、手を抜くわけにはいかないですよ」
「ふふ、そう言うところもレイ君らしいわね」
こうして3人は生徒会室へ向かった。
「お、今日の朝ごはんは豪華ですね」
生徒会室の机には珍しく缶詰が並んでいた。
まさによりどりみどり、といった具合だ。
「ふふ、遠足で胡桃が頑張ってくれたからね」
「ま、代わりに太郎丸もついてきたけどな」
「この世の中でこんなものを食べれるだけ恵まれてますよ。それじゃあ…この煮物で」
その中から一つ、魚の煮物の缶詰を取る。
「そういや、由紀姉達は?」
「二人とも美紀さんのところへ行っているわよ。なんでも、由紀ちゃんが新入部員に迎えたいって」
「珍しく由紀が張り切ってんだよな。相変わらず自分の好きな事になったら行動が早いと言うかエネルギーが大量に生まれると言うか」
「「確かに」」
胡桃さんの言葉に共に頷く。
「ふう、ごちそうさまでした」
「ごっそさーん」
「ごちそうさま」
魚の煮物を食べ終わり缶詰を燃えないゴミの袋に。割り箸は燃えるゴミへ入れる。
「それじゃあ…私は美紀さんのところへ行ってみるわ。何があるか分からないだろうし」
「あ、それなら俺も行きます。めぐねえいるから大丈夫だとは思いますけど…一応、念のため」
「それならあたしも行くよ」
と、結局3人で行く事になった。
ついでに太郎丸も、な。話に出てはいなかったがドックフードを元気に食べていたよ。相変わらず俺が近づくと威嚇するけどなっ!(泣)
「ん…あれ、開きっぱなしね」
「ほんとだ。めぐねえが付いていながら珍しい」
「おーい、由紀ー。開けっ放しだぞー」
由紀姉達が行ったという教室へ向かうも、そこは廊下からでもわかるほど扉が全開になっていた。
それを咎めようとりーさん達と近づくとそこには
誰もいなかった。
由紀姉も、めぐねえも、直樹美紀も。
もし万が一、直樹美紀があの二人に何かをしたのなら…
と、思ったあたりで肩をポンと叩かれる。
「落ち着いてレイ君」
「これくらいで感情的になるな。由紀だけならともかく、めぐねえもいるんだ。滅多な事は起きねえよ」
「そう…ですね。すいません」
どうやら無意識のうちに手に力を入れていたらしい。
握っていた手をゆっくりと息を吐きながら開く。
「…探しに行きましょう」
「ええそうね。一旦みんなで自己紹介もしないといけないし」
「あとは単純に由紀が危なっかしい」
「確かに」
胡桃さんの言い分は何一つ間違ってなくて、思わずりーさんと共に笑ってしまう。
「近くの教室から探してみましょう」
「イエッサー」
「おう」
「由紀!」
「いた…。はーびっくりした」
「よかったわ。無事で」
それからというものの、行く先行く先で居た痕跡はあるのに居ないから段々と焦って、しまいには3人で走って探していた。
そして音楽室にて由紀姉、めぐねえ、直樹美紀を見つけた。
そこでは由紀姉が何かを説明していたところ、らしい。
「あ、みんなー。どしたの?」
「どしたの?、じゃねえ…。本気で心配した……。あ、あー。由紀姉、時間大丈夫?もうそろそろ授業だよ?」
「あ、ほんとだ!急がなきゃ!いこ、めぐねえ!」
「めぐねえじゃなくて、佐倉先生…。…四人とも、仲良く、ね」
めぐねえに念を押され、特に俺を心配そうな目で見ながら、俺は大丈夫と同じく目で伝えたらめぐねえは心配そうにしながらも由紀姉を教室へ連れて行った。
「それじゃあここで話すのも疲れるでしょうし、部室へ行きましょうか」
「賛成」
「そうだな」
〜生徒会室〜
「私たちはあの日、屋上にいて、それで助かったの」
「上の階ほど安全ですものね」
「まあ色々あったけどな」
生徒会室では部員3人による美紀への説明が行われていた。レイのみは必要最低限のことのみしか喋りたがらなかったが。
「それで学園生活部とはなんですか?」
「落ち着いた頃にめぐねえとりーさんが考えたんだよな」
「そうね、毎日ただ暮らすのも気が滅入るから、いっそ部活の合宿ってことにしましょうってね」
「…もう一つ、質問いいですか?」
「何かしら?」
部活の説明が終わり、それでもなお疑問の尽きない美紀は質問を続ける。
「由紀先輩が…まるでみんな生きてるように振舞っているのは…どうして」
それを美紀が聞いた瞬間、3人の顔が険しくなった。
それもわずかな時間のことで、すぐに3人とも戻したが。
「由紀には、他のみんなは見えてるんだ」
「オカルト的な話ですか?」
「いや、そうじゃなくて…」
「部活を始めてからしばらくした頃かしら」
「それまですげー落ち込んでた由紀が元気になってさ。安心してたんだ。そしたら…元気になり過ぎた、っていうか…」
「あの子の中では事件は起きてないの。学校は平和で。先生も生徒もいっぱいいて」
「…そうなんですか」
「最初はたまにそんな風になる感じだったんだけど…。確か、レイ君がこの部活に入った頃だったかしら。その頃から…ずっと」
これはレイも初めて知った情報だった。が…レイ自身由紀の活発さに励まされていたこともあり、状態が良くないことは悟っていたが強く言えなかった。流されていた。が、それの直接的とは言えなくても原因の一つに自分が含まれていると分かり難しい顔をしていた。
「早く治るといいですね…」
「治る…?ふざけたことを。由紀姉の事を、何も知らない癖に…」
美紀の言葉には何も悪気はないだろう。むしろ善意しかない。が、3人、特にレイにとってはそれは侮辱としか聞こえなかった。それに怒ってレイが何かを言いかけた途端に遮るように悠里が言う。
「美紀さん、お願いがあるんだけど…いいかしら?」
「なんですか?」
「ここにいる間、あの子の様子に合わせてくれないかしら?」
「それじゃあ、そう甘やかしてたら、いつまでたっても治らないじゃないですか!」
「治るとか…なおらないとか……そう言うものじゃないのよ」
「まだ、お前には何もわからないだろ。由紀姉と、どれだけ過ごした?たった数時間。それで由紀姉の全てを分かったつもりか?傲慢にもほどがある。お前の感性で、由紀姉を、捻じ曲げようとするんじゃねえ」
「っ、どう違うって言うんですか。丈槍零、貴方こそ、貴方たちこそ、自分の理想がいまの由紀先輩だから、今の由紀先輩と一緒にいて楽だから、ほったらかしにしていたんじゃないの?このままじゃ、ダメなことくらいわかるでしょう?」
レイの言葉に、美紀はすかさず反論した。
由紀のことを本気で考えてるからこその言葉なのだろうが…それでも学園生活部として由紀とずっと過ごしてきた3人からしたら看過できないものだった。
「別にダメじゃないだろ」
「由紀ちゃんは学園生活部に欠かせない子よ。楽しいこといっぱい思いついてくれるから私もくるみも、レイ君もめぐねえも助かってる。それじゃダメ?」
「もっかい言うぞ、直樹美紀。お前は由紀姉のことをどれだけ知ってる?お前はまだ、由紀姉の事を全く知らないだろ。由紀姉のおかげで、俺たちがどれだけ助かっているか」
「それを甘やかしてるって言うんですよ」
「「…」」
悠里と胡桃はそれに押し黙った。言いたいことはあるが、まだ我慢をしているようだった。
「それにそんなのは…
ただの共依存じゃないですか」
「っ!お前なぁ…」
真っ先に動いたのはレイだった。立ち上がり邪魔な椅子を蹴飛ばし、美紀の胸ぐらを掴む。
「落ち着け!レイ!」
「私、何か間違ったこと言ってる?」
胸ぐらを掴まれても一切怖気付かず、レイをにらみ、レイも睨み返す。慌てて胡桃が止めに入るも一触即発は変わらなかった。なんとか胡桃と悠里がなだめて二人とも再度席についた。
「…直樹美紀、お前はなんだ?自分が絶対的な価値観を持ってるとかそう思ってるやつか?」
「何を…」
「お前は由紀姉に何をどうなってほしいわけだ?別に由紀姉があの状態だからってお前に迷惑をかけるわけじゃねえだろ。ならなんで無理に変えようとする」
「私は、普通に戻ってほしいだけ。あんな幻想に取り憑かれたかのようになっている由紀先輩より、本来の由紀先輩と仲良くなりたい」
「普通ねぇ…。
なぁ、直樹美紀。
それを言われて淀みなく反論していた美紀の口は止まった。
「普通ってのは、
「違う!」
「じゃあどうしてだ?いくら人がどれだけ変わろうとも、その人はその人だ。それ以上でもそれ以下でもない。そもそも、人というものに、性格に、感情に普通という言葉を当てはめる事自体が間違ってる。由紀姉は確かに変わっただろうな。俺が初めてあった頃よりもっと活発になってる。でもそれでもそれは由紀姉だ。その人となりってのは他人が決めつけるものじゃない。その人自身が決めるものだ。お前がやろうとしてるのはお前にとっての違和感のない、自分の理想の型に、由紀姉をねじ込もうとしてるだけだ。
そんなもの…俺が許さねえ」
「じゃあ、由紀先輩がいつか壊れたとしても、それは由紀先輩のせいだと、自分は関係ないと言い張るわけ?断言できる。由紀先輩の症状は、いつか由紀先輩自身を壊す。そうなると取り返しがつかなくなる」
「そうならない為に、俺が、りーさんが、くるみさんが、めぐねえがいるんだよ」
そして両者は再度睨み合う。
それが10秒ほど続いたくらいだ。
「はい、一旦終わり。レイ、落ち着け」
「美紀さんも、レイ君疲れすぎてて気が立ってるから、このことはまた後日話し合いましょう」
「はい。由紀先輩のことをきちんと知ってから。…で、いいんですよね?」
そうしてこの場での話し合いは一度終わった。以前空気は悪いままではあるが。
「…そういや、なんだっけか、お前の親友だがなんだかは」
「え?」
「確か…圭、って呼んでたっけか?あいつはどうしたよ。いつも一緒にいただろ。お前ら。それでよく圭の方は俺を蔑んだ目で見てたっけな」
レイが皮肉を交えてそういうと美紀は苦い顔をした。
「やっはり…覚えてるんだ」
「ああ、生憎記憶力はいい方なんでね。俺を蔑んでたやつらは、一度目があった奴は全員覚えてるよ。よく圭って奴にも気持ち悪いって吐き捨てられてたっけな。お前のいないところだと俺のクラスのやつと一緒になって直接的にやってきたのはよく覚えてるよ」
「圭はそんなことしない!」
「だが事実だ。俺は、やられたことは忘れない。万が一圭がいたら本気で見捨てるつもりまであったが…圭はどしたよ。まさか見捨てたか?」
嘲笑うようにレイが言う。
単なる推測ではあったが、それは美紀の心には突き刺さったようだ。
「お、図星か?その様子だと、圭が一人で先走って安全な場所から出ていった、って所か。それを止めるわけでもなくついて行くわけでもなくただ傍観してた。そんな所だろ」
「っ!」
それによって今度は美紀が手を挙げた。
レイの胸ぐらをつかみ、いつでも殴れる、といった感じになっていた。
「お前は、親友を、見捨てたんだよ。直樹美紀。
圭は、親友のお前が殺したも同然だ。見殺しにしたんだ。わかるか?お前はな…」
「レイ君!」
さっきからずっと横で悠里たちに叫ばれていたことにようやく気付いたレイがハッとなった。
「…すまねえな、言いすぎた」
そしてばつが悪そうにして小さく言う。
「…ちと、頭冷やしてきます。屋上で…何か作業しておきます」
「あたしも行くよ。りーさん。美紀と一緒にいてくれるか?」
「ええ、わかったわ」
レイと胡桃は屋上へ向かい、悠里と美紀はこの場に残った。
「…ねえ、美紀さん。一つだけ、聞いてもいいかしら?」
「はい…なんでしょうか」
「レイ君は、嫌い?」
悠里の質問に、あまりの直球な質問に、一瞬驚きながらも美紀は口を開く。
「好きか嫌いか…で言えば、今は嫌い、です。でも…それは私が何も知らないから。…先ほど言われたこと、全部彼の言う通りです。私は…親友を、見捨てた。それを認めたくなくて……私が目をそらしていたことを全部言ってきて、それで私が逆上した。…由紀先輩のことはともかく、私のことは、全部彼が正しいのに。それを認めたくなかっただけなんです。だから…
これからは仲良くなれるよう精一杯頑張ります」
「そうね。そうしてもらえると嬉しいわ。
…私もね、美紀さんと同じよ」
「私と?」
「美紀さんのお友達の圭さんと別れた時はどんな風だったのかわからないけれど…。
私は、一度大事な人を、見捨てようとした」
「え?」
悠里の言葉に、美紀は思わず聞き返した。今まで話していた感じでは悠里がそんなことをするとは思わなかったからだ。
「ある雨の日にね。まだアイツラの特徴とか何もわかってない頃だったわ。アイツラが大量に校舎の中に雪崩れ込んできた時があったの。
なんとか頑張って逃げてたのだけれど…途中でどうしても追いつかれそうで…。そんな時に、めぐねえは自身を犠牲にして私たちを助けようとしてくれた。
…あの日、もし私も武器を手に取っていたなら、もっと判断をしっかりできていれば。
…めぐねえに甘えて、自分たちだけ助かろう。なんてそんな考えは思い浮かばなかったと思うわ。
…今でも、その判断をしかけたことを、私は悔やんでる。罪悪感で押しつぶされそうな時があるの。
でも…そんな私たちを助けたのは、レイ君だった。レイ君がいなければ、きっとめぐねえも、私も、胡桃も、由紀ちゃんもいない。もちろん、美紀さんとも出会えなかったかもしれない。レイ君はね、私の、私たちの命の恩人なの。それに、私だけじゃない。胡桃も、めぐねえも、レイ君も、…もちろん由紀ちゃんも、みんな過去に傷を背負っている。見捨てた、とはまた違うけれど、みんな大事な人を、目の前で失っている。だから…すぐに仲良く、仲直りをしてとは言わないわ。ゆっくりと、時間をかけてみんなと仲良くしてちょうだい」
「…はい。…そうですね。それではまず初めに…レイに謝りに行きます」
「ええ、わかったわ。私も一緒に行くわ。きっとレイ君、過去のことが絡んだらまた見境なしになっちゃうかもしれないし。その時は私も一緒に止めないと」
「…お願い、します」
感想にもあったのですが(くれた方、ありがとうございます)
危なっかしい、ヤンデレ?、愛がやばい、やばそうと感想をもらいました。
ヤンデレ…はまあ置いときましてそれ以外はもろ当てはまってますね。
そしてめぐねえは可愛い、天使。やっぱりこれは共通の真理なんですね(ドヤァ)
そして少なからず自分と同じ境遇な人いて嬉しくも思ってます。
さて次は体育祭編ですね。頑張ります
読んでくださりありがとうございます