めぐねえが好きです!   作:アテナ(紀野感無)

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1ヶ月ぶりです
すいません ほか執筆なり部活の方なりと忙しかったので書ききれませんでした
あとは、ネタがあまりいい方向に固まらなかったので

手探りの中書いたのでいつもより拙いかも


それではどうぞ


10話 弱音

〜屋上〜

 

「…ねえ、胡桃さん」

「どうした?」

 

あれから気まずくなり、屋上へ逃げた。

 

菜園の整備をチマチマとやっていると途中から胡桃さんがやってきて手伝ってくれた。

 

その途中に、ふと訪ねてみた。

 

「…俺たちは、由紀さんに……由紀姉に、依存しすぎていたんでしょうか」

 

「そーだな。間違ってはない」

 

「由紀姉は…多分多重人格のような、ものだと思います…。もしくは自分の嫌なものが見えてないだけか。……でも、それでも周りを楽しませてくれる。そんな由紀姉に…俺たちは、みんな、依存していたんですかね。心地が、いいから」

 

「間違ってはないな。学園生活部の誰もが、あたしも、りーさんも、めぐねえも、由紀に励まされ続けてきた。だから状態が間違っても完全に良いとは言えないことがわかっていてもそれを強く指摘しなかった。でもな、仮にだ。ここにいる全員がみんなドヨーーンとして、もうこれから先はもう終わりだ、みたいな気持ちでいたらきっと、もうあたしたちはここにはいない」

 

「……」

 

「よく部活の練習や大会でも言われたんだけどな。『自分の辛いことを周りに共感させるな。共感させるなら、前向きなものだけにしろ。感情は思っている以上に伝染するものだ。なら周りが前向きなら自然と周りも前向きになって自然といい方向に進む』ってな。きっとそれをしてくれているのが今の由紀だ」

 

「でも、それでも由紀姉の症状は…状態は、良いとは言えない」

 

「悪いとも言えないだろ」

 

「でも…っ!もし、俺の、俺たちのせいで由紀姉が壊れたら…」

 

「壊れないかもしれないだろ。むしろしばらくしたら治るかもしれない」

 

「…俺たちは、専門家じゃないんですよ。もしこれで、由紀姉が…」

 

「確かにな。あたしの言ってることはただの希望的観測ですごい楽観的な考えだ。でも、それで不確定な要素を、不安な要素を増やすくらいなら、前向きにみといたほうがいい。由紀のことは、それについての専門的な人が生き残ってた時に考えたほうがいいんじゃねえか?それか、あたしらが完全に安全だって言えるまで」

 

「…」

 

「な?わかったろ。結局どこまで話しても『たられば』の域を出ない。平行線から脱せない。

 

あたしらは専門家じゃない。

 

私たちが余計なことをして由紀が余計に変になったらそれこそ大変だろ?だから、今は現状維持。それでいいんじゃねえか?」

 

「…はい」

 

たしかに、胡桃さんの言う通りずっと話は平行線だった。

 

由紀姉はいい状態に今後なるとも言えるしならないとも言える。

 

医者でもない俺たちがわかるわけがない。

 

「…そういえば、図書館にそういう人格系の本があったような…。今度見に行ってみるか…」

「うへぇ、また難しそうな本を読もうとしてんのか。相変わらずだな」

 

ついでに心理学とかもやってみようかな。なんだかんだ面白そうなんだよな。あの辺の本。

 

 

ガチャ

 

 

「「?」」

 

「レイ君、くるみ。調子はどう?」

「…どうも」

 

「おう、平気だよ。黙々と作業をしてたくらいだ」

 

現れたのはりーさんと直樹美紀だった。

 

「りーさん、先程は取り乱してしまってすいませんでした」

 

「良いわよ。ケンカしなかっただけ。ただ…次から気をつけてね?」

 

「はい。…直樹美紀も、すまなかったな」

 

「いや…私も、ごめん。配慮が、足りなかった。少なくともみなさんは今の由紀先輩に助けられているのに、その全てを否定したかのような言い方だった。先輩方も、すいませんでした」

 

「別にいーよ。もう気にしてない」

「私も、次このようなことがなければいいわよ」

 

「…ただ、一つだけ」

 

「「「?」」」

 

最後に一つだけ、どうしても言いたいことが、あった。

 

 

「直樹美紀、まちがっても、めぐねえを…慈さんを、悲しませるな、辛くさせるな。あの人は、ずっと、一人で、独りで、俺たちを、僕たちを助けてくれた。だから…これ以上めぐねえを、辛くさせたり、バカにしたり、貶すな。もし約束を(たが)えたら、俺は…

 

お前を許さない

 

「え?」「レイ…?」「レイ…君?」

 

「っ⁉︎俺…今、何を…」

 

 

今、俺は、何を喋った?何を…

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

思わず自分の口を覆うようにして口がちゃんと動くかどうか確かめてみるが、ちゃんと動く。声も出る。

 

 

「レイ君。貴方一旦休みましょう。疲れすぎてるわよ」

「そ、そうだぜレイ。呂律が回ってなさすぎだ」

 

「…はい」

 

「ね、ねぇ。待ってレイ。貴方…!」

 

「ちょっと、先に下行ってます」

 

美紀に何かを言われていたがそれを無視して屋上から出る。そしてそのまま社会科準備室へ、寝室へ向かう。

 

 

…クソッ、遠足の日から俺らしくもねえ。何してんだ…。

 

 

 

 

「な、なぁ。りーさん。レイのあの言葉…。どっかで聞いたことが…いや、絶対に、あるんだけど…」

「ええ、私もよ。むしろ…毎日その声しか、私たち以外には、しないわね」

 

「待てよ!それって…レイが……レイが()()()()()()()()()()()⁉︎」

 

胡桃が悲痛な叫びをあげる。

それもそうだ。信じたくない可能性が浮上してきたのだから。

 

「でも、今のレイ君は…アイツラのようにはなってないわ」

 

「噛まれてたりは、してないんですか?」

 

「…」

 

美紀の疑問は当然だった。

感染している可能性があるならば、噛まれているのを見るのが妥当だ。

だが、それに対して悠里は黙った。

 

「なあ、りーさん。何か知ってるのか?」

 

「私は…何も、知らないわ」

 

「本当ですか?」

 

「本当よ」

 

胡桃と美紀が隠し事がないかと問い詰めるも、悠里は何も知らないと突っぱねた。

 

「なら、レイ君に、聞いてみればいいじゃない。きっと…何かあれば、教えてくれるわ」

 

「…ああ」

「わかり…ました」

 

胡桃、悠里、美紀の3人は下に降りていったレイの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「あ!みんな!……あれ?りーさんも胡桃ちゃんもみーくんもどうしたんだろう?」

 

「本当ね…何かあったのかしら…?」

 

生徒会室の横を通り過ぎた3人を部屋の中から由紀と慈が目撃していた。

由紀は仲良くなったねーと気楽なことを言っているが慈は3人の顔が険しいのを見て不安を抱いていた。

 

「ちょっと待っててね、由紀ちゃん。先生、悠里さん達のところに行ってくるわ」

 

「私もいく!」

 

「由紀ちゃんは、みんなを楽しませることを思いついたのよね?」

 

「うん!だからみんなにも…」

 

「だからね、サプライズで明日の朝ごはんの時に伝えましょう。そのために、由紀ちゃん、今日は普通に過ごしましょう?」

 

「…うん!わかった!」

 

そして慈は生徒会室を出て3人の元へ向かった。

 

 

 

「みんな!」

 

「佐倉先生?」「めぐねえ?どうしたんだ?」「佐倉慈…先生」

 

「その…みんなが険しい顔で通って行く姿を見て……どうしたの?」

 

3人の元へたどり着くと、どうやら寝室で使っている社会科準備室へ来たようだった。案内をしていた、というわけでもなさそうだった。

 

「ねえ、めぐねえはレイのこと、何か知らないですか?」

 

「レイ君のこと…?何かあったの?」

 

「今日、あいつ…変な声を、出したんです」

 

「変な声?」

 

「なんというか…()()()()()()()()()を」

 

「え⁉︎」

 

言われた言葉を理解するのにはそう時間はかからなかった。

ここで私たち以外で生き物(?)は一種類しかいないから。

 

「待って…もしかして、レイ君が…?いや、噛まれたなんて…言ってないわ。何かの聞き間違いじゃ…」

 

「いや、絶対に聞き間違いじゃない」

「本当です。私も聞きました」

 

どうか聞き間違いであってほしい、そう思って聞いてみたが胡桃さんと美紀さんに否定された。

悠里さんだけ、黙ったままだった。

 

「まずは、レイ君本人に聞いてみて、確かめようって思ったんです。だから…」

 

「今レイくんは、寝てるの?」

 

「はい。下へ行くって。それで場所は部室かここくらいしか…」

 

「…先生も、一緒にいても、いいかしら?」

 

「はい」「勿論です」「佐倉先生もいてくれた方が、心強いです」

 

申し出ると3人とも快く受け入れてくれた。

 

 

その安心感とは裏腹に、ずっと悪い想像が頭から離れなかった。

 

 

「レイ君。いる?」

 

コンコンと社会科準備室をノックする。

けど返ってきたのは沈黙だった。

 

「レイ君?」

 

再度声をかけるも返事はなかった。

 

「レイ君、入るわね?」

 

扉に手をかけ、開ける。

 

 

「レイ君⁉︎何してるの⁉︎」「ちょっ、レイ⁉︎」「レイ君⁉︎」「レイ⁉︎」

 

そこで見たのは

 

 

()()()()()()()()()()()()レイ君だった。

 

慌ててみんなで近寄り、レイ君の体を引っ張った。

 

 

「うわっ⁉︎ちょっ、待って待って!違うから!違うから!飛び降りようとか自殺しようとかそんなんじゃないから!ちょっとですね!あっ、話を聞いて⁉︎あぶっ、逆に危ないから!ちょっと待って⁉︎」

 

何かを言っていたが問答無用で引っ張って部屋まで引きずり込んだ。

 

 

 

 

「「「「はぁ、はぁ…」」」」

 

「いや、なんかすいません」

 

レイ君はすごいバツが悪そうな顔でその場に座っている。

 

「な、何をしてたの…レイ君」

 

「い、いや。だからですね…あの…あちらをご覧ください」

 

レイ君が指差した方向には、いい具合にガラスの破片や色々なゴミが溜まっていて、その中央にスズメが怯えた状態でいた。

 

「よっ…」

 

そして、再度レイ君は窓から身を乗り出し-----気づかなかったがちゃんとロープで腰を縛り、それで命綱にした状態で-----スズメのいる方へ手を伸ばし始めた。

 

「ギリギリ手が届きそうだから、それなら助けようって思いまして。それで…ほら、大丈夫大丈夫…、…よし。ほら、もう大丈夫」

 

レイ君は器用に窓の外壁を伝ってスズメのところへたどり着き、救助して空へ放した。

終始、落ちるんじゃ無いかと不安で仕方なかったが戻ってきてようやくその不安は消えてくれた。

 

「それで、皆さんどうされました?…っても、心当たりしかないんですけどね」

 

そういうレイ君の表情を見て、私はどうしても、聞きたくなかった。

 

でも、聞かなきゃならない。

 

「屋上で、俺が発した声。俺すら驚きました。…もう、あまり、時間がないのかも。なんて俺らしくもない考えに至ってますよ」

 

耳を塞ぎたい。ここから先のことを、聞きたくない。

 

「…嘘ですよ。めぐねえ。自分の体は自分が一番わかってます。まだまだ、現役です。全然動けます。だから…そんな顔をしないでください。慈さん。貴女が辛い(そんな)顔をしていると、僕まで辛くなってしまいます。貴女は…僕の…いや。これ以上はやめておきましょう。単なる惚気になっちゃいそうです」

 

そう言ってレイ君は微笑む。

 

 

…ああ、そうだ。いつもこの子の笑顔に助けられてる。

先生としてやっていけるのか不安になった時も、レイ君にいつも励まされていた。

 

両親や友達すら先生に向いていないって言われたのに、レイ君だけが、ずっと先生に向いてるって言って励ましてくれていた。

 

 

でも、今は…だめだ、この笑顔に甘えて、目の前のことから逃げたら、それこそ教師としてでも、人としてでもダメになってしまう。

 

 

「レイ。一つだけ聞かせてくれ。お前の出したあの声は、なんなんだ?」

 

「まあ、当然の疑問ですね。俺にも詳しいことわかりませんが…一つだけ、心当たりがあります。

 

…その前に、皆さんに、一つだけ質問です」

 

「「「?」」」

 

 

「皆さんは、覚悟がありますか。他人を、見捨て、切り捨てる覚悟が」

 

 

直感で、理解をしてしまった。

 

ああ、嫌だ。聞きたくない…。

 

 

「どういうことだ?」

 

「ええ、より具体的に言いますと、不確定要素な俺を、見捨てる覚悟が、もしくは殺す覚悟がありますか、ってことです」

 

「は?何言ってんだよ。レイ」

 

「ええ、単純ですよ。…ただ、その前に…」

 

そういってレイ君は窓に腰かけた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…そういえば、由紀姉は?」

 

「由紀ちゃんは、部室で待ってもらってるわ。職員会議があるから、って言ってあるからしばらく戻らなくても大丈夫だと思うわ」

 

「そうですか。…よかった。由紀姉には、余計な心配をかけたくないですから。

 

さて、ここからは気を確かに、してくださいね」

 

 

そしてレイ君は、ゆっくりと、左足の靴と靴下を脱いだ。

 

 

「⁉︎」「レイ…それ…」「やっぱり…」

 

 

左足首(そこ)にあったのは、明らかな咬み傷。

悪い予感は、的中した。

 

 

「ええ、俺はアイツラに噛まれています。そして、感染した。まだ俺が学園生活部に入る前にいた、地下での出来事です。話したら長くなっちゃいますが、まあ聞いてくださいね?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「「「……」」」

 

「以上が、俺があの日から地下で過ごし、学園生活部に入るまでの全容です」

 

レイ君の口から、全てを聞いた。

 

何があったのかを。それにより何が起きたのかを。

 

「これ以上、隠していることは、慈さんに誓って、ありません。俺、慈さんと母さんだけには嘘をついたことがないのは、知ってますよね?」

 

そうだ。だからこそ、今聞いたことは紛れもなく本当なんだと、理解できる。

感染している、というのも。

 

「俺は、皆さんが俺を追い出す、と結論付けたならば従います。なんなら今決めてもらっても構いません。その時は、ここから俺は飛び降りるだけなので。でも、俺自身もまだ生きる理由があるので。できれば追い出して欲しくはない、ですね」

 

「理由?」

 

「とぼけないでくださいよ。りーさん。分かりきっているというのに」

 

悠里さんとレイ君が話すが、何のことなのかわからない。

 

理由…?

 

「まあ、ひとまずそれは置いときましょうか。俺が学園生活部にいる上でのメリットは○つあります。

一つ目は、労働力として使い捨てれること。ほとんど疲れませんから、いくらでも動けます。

二つ目は、食料の節約になること。俺は空腹感があるだけで、ほとんど飲まず食わずでも生きていけています。一食、乾パン1〜2個、水少量あれば数日は何も口にしなくても大丈夫です。

三つ目は、()()()()()()()()()()()。もし仮に、他に生きている人がいて、その人達と争いになったときに、俺は薬の在り処などとわかっていますから、それで争いを止めれる可能性も高いです。さらには、もしこの事件を解決しようとしている組織がいれば、俺は貴重な回復例として、つまりは皆さんの安全性を確保するための交渉源と成り得ます」

 

「待って、レイ君。それって…

 

いざという時にはならレイ君を犠牲にして生き延びろ、ってこと?」

 

私は、レイ君の言ってることを理解してしまった。

だから、それが間違っていてほしいと思い、聞いてしまった。

 

間違っているわけなんて、ないのに。

 

 

「はい。正解です慈さん。いざという時には、ですけどね。俺は、まだ死ぬつもりなんて一切ないです。何も、したいことをできてませんしね。ただ、切り捨てる(そういう)選択肢もある、ということだけ思ってくれていたらいいです。

…長くなっちゃいましたね。そろそろ部室戻りませんか?由紀姉、きっと待ちくたびれてますし」

 

レイ君の言葉で、足取りは重くともみんなで部室へ戻った。

 

 

あしたから…どうやって、接すればいいんだろう…。

 

 

 

 

 

 

ああ、また、嘘をついた。

慈さんにだけは、嘘はつかない。

そう決めていたのに。

 

避けられるのが、怖がられるのが、軽蔑されるのが怖くて、嘘をついた。

 

相変わらず、僕は、俺は、卑怯者だ。

 

そんな俺に、僕に、学園生活部にいていい資格なんて、あるのだろうか?

 

最近はネガティブなことばかりを考えている気がする。

 

 

…嗚呼、でも…慈さんへの気持ちだけは、ちゃんと伝え切りたいな。

 

 

 

 

 

 

〜就寝時間が過ぎた頃〜

 

「…」

 

思わず、目が覚めてしまった。

夢を、久しぶりに見たから。

 

いや、悪夢だ。

俺以外のみんなが、いなくなって、血まみれで、倒れている。

そんな冗談ですまないような、夢。

 

呼吸が荒くなって、汗もすごいかいている。

 

「…いやいや、そんなことは、ありえねえだろ。てか、絶対にさせねえ。絶対に…だ」

 

「ん…レー君?どうしたの…?」

 

頑張って自分の気力を保っていると由紀姉が目を覚ましてしまった。

想像以上にうるさかったらしい。

 

「…ちょうどよかった。由紀姉。ちょっと外に…夜風に当たりたいんだけどさ、付き合ってくれない?」

 

「ふぇ…?でも、めぐねえに怒られるんじゃ…」

 

「大丈夫。すぐに終わるから…。だめ…かな?」

 

「わかった〜ちょっとだけ待ってね〜」

 

由紀姉は寝ぼけながらも承諾してくれた。

そしてノソノソと動き出して、立ち上がった。

 

俺は椅子を二つ持ち出して外へ出る。

 

 

 

 

「わぁ…!綺麗だね!」

 

「…ええ、そうです…ね」

 

由紀姉と廊下の窓の前に座り、そんなことを言い合う。

 

…きっと、由紀姉には単なる綺麗な街並みと、綺麗な夜空が見えてるんだろう。

 

「…夜風が、涼しくて、いい気持ちだな…。久しぶりに、落ち着けてる気がする」

 

悲惨な光景とは裏腹に、夜風は優しく通り過ぎてくれてすごい涼しい。

 

「ねぇ…レー君、今日どうしたの?」

 

「え?」

 

突然由紀姉にそう聞かれた。

 

「今日、レー君凄い…疲れてるというか、いつものレー君じゃない感じ?辛そう…?なのかな?」

 

どうやら…隠し事は、下手らしい。

相変わらず、顔に出やすいのかな。

 

でも、心のどこかで期待をしていたのかもしれない

 

由紀さんなら、慰めてくれるんじゃないのかって。

甘えてるのかもしれない。

 

 

でも…。

 

 

ちょっとくらい、弱音を…吐いても、いいのかな?

俺が、そんなことをしてもいい資格なんて、あるのかな?

 

「…」

「由紀…姉?」

 

言っていいのか悩んでいると由紀姉に顔を持たれて由紀姉の方に引き寄せられた。

そしてそのまま由紀姉の足の上に寝る形になった。

 

「由紀姉?どうしたの?」

 

「大丈夫だよ。レー君。私だけしか、聞いてないから。今だけなら、いくらでも弱音を吐いてもいいよ。大丈夫。全部、私が受け止めてあげるから。いつもレー君は頑張ってくれてるから。ちょっとくらいは弱音を吐いたほうがいいよ。辛いことを我慢し続けたら、辛いもん」

 

そう言う由紀姉の声は、すごい優しくて、包み込んでくれそうな、そのような感じがして、それと同時に今までのことを思って、弱音を吐いてもいいのか、と思い急に、涙が溢れそうになった。けど、頑張って堪えた。

 

「…ねえ、由紀姉」

 

「うん」

 

「由紀姉は…僕が、人を傷つけた、取り返しのつかないことをした…って言ったら、どう思う…?軽蔑…する?」

 

「そんなことしないよ。みんな、きっと何かを心の中に抱えてるもん。だから…大丈夫」

 

「…僕、今まで隠してたことを、その事をみんなに、伝えたんです。それで…軽蔑されるのは、いいんです。自分の事だから…。

 

でも…めぐねえに、慈さんに…嫌われるのが…距離を置かれるのが……怖いんです。嫌われたくない…次からどう向き合えばいいのか、わからない。みんなとも、どうやって会えばいいのか…。1人には、慣れてるけど…独りになるのが、僕の大切な人たちに見放されるのが、凄い…怖い…」」

 

「心配しなくていいよ」

 

僕らしくもなく、嗚咽を漏らしながら告白をすると由紀姉は、由紀さんは僕の頭を優しく撫でながらそう言った。

 

「めぐねえはそんな事しないよ。きっと驚いてるだけだよ。絶対に、レー君を独りになんかしないよ。それにりーさんもくるみちゃんも、もちろん私も、レー君を見放したりなんて、しないよ。みんな、レーくんを大事に想ってる。だから…大丈夫だよ。きっと明日には、またみんな仲良くなれるよ」

 

そう言ってくれる由紀姉は、凄い優しくて、慈愛に満ちていて、いつもの由紀姉らしくなくて。

 

 

でも、凄い安心した。

 

 

「…すいません、もうしばらく……このまま…」

 

「うん、いつ迄も、してていいよ。だから…早くいつものレー君に戻ってね」

 

「はい…」




感想でもらったのですが、みーくんとレイ達との言い合いはみーくんに一理あると言われました

実際にその通りです。

確かにみんなが生きていることは今の由紀ちゃんがいるから、と言う大前提がありますが、あくまでもそれは結果論。

壊れた、現実逃避をしている由紀にみんな依存し、悪いとわかっていながらも手を出そうとしなかった。
専門家じゃない云々も、言い訳にしか過ぎない。何が正しいかも確かにわかりませんが、明らかに心の内に『今の由紀はおかしい』とわかっていながら何もしてこなかった。

そう捉えることもでき、みーくんはそれを指摘したようなものですから。

と、これ以上は長くなりそうなので切りましょう


読んでくださりありがとうございます

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