感想をくれた三名の方、ありがとうございます。
嬉しい限りです。
これからもグダグダしながら『がっこうぐらし!』に似合わぬほんわかした物語を目指しますので、楽しんでもらえたら幸いです。
それではどうぞ!
「……あー、見るんじゃ、なかった……。ふっざけんなよ。今更……遅いんだよ……」
1階で、ひたすら、向かってくるヤツラに、どこに向ければいいのかわからなくなった怒りなどをぶつけていた。
「っ、オマエらも、俺を、僕を……見るな、見るな見るな見るなっ!なんで…なんでっ、今になって、オマエらは!僕を……
気づくと、外からも集まってきており、かなりの数がいた。
流石にこの量を殺しきるのは無理だ。
「っ……お腹減った?ああ、僕もだ。いつも…いつもいつも、飢餓感が僕の、俺の中から消えない。唯一、地下で味方をしてくれた、あの人に、裏切られて、そのせいで、俺は…僕は……」
すると、いつのまにか壁際に追い詰められかけていたので、窓の部分を伝いながら壁を移動して強行突破をする。
窓の外にもいたからこれが最善だと思った。
「っ⁉︎」
けど、あと1人抜ければいいという時に、恥ずかしいことに床に散らばっていた血で足を滑らせた。
「……あー、もう、踏んだり蹴ったり…だっ!」
その場で回転して、足払いをかまして、目の前にいたヤツを転ばせ、その隙になんとか体勢を立て直す。
「……っ、相変わらず集まりすぎだろ……」
この近くで生存者は僕1人なだけだからなのか、それとも僕が引きつけやすい体質なのか。
「ふー……いやいや、何弱気になってんだ。まだ、めぐねえに何も伝えれてないだろうがっ!」
だから、どうした。多勢に無勢?逃げ場はほぼなし?
なら、血路を開けばいい。無理矢理、殺して殺して殺して殺して。
ひたすら、殺していけばいい。傷を負ったのなら、
「ふーっ、気を引きしめろ。ここで死ぬ訳にはいかない。絶対に」
〜屋上〜
「…今日、なんだか騒がしいな」
「そうねえ。もしかして……レイ君に何かあったのかしら…?」
「いやいや、まさか。そんなことある訳が……」
くるみと一緒に屋上の農園で作業をしていると、何やら外が騒がしいことに気づいた。
正確には、騒がしいと言うよりは、アイツらの動きが活発なだけなのだけれど。
「…ちょっと、嫌な予感がするから、2階の方を見てくるよ。レイがいたら速攻連れて帰ってくる」
「いいけど、お願いだから無理をしないでね?」
「わかってるって」
ガチャっ
「⁉︎」
「レイ⁉︎どしたんだお前⁉︎」
「お、落ち着いて…ください。そんな揺らさないで……」
「じゃあこの血まみれ状態はなんだよ!」
「血溜まりに足を取られてずっこけました。なんなら、服脱ぎましょうか?噛まれてないのを証明できますし」
「えっ、ちょ!ばか!や、やめい!」
「レイ君、大丈夫よ。噛まれてないのでしょう?ならここで脱ぐ必要はないわ。どっちかというとシャワールームで脱いで欲しいわね」
真顔で言いながら脱ぎ始めるレイ君を前に赤面していたくるみが可愛かったけど流石に止めないとまずいと思い、レイ君を止めに入った。
「……はい。ひとまず、帰ってきたことを報告するのが先かと思ったので。……
「…?え、ええ」
と、レイ君はものすごく疲れ果てた目をしながら階段を降りて行った。
…僕?
「……ねえ、くるみ。めぐねえを呼びに行きましょう」
「え?お、おう。でも、なんで?」
「…レイ君が疲れてる時は…ね?それに、私達も行くわよ。レイ君のところに。何せ、学園生活部ですもの。私達」
「ああ…なるほど」
と、私はくるみと一緒にめぐねえがいる場所へ向かった。
「佐倉先生、今お時間いいですか?」
「ゆうりさん?ええ、大丈夫よ」
「失礼します」「失礼しまーす」
めぐねえがいる部屋まで来た。
教室に入ると、由紀ちゃんもいた。どうやら授業を受けていたらしい。
「どうしたの?何かあった?」
「実はですね、レイ君のことでちょっと……」
「…わかりました。すぐ行きます。由紀ちゃんたちはここで待って…」
「え?なになに?レー君に何かあったの?」
と、話が聞こえたのか由紀ちゃんも話に入ってきた。
「ええ、ちょっとね…レイ君、元気がないみたいなの。だから私達で元気づけてあげようって思ってめぐねえに相談しにきたの」
「そっか…。何か辛いことがあったのかな…?」
「ひとまず、確認するためにも様子を見に行くわ。レイ君はどこに行ったかわかる?」
「シャワー室だと思います」
「わかったわ。じゃあ皆んなはここで待ってて」
「私達も行くよ!ね、りーさん!」
「はい、ゆきちゃんの言う通りです」
「ま、レイに負担かけちまってるの、主に由紀だもんなー」
「くるみちゃんひどいっ⁉︎」
「くすっ…じゃあ、みんなでレイ君をお迎えに行きましょうか」
「「「はいっ!」」」
〜シャワー室〜
「うえっ…まだ血が出てくる……どんだけ転んだ時についたんだ……」
血がべっとりとついてしまった夏服を洗濯機にぶっこんだあと僕はシャワー室でずっと血を洗い流し続けた。
「……この
左足首を見ると、まだ治っていない咬み傷が。
アイツらに付けられた傷が残っていた。
「屋上でヤケクソになりすぎて脱ぎかけたのは本当にまずかった…。今思うと本気でやばかった……」
それもこれも、
あれが全部悪い。
「…ふー、もうこの生活も…疲れたな…」
僕ら以外に生存者がいるとも限らない。助けが来るかもわからない。
僕が過ごしてた地下の食料はほとんど手をつけていないから、5人ならば節約さえすれば半年くらいは普通に持つだろうが、その半年間で助けが来るかどうかすらわからない。
「…はーっ、弱気になるなんて、
「レイ君、まだ入ってる?」
「⁉︎め、めぐねえ⁉︎ま、まだ入ってるよ⁉︎」
「そ、そう。わかったわ。シャワー浴び終わったら部室に来てもらえないかしら?少しお話があるのだけれど……」
「う、うん。すぐ行くよ」
びびったぁぁぁあ⁉︎⁉︎めぐねえの名前だしたら、いきなりめぐねえの声するからびびったぁぁぁ!
妄想癖そんなに激しくなったか?とか思った!
「っと、こうしちゃいられないね。さっさと血を洗い流してめぐねえのとこに行こう」
〜部室(生徒会室)〜
「めぐねえ?話って?……あり?なんで皆まで集まってるんですか?……由紀姉も」
「むー、それだと私はいっつも集まらない人みたいじゃん」
「事実でしょ?少なくとも、こんな神妙な場に由紀姉いるの見たことないです」
「むー…」
めぐねえには及ばないがふくれっ面の由紀姉も中々可愛いものだった。なんというか、小動物みたいだった。
犬、的な?
「りーさんやくるみさんも、まるで何かあったみたいな顔ですね」
「…はぁ、おまえなぁ。自分の行動を振り返ってみろよ」
「…?」
うーん…?くるみさんにはそう言われたけど、血まみれで屋上に上がったくらいしか記憶にない。
あ、コレか。
「レイ君、今日は恵飛須沢さんに代わって見回りをしてくれたって聞きました」
「ええ、俺が故意的でないとはいえ、くるみさんを傷つけたので、その罪滅ぼしにでも、と代わりました」
「それで、見回りから帰ってきた時に、貴方の様子がおかしいと聞きました。見回りの時に何かあったの?」
「……いえ、何も」
「本当に?」
「はい」
「なら、なんで…そんな辛そうな顔をしてるの?」
「…つらくなんか、ないです」
めぐねえに聞かれるけど、話したところで余計に迷惑をかけるだけだし、俺は何もない風を装った。
「嘘だよ!だってレー君。確かに疲れているんだろうけど、いつもとは違った疲れた顔してるもん!」
「……?由紀姉、どゆこと?」
「うぇえ?んーとね…何というか。いつも疲れた顔してる時は、ただ遊び疲れたー!って感じなんだけど、今日のは、何というか……うーん、何だろう。好きな人をかけた勝負に負けた時!みたいな?自分に怒ってる、というか?ゔーー、何だか分からなくなってきた…」
ああ、うん。いつも通りの由紀姉だったわ。
自分で自分の首を絞めに行って、挙げ句の果てにショートしてる。
「…そんなことはないです。俺は、何にもないです。ていうか、由紀姉には関係ないでしょ」
何気なく発した言葉が、発した直後に、とんでもないことを言ったことに、気づいた。
明らかに、空気が悪くなったし、由紀姉からも悲しげな声が聞こえた。
「…すいません。今日はもう疲れたんで早めに寝ます」
「あっ、待ってレイ君!」
めぐねえ達に制止されるが、それを振り切って寝室と言う名の社会科準備室に向かった。
「…私、先生失格ね」
レイ君が出て行った扉を見ながら、そんなことをポツリと零した。
「そんなことないよ!あれはレー君が悪いもん!」
「ええ、そうですよ。そんなに気を病まないでください。ていうか由紀ちゃん?涙ぐみながら私の胸に抱きつかないで欲しいのだけれど……まあ。今日はいいわ」
「しっかし、めぐねえ相手でもダメだったか」
そうすると、私の零した言葉を聞き取ったのか3人から励まされた。
つくづく、私は生徒に恵まれていることを実感した。
「それにしても、本当に何があったんだろう?レー君っていっつも、悩み事ない!みたいな感じなのに」
「由紀に言われちゃおしまいだな。つか、悩み事の一つには絶対由紀がいるだろ」
「くるみちゃんヒドイ⁉︎」
「こらこら、くるみも由紀ちゃんも。その辺で。今はレイ君のことを考えましょう」
何故だろう。3人のやりとりを見ていると、不思議と笑みがこぼれてくる。
先ほどまでの、暗い感情が、無くなっていた。
それと同時に、
「もしかして……。由紀ちゃん、寝室に行くのは少しだけ遅めでお願いしてもいいかしら?」
「ふぇ?う、うん。どうしたの?」
「ちょっと、ね…。もう一回レイ君とお話をしてくるわ。今度は、先生としてじゃなく、
不意に、レイ君が、何気なく零した言葉を思い出してしまった。
(何となくだけど、アイツらを見過ぎだからか、考えてることが何となくわかる気がするんです)
〜社会科準備室〜
レイ君は、いつからかは分からないけど、虐められていた。
私は、恥ずかしいことに、それを目撃するまで気づかなかった。
あの子の保護者だったと言うのに。
保護者失格だと、謝った。けど、レイ君は自分が悪い、と言い張って聞かなかった。私は悪くない、とずっと言い続けてくれた。
きっと、今日は、その言葉に甘えていた分のツケだ。
私は、レイ君がいるはずの教室の扉の前に立ち、2.3回ノックする。
「レイ君、ちょっといいかしら?」
「…?めぐ、ねえ?う、うん。いいよ…」
「ありがとう」
そう行って、入るとジャージ姿のレイ君がいた。
「ど、どうしたの?俺、もう寝るつもりだったんだけど」
「ええ。わかってるわよ。それでね…ちょっとこっちに来てもらえないかしら?」
「…?う、うん」
布団の、ちょうど枕のところに正座して座り、来るように言うと、レイ君は不思議に思いながらも来てくれた。
「はい、レイ君。どうぞ」
「??ど、どうぞって?」
「膝枕よ」
「ああ、なるほど。膝枕……って、ええ⁉︎」
と、いい具合にレイ君が驚いてくれる。
恥ずかしかったけれど、こんな表情が観れたから、よかった、と少し思ってしまった。
「ほら、早く」
「いやいやいやいや、めぐねえ?何を唐突に?いや、そりゃまぁ、嬉ゴニョゴニョ…けどさ」
「いいから、はやくしなさいっ」
少し急かす口調で言うと、顔を更に真っ赤にしながらレイ君は私の膝の上に頭を乗せ、横になった。
「「(や、やっぱり恥ずかしい……)」」
そして、2人の思考が重なった瞬間であった。
「め、めぐねえ。本当にどしたの」
「へっ⁉︎え、えーとね…その。ご褒美かな?」
「…?俺、何かしたかな?りーさんとかがやって貰ってたならわかるけど」
「ううん。レイ君もすっごく頑張ってくれてるよ。私、知ってるんだから」
「……俺は、まだまだですよ。めぐねえ や、りーさん、くるみさんなんかに比べたら…」
「そんなこと…ないよ。私、いっつも、みんなから元気をもらってるもの。もちろん、レイ君からも」
「……」
「だからこそ私は、辛くなっているレイ君をね、放っておけない。それはみんなも同じ気持ちなの。だから、何か辛いことがあったなら、私たちに相談して欲しいの」
「…
「え?」
「きょ、今日…見回りを、してたら…同じクラスの人だったヤツがいて、そ、そいつは噛まれてまだ日にちが経ってなかったのか、考えてることもまだ、はっきりわかって……、それで、ぼ、僕を見つけて、食べたい、って言う欲求があったくせに、『虐めを見て見ぬ振りしてごめん』、なんて謝って来て……そ、その後に二階の教室を見て回ってたら……明らかに、俺の机があった場所に、不自然に机がそこだけに立ってて……好奇心で見たら…すごい、乱雑で、赤くて読みづらい字だったけど…何回も、何回も、ごめんなさいって書き連ねてて…。そ、それで…今更、僕を人として扱って来るな、って思いと、今更遅いよ…ってのと、もうよくわかんない感情がごちゃ混ぜになって……」
「うん…」
「そ、それで…なんで助けてくれなかったんだ、って思いもあって、でも、それ以上に、『今更人扱いなんてやめてくれ!』って思いが…たまって、もう、何が何だか分からなくなって…無性にイラついて……」
「うん」
「ごめんなさい…ごめんなさい…。あんな風に当たるつもりは…なかったんです…。ごめんなさい…ごめんなさい…」
「大丈夫よ。みんな分かってるわ」
気づくと、レイ君は泣きながら謝っていた。
堰き止めていた何かが溢れて来たんだろうか。
レイ君になんども、大丈夫、と言葉をかけ、頭を撫でていると、いつのまにかレイ君は寝ていた。
「…本当は、謝るのは私の方なのにね」
〜翌日〜
ジリリリリリリリ
「……ああ、いつの間にか寝たのか……」
目覚ましの音と同時に目を覚まし、そして昨日の夜の記憶もあらかた全部思い出した。
「っああああ///////」
そして丈槍零は顔を真っ赤にして悶絶をした。
「んー…レー君。どしたの…」
「由紀姉…ああ、いや…なんでも、ない…」
「むー、本当?」
「イェスアイドゥー」
寝ぼけた由紀姉に色々聞かれたが、昨日よりかは大丈夫だった。
つか由紀姉よ。そんなにスッと起きれるならいつも起きてくださいよ。
「ちょっと、りーさん達に言わないといけないことがあるんで、先に行きますね」
「うん〜」
「ああ、それと…由紀姉」
「ほえ?どうしたの?」
「…その、昨日は…ごめん。由紀姉に関係ない、なんて言って」
「…うん、大丈夫だよ。私は平気。レー君が元気になってよかったよ」
「ああ、それと……俺は由紀姉の『弟』だから、今後何かあったらガンガン頼らせてもらうんで。昨日のことはそれで…」
「ほんとっ⁉︎ねえ!もっかいいって!」
「あーあー、何も聞こえません。それでは、お先に部室に行ってきますね」
「はーいっ!」
おやつを与えられた子犬みたいにはしゃぎまくった由紀姉を放っておいて、部屋を出た。
〜部室〜
「おはよーございます」
「おはよー」
「おはよう。レイ君」
部室に行くと、予想通りくるみさんと、りーさんがいた。
「レイ君、もう具合は大丈夫?」
「はい、心配をかけてすいません。…ほんとに。ちゃんと、由紀姉にも昨日のことは謝ってきました」
「そう…よかったわ」
「それで、昨日のことについてなんですけど、ちょっとゴチャゴチャしすぎて話しづらいので、二階までついてきてもらえませんか?」
「…?ええ、わかったわ」
「おう。…一応持って行っておくか」
「ですね、俺も念のため持っていきます」
と、くるみさんがシャベルを、俺が昨日使ってたナイフを手に取り、りーさん含めた3人でバリケードの外へ向かった。
「え?由紀ちゃん。なんて?」
「だ!か!ら!肝試し!」
「や、やるのは構わないけれど…なんでまた?」
「えーとね、レー君、昨日よりかは元気になってたけど、まだ治ってない気がしたから、元気付けてあげたいなーって」
「そう…由紀ちゃんは偉いわね」
「えへへ〜。めぐねえも、凄いよねえ。昨日あんなに落ち込んでたレー君を1日であんなに元気にしちゃうんだから」
「もう…めぐねえ、じゃなくて佐倉先生、でしょ?」
「はーい!」
あるぇ、おかしいな……シリアスばっか……
多分、今回と次でしばらくシリアスからは脱退する(予定)
読んでくださりありがとうございました