お待たせして申し訳ない(待ってる人いるのかな…?)
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それではどうぞ
後悔はしたくない。
常に前を見て進んでいたい。
振り返るのが怖いから
もし仮に僕の決断でみんなを死なせてしまうのが嫌だから。
後悔をしたくないから
精一杯努力をする。
そう決めたんだ。
「……」
「レイ君…」
「レー君…」
現在、学園生活部が逃げ込んだ場所---キッズコーナーではレイがソファに寝かされていてその側でめぐねえと由紀が看病していた。
本当なら由紀も熱を少なからず出していて安静にしていないといけないのだが由紀が看病をしたがったため皆好きなようにさせている。
「どうしましょうか、佐倉先生」
「…そうね、本当ならレイ君が目覚めたり由紀ちゃんの熱が下がるのを待ちたいけれど…。くるみさん。レイ君が居なくてもなんとかなりそう?」
「大丈夫だと思います。隠密に徹すればレイを誰かが抱えてても大丈夫です。由紀はりーさんが連れて行ってくれますし」
「ただ、くるみと話したんですが、少なくとも由紀ちゃんの熱が下がるまではここで休んだほうがいいと思います。これで無理をして学校で病気になっちゃってもダメなので」
「……」
佐倉慈は考えた。何が一番最善手なのかを。
いつも生徒に任せていたことを、レイに任せきりにしてしまっていたことがこんなにも重いことだと改めて理解していた。
「…そうね、悠里さんのいうとおりね。それじゃあ由紀ちゃんの熱が下がるまではここで休みましょう。くるみさんも疲れているでしょうし。もしかしたらレイ君も目を覚ますかも…」
「はい」
「ふーっ、にしても、やーっぱり由紀は遠足で熱出すタイプだったな」
「えへへ…ゴメン…」
「ほら、レイ君は私達が看病するから、由紀ちゃんも横になって休んでて」
「はーい…」
くるみが軽口を叩くも、由紀は力ない笑みで返しただけだった。
そしてりーさんに促されるようにし空いている場所に横になる。
「とりあえず…はい、お水。佐倉先生もどうぞ」
「サンキュー」
「ありがとう、悠里さん」
全員がソファの空いている場所へ腰掛けりーさんが皆に水の入ったペットポトルを配る。
「……プハァ、生き返ったぁぁ」
「いなかったわね、生きてる人」
そんな中、誰もが触れようとしなかったことを、りーさんは言った。
「どうも来るのが遅すぎたみたいだ。あの映画館…子供が多かったんだ」
「…ずっと助けを待っていたのかしら」
「それとも、必死にあの中で生きて…」
「…いや、
そんな会話に入ったのは-----レイの声だった。
「レイ君⁉︎大丈夫なの?」
「はい、めぐねえ。ご心配おかけしました。りーさんも、くるみさんも。もう…大丈夫です。少し休んだらすぐに動けます」
「そう、よかった…」
「レイ君、違うっていうのは…?」
「そのままの意味ですよ、りーさん。くるみさんとも同じ見解なんですけど。あれはそうじゃない。まず、
「ああ、そうなんだ。しかも周りのシアターにはアイツラはほとんどいなかったんだ。
レイは朧気ながらも起き上がり、映画館での様子を話し始めた。
くるみも同じように補足をしながら説明をしていった。
「おそらく、あそこで立て篭もって生活をしていた、これは正しいです。だって他のシアターの場所にはペットボトルとか散乱してましたから。違うのは
「ああ、多分あのバリケードは中にいるやつらを閉じ込めるために作られたんだ。そして中にいたアイツラもあそこで過ごしていたにしてはあまりにも多すぎる。外から襲われたんじゃないのは確実だと思う。だってあいつら、階段が苦手でそうそう登れないのに。5階まであの量の人間が対処できないほど襲ってくるのは考えにくい」
「つまりは、感染にいち早く気づいた誰かが、言葉巧みに全生存者と感染者を同じ場所に…俺たちが開放してしまった一番大きなシアターに集め、閉じ込めた。そこからは早かったでしょうね。大きな部屋とはいえキャパオーバーしている部屋に一人、二人、三人と感染者が鼠算式に増えていくんです。全滅するまで半日と持たなかったでしょう。…久々に胸糞悪いもの見ましたよ。本当に…」
レイは怒りを吐き出すかのように言葉を吐き捨てた。
くるみは怒りではないが同じような感情を胸の内に秘めていた。
「あたしは、やだな。あんなのはやだ!」
「くるみ?」
「恵飛須沢さん?」
「だって、あそこにはきっと大事な人を守りたくて逃げ込んだ人もいたんだ!…その人を、守るためにさ…。
…もし、あたしが感染したら
「な、何言ってるの恵飛須沢さん」
「そ、そうよ。いい加減なことを言うと怒る…わよ」
「…」
くるみの突然の言葉にめぐねえとりーさんは困惑していた。
唯一レイだけがそれを静かに聞いていた。
迷わないでくれ、とはそのままの意味。
勿論くるみは感染する気なんかこれっぽっちもない。だが万が一、億が一ということがある。こういうことは早めに言っておくべきだと思ったのだろう。
「何言ってんですか、くるみさん。俺がそんなことさせませんよ。いえ、そもそも学園生活部の誰にも感染なんてさせませんよ」
「わぁーってるよ。あたしもしくじる気なんかこれっぽっちもねえ。だがもしもの時、迷うとあたしだけじゃない。みんなが危険になるかもしれないんだ。だがら…約束してくれ、レイ、りーさん。…めぐねえ」
そしてくるみはりーさんとめぐねえの間に座り、笑いながら…乾いた笑みで、指切り、と二人に言い指を差し出した。
それに対し二人はぎこちない動きで指切りを交わした。
恐らくまだ迷いがあるからだろう。
「ほら、レイも」
「…ええ、わかりました。ですがやるときは俺です。他のみんなには絶対にやらせません。…いえ、まずそもそもくるみさんにそんなことをする事態に陥らせません。くるみさんの約束とともに、させてもらいます」
「おう、ありがとな。相変わらず頼りになるよ、お前は」
「くるみさんやめぐねえ、りーさんほどではありませんよ」
皮肉を言いながらレイはくるみと指切りをした。
「ぅ…ん…」
そんな重い雰囲気を壊すかのような寝言が聞こえてきた。
その声の主は一人しかいない。
「お、由紀姉。おはよ」
「どうしたの?由紀ちゃん」
「んー…お腹、空いた…」
由紀のなんとも言えない緊張感のない言葉にレイもりーさんもくるみもめぐねえも笑ってしまった。
そしてもう大丈夫だろうと、確認しあった。
「そうねぇ。帰ってご飯にしましょうか」
「だな」
「ですねぇ。俺も腹減りましたよ」
「わ、私は…ダイエット…しなきゃ…」
「めぐねえはしなくても十分細いですよ」
「でも…」
めぐねえはスーツを履こうとして破れてしまったことがいまだに心に傷を負っているらしい。
知っているのは由紀だけだが。
「それじゃあ…帰りましょう。学校へ」
それから、基本的に隠密に徹し先頭をくるみが、
「ふー、だっしゅーつ!」
「さ、戻りましょ」
「そうですねえ、早く帰って飯食って寝たいです」
「私は日誌書かないと…」
俺たちがそんな呑気なことを言っている中、由紀姉だけがずっとデパートの中を見ていた。
…?また何かあったのかな?
「由紀ー、いくぞー」
くるみさんが由紀姉に話しかけるも由紀姉はじっと中を見つめていた。
「由紀?」
「ねえ…
「え?」
突然由紀姉がそんなことを言った。
…?何も聞こえなかったけどな。
「別に…」
「声がしたの!私達を呼んでた」
「「「「…」」」」
由紀姉以外の俺たち四人は顔を見合わせた。が、誰も聞こえていないらしい。
…勘違いだと思う。でも、由紀姉のこういう時のは無視できないことが多い。
「由紀…それ気のせいだよ。早く帰ろうぜ」
「違うよ!本当に声がしたもん!」
「ワン!」
「由紀ちゃん、落ち着いて…」
「めぐねえも聞こえたでしょ!レイ君も!」
「そ、それは…」
めぐねえがなだめようにもあまり効果はないようだった。同意を求められたが…声はしなかったから何も言えない…。
「ワン!ウーッ!」
「あ!おい太郎丸!」
「一緒に行く!」
「待って!由紀ちゃん!」
「由紀姉!一人で行ったら…」
「と、とにかく追いかけましょう!」
突然、由紀姉に抱かれて大人しくしていた太郎丸が暴れて由紀姉の腕の中から飛び降り、デパートの中へ走っていった。追いかけるようにして由紀姉もデパートの中へ。
それを見た俺たちはとてつもなく焦り、慌てて追いかけた。
しかし、いつもの由紀姉とは比べ物にならないくらい早かった。走っても走っても追いつけない。
「…?なんだ、アイツラ、一箇所に集まってる…?」
走りながら周りを確認するも、あまり数がいなかった。
気配的に、奥の方に集まっている感じがした。
…これ、もしかして本当に生存者がいた?それで俺たちのことに気づいたから出てきてここまできた?
「…善は急げ、だな。とにかく由紀姉を追いかけないと」
だが、生きているかもしれない人には悪いが、見知らぬ人間よりは学園生活部のみんなだ。絶望的だったならば、切り捨てさせてもらう。
「ワン!」
「…いた!あそこ!」
「えっ…」
「マジかよ…」
「本当にいた…」
「待て、あの数ちと不味…」
由紀姉が走っていった先は、でかいグランドピアノが置いてある場所。
そこには、一人の生きている、感染していない人間がいた。
ピアノの上に避難していて周りにはアイツラが大量にいる。
「太郎丸…それに…本当にいた…!」
「まず…まって由紀姉!止まって!俺が行くから!」
「でも…でも!……うわぁっ!」
「まって由紀ちゃん!」
「レイ君!くるみさん!あの子を助けてあげて!由紀ちゃんは私達がなんとかするから!」
「「はい!」」
りーさんや俺の制止も聞かず、駆け出した。
それを見てめぐねえがとっさに指示を出してくれて、慌てて動く。
左手にタオルを荒く分厚く巻きつけ右手に折りたたみ式ナイフを持つ。
「くるみさん、俺が突破します!周りの奴らをおねが…」
「レイ?どうした!」
そこで俺は、不意にも止まってしまった。
生きている人間は
見たことある人間だった。
蔑んできていたクラスメイトとよく一緒にいた。
一年生の時に、クラスメイトだった人間だった。
「あ…うぁ…」
「レイ!どうした!大丈夫か!」
それを認識した瞬間、
息ができなくなる感覚が襲ってきた。
辛い、辛い。次に出てきたのは恐怖。今まで蓄積してきたものが爆発したかのように恐怖が一気に襲ってきて。吐き気を催した。
なんとか我慢した。
「おいレイ!しっかりしろ!おい!」
「嫌だ…嫌だ。もう…あんなのは…」
「っ…!どうしたレイ!お前らしくねえ!」
「みんな!耳塞いで!」
くるみさんに胸倉を掴まれながら叫ばれ、りーさんが何かを叫んだかと思うと防犯ブザーを一気に鳴らした。
それで多少ながらも目の前の状況を改めて認識することができた。
防犯ブザーの爆音により目が覚めた。
周りをぐるっと確認し、あいつらの動きが止まっているのを確認した。
ずっとこっちを守ってくれていたくるみさんに、もう大丈夫、と口パクと腕を使ってオーバーに伝えた。
生き残っていた人間を見ると由紀姉が近くまで寄っていた。
思わず近づくな、と叫びそうになるがぐっとそれを堪える。
由紀姉達の周りにいた奴らを、邪魔になりそうな奴らだけを見極め、とにかく無心でうなじにナイフを突き立て切る。
「早く!こっちだ!」
くるみさんが二人を誘導してくれてる中、めぐねえはライトをばらまいてくれてよりアイツラを分散させてくれていた。りーさんは一番音源に近くだからか相当辛そうな顔をしていた。
防犯ブザーの音が鳴り響いている中、俺たち四人はめぐねえとりーさんの場所まで合流できた。
これ以上奴らをおびき寄せる可能性もあったから防犯ブザーの音は切ってもらい、とにかく走った。前と同じようにくるみさんが先頭を、俺が殿を務めとにかくデパートの外へ走った。
さっきのピアノのところに大半が集まっていたのか外までの道は比較的に楽だった。
が、とにかく脚が重い。
こんなにうまく動かないのははじめてだった。
何度も転びそうになったがなんとかバランスを保ち車までたどり着いた。
「それじゃあ、乗るのはどうしましょうか…」
「俺が運転席で助手席めぐねえと由紀姉。後ろにりーさん、くるみさん、そこの人で、お願いします。来る道は覚えましたし、夜までには学校につけると思います」
「わかったわ。でも、無理しないでね?さっき、とても体調が悪そうだったわよ?」
「ええ、もう大丈夫です。さっきみたいな失態はもうしません。ちょっと生き残ってた人が予想外すぎたので。思わず止まっちゃいました」
生き残っていたやつ-----直樹美樹を見ると、あっちも俺を覚えてたそうでこちらを見るなり目をそらしてきた。
はいはい、目も合わせたくないってか。
名前を覚えているのは、同じクラスだったからだ。
これでも入った当初はすぐに馴染めるように、って思って全員の名前は覚えてある。
それも一年まで、二年の同じクラスのやつは知らん。名簿をみてすらない。
「(…相変わらず、昔のことで暴走しかけるのは悪い癖だな…。とっとと昔のことは全部忘れねえと)」
こうして長い長い学園生活部の第一回目の遠足は、俺にとっては最悪の気分で終えることとなった
今回はキリが良かったので短めです。
次はもうちょい長めに書く予定です。
読んでくださりありがとうございます