抹殺された神の愛し子 作:貴神
これで、入学編は終わりだと思います。
放送室で一悶着あったその日の夜、達也は九重寺を訪れていた
達也『師匠、急な連絡をして申し訳ありません。』
夜も深い時間に訪問をしたのだ。本来なら、就寝していてもおかしくはない時刻
八雲『いいよ、愛弟子の頼み事は嬉しいからね。』
しかし、八雲は気を悪くするどころか少し嬉しそうなためこれ以上の謝罪は無意味だと達也は判断する
達也『ありがとうございます。早速ですが』
達也の質問する内容が分かっていたように言い当てる
八雲『ブランシュのアジトとリーダーかな?』
達也『そうです。独自での調査では、高校近くの廃工場でリーダーは第一高校三年 司 甲の義兄 司 一(つかさ はじめ)だとわかりました。しかし…』
達也も自身で調べた情報を八雲に確認する形で照会していく。それに対して、八雲も達也の情報の答え合わせをするような形で相槌を打つ
八雲『なるほど、本物のリーダーか不明だということだね。』
順調に調べあげた情報の確認をしている達也が言い澱む。
それにフォローする形で八雲が情報の最後のピースを代わりに答える
達也『…はい。それで師匠の助けをお借りしたく。』
素直に自分の力不足を認め、八雲に助けを請う
現在の達也の腕でも出来ないことはある。現に八雲には及ばない
八雲『達也君のクラッキング・ハッキングは流石だけど僕の教えた術を使うも今一歩足りないということか。今度からは戦闘よりもこっちを優先的に修行しようか。』
顎に手を当て思案する八雲
達也の情報収集能力は素晴らしいと思っているが、それでも集めきれない情報もある。実際に潜り込まなければならない情報もあるため忍として、八雲の技術を教え込んでいる
というよりも、達也を後継として育てているため、八雲の持ちうる全てをそれこそ、瓶水(びょうすい)をうつすごとくである
達也『…申し訳ありません。』
しかし、それは達也がまだ成長途中であって、劣っているわけではない
逆に達也が八雲に影響を与えていることもある
師は弟子を育て、弟子は師を育てる
八雲『いや、怒ってないよ?達也君は隠密系情報収集は少し苦手意識があるようだから習うより慣れろでいこうかと思っただけだから。さて、前置きはこれくらいで。司 一はブランシュ日本支部の本物のリーダーだよ。表も裏もない。そして、達也君が最も気になっているのが、弟の甲君の目だね?』
達也の修行の方法を見直し、達也の忍びとしての基礎能力を鍛えなおす方向性に転換する
達也『…師匠、読心術でもあるのですか?』
達也としては、修行方法云々よりもある一つの情報が気になっていたため話の趣旨が変わったことにはありがたいと思うものの、思考が覗かれているようで若干、八雲に恐ろしさを覚える
八雲『ないよ?持ってるのは達也君じゃないか。』
読心術文字通り思考を読む技術だが、むやみやたらに使う達也ではない
一度、八雲に試したところ読めなかったのだ
そもそもこの技術を習得した理由は思考を相手に読まれないようにということで身に着けたのだ
達也『それよりですね、彼の目はどれ程ですか?』
一番気になる情報なのだ。脅威になりうるなら、それなりの対処を考える必要がある
その眼から得た情報である者達に知られてはならない
また、霊子を見る力は昔では、見鬼(霊や妖を見る)と呼ばれている
最も、神夢家の人間は大なり小なり霊子を見る力を持つ、彼らに見られても問題はないが
八雲『旧姓 鴨野 甲 賀茂氏の傍系だよ。と言っても、血は薄まっているから、一般の家庭と同様と言っても過言ではないね。そういうことで、見る目はほとんどないよ。精々、放出した霊気を認識できる程度だよ。ついでに、君のクラスメイトも見れるけど、理解は出来ないから安心しなさい。』
八雲によって、達也の懸念は杞憂に終わる。合わせて、柴田 美月の能力に関しても問題ないとお墨付をもらい、達也とある家との関係性が暴かれることはなくなった。
達也『(それはつまり、俺が規格外のある種の化け物だからだろうな。)』
八雲『それにしても、どうして僕なんだい?風間君や浩也さんがいるのに。』
目に見えて落ち込む達也を浮上させるためなのか、閑話休題を投げかける。
そもそも、すぐに情報が手に入る環境にいる達也が何故、八雲に訊きに来たのか。
表現としては微妙だが、神夢家は情報の宝庫だ。誰よりもどんな内容でも情報を入手出来る。そして、それは誰にも脅かされない情報網を持っているということに他ならない。
しかも、達也は特殊だが軍人である。調べようと思えば、正攻法で調べられる。
達也『…少し気になっただけで他意はありません。』
虚を突かれ、唯人にはわからない一呼吸の間が八雲にとっては何か事情があったと理解する。
八雲『…わかった。そういうことにしておこう。危ない橋は必要以上に渡らないようにするんだよ?この会話は無かったことにしよう。』
達也『感謝します。』
八雲の機転に感謝し、浩也への追及は免れた。
討論会を明日に控え、気になった点があったため登校中をねらい、達也は真由美を探す。
達也『会長、おはようございます。』
いつも一人で登校しているのか違和感が感じられない。
摩利や鈴音の姿もないため都合が良いため声を掛ける。
真由美『あ、守夢君!おはよう!どうしたの?』
心なしか声が弾んでいる気がしたが、自身に好意を向ける理由もないだろうと決めつけ、本題に入る。
達也『いえ、今度の討論会が気になりまして。なんでもお一人で対応されると訊いたものですから。』
真由美『私一人では不安?』
真由美は一人だと意見の食い違いも出てくる状況を作れない。誤解をさせないための戦略なのだろう。
達也『いえ、全く。複数人で答えると、意見の齟齬が出ますので良いと思われます。』
素直に真由美の行動を誉める達也。
しかし、この二人のやり取りを聴いているものが居たなら、上から目線の評価に見える達也に対して何様のつもりだとヤジが飛びそうな感じである。
真由美『ありがとう。守夢君は不満はないの?』
二科生である達也にも不平不満はあるはずである。
現に真由美でもあるのだ。
達也『私ですか?特にありません。魔法力がないのは事実、それを過剰評価をしてもらうなんておこがましいです。』
達也は自身にあるため納得している。それを他人の所為にするなどもっての他だ。他人の所為等と発するより他の能力を伸ばすほうが余程得策だと考えている。
それに対し訝しげな表情をする真由美。
真由美『…本当に?無いの?』
必ず何かあると目で訴え掛ける真由美。
しつこいなと、思いながらも高校入学から掲げている願いを述べる。が、それはもう叶わない願いと諦めているが。
達也『…強いて挙げるとすれば、私に関して放置をしていただければ非常に助かります。煩わしいことは嫌いですので。』
摩利『それは無理な相談だな。』
狙ったようなタイミングで二人の会話に割って入ってくる摩利。
その顔は子供が何やら面白そうなものを見つけた時にみせるそれと同じである。
真由美『摩利!?』
真由美は心底驚いたような顔をする。
達也は摩利の気配は掴んでいたので、敢えて面倒事の原因達に意思表示をするためにあのようなことを発言したのだ。これからの為にも。
達也『委員長、おはようございます。』
摩利『おはよう、真由美、守夢。守夢のような有能な人材は放置しておくのは宝の持ち腐れだからな。』
摩利曰く、これほど実力のある人間が蚊帳の外は許さないらしい。
しかし、達也の見解では、摩利、真由美、十文字達はめんどくさがりだと認識している。
現に、権力で達也の授業妨害をしたのだ。面倒と思わず、放課後の時間を使えば達也の交渉術にはまらなかったのだ。まぁ、その所為で風紀委員に入る羽目になったのだが。
そのため、達也からすれば、この三人は嫌いとまでは行かないまでも距離を置きたい人物達なのだ。
達也『この魔法科高校で魔法力が無い者は有能とはよべませんよ?』
一応、一般常識から反論をし、暗に魔法が使えない自身に期待をしてくれるなと訴えかける。
真由美『そこは気にしないの。守夢君、討論会の日が明日だからそれまでは何も起こらないと思うけどよろしくね。』
一体どこまで、達也に過剰な期待を寄せるのか。
そもそも、この高校に入学した理由がこんな事で邪魔されていい筈がない。
達也はやはり、この高校で出会った人物達との関係性を見直すべきかもしれないと思った。
風紀委員の見回りも順調に終わったため余った時間の調整を頭の中で組み立てる。
達也『(巡回したが、殆どが二科生による二科生への有志同盟への勧誘。大した争いもなく、今日の業務も終了。一時間程時間が出来たから図書室で資料探しだな)…私に何かご用ですか?』
途中から達也をつけていた気配があり、敢えて、立ち止まって思考をし、声を掛けてくるのを待ったが動く様子も無い。
時間も勿体無いため、気配の主に声を掛ける。
??『えぇ、守夢 達也君。君にお願いしたいことがあって。』
廊下の角から姿を現したのは、白衣を着た妙齢の女性。
現代のドレスコードに照らし合わせれば、少々肌の露出が多い。
そういった姿を見せ、生徒の動揺を誘って、カウンセリングをしやすくするのだろう。
しかし、達也にとっては効かない。
むしろ、相手より上に立って優越感を得るだけでその人物の人間性がしれるだけだ。
達也『ほう。気配を消して尾行がご趣味で?小野先生。』
こそこそ嗅ぎ回られるのは鬱陶しいので、ストレートに威嚇する。
小野『え?そんなことはしてないわよ。カウンセリングの対象として依頼するつもりでたまたま、君の姿が見えたから、後をつけてただけだから。』
如何にも偶然ですという体を装う彼女に達也も追及するつもりはない。
達也『そういうことにしておきましょうか。----。』
最も、達也からすれば正体は解っているため彼女が隠す意味は無いのだが。
小野『っ!…貴方、一体。』
達也『何をしてるんですか?カウンセリングをするのでは?』
達也にもう一つの顔を見破られ、驚愕に満ちている彼女だが、その時間が勿体無いため急かす達也。
小野『えぇ、カウンセリングルームで行うからお願い出来る?』
達也『構いません。』
小野は達也を引き連れてカウンセリングルームへ向かう
カウンセリングルームにて、およそ三十分アンケートと称したカウンセリングを受けた達也。
小野『以上です。協力ありがとう。』
業務としては満足のいくデータを取れたため安心する。
彼女個人的な感情としては質問した内容しか回答がなかったため少々不満ではある。
達也『いえ、それでは失礼します。』
達也も用事が無いためこれ以上長居をするつもりはない。また、余計な質問が投げ掛けられる可能性もある。
早々に出口に向かう。
小野『待って、守夢君。壬生さんと付き合っているのは本当なの?』
若干、声が弾んでいる彼女にからかわれているのだと直感する。
達也『全くのデマですよ。何故それを?壬生先輩のカウンセリングと何か関係が?』
しかし、達也もやられているだけでは性に合わない。
軽い反撃どころではないが、彼女のためにも忠告を与える。
小野『(!)…いいえ、何でもないわ。忘れてちょうだい。』
達也『小野先生、私からも一つよろしいですか?』
小野『何かしら?』
素直に忠告を受け入れるか解らないが、これ以上達也にも煩わしいことが降りかかる可能性もあるため線引きをする。
カウンセラーとしての腕を信用していない訳ではないが、義務と感情を区別出来ないようでは困るからだ。
達也『他人のメンタルカウンセリングをするなら、同情しても構いません。しかし、情緒に引っ張られないように。あくまでも、ここは魔法科高校です。魔法力が評価の基準です。くれぐれもお忘れ無きように。』
小野『…一体彼は何者なの?』
自分の少々肌の露出したドレスコードに反応もしなかった。動揺を誘う素振りをしても無視、達也の得体が知れない。
しかも、自分の身分も知っていた。調べる必要があるとも思ったが、薮蛇だと身の破滅もあり得る。
しかし、達也の正体(一部)は後日解決されるのだが、ここでは割愛する。
公開討論会 当日
生徒会は真由美一人で有志同盟の代表数名が討論会に臨む
有志同盟1『今季のクラブの予算の割り当ての比率がおかしくありませんか。』
真由美『クラブでの実績に応じて割り当てがあります。非魔法系クラブだからという訳ではありません。クラブの予算の割り当てをグラフでまとめたものです。レッグボールでは優秀な成績を修められているためそれ相応の予算が割り振られています。これをご覧いただきお分かりのように一科生だからといって、差別をしてはおりません。』
予め用意していたとのだろう、学内のデータからクラブ関係のデータを呈示していく真由美
有志同盟2『二科生はあらゆる面で差別を受けている。それに関してどうお考えか?』
真由美『あらゆる面とはどういった面でしょうか。A-Hの組で施設利用や備品の配分は等しく振り分けられています。』
有志同盟が差別と思われる内容を羅列していくも真由美が全てデータに則って論破ではないが、誤解を解決させていく。
真由美『…現状、ブルームやウィードなどと差別を助長させる言葉が少なからず存在します。生徒会や風紀委員では、それを禁止しています。しかし、それがなぜ使われるのかそれは皆さん自身が原因とも挙げられるのです。自らをブルームと称したり、ウィードと蔑んだりと諦めと共に受容するそれこそが原因でその意識こそが変えるべきものです。』
時折、真由美の演説にヤジが飛ぶもすぐに反論の声が上がり、鎮静されていく。
終いには、二科生の中からヤジを止める声で収まるようになっていった。
このような感じで真由美の演説に理解から納得に変わり、いつしか真由美の思いに涙する生徒まで現れていく。
真由美『現状、私達が関与することが出来ない状況が一つあります。それは教育の制度です。教育の制度と大まかに申しましても疑問に思われるかもしれませんが、誤解が無いように申しますとカリキュラムでは、一科生と二科生には差はありません。同じ講義の内容で進められています。では何かと言うとそれは講師の数です。どの魔法科高校でも人手不足で政府としても講師増やそうにも魔法師の数が全体的に少ないのが現状です。そこで、不十分な指導を全体に施すか、十分な指導を確実な数に施すかの二択でした。現状では、後者で行う方針となりました。そこは私達では変えようのない事。』
真由美『しかし、この高校内にある制度は変えることが出来ます。現在、当校には生徒会のみ役員は一科生のみで構成されるという規則が存在します。しかし、差別用語を禁止する生徒会がこのような規則を残していいはずがありません。』
真由美『ですから、私はこれを任期満了の生徒会長改選時に開催される生徒総会でこの規則の撤廃を最後の仕事としたいと考えています。しかし、私はこれだけを仕事とするつもりはありません。まだまだ、このような思想が残るものは少しずつですが、変えていくつもりです。そのためにもやはり、皆さんの努力が必要です。この三年間をかけがえのないものにするためにも協力をお願い致します。』
相手の心を掴むとはこういうことなのかもしれないと達也は感心を寄せた。
真由美の演説が終わり、何処からともなく拍手が響き渡る。その拍手は純粋にこの学校の悪しき風習を無くそうと努力をする真由美に応えたものだった。
しかし、これだけで終わらないのが、この世の中である。
轟音と共に1000人は入るであろう講堂が揺れる。
生徒『っ、何!』
生徒『な、なんだ?』
生徒達が口々に不安の声が漏れる。
生徒『爆発?!』
先の爆発の後に次々と轟音と地響きが支配する中で漸く状況が理解出来てきたのか爆弾でのテロ行為に気づく。
その混乱に乗じて有志同盟の者達が席を立つ。
摩利『取り押さえろ!』
しかし、その行動は風紀委員でマークしていたため、摩利の命令で全員を捕縛する。
これで内部での犯行は防げたが、外部から侵入には対処出来なかった。それを服部や摩利が魔法で対処し、テロリストを鎮圧していく。
一段落は付いたが、校内ではテロリストが暴れまわっている。
だが、達也はこれはただの陽動で目的はある場所だと認識しているため早々に現場に向かう。
達也『(この状況で来たか。)委員長、自分は図書室に向かいます。』
摩利は達也の言葉に何か考えがあるのだと思いまた、達也でしか対処出来ないだろうと判断し、命令をする。
摩利『!…解った、頼む。』
図書館に向かう途中、見知った生徒がテロリスト三人と相対している現場に出会した。
達也『!あれは、レオか。』
苦戦しているようにも見えなかったが、この状況では使える戦力は一人でも欲しいため、片付けるため参戦する。
達也『無事か?』
テロリスト三人を一撃ずつで鎮め、レオの身体に異常がないか確認する。
レオ『サンキュー、達也。しかし、一体何の騒ぎだ?』
達也『敵の正体はおそらくブランシュだ。しかし、三人を相手にやるな、レオ。』
状況が読み込めてなかったため、敵の情報を与え、戦う必要があることを説明する。
おまけとして、レオの歩兵戦力を誉めるのを忘れない。
レオ『達也がそれを言うか?その三人を一瞬で戦闘不能にした人間に褒められてもな。』
達也『自惚れではないが、俺は特殊だからな。』
レオは達也に誉められてま嫌味にしか聴こえないと不満をこぼすもその表情は満更でもないようだ。
エリカ『レオ、武器持って来たy…あれ、達也君?』
遅れて駆け付けてきたエリカ。
その手にはレオと自身のCADを持っている。
しかし、気になるのはー
達也『なんだ?エリカも居たのか。二人して何をやってたんだ?まさかと思うが…』
若干、企みをしていますという表情を醸し出す達也
レオ『ち、違う!補講をしてたら、たまたまコイツが。』
エリカ『そ、そうよ。達也君の勘違いよ。私達はたまたま補講が被っただけで。』
何故か、あたふたしだす二人。
意外と相性はいいのかもしれない。
達也はわかりやすい二人だと内心からかうも時間が惜しいため、目的の場所に向かう。
達也『何を焦ってる?補講か?と聞こうと思っただけだが…。まあ、何でも良いが、大丈夫そうだから俺は行くな。』
ここは、お前達に任せると言い残し立ち去ろうとする達也
それに不思議がり、純粋に疑問をぶつけるエリカ
エリカ『え?達也君どこへ?』
達也『図書館だ。』
レオ『なんで?』
達也『それは…』
追求してくる二人に、はぐらかした回答をすると着いてくるかもしれない。それだけは、達也にとっては都合が悪い。どうしたものかと思考していると
小野『そこには魔法協会で保管されている機密文書があって、魔法科高校の図書室には、そこへアクセス出来るの。壬生さんもそこに居るはずよ。』
昨日のカウンセラーの小野 遥
助け舟のつもりで介入してきたのか、ご丁寧に隠しておきたい情報まで暴露してきた。
おそらく、面倒事を押し付けに来たのだろう。
達也『…それで、私に何をさせるつもりですか?』
要望は何だとストレートに尋ねる達也
小野のしたいことと達也のしたいことは全くベクトルが違う。正直言って、やりたくない。
小野『…壬生さんを助けてほしいの。彼女は剣道部で素晴らしい成績を修めているけど、魔法実技では、その真逆で悩んでいるの。だから-』
達也『甘いですね。』
小野『っ!』
小野の壬生に関する情報は何もかもが正確ではない。
客観的に分析出来ていないし、感情移入している。
それでは、壬生もかわいそうである。
だから、敢えて達也は小野の言を切り伏せた。
達也『それはただの欲張りというものです。職業意識の高さやカウンセラーの義務はあるかも知れませんが、入れ込みすぎるとやけどしますよ。私には全く関係の無いことです。それでは。』
言いたいことだけを言って、この場を後にする。
レオ『ま、待てよ、達也。』
エリカ『ちょっといくらなんでもそれは。』
その言葉に理解と納得がいかないエリカとレオは達也を止める。
しかし、達也は二人の非難に対して冷めた眼を向ける。
まるで、お前達はこの世の何を知っていると言いたげに
エリカ・レオ『『っ!』』
殺意に似た視線に怯むエリカとレオ
一つ嘆息し、達也の言いたい事が理解出来るようにヒントを出す。
達也『一つ、為になることを教えてやる。ある方の言葉だ。【貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ】…じゃあな。』
それだけを言い残し、三人を置いて図書館に向かうのだった
図書館
達也『(敵は階段上り口に二人、登りきったところに二人、特別閲覧室には四人の内一人は壬生先輩で間違いないだろう。)…何しに来たエリカ?レオはどうした?』
エリカ『私も加勢に!レオは幹比古も援軍で来たから大丈夫かなと思って、任せて来たの。』
ある意味答えになっていない、というよりかは生け贄にしてきたと言わんばかりの回答である。
達也『幹比古の魔法は知らないが、二人だけで良いのか?まあ、体つきを見る限りでは、大抵の奴らなら魔法無しでも倒せそうだが。あと、任せて来たというより押し付けて来たように聴こえるが。』
幹比古もレオも戦闘訓練とまでいかないだろうが、それなりに鍛えているような体つきだから、問題は無いかと無理矢理納得させる達也。
エリカ『いいの!それより。』
どういう状況かと、敵は何人だと。
達也『壬生先輩は奥の閲覧室だ。彼女は誘い出すからエリカで相手してやれ、階段付近の二人の人間達は頼んだ。』
エリカに壬生先輩と階段手前に隠れている敵の数だけ伝える。端から見れば、押し付けているようにも感じられたが、エリカの実力を信用しているとも取れる。
達也は魔法を使わずに、身体能力で二階に上がり、合わせてそこに待ち受けている敵二人も行動不能にして、奥に消えた。
エリカ『ちょ、達也君!…なんて、跳躍力してんの。しかも、上の二人はもう倒してるし。仕方ない、やりますか。あんたらの相手は私よ!』
突然現れた達也が二階に跳躍したことに驚きを隠せず、物陰に潜んでいたブランシュのメンバーも誘き出されてしまい、引っ込みがつかなくなってしまった。
また、エリカも奇襲するつもりが達也のお陰で台無しである。
仕方なく、相手を挑発する形で戦闘モードに切り替えるのであった。
閲覧室
その頃、壬生を合わせたブランシュ計四名は魔法協会が厳重に保存している魔法の機密文書を盗み出そうとしていた。
壬生『(これが、私のしたいこと。差別の無い魔法の無い世界にするために……本当に?)』
自身がやりたいことをしているつもりがこの期に及んでその疑問が壬生に鎌首をもたげてくる。
ブランシュメンバー1『もう少しで。いける。』
ブランシュメンバー2『よし、あとはロックを解除するだけだ。』
最高機密のランクに分類される魔法協会に保存されている機密文書
取り出すのは容易ではない。それを約三十分でアクセスする手腕はそれなりに腕があるということに他ならない。
ブランシュメンバー1『やった、開いた。これでこの国の最先端魔法技術が手に入る!』
厳重なロックを解除し、嬉々として保存に移る。
ブランシュメンバー3『このデータを記録用キューブに保存だ!』
記録用キューブを繋げ、データを抜き取ろうとし始めて数秒後、扉の方で轟音が響く。
ブランシュメンバー2『?今の音は?』
その数秒後、扉自体が閲覧室内に倒れる形で姿を現したのは達也だった。
壬生『!扉が…守夢君?』
右手にはCADと扉の倒れる方からして外側から衝撃を加えなければ内側に倒れて来ない。それをしたであろう右足の形が扉にくっきりと残っていた。
達也『そこまでだ、ブランシュ。』
そう言い終えぬ内に記録用キューブをパーツ単位でバラバラにする。
ブランシュメンバー1『記録用キューブが!』
記録用キューブを破壊され、逆上するブランシュのメンバーの一人がナイフで達也に襲いかかるが、達也は意に介した様子もなく、迎撃し、行動不能にする。
ブランシュメンバー3『っ、この野郎!っ!ぐぁ。』
他の二人が手を出す状況を作り、壬生に語り掛ける達也。
達也『…壬生先輩、もう判って来ているのでは?』
壬生『な、何よ。あなたに何が解るっていうのよ!私は差別を無くすために動いているだけ。』
この腐った社会を根底から変えるためには、大規模な改革が必要だ。これは、その改革の一つに過ぎない。
しかし、それは必ずしも世の中に正しい改革とは限らない。利己主義な改革だってあるのだ。
それを判断する思考力を壬生が身に付けているとは思わない。
達也自身でさえ、間違うことだってあるのだ。
達也『先輩、この世界に平等というものは存在しません。もし、そんなことがあるなら、その世界は全てが等しく冷遇された世界か一部の人間によって管理・支配された世界のみ。私の経験談では、生を受ければ、必ず死を迎えることもありますよ。さて、今なら間に合います。自分自身と向き合って下さい。』
壬生『…』
苦悶の表情を浮かべ、達也に対して否定の言葉を並べたいが、出てこない。
ブランシュメンバー2『壬生!指輪を使え!』
突然、メンバーの一人が声を発し、同時に煙幕を使い、視界を妨げる。
壬生『!』
慌てて、アンティナイトでキャストジャミングを仕掛けるも達也は慌てた様子もなく、壬生に続き、逃げ出そうとしたブランシュメンバー二人を行動不能にする。
達也『(アンティナイトを使ったキャストジャミングか)…甘いな。』
達也『さて、壬生先輩は千葉の娘に任せるか。』
言葉とは裏腹にその目には、無機質が宿っていた。
壬生『(このまま行けば、出口!…人が居る?)誰?』
達也から逃げ延びた壬生は最短距離で出口を目指していた。
その最短距離に最大の刺客がいるとも知らずに。
エリカ『初めまして、私、千葉 エリカって言います!壬生先輩で間違いありませんか?』
人当たりの良さそうな笑みを浮かべるエリカ
壬生『だったら?(…何者なの?この子といい、守夢君といい隙が無い)』
さっさとこの場から離れたいのに、目の前にいるエリカが邪魔をして通れない。
壬生『そこを退きなさい!そうでなければ、実力行使にでるわよ!』
周りの味方が所持していたであろう。スタンバトンを手にして、エリカを威嚇する。
エリカ『あらあら?そんな殺気立たなくても。戦う準備をさせてあげる時間はあげるのに。…じゃあ、やりましょうか、先輩?』
正当防衛なんて言い訳はしない。
真っ向から打ち合って倒す。剣士同士なら、当然のことだ。
壬生『っ!!(自己加速術式とこの技)…渡辺先輩と同じ?』
構えた瞬間、エリカの姿がブレて眼前に迫る。
しかも、これに似た戦い方をする人物を知っている。
エリカ『?何を思ってるか知らないけど、あの女の剣術とは一味違うわよ?』
壬生『(!速い、防御だけで手一杯。…あれでしか。)』
エリカの剣を裁き切れないと悟る。
釈然としないが、右中指に填まっているアンティナイトで、魔法師対策のキャストジャミングを流す。
エリカ『!?これは、キャストジャミング?』
キャストジャミングの中では、魔法が思うように発動出来ない。
瞬時に一定の距離を取るも、反撃の機を窺っていた壬生は逃さずエリカに襲いかかる。
壬生『(今だわ!面、面、小手、胴、面!行ける?)』
自分の型に持っていけていると確信し、畳み掛けようとした一瞬の隙がエリカにはいけなかった。
エリカ『…残念。っは!』
エリカが壬生のスタンバトンを正面から折る。
壬生『武器が。』
戦う武器が折られることは壬生にとって初めての経験である。普段は竹刀であるため、落とされることはあるものの折られることは無い。そのため、動揺は相当なものである。
エリカ『まだ、武器はあるわよ。そこに脇差しがあるわ、来なさい。相手してあげる、そしてあの女の幻想を私がぶち破ってあげる。』
それを見越してかエリカは壬生に別のブランシュメンバーが持っていたのだろう床に落ちている剣を拾わせる。
壬生『…ふっ、こんな指輪なんて不要ね。私の実力で貴女を倒す。なんとなくわかるわ。貴女と渡辺先輩は似ている気がする。』
直感だが、エリカと渡辺 摩利は同じ流派。
そして、自分のコンプレックスを克服するチャンスだと。自分の剣技がどこまで通用するのか。
エリカ『ふぅん、私のものあの女のとでは、随分違うわよ?』
静寂が二人を包む
エリカの重心が僅かに下がる
壬生『(!来r、っ!なにがおきたの?剣をにぎっていられない。)』
打ち合うつもりが、いつの間にかやられていた。
しかも、壬生に襲う痛みは尋常でない。
その痛みが意識を支配し、処理が追いつかない。
エリカ『…ごめんなさい、先輩。骨が折れているかも。』
壬生『…良いわ、手加減が出来なかったってことでしょ?』
漸く、何をされたのか判ってきたが、そんなことはどうでも良かった。
エリカは強かった。自分が手も足も出なかったくらい。
エリカ『…うん。先輩は誇っていいよ、あの女にも出来なかった剣術の大家、千葉の娘に本気を出させたんだから。』
壬生『…ぇ?貴女、あの千葉家の?』
千葉と聴いてピンとくれば良かったのだが、あのときの壬生にそこまで判るのは難しかった。
エリカ『実はそうなんだ。因みに、渡辺 摩利は目録で私は印可。剣の腕なら私の方が上。』
自分のCADを懐に納めながら、恥ずかしそうに壬生に身分を明かすエリカ
壬生『そうだったのね。…あと、不躾でごめんなさいね。保健室まで支…えてくれ…?』
自分は全力を出しきったのだ、それでも勝てなかった
負けて悔しい気もあるが、清々しい気持ちである
エリカ『先輩?…気絶しちゃったのね。』
壬生の声が途切れ、ドサッと音がして、振り向くと倒れてしまったようだ。
壬生の体に負担を掛けないように抱き上げる
達也『…流石だな。』
いつの間に来ていたのか、達也はエリカの剣に感心を寄せていた
千葉の娘というだけあって、腕は確かなものだった
エリカ『ちょっと?こっちは大変だったんだけど?罰として、先輩を保健室まで運びなさい。』
面倒事を勝手に押し付けたのだ
これくらいやってもチャラにはならない
達也『承知した。』
嫌な顔一つせず、壬生を姫抱きする
達也の抱き上げる一連の動作をみて、舌を巻くエリカ
壬生に一切の負担がないように抱き上げる達也
それでいて、達也も最小限の力しか使っていない
エリカ『それで、達也君?他の奴らは?』
しかし、それよりも重要な事がある。
達也が相手した敵がいないのだ。
逃がした訳ではないだろう。そのため、余計に気になった。
達也『計五人とも別の場所に運んだ。騒ぎを起こした人間達を集める場所があって、そこに。』
どうやら、テロの鎮圧は完了しつつあるらしい。
達也の言葉がそれを裏付けた。
エリカ『ふーん。…達也君、今日はなんか恐いというか殺気立ってる?』
若干、丁寧語と砕けた口調が混ざって違和感を覚えたエリカ。
それに気付いたのは、光井ほのかと北山雫を庇って七草真由美の魔法を弾いた時と似ている。
達也『(感情的になってる分の殺気が表立ったか)…そうだな。こんな面倒事を仕出かしてくれたからな。』
どうやら、無意識の内に殺気が漏れていたらしい。
エリカ『(時々、不思議に思うけど、達也君って人間性が解らないのよね。他人事のように話す割には真剣身を帯びてるし。)…それ、誰に対して?』
知り合ってまだ、一ヶ月も経っていないため解らないのは当然だが、性格の傾向はあるのが当たり前である。
しかし、達也にはそれが当てはまらない。
達也『勿論、ブランシュとそれに誑かされた人間にだが?』
エリカ『壬生先輩も含まれてるの解ってる?』
達也『無論だ。自分自身と向き合おうとしなかった罰だ。』
毒を吐くと人はよく例えるが、達也の言葉は猛毒、劇薬のように感じる。
それほどまでに達也の言葉には耳を塞ぎたくなる。
エリカ『…えぇ。容赦ない。そんなこと出来るの極僅かな人間だけだと思うんだけど。』
正論だとは思うも、失敗もするのがヒトであり、それはある意味では、素晴らしいことだとも言えるのだ。
一応、弁護する訳ではないが、壬生の味方をする。
達也『なんだ。俺が悪いのか?まあ、それは置いといてだな。保健室の扉を開けてくれないか?』
エリカ『なんか、はぐらかされた感じがあるけど。はい、どうぞ。』
あっという間に保健室に到着した。
両手で壬生をだき抱えているため、扉を開けることが出来ない。
壬生先輩もいつまでもこの体勢は可哀想なため、エリカに扉を開けるよう頼む。
達也『ありがとう。』
壬生『…ここは?』
意識が覚醒してきて、自分がどこにいるのか口に出して思考を試みると、周りから声が聞こえてきた。
真由美『あら、気が付いた?ここは保健室よ。っあ、まだ、起き上がっちゃだめよ。骨にヒビが入っているから。安静にしないと。』
起き上がろうとする壬生を抑えるも諦めないため、背凭れを用意し、壬生を楽な姿勢にさせる。
しかし、骨にヒビが入っているため安静なことにはかわりないが。
摩利『そうだぞ。』
真由美の言に賛同するように
今は寝ておけと謂わんばかりの摩利
壬生『わ、渡辺先輩。』
摩利の姿を見て、壬生は少し強張った表情をみせる。
まるで摩利と何かあったように見受けられた。
エリカ『?何~?壬生先輩、この女に何かされたのかしら?』
摩利『茶化すなエリカ!』
壬生の様子がおかしいことに気がついたエリカがここぞとばかりに、摩利を弄ろとする。
それが嫌なのか、声を荒げる。
壬生『い、いえ。そ、その…。』
なおも、動揺を続けている壬生に様子がおかしいと静観していた真由美。
真由美『?何だか摩利に怯えてる?』
摩利『おいおい、真由美まで。そんなことはしてないつもりなんだが?』
真由美『とりあえず、事情を聴くしかないわ。壬生さん、何があったか話してくれる?』
真由美は壬生の状態を的確に把握して、最も的を射た言葉を選ぶ。
摩利はそれを否定はしないが、憶えが無いため戸惑う。
しかし、それ以外考えられない。
原因を探るには、当事者に聞くことが手っ取り早い。
壬生『はい。ーーー』
それは、壬生と摩利の初めての邂逅から始まった。
風紀委員での摩利は剣術部を竹刀を持ってして、沈めた手腕に憧れを抱いたのだ。
この人と手合わせしたいと。
しかし、現実はそう上手くいかなかった。
壬生の申し出を摩利はすげなくあしらったからだ。
それからの壬生は想像通りであろう。
摩利『…本当に私がそんなことを?』
壬生『…思えば、私が天狗だったんです。魔法力の無い私が渡辺先輩に指南いただこうなんて。』
摩利『それは違うぞ!あのとき、私はこう言ったはずだ。【私では、お前の相手は務まらない。お前の方が実力が上だ。お前に見合う相手を探してくれ】とな。違うか?』
壬生『え?あ、そう言われれば、そうかも。でも、なんで私…。』
真由美『おそらく、最初の言葉が勘違いを起こさせて、混乱を招いたきっかけね。でも、どうしてそこまでの記憶違いをしたのかしら?』
『…
全員『『えっ?』』
エリカ『…彼、守夢君が言ってたわ。可能性がある魔法の名前よ。でも、壬生先輩。これだけは言わせて、貴女の剣の腕は私が本気を出させたこと。それは、この渡辺 摩利には出来なかった。』
エリカは決して、優しくはないと思っている。過大評価はしないし、結果だけを伝える。その過程を認めることもあるが、結局は出来たか出来なかったかを判断する。
壬生『…ありがとう。千葉さん。』
純粋に自身の剣技が認められたことはとても嬉しいことだ。例え、魔法が上手く使えなくても。
真由美『あら?そう言えば、今回も大活躍の守夢君は?』
摩利『それなら、用事があるとかで帰ったぞ?』
話題に事欠かない達也は、良い悪い意味どちらにしても有名人になりつつあった。
十文字『いいのか?残党がいるかもしれん。まだ、あいつの力が必要かも知れんぞ?』
十文字でさえ、達也の力は認めている。
頭数として、欠けられては困ると言いたげな台詞である。
摩利『大丈夫だ、残党に関しては、私が吐かせたからもう居ないことは実証されている。手引きした人物も捕獲済みだ。それより問題は、ブランシュの拠点を突き止めることだ。』
裏付けは済んだため、反撃に出るための準備が必要で、そのためには、敵の所在が解らないことには、意味がない。
小野『それなら問題ないわ。私が教えてあげる。』
レオ『いつも思うんだが、はるかちゃんて何者?』
エリカ『レオ、そのはるかちゃんって何?』
レオ『ん?結構知られてるぜ?小野先生と呼ぶんじゃなくて、名前で呼ぶ事は。』
いつの間に部屋に居たのか不明な彼女だが、それを詮索するのは野暮だろう。
価値のある情報をくれるのだ。
感謝こそすれ、煙たがる必要はない。
エリカ『ふ~ん。まあ、いいわ。それで小野先生、奴らのアジトはどこに?』
小野『慌てないの。誰か端末を出して。』
エリカの端末と真由美の端末にブランシュのアジトの位置情報を譲渡する。
その位置に誰もが驚愕した。
真由美『ここは…嘘でしょ?』
摩利『なめられたものだな。目と鼻の先だ。』
エリカ『上等。売られた喧嘩は安く買いたたいてやるんだから。』
十文字『勇み足も良いが、ここにいるメンバー全員は難しいぞ。学校で何があるか不安要素がないとも限らん。それに、ここから先は、警察に委ねるべきなのだが、壬生や他の生徒のブランシュの関与で家裁送りは避けたい。彼女達を守るためにもな。ここからは、俺達(十師族)の出番だろう。』
真由美『…そうね。』
どうやら、ブランシュのアジトは第一高校からそう離れていない位置にあるようで。
好戦的なエリカと摩利は潰す気満々のようであるが、慎重な十文字はリスクも考える必要があるため、人選は大切だと説く。
そして、壬生達の事もあるため、警察より十師族が動く必要性も選択肢として考えていた。
深雪『魔法師の未来のためにも後顧の憂いを断っておくべきですね。それについては、同感です。』
十文字の言葉に深雪は同意しているものの、どこか違う意味に捉えているように感じられるが、それを理解出来る人物はいない。
摩利『しかし、メンバーはどうする?そうなってくると私と真由美は除外になるな。』
学校での騒動を収束に導くには、真由美の力が必要である。そうなると必然的に摩利は真由美のサポートにまわる。
十文字『…そうだな。俺なりに考えたのは---』
時間を遡り、神夢家
達也は自室でブランシュアジト破壊とブランシュ日本支部を殲滅するための支度をしていた
達也『(来年には結那と加蓮、再来年には恭也が入学する。根本を排除するには今しか無い。ブランシュ日本支部を潰す。最終的には、ブランシュを創ったあの男を抹殺するが、今は司 一、奴を排除する。)』
拳銃型CAD・黒い刀身の日本刀所謂、黒刀・リボルバーの拳銃を身に着け部屋を出る
バイクでブランシュのアジトに向かうため駐車場に向かう達也
普段は誰かしらに出会うのだが、ここまで誰にも見つからず順調だった
達也にとってはこれからすることがバレないのは好都合のため、気にしてはいなかった
しかし、それは裏を返せば誤算をしているということとも取れないだろうか
達也『…』
人の気配を察知して、立ち止まる
その気配はどこか、怒りと心配を併せ持っていた
浩也『…どこに行く、達也。』
仕事から帰宅して、浴衣を羽織っている浩也
いつも、仕事から帰って来ると和装に着替えて、ゆったりとした雰囲気を醸し出すが、今回は怒気を孕んでいる
達也『義父さん。』
怒っていると解っているも、自分も今回は譲れないものがあるため臨戦態勢を取る
それは、相手が浩也のみだからではない
風間『藤林にお前が何かを調べているのか探らせたが、判らなかった。だから、お前を最後まで泳がせた。そして、今漸くお前が何をしようとしているのかが判った。相手に悟らせない技術は流石だが、これは、いただけないな。義父としては。』
軍の上司としてではなく、後見人の一人いや、一人の父親として、達也を諫める。
達也『少…義父さん。…それで、俺をどうするおつもりで?』
この二人が相手となると、負傷は免れない。全力を出してもいいが、それが、長時間になると、神夢の人間が出てくる。
それだけは、避けたいところである。
浩也『達也、俺達はそんなに信用がないか?』
暫しの沈黙を破り、浩也が問い掛ける。
達也『いえ、決してそんなことは。唯一無二の家族です。結那、加蓮、恭也に危害が及ぶなら神夢に危害が及ぶなら、俺が…』
達也を受け入れて、家族にしてくれた。それは、何よりも幸せなことである。
しかし、その大切な家族に害が及ぶ可能性が少しでもあるなら達也は必ず家族のために戦う覚悟がある。
それが地獄に続く道だとしても。
浩也『神夢家を守るためにも業をその身に引き受けるか?』
達也『…はい。』
浩也『夜に九重寺に出向いていたのは知っている。八雲から連絡があった。』
八雲の裏切りを知り、裏切ったな、師匠と恨みの念をこめる。
考えても見ればわかる話である。八雲は達也を弟子に欲しいと浩也に懇願したのだ。その際の条件に達也に何か変化があれば、報告すると約定を交わしていれば、その約定に従い浩也に連絡が入る。
しかし、実際のところは何の約定も交わしていないのは達也の知る由も無い。
これは、八雲の達也を思っての行動だった。
風間『それの少し前にブランシュの動きが活発になっていると情報を掴んだ。それと、今日、第一高校でテロが勃発した。それらを合わせるとお前が何か行動を起こすんじゃないかと思っていたが。』
達也が神夢家のために動かない理由はない。
その行動を信用しての待ち伏せは案の定、成功した訳であるが。
浩也『達也、率直に言う。軍に任せろ。百歩譲って、討伐に加わるのは構わない。しかし、個人で行くのは許可出来ない。』
達也『俺が行かずとも、魔法科高校の面々が準備しているとしてもですか?』
何か達也が行くと不味いことでもあるような口振りである。そのため、達也にも反論の隙が窺えた。
風間『…どういうことだ?』
十師族が介入するなら、軍の出る幕は無い。
達也『推測ですが、おそらく。それが理由ではありません。それに…』
浩也『?なんだ?』
本当に二人が達也に隠したがる理由は一つ。
達也『知っていますよ?十師族の四葉と七草、十文字が俺の事、神夢の事を調べまわっていることも。』
達也の情報が外部に漏れないようにするためである。
達也は神夢家の存在と同様に様々な秘密がある。
それは、達也自身が一番理解しているところである。
しかし、それは弱味ともとれる。それは、達也にとってはとても不本意なことだ。
浩也『!!』
風間『そこまで知って、何故だ?』
達也『主な理由は結那、加蓮、恭也です。これだけは絶対に譲れません。止めると仰るなら俺を病院送りにする以外ありませんよ。』
自分は神夢家の盾となり、矛となることに決めたのだ。
自分の秘密が暴露されようと、この家が護れるなら本望だ。
今度こそ、達也を止めるために浩也と風間が構える。達也も同様に。
互いに間合いを図っていると
第三者の介入、しかも達也にとっての幸運だった。
凛『良いじゃありませんか。行かせてあげても。』
それは、三人にそれぞれ衝撃を与えるものだった。
浩也『凛!それは、達也の情報が奴らに流れてしまうということでもあるんだぞ!』
何を考えているんだと、憤慨する浩也だが、凛はそんな言葉にも何のその。
風間『神夢家の存在は秘されて問題は無いですが、表の守夢家は探られる可能性は0ではない。』
風間は風間で理性的な反論をして、メリットとデメリットの大きさの違いを出す。
凛『…何をグダグダと。達也が守ってくれるのなら、こちらも全力で達也を守れば良いだけの話。こんな簡単な話なのに、悩む必要性が見当たらないわ。』
簡単な事ではあるが、いざ実行に移すと難しいことが多くある。
しかし、ここでは、然程難しくない。
なにせ、世界最高機密と人類最強?が互いに守り合うのだ。出来ない事はない。
達也『義母さん。』
いつも達也に甘いのは、浩也の方だが、今回は凛が達也を庇ったことで、浩也達もタジタジである。
凛『達也、怪我も無く帰って来なさい。あと、血糊と血臭は落としてらっしゃいね?あの子達が泣くのを見たくないでしょ?最後に、夕飯までには帰ってらっしゃい。』
まるで、お遣いにでも頼むような約束であるが、達也はこれを違えることはしないと誓う。
達也『はい』
凛『まぁ、でも。泣かせたら、それはそれで責任を取ってもらうまでですから。』
しかし、最後の台詞で、やはりいつもの凛だと認識する。
達也『ありがとうございます。義父さん、お願いします、行かせて下さい。』
家族の同意を得て、出発したい。
後ろめたいことはしたくない達也であるが、そもそも隠れて行動していたことは心情に反しているのだが、それはそれ、これはこれ。
浩也『…なるべく、ばれないようにしなさい。…帰ったら、説教だ。』
風間『気を付けてな。暴れてこい。』
二人の許可も出たことで達也には何も恐くない。
あとは、無事に帰って来るだけだ。
達也『ありがとうございます。いってきます。』
達也『ここだな。』
バイクで走ること三十分でブランシュアジトのバイオ工場に到着し、閉鎖されている鋼鉄の門を轟音とともにぶち破る。
??『私に何か御用かな?』
工場内に潜入し、アジトにしている広い空間に奴は居た
達也『お前が司一だな?』
確認する必要もないが、口上として確認する。
特徴としては、眼鏡を掛けて若干インテリ系を醸し出した雰囲気の、20代後半から30代前半の男性であった。
司『如何にも。突然の襲撃で門を破壊してくれて、お詫びの一つもして欲しいところだよ。それで、君は一体何者かな?』
まるで、ここは自分の家だと謂わんばかりである。
廃工場をアジトにしているだけの男が随分な言い様である。
達也『俺か?俺は、お前が義弟を使って襲わせた人物だが?』
説明するのも面倒なためヒントだけ与える。
司『!?君が例の守夢 達也君だったか。ここに来たということは我々の仲間になるために来てくれたのかな?』
私は運が良いといった表情だが、甚だ検討違いをする人間だと達也は思った。
達也『冗談も休み休み言えよ。俺がここに来た理由はお前達を殺しにだ。これ以上、俺の周りを荒らされては困るのでな。』
これ以上の長話は必要も無いため単刀直入に言う。
司『ふははは。面白い冗談だね。君一人でこの人数を相手にどうにかなるとでも?魔法師風情が調子にのらないことだ。…この戦力差を判らないわけではあるまい?さあ、守夢 達也!我々の仲間になるが良い!』
突然、眼鏡を空中に投げて髪をかき上げる仕草をして、達也の眼と自分の眼を合わせる仕草をした。次の瞬間、司の眼が妖しげな光を放った。
『ふははは!これで守夢 達也は我々の仲間だ!』
高笑いをする司だが、達也はその様子を何の感慨もなく見ていた。
達也『…下らん。そんな魔法で俺を従えるなど思うなよ。五流の魔法師。』
司『なっ!俺の
達也『そんな粗悪な魔法が効くとでも?【
司 一の魔法をご丁寧に解説して、拳銃型CADを構え、引き金を引く。
ブランシュのサブマシンガンやライフル等がバラバラになる。
ブランシュメンバーA『なっ!』
ブランシュメンバーB『ぶ、武器が!』
ブランシュメンバーC『こいつ、何をしやがった?』
何をされたか解っていないようだが、生憎、それを教えてやるつもりもなく。
司『き、貴様!』
達也『なんだ、もう化けの皮が剥がれたのか。拍子抜けだな。』
続けざまに引き金を引くと今度は、人間の体に穴を穿っていく。
脚や腕、腹などに穴を穿ち、ブランシュの人間の悲鳴で埋め尽くされた。
ブランシュメンバーB『ぐぁぁ!』
ブランシュメンバーD『ぎゃぁぁ!』
司『な、なっ。そんな馬鹿な。たかが高校生一人に。』
危機察知能力は少しは備えているのか、すぐに逃げた司だが、達也には分かりきっていた。
達也『(奥に逃げ込んだか。なら、良い。先にこいつらを始末しておくか。)…ブランシュに入らなければ、殺されることもなかったのにな。すまないな。』
そう呟くも返答はない。
痛みで気絶もしくは、呻く気力が無いのだから。
そうして床に臥せているメンバーに達也は無慈悲にも銃口を向けて引き金を引いた。
達也『待ち伏せ部隊か、俺に対しては無意味だがな。』
司が逃げ込んだと思われる部屋の気配を探ると、残党が十数名確認出来た。
おまけとして、銃火器を所持しているのも確認済みである。が、達也に対して、そんなものは意味を成さない。
学習能力が無いなと思いながら、再度銃火器に引き金を引く。
ブランシュメンバーE『銃がバラバラに!』
ブランシュメンバーF『どんな魔法なんだ!?』
銃火器を使用不可能にして、正面から堂々と入る。
魔法とだけ理解したらしいが、それ以上は解らないブランシュに嘆息する。
【分解】
エイドス(個別情報体)を分解する。
収束、発散、吸収、放出の要素を持つ構造情報に直接干渉する複合魔法
物体・魔法を問わず全てを構成要素にまで分解する。
そして、この力の最大の長所は、もう一つの自分の能力と合わさって、絶対に防げない領域まで分解が出来るのだが、それは追々。
司『またか!一体どんな魔法を。…だが、甘いな魔法師。このキャストジャミングでは、手も足も出まい!』
武器を破壊され、衝撃を受けるもまだ、人数に分があると誤認する。
腕に嵌めている金属でキャストジャミングを放つ。
達也『(アンティナイト 古代文明が栄え、尚且つ高山地帯でのみ産出される貴重な軍事物資)
キャストジャミングを浴びても、ものともしない達也。
相手が隠したがっている正体を解説する。
司『っ!や、やれ!相手は一人なんだ!束で掛かれば問d……な…い。』
スポンサーをバラされて、動揺が激しく、前の部屋での惨劇を忘れていたのか、逃げずに達也を殺すことしか頭に無い。
それが、何を意味するのかは司の頭では理解出来ていない。
司が台詞を言い終える前に
達也『かかれば、なんだ?』
達也は右手に黒刀を左手に拳銃型CADを手に司の眼前に立っていた。
後ろには、地に伏したブランシュメンバー達
補足するなら、心臓付近に大きな穴が空いていたり、首がとんでいたりとどれも無惨な姿だった。
司『そ、そんな。この人数を一瞬で。どうやって。』
ありえない、目の前にいるのは人間のはずだ。
目の前に居る少年は、異常だ。
身体能力もそうだが、何より、人間を殺すことに僅かの躊躇いもない。精神がおかしいとしか言い様がない。
夥しい血の量と血臭、死臭がする中、顔色一つ変えない。
達也『悪いな、今日の俺は虫の居所が悪い。さっきの人間達とこっちの人間達、全て殺した。だが、貴様には生き証人として残ってもらうが、ある程度の苦痛は味わってもらう。恨むなら、ブランシュのリーダーになった自身を恨むんだな。』
そんな司の心情など気にするのが皆無の達也は、懐から数発弾が残っているリボルバーの拳銃を司に向ける。
司『や、やめ…ーーー』
司 一の断末魔の叫びは空しくも達也しか聴こえておらず、達也もその声に何の感慨も抱かなかった。
達也『…さて、こいつから、俺の記憶は消しておかなければ。』
痛みで気絶している司の頭に触れ、記憶を司る部分から達也に関する情報を抹消する。
また、他のブランシュメンバーからも達也に関する情報を抹消する。と言っても、死者のため、頭ごと分解する。
掛かること数秒。
達也『そろそろ、あいつらが来る。その前に撤収するか。』
確証は無いが、十文字を元とした討伐メンバーが組まれているはずだ。
夕飯に遅れないように帰ることが達也にとって最重要課題であるため急ぎ乗ってきたバイクの元へ走る。
その後ろ姿は、先程までの殺気を纏ったものではなく、家族に怒られないように慌てる少年のようだった。
如何でしょうか?
①達也君、有能すぎます。パソコン技術あり得ない
②達也君、小野先生の正体は知っています。
③達也君の分解がチートになりすぎてますね。
④達也君、家族大好きっ子です。
⑤達也君、銃刀法違反ですね。
とまぁ、お待たせして申し訳ないです。
次回は、番外編を予定?はしてます。
よろしくお願いします。