抹殺された神の愛し子 作:貴神
飛行術式の理論がイマイチ掴めない
魔法について勉強します
それでは、お楽しみいただければ幸いです
エリシオン社 本社
エリシオンとはエーリュシオン - ギリシア神話に登場する楽園の名、「エリュシオン」の英語読みで
起業する名前として、社員や世の中が楽園になってくれるようにと願いを籠め、その努力をしてきた。
それは現在も続いている。
家から交通機関で約三十分に位置するここは、
神夢家の表の顔である。
他にもいくつか会社があるものの魔法の世界になってからは、この会社がメイン処になっている。
支社が全国にあるが、開発部はこの本社にしかない。
というよりも、魔法工学技師がそこまで多くはいないため、全国に派遣出来ないのだ。
それならば、一箇所に集中させて行う方が効率的だと考えたのである。
この開発部には、魔工師で有名なトーラス・シルバーが存在するのだが、どのような人物像かはご想像にお任せする。
今日は、高校を休みこの場所に来ている達也。
ある用事を果たしにだがーー
達也は受付の社員や警備の方達に挨拶をし、中に入っていく。
一見、セキュリティは?と疑問に感じるが、その点については問題無い。
まず、顔認証、網膜認証、ICカード認証等、魔法師なら想子-サイオン-にも特徴があるため想子-サイオン-認証。それを流して確認する他にもセキュリティは掛けられており、外部の人間が内部には入れない仕組みになっている。
また、人質をとられないように受付や、警備の前にはライフル弾を弾き返す防弾ガラスが設置されており、社員の安全も考慮に入れた設計になっている。
達也はそのまま奥に行き、EVで地下へ降りていく。
地下10階
そこに、エリシオン社自慢の開発部がそこに存在する。
その部署で働く人数は約20名程
老舗の会社にしては、少数であることは間違いない。
競合他社からしてもこの人数は少ない。
それでも勝ち続けているのは、それだけ人材の質が良いということ。
達也は開発部と表札のある部屋の扉を開ける。
その部屋は魔法工学のスペシャリスト達が集い、研究を続けていた。
扉の開放された音に気が付いた数人が達也に駆け寄る。
研究員①『あ、達也。お疲れ様~。』
研究員②『御曹司、今日はどうされましたか?』
次々と研究員達が達也を慕い駆け寄ってくる。
達也『いえ、今日はあの人に用事がありまして。』
研究員③『お、そういえば、あれが出来たんだったな。』
達也の言葉に何人かは意図が理解出来、嬉しそうな表情をする。
達也『はい。しっかりとテストのために。牛山さんはどちらに?』
研究員④『少々お待ち下さいね。』
と言い残し、牛山という人物を呼びにいく。
??『お呼びですか?ミスター?』
達也『お呼びだてしてすみません。牛山さん。』
ミスターと達也を揶揄する人物が牛山である
牛山『いけませんなぁ、天下のミスターシルバーであろうお方が。俺達は貴方のおかげでここに居られる。それをお忘れか?』
自分をへりくだろうとする達也に
彼は牛山は達也を窘める。
全社員が達也の実力を認め、尊敬している。また、弟分として可愛がれている。
浩也の義息であるということもあるが、それは最初の紹介だけ。それ以降は達也自身が全社員と関係性を築き上げた結果にすぎない。
達也『いえ、ですが、ミスタートーラス。貴方がここに来ていただけなかったら、トーラス・シルバーは存在せず、ループキャストも出来ませんでしたから。』
牛山『あーあ、負けましたよ。けど、あそこから俺達を引き抜いていただいた恩に比べれば微々たるもんですから。』
開発部の牛山含めた数名はこのエリシオン社には最初から居ない。
所謂、引き抜きと言われる形でこのエリシオン社に入社した。
だが、この時の引き抜きは決してスムーズに行われたとは言い難かった。
牛山達はあるCADメーカーで開発部に在籍していた。
そこで、牛山達は開発の仕事をしているのかと言えば、そうではなった。
そこでやらされていた仕事は競合他社の開発していたCADの分解と解析のみ。
牛山達は腕は十二分にあるが、上役達とは反りが合わず。冷遇されており、開発に携わることは禁じられていた。
だが、牛山達もその状況を甘んじていた訳でもない。
隙をみては、CADを開発し、独自で営業をかけていた。
その行動が幸運にも達也と浩也に出会い、エリシオン社に来ないかと誘われたのである。
しかし、先にも説明した通り、牛山達の在籍する会社は牛山達の退職に関して首を縦に振らなかった。
当然と言えば当然である。会社と反りが合わないとはいえ、腕のある牛山達を早々手放す訳もなく。
だがー
備えあれば憂いなしとはこのことだろうか。
牛山達は会社からの冷遇の証拠を全て残しており、切り札としてそれを会社側に叩きつけたのだった。
それでも会社は渋る始末で最終的には、引き抜き?の損害賠償を支払い(勿論、不当な扱い雇用契約違反もあり、賠償額は1/10にも満たなかったのだが)をして解決した。
結果として、エリシオン社と牛山達は大儲けで相手の企業は大損という因果応報とはこの事かと意味を知る良い機会となった訳である。
達也『あれは、義父のおかげで私は何もしてませんよ?』
牛山『あーもう。こっちが折れるしかないですね。それよか、此方に来たということは何か出来たからでしょう?』
嘆息し、仕事に切り換える。
達也は謙遜がすぎる
それは、全社員が思っていることだ
だが、それは達也の美徳だ
むやみやたらに批判はしない
達也『OK。牛山さん、先日、これが完成しました。』
バッグから箱を取り出す。
牛山『!これは、飛行デバイスですか?』
達也『はい。家族総出で試験はしましたが、市販にはまだまだ改良が必要なので、そこをテスターの皆さんと牛山さんのフィードバックをお願いしたく。』
牛山『承知しました!歴史的瞬間を拝めるのは見逃せないな。
誰か、今日の休みのテスターは?
いない?もういる?
なるほど、先に呼び出し喰らってた訳か
なら、さっそく、準備にかかるぞ!』
牛山や他の社員の声が交差し、慌ただしくし始める。
試験ということはとても重要である。
例えば、何か薬品を新しく造ったとしよう、それを売り出すにはまず、それの効果や副作用といったものを調べる必要がある。
そして、それを改良を重ね続けて漸く完成する。
この飛行魔法も軽い試験は行ったものの、データは採っていない。
だから、魔法師に負担がかかるものが存在していないかを確認する必要性がある。
体育館並みの広さの試験場
テスター十数名が達也が造り上げた魔法式をコピーしたデバイスを手に準備をしていた。
牛山『テスト開始!』
テスター①『始めます。』
実験開始の合図に固唾を飲む
達也の腕は超一流だ。しかし、歴史的瞬間は緊張を孕む
研究員『接地面からの離床を確認』
研究員『反動による床面接地圧の上昇、観測なし』
研究員『上昇加速度の誤差は許容範囲内』
研究員『CADの動作は安定しています』
緩やかにテスターの体が宙に浮く。
テスターを飛行の失敗の危険から守るケーブルも弛むことが魔法による飛翔と判別が可能だ。
観測の報告と目の前で起こる事象に全員が固唾を呑む
達也『…(ここからだ)』
だが、達也だけは表情は厳しい
研究員『上方への加速度減少…0(ゼロ)。等速で上昇中』
観測室が試験場の高さ約3mの位置に存在し、そこでテスターが停まる
研究員『上昇加速度、マイナスにシフト…上昇速度0(ゼロ)停止を確認』
研究員『水平方向へ、加速を検知』
研究員『加速停止。水平移動の加速を1m/sで検知』
ひゅっと、誰が、誰もが息を呑む
観測の報告よりも目の前でハッキリと分かる速度で空中を飛んでいるテスターの姿
研究員『飛んでる…』
研究員『…ウソ』
テスター①『テスター①より管制へ
飛んでいます。俺は鳥のようだ!』
歓声があがる
テスター①の飛行を確認して他のテスターも同様にスイッチを入れる
十数名のテスターが自由に飛行する姿にまるで達也も満足げな表情をみせるも目だけは職人のような、厳しいものだった
牛山『おめでとうございます、御曹子。』
達也『ありがとうございます。皆さんのおかげです。』
が、皆が喜ぶ姿に努力してきた甲斐があったと少し、顔を綻ばせた。
達也『皆さん、遊びすぎです。』
牛山『御曹司、容赦ない。』
達也『当たり前です。私の腕前を信頼していただけるのは若輩者としては嬉しく思いますが、それとこれとは別問題。後遺症が残らなかったから良いものの、何かあってからでは遅いのです。』
結局のところ、テスター全員が魔法力と
後遺症がなかったから良かったものの達也にとっては夢見が悪いものとなった
テスター全員『すみませんでした。』
研究員『まぁ、達也。これくらいで許してあげな。嬉しかったんだよ。お前がこんな歴史的快挙を成し遂げてな。それを誰よりも早く体験出来るんだ。大目に見てあげてくれ。』
達也を小さな頃から見ているため、もはや、弟どころか自分の子のような感覚だ
達也の心配は判らないまでもない
達也『…そうですね。皆さんありがとうございました。これで、市販に向けての目処がたちました。』
牛山『それで、私達は何をすれば?』
達也『嫌ですね、皆さん。もう解ってるのでは?』
牛山達がまるで、解ってないという風な回答に達也もおどける
研究員『これは、一本取られたな。牛山さん、早速、ハードの改良に入りましょう。』
牛山『そうですな。御曹司、失礼しました。自動吸引スキームの効率化とタイムレコーダーに専用回路ですね?』
意志疎通は完璧とも言える達也と研究員達のやりとり
達也としてもこれほど仕事場として居心地が良いのはありがたい
達也『お願いします。』
ーーーーーーーーーー
真由美『はぁ~。』
突然のため息に生徒会室に居た役員(服部は巡回)と摩利は何事かと振り返る
深雪『どうかされましたか?会長?』
毅然とした態度で困難も乗り越えてきた真由美のため息に驚きを隠せない
真由美『九校戦のメンバーなんだけどね、選手は十文字君が協力してくれたから苦労はしなかったんだけど、バックアップする所謂サポートね。CADを調整してくれるエンジニアがねぇ。』
今年もやってくる九校戦
全国の魔法科高校同士の熱い戦いがやってくる
この日のために、ある意味頑張ってくる生徒達もいるほどこれは魔法師人生において重要なイベントと言っても過言ではない
その大事な日であるのに、ある人種がーー
深雪『…集まらないと?』
摩利『まあ、毎年のことだ。ウチは実技等の成績は良いが、理論や技術と言った裏方のような分野に苦手意識があるみたいでね。』
毎年恒例の悩みらしいのだが、今年は特に酷いとのことだ
真由美『せめて、摩利が自分のCADを調整出来ればいいんだけど。』
摩利『いやはや、それは深刻な問題だなぁ。』
まるで他人事のような摩利の言い草に愚痴を溢す真由美と図星を突かれ、他人事のように話す摩利
真由美『準理論畑の五十里君もその道の専門ってわけではないけど、千代田さんの調整は彼だから。あーちゃんとか他も居るんだけど、圧倒的に人数が足らないの。頑張って貰ったらなんとかなるかな?と思うんだけど。問題は新人戦のエンジニアが足りないの。』
エンジニアの数は選手以上に神経質になる。
毎年の恒例行事とは言え、問題が軽くはない。
深雪『なるほど、そういうことでしたか。しかし、いくら、選手ばかりとはいえ、最低数は居るはずですが。』
真由美『そうなんだけど、CADというのは、選手の力を引き出すのはCADが重要でしょう?そこをクリアするとなると、ある程度の腕が必要なんだけどーー。』
たしかにと深雪は思った。
自分のCADはある意味自分の分身。
エンジニアの腕が良くなければ、反動は自分に返ってくる。
真由美『やっぱり、りんちゃん…』
鈴音『無理です。私では、中条さん達の足を引っ張るだけです。』
人数の当てにしていた希望があっさりと断られ、絶望の底に叩き落とされたような真由美
真由美『うぅぅぅぅ。摩利~。』
摩利『おいおい、チームのリーダーがそんな顔をしてどうする?なんとかなるさ。』
全く当てにならない発言である。
深雪『でしたら、全校生徒の成績を確認するというのは如何でしょうか?』
何か手がかりになればと助け舟を出す深雪
真由美『え?』
深雪『もしかしたら、何か発見があるかもしれません。』
それも一理ある。
真由美達は去年や十文字達選手からのフィードバックでエンジニアを探していた節がある。
新たな視点からなら何か見つけられるかもしれない。
鈴音『一年生から確認してみましょう。エンジニアなので、実技と筆記試験の両方の成績の良い生徒を上位20名はーー』
一位は司波さんですね。
二位三位も光井さん、北山さん。
そこから十三束君という生徒でーー
30分後
真由美『……私、リーダー辞めたい。』
この世にこれ程の絶望はあるのかという表情をしている真由美
摩利『おいおい。まあ、気持ちは解らんではないが。』
真由美を慰めてはいるがこちらも同様に顔は、ひきつっている。
真由美『どうして、選手以外まともな生徒は居ないのよ!?』
結果としては、トップ30までが選手のメンバーばかり。
エンジニアの指標の実技と筆記試験の総合成績は30位から100位程度は皆押並べて似たり寄ったりの成績だったのである。
これでは、誰がエンジニアをしても選手の力だけで勝ち抜かなければならない。
もっと、飛び抜けた才能を持つ生徒
選手の成績なんて歯牙にもかけない他を寄せ付けない圧倒的な理論の成績の生徒ーーー
鈴音『…そういえばーー』
一瞬、何か見落としていることに気付く。
忘れ去ってしまっても良いのだが、直感が無視するなと伝えてくる。
その何かを手繰り寄せるため声にする
真由美『?どうしたの?リンちゃん。』
鈴音の発言の続きが待っても来ないため訝しむ
何かを記憶の底から引き上げるために思考に耽っていた鈴音が目を見開く
鈴音『!……いえ、どうして私達はエンジニアが理論と実技の両方を兼ね備えていないと決めつけていたんでしょうか?』
鈴音の極々当たり前の質問に全員は何を言っているんだ?という表情をする
摩利『何を馬鹿なことを、当たり前だろう?実技が出来ていなければ、理論など到底不可…の、う?』
鈴音の言葉を一蹴する摩利だが、何かに気付く。
真由美『摩利までどうしたの?』
親友まで押し黙るため、段々不安になってくる真由美
深雪・あずさ『『…あっ!』』
次いで深雪と梓までが何かに気付いて声を上げる
ほのか・雫『『……』』
真由美『ちょっと、ちょっと。皆して、私にも解るように説明してちょうだい。』
とうとう、不安を通り越して文句になった
当然といえば当然か
真由美以外(他2名除く)が何かに気づき、それを真由美に教えてくれないのだ。
鈴音『会長、私達はエンジニアの枠を縮めていたのかもしれません。』
真由美『?なんで?』
漸く、鈴音が整理出来たため真由美に説明をする。
真由美はもう考えることすら止めて鈴音の説明を聞くことにする
鈴音『結論を言うとですね。理論が第一高校開校して以来の最高の生徒が居ます。というよりも、おそらく魔法の歴史始まって以来といっても過言ではないかもしれません。』
真由美『だって、両方できる生徒ではもう選手以外いないじゃない。』
鈴音『だからです。私達は実技が出来ないと理論が出来ないと思い込んでいたんです。…居ましたよね?筆記試験、理論が完璧とも言える生徒が。他を寄せ付けない満点とも言える生徒が一人だけ。』
それまで、絶望の淵に立たされていた真由美に生気が戻ってくる。
そう、彼女達は自らの思考や視野を常識で狭めていたのだ。
理論が理解出来るのは実技が出来る人間とは限らない
摩利が良い例である
彼女は調整はからっきしなのだ
その逆があってもおかしくはない。
鈴音『そうです。解りましたね?』
真由美『守夢 達也君!!』
生徒会の生徒(一部除く)が頷く
摩利『全く、我ながら呆れる。風紀委員の備品のCADはあいつが調整していたな。しかも、シルバーホーンを持っているくらいだ。腕は相当なものだろう。』
良いCADは良い腕が必須
シルバーホーンという最高のCADを所有している達也が3流以下の腕な訳がない
あずさ『シルバーホーンですか!?』
シルバーホーンという単語に目を輝かせるあずさに摩利が若干たじろぐ
摩利『あ、あぁ。守夢は持っていたぞ?』
あずさ『いいなぁ、憧れのシルバー様。』
真由美『あーちゃん、それは後にしていいかしら?』
あずさ『は、はい。』
真由美『早速、会議の準備よ!』
あずさのCADオタクは今に始まったことではないが、今はその説明の時間が惜しい
達也をエンジニアにするべく会議の段取りを組む必要がある
慌ただしく準備を始める一同を眺めながら、ヒソヒソとほのかと雫は話し込む
ほのか『ど、どうしよう、雫。』
雫『達也さんの秘密は絶対に漏れないけど、達也にとっては不本意な流れだね。けど…』
ほのか『?』
雫『九校戦で達也さんにCADを見て貰えるなんて嬉しいかも。達也さんの秘密を知れるチャンスだし。』
ほのか『そっか、そうだね。トーラスシルバーさんのお弟子さんだし。好きな人に調整して貰えるなら達也さんに悪いけど、私達にとってはチャンスだね!』
達也には悪いが、達也に異性と見てもらうには少しでも接点を多くする必要がある
ましてや、CADを調整してもらうとなると自身を曝け出すと同義だ
達也に自身を知ってもらってあわよくばーーー
という流れにはなるわけはないが、このままでは、友人どまりだ
それもあり、達也と過ごす時間を造るのがこの二人の目的であった
なんとも不純な動機である
ーーーーーーーーー
会議室
図書館にて資料集めをしていた達也は摩利に強制連行され、訳が分からぬまま座っている
目も据わっているがー
真由美『ーー以上の点から踏まえて、私はエンジニアに守夢 達也君を推薦します。』
選手①『二科生をですか?』
真由美『すぐに理解出来ないのも無理はありません。一般常識からすれば、実技が出来ないと理論は理解出来ないのが通説。ですが、今回の試験を参照していただいてお分かりのように、私達ですら難解の問題を容易く解いてみせた守夢君の能力はエンジニアとして問題無いと考えます。』
選手である生徒は渋面をつくり、エンジニアを担当する生徒は達也を値踏みするような表情をしている
十文字『まあ、解らないなら確かめてみれば良いだけの話だ。』
妥協点を探り出そうとする十文字に問い掛ける摩利
摩利『具体的にはどうする?』
十文字『実際にCADを調整をさせてみたら良いだろう。なんなら、俺が実験台になろう。』
実験台ーー
なんとも失礼な物言いである
選手②『なっ!危険です。下手な調整をされたら、反動は会頭に返ってくるんですよ?』
真由美『でしたら、推薦者本人である私がします。』
達也はこの擦り付け合いに似た会話に自身がまるで爆弾なのだろうかと考えてしまった
選手③『そういう問題ではありません!二科生が調整するべきではないと言っているのです。』
摩利『おい、それは聞き捨てならないな。守夢の腕はこの私が認めるところだ。お前達が勝手にーー』
選手に選ばれた生徒の達也に対する侮辱に等しい言葉に摩利が声を荒げようとしたが、達也に遮られる。
達也『勝手に話を進めないでいただけますか?』
摩利『守夢?』
今まで大人しく座っていた達也に勝手な想像でエンジニアを務めるものと決めつけていたから達也の発言は少し身構えてしまう
達也『勝手に呼び出しおいて、九校戦?でしたか?それのエンジニアが足りないからやれなどと、随分と私の事を軽視した発言ですね。』
選手②『なんだと?雑草(ウィード)の分際で生意気な。九校戦に出場という名誉を汚すつもりか!』
達也『九校戦?名誉?くだらないですね。』
選手の一人があたかも神聖な儀式のような発言に暴言を吐き捨てる達也
儀式というものは何かを供物として捧げたり、犠牲の上に成り立つものだ。
それを知ったようなくちぶりで、まるで神と同列のような発言についに本音が漏れる
真由美『も、守夢君?』
ほのか・雫『『(怒ってるかも…)』』
達也の豹変ぶりに真由美達は若干恐怖を感じる
ほのかと雫は達也が何に怒ったのかを理解する
彼女達と他の違いはやはり、達也を理解しようと努力した結果であるが、それをこの場で説明しても意味はない。
達也『誤解の無いように説明致します。
まず一つ、私は九校戦に出場したくありません。名誉など要りません。
二つ、もし出場させるなら、私にも了承をとるべきでは?
三つ、エンジニアが足りないのは、生徒会や部活連、延いては学校側の落ち度。
四つ、二科生だから理論が出来ないと思っているのは、そちらが二科生を取るに足らない存在だからとお考えだから。
最後にしておきましょうか。
五つ、エンジニアとしての腕を測る?それは私に対する侮辱ととります。他にもありますが、要点を纏めれば以上です。何か質問は?』
摩利『おいおい、守夢。言い過ぎだぞ。』
苦笑混じりの摩利だが、達也の言葉は最ものため反論はしない
達也『?委員長にもお伝えしたはずです。私は、修行にしか興味はないと。そして、この高校に入学したのもここで魔法協会に保存されている文献を閲覧するため。正直、他の事など興味はありません。』
再確認のために摩利と周りの生徒に自分の意思を伝える
選手④『侮辱だと?嘗めた真似を。二科生ごときが俺達に勝てると思うなよ?』
十文字『やめろ!お前達。守夢の言が正しい。すまない、守夢。』
選手の生徒、エンジニアの生徒その両方が達也に敵意を向けるもそれを十文字が間に入る
何故、十文字が達也に謝罪をするのかわからない。
そもそも、達也がこの席に呼ばれる理由がまだ納得出来ていないのだ。
選手①『十文字会頭!?謝ることなど。』
エンジニア①『しかし、彼の実力を調べるには、実際に調整をしてもらないと。判らないままでは、困ります。』
達也『……。』
なんだろうか?
参加したくないと言っているのに、いつの間にか出るための腕試しになっている。
呆れてしまったため、居なくなってやろうかと思考を始める。
ほのか・雫『『…あの~。』』
真由美『何かしら?光井さん、北山さん。』
ほのか『皆さん、重要なことを忘れていませんか?』
ほのかと雫の介入に、ある人物達は救われる
本当の目的は達也を品定めすることではない
摩利『…そうだな。』
十文字『………。』
摩利は頷きを返す
十文字は目を瞑り、同意だと謂わんばかりの姿勢だ
選手・エンジニア『重要なこと?』
雫『先程の守夢さんの話を聞きましたよね?彼は九校戦に出たくないと。そして、彼に出て貰うには、承諾を得る必要があると。』
ほのか『それを無視して、守夢さんの嫌がることをすることが九校戦の名誉なんですか?……ここからは私情ですけど、私の友達にそんなことをするなら私は九校戦の選手にはなりません!』
雫『私もほのかと同意見。』
ほのかと雫に論破され、たじろぐ
図星を突かれ、逆上するのは人間性が無いことと同義
だが、所詮高校生にそれを求めるのは酷かもしれない
それでも、一部ではそれを自覚し行動出来ているのは少しずつ努力してきたからだ
それが一流と三流以下に分かれる
エンジニア②『何を馬鹿なことを。これは決定事項だ。ウチが3年目を優勝してこそ本当の勝利。』
選手③『これは義務なんだ。そんな一人の二科生ごときの私情など。君達、そんな人間と友達となるべきではない。そんなことだから、軟弱な思想が出来、評価が下がるのは君達なん…『おい。』…なんだ、きさ…ヒッ!』
一部の生徒を除き、ほのか達を責める。
人間というのは誰かを下に見て、自分を優位にしたがる生き物
自分の言い分が正しいと常に自らの立場を守りたがる
達也『もう一回言ってみろ。いや、言わなくていい、彼女達が苦しむだけだ。しかし、彼女達がなんだと?軟弱な思想?評価?それ以上俺の友人を侮辱してみろ、貴様らをこの世から消すぞ。』
十文字・真由美・摩利『!?』
達也の殺気にも似た気迫、この場合は闘気だがそれが室内を埋め尽くす。
ほのか『た、達也さん。』
慌ててほのかと雫が制服の袖を掴むも達也は圧を緩めない
真由美達がCADを構えるも視線で牽制する
達也『俺の事をどう言おうと何を考えようと構わない。魔法力が無いのは事実。だが、人間性まで貴様達に指図される覚えも無い。そして、俺の友人にまで人格を否定するなら容赦はしない。模擬戦や新歓のように優しくはせんぞ。』
摩利『や、止めるんだ守夢!』
摩利が達也の肩を掴むのと達也が言い終えるのはほぼ同時
それにあわせて気合を消す
張り詰めていた空気が弛緩し、気丈に保っていた意識が崩れると同時に殆どの生徒が床に座り込む
気を失うまでに至らなかったのは達也が抑えていたからだろう
達也『申し訳ありません委員長。お手を煩わせてしまいまして。』
摩利『そう、思っているなら、もう少し穏便に頼む。光井達の言い分が最もだが、これでは、幹部の私達で説得が出来なくなる。』
カタコトで謝罪する達也に摩利は呆れてしまった
十文字『何度も言うが、今回は守夢が正しい。俺たちはお願いをする立場にある。しかも、エンジニアを育てなかった我々の責任だ。文句があるなら、俺に言え。いいな?』
十文字の言葉に渋々ながらも納得をする選手とエンジニア達
自分達より才能の無い人間に論破されたのだ
悔しくない訳が無いが、状況を鑑みても達也の言い分が圧倒的に優勢。それは変えようのない事実だった
真由美『それでは、改めて。守夢君、九校戦のエンジニアとして入っていただけますか?』
床にへたり込んでいた生徒達の復活を待ち、改めて達也にエンジニア入りの打診をする
エンジニアは必要不可欠であり、達也がその才能がある以上入って貰う必要がある。
その才能が未知数であってもーー
達也『条件があります。』
十文字『条件?』
達也『はい。簡単な条件です。まず一つ、今年限りの参加に限ります。二つ、エンジニアのみの参加です。来年までにエンジニアはなんとかしてください。最後に、私に調整をお願いしたいという方のみ担当します。』
摩利『おいおい、一つ目と二つ目は努力するが、最後は限定的ではないか?』
達也が出した条件は意外と難しいものだったため摩利が苦言を呈する
達也『私の実力を見ていただいた後で構いません。が、予め申し上げておきます。エンジニアと魔法師の関係は信頼で成り立ちます。…私の師匠も常々言っていました。信頼若しくは信用が無い関係でCADの調整を行うことはご法度だと。腕ではない、心が通じあってこその魔法だと。それを当て嵌めれば、千代田先輩と五十里先輩の関係がここではベストな関係と言えるでしょう。』
摩利『…難しいな。』
2年のカップルとして有名で魔法師とエンジニアで関係がしっかりと成り立っているため実例として挙げやすい
達也の言葉に納得する摩利
達也『私の腕は二の次に。私の人間性と皆さんの人間性が合うと思った方は挙手をしてください。』
達也が言葉を言い終える前にほのかと雫が手を挙げる
次いで、真由美と摩利が手を挙げる意外にも十文字も手を挙げる
そして、司波深雪 彼女の場合は知的好奇心からなのかもしれない
それ以降も集められたメンバーの中から幾人かが手を挙げる
ほのかや雫、真由美達以外の選手の数人からの挙手は達也の言い分に素直に納得出来たことによる挙手だろう
若しくは、自身が調整出来ないためまた、摩利達の挙手を見て信用は出来ると判断したのか
達也『…ありがとうございます。集まっていない他の選手は後程伺うとして、これから皆さんのCADを調整する前に私のCADをお見せします。それを見て調整をしても構わないと自分に危険が無いと品定めの感覚で判断してください。』
そう言うと、自分の分身といっても過言ではないCADを懐から出す
シルバーホーンを出すとあずさが目をキラキラさせて、達也を凝視したため最初はあずさに渡す
あずさ『はぁ~憧れのシルバーさまぁ~。このカット、魅力的だなぁ、抜き撃ちしやすい絶妙の曲線。高い技術力に溺れないユーザビリティへの配慮。あぁ、憧れのシルバーさまぁ~』
二度言った
シルバーホーンを頬擦りしているあずさに若干引きぎみの達也
あずさは達也を少々怖がっている節があるが、この場合は達也があずさに苦手意識を持っている感じだ
しかし、このままでは拉致が明かないので心を鬼にする
達也『中条先輩、後でお見せするので中身を見てください。』
あずさ『は、はい。ごめんなさい。ーーー!…凄い。守夢君!どうやって、こんな技術力を!?』
エンジニアの担当であるあずさが驚くことで周囲に達也の腕に興味が湧く
達也『自分の才能ではありません。師匠に教えてもらって身に付けたものです。努力した結果です。』
流石に自分がトーラスシルバーの片方とは言えないため、誤魔化す
あずさ『師匠ってどなたですか?私も弟子入りしたいくらいです。』
真由美『あーちゃんがこれ程言うってことは守夢君のエンジニアとしての腕は凄いってことよね?』
あずさ『はい!一流メーカーのクラフトマンに勝るとも劣らない仕上がりです!』
あずさの発言に益々達也のCADが見たくなった
達也に担当してもらいたい選手は十名もいない筈なのに、漸く回ってきた
ということは恐ろしく精密な調整具合に見惚れていたからなのだろう
真由美『!?守夢君!これ本当に?』
達也『嘘は言いません。』
摩利『流石は、エリシオン社の息子か。…あっ』
摩利は興奮していたためか達也の達也にも知られていない秘密をあっさりと暴露する
それを聴いていた他の生徒が達也を凝視する
達也『…委員長、それを何処で?』
ドスの効いた声で摩利に質問する
摩利は目を泳がせて、真由美に視線を投げ掛けた
真由美『ちょ、摩利!』
摩利に視線を投げ掛けられてこちらもあたふたし、十文字と摩利に交互に視線を向ける
達也『(勝手に調べていたことは知っていたし、チョロチョロと動き回っていたことも知っているが、今後のためにこれは釘を刺しておくか)…流石は十師族ですね。人のプライバシーをあっさりと暴露させるとは。…七草会長、十文字会頭。』
声のトーンが数段低い
大人しい人間が怒ると恐いのはこういうことなのか
真由美『な、何かしら?守夢君?』
達也『次、こんなことがあれば、(エンジニアを)辞めますから。』
作った笑顔を真由美達に向けるも目は笑っていない
むしろ、嗤っている
というより、背後に般若が見えるのは気のせいか
真由美・摩利『ごめんなさい!』
十文字『すまない。』
達也『バレてしまったものは仕方ありませんね。私の師匠はトーラスシルバーです。』
全員『なっ!』
達也の身元を調べていた真由美達までもが驚く
達也の身元を調べてもトーラスシルバーの弟子と知らなかったということは上部の情報しか調べられなかったということ
つくづく、神夢の家は末恐ろしいと感じる達也
あずさ『ということは、このシルバーホーンは。』
達也『はい、師匠の元でバイトして、それで買ったものです。調整技術は師匠から教えてもらいました。』
あずさ『守夢君はトーラスシルバーと面識があるということ。どんな方なんですか?』
謎の天才魔工師 トーラスシルバーを知っている人物が第一高校に居るのだ
こんな貴重な情報源から訊き出さないなんて勿体ない
達也『容姿は私より上ですよ?後は至って平凡な中年?あとは、既婚者ですね。』
と勝手な設定を作っていく
シルバーは達也自身だが、余計な詮索はさせないために現実味のある嘘をつく
あずさ『そういうことじゃなくて。』
達也『いや、師匠もお茶目でそれ以上は師弟の秘密もあるので、ご容赦下さい。』
あずさ『うぅ~。』
若干、的はずれな回答をする達也にあずさも問い詰めるが
話せないと言われると引き下がるしかない
真由美『あーちゃん。そろそろ、守夢君の調整技術を見たいんだけど。』
あずさの落ち込みようも解らない訳ではないが、今は達也の調整技術が見たい
達也のCADを確認して、ますます期待が膨らむ
達也『皆さん、私みたいな者で調整をさせていただいてもよろしいのですね。』
へりくだりをみせる達也に全員が頷く
摩利『その謙遜はらしくないな。これだけの技術を見せられては、寧ろ、金額が発生してもおかしくはない。こちらこそ、よろしく頼む。』
達也『承りました。それでは、幹部の方々と私が担当させていただく方のみ移動しましょう。』
十文字『む?何故だ?』
技術を披露するなら、全員に見てもらったほうが良い
そんな考えを達也は一蹴する
元々、九校戦のエンジニアなど興味はないし、それを無理矢理参加しているのだ
達也『担当しない方や認めない人間に腕前を見せるほど、私の器は大きくはありません。幹部の方は戦略上必要でしょうから。』
摩利『まぁ、そうなるな。守夢にエンジニアの担当を拒否している時点で見る必要も無いからな。』
達也を擁護する形で容赦なく反論を封じ込める
本音はおそらく、達也の機嫌をこれ以上損ねないようにするためだろうが、半分は達也の意見に賛成なのだから。
十文字『では、行くぞ。』
達也『で、調整はどういたしますか?』
真由美『うーん、まずはあれよね。競技用CADにコピーをしてもらえるかしら。起動式には手を加えないで。』
達也にエンジニアの腕前を見ることは必要だったが、どのように技術を計るかは考えていなかった。
無難に個人のCADを競技用CADにコピーをお願いする
達也『承知しました。どなたのCADを調整すれば?』
こういった場合、客観的に判断を下せる前評判や知り合いだからといったものに左右されない人物が望ましい
真由美『…どうしようかしら?』
摩利『光井達は守夢に近いからあまり勧められないからな。…!、真由美、お前が調整してもらったらどうだ?』
友人の関係のほのかや雫では、十分な情報が得られない
ふと、摩利が悪巧みをする顔をする
真由美が達也に何らかの想いを寄せているのは知っている
こういうことから距離を縮めていく必要がある
もっとも、この摩利のお節介も客観的な判断は下せないため結果的にはよろしくないのだがーー
真由美『ま、摩利!?』
達也『よろしいのですか?ご自身のCADの調整を依頼するということは、視られたくないところまで暴かれてしまうということ。例えが卑猥に感じられたら申し訳ありませんが、裸をみられるようなものです。』
真由美『は、裸!?』
ほのか・雫『変態!』
達也の言葉に真由美達は赤面し、ほのか達は何故か怒る
他の生徒は何とも言えない雰囲気になる
幹部の服部に関しては達也を鬼のような形相で睨む
達也『だから、先に謝りましたよね。何故、怒られたのか。…会長は本当に大丈夫ですか?』
真由美『あ、えーと。』
まだ、達也の言葉の羞恥心から脱していないためどう答えていいものかあぐねる
この場合は誰が悪いのやら
達也『十師族、さえぐさの秘密を知られるかもしれないのですよ?』
真由美『?大丈夫よ。心配しないで、お願い出来るかしら?』
全員『???』
達也の発言に誰もがクエスチョンを頭上に浮かべる
七草の秘密など調べられるものかという者と
達也が何を言っているのか解らないといった表情の者
おおよそ、達也の言葉の意味に辿り着ける生徒はこの室内には存在しなかった
達也『承りました。では、早速始めましょう。(スペックの違うCADの設定のコピーは推奨はしない…安全第一だな)』
若干の表情の変化に気付いた者はおらず。
しかし、達也がこれから何を行おうとしているのかはエンジニアとして、参加しているあずさを始めとした数名のみ
真由美のCADからデータを抜き取り、調整機に作業領域を作り保存をする。
その作業にエンジニア全員がなるほどと、合点がいく
次に真由美本人の
ここからが、エンジニアとしての本領発揮である。
通常なら、調整機が自動化付きのものであれば、CADのコピーと
しかし、それはあくまで基準値内での調整であり
魔法師本人の領域に沿った調整は不可能
達也『ありがとうございました。会長、外していただいて大丈夫です。』
真由美『そう?』
達也『あとは此方でやりますので。』
そう言うと、モニターに向く
達也がモニターを見つめること数分
室内の誰もが何かミスをしたか?と脳裏を過る。各々が達也に何かしらの感情を抱く
その中でも中条 あずさという少女は達也という人物に興味があった
トーラスシルバーの弟子であり、彼自身のCADはプロが調整したような完成度でどのような技術があるのか純粋な知的好奇心があった
【彼の技を見てみたい】
それが彼女の思考を占めていた
どういう方法で調整をするのか全て見たいと思い、そっと、達也の後方から覗き込む
あずさ『ふぇ!』
素っ頓狂な声を上げるの無理もないだろう
あずさの声に不思議に思い、モニターを覗き込む真由美と摩利、鈴音
声は出さなかったものの、息を呑む
達也が向かい合っているモニターには、当然映し出されているべきグラフ化された測定結果は表示されておらず。ディスプレイ一杯に無数の文字列が高速で流れていた。
辛うじて所々の数字が読み取れるだけで文字列は読み取れない。
スクロールが終了すると調整機に競技用CADをセットする、その数秒後達也は凄まじい速度でキーボードを打ち始めた
幹部の中にもエンジニアは居り、また自分で調整出来る者はキーボードで調整する姿に物珍しさで達也を見るが、本質は見抜けない。
ウィンドウが開いては閉じ、開いては閉じを繰り返すモニターの左端には開いたままのウィンドウが、一つは測定結果の原型のデータ、一つはコピー元の設定を記述した原型のデータということにあずさだけは気づいた。
誰一人として、これほど高度なオぺレーションが行われているのか理解するのは不可能だろう。
達也がキーボードオンリーで作業をするのは魔法力が無いからではない。
完全マニュアル調整
出来上がった起動式は生データなので、読み取ることがほとんどできなかったが、僅かに読み取れる設定から【安全第一】というような言葉が的確な魔法師の為の最高の調整だった。
これなら自動調整より遥かにユーザーにかかる負担が少ないし、遥かに効率の良い起動式が作れる。
というよりも高校生がこれほどの腕前を持つとはにわかに信じ難いものだった
会長の真由美には悪いが、試すまでもない
起動式には手を加えないが条件だったので、すぐに調整は終了した
達也『それでは、会長。確認をお願い致します。』
真由美『(…見た目は変わらずね、さて)』
達也に手渡され、競技用CADで起動式を読み込み通常通りに魔法式を展開する
真由美『―?、…!?』
普段自分が使用しているCADと使用に違和感がないことに数拍おいて気づく。
摩利『どうした?真由美、何かあったか?』
目を見開いて動く様子を見せない真由美に摩利は目の前で手を振る仕草をする
摩利の手振りにハッと気づき、達也に向き直る。
真由美『も、守夢君、これ、コピーだけしたのよね!』
達也『はい。他は手を加えるなとのことでしたので。』
突然、何を言い出すのか
手を加えず、CADの起動式だけコピーして移すだけしろ、と言った為したのだが、何を寝ぼけた事をのたまうのだ
真由美『……ねえ、守夢君。私の専属エンジニアになってくれない?』
次の瞬間、この調整機部屋の空気が凍りつく
真由美が達也に自分の専属にならないかと、若干、告白に似た表情をする真由美に全員の目がテンになる
全員『は?』
ゴスっと鈍い音と共に悲鳴があがる
摩利『おいこら、真由美。どさくさに紛れて告白紛いをしてるんだ!』
真由美にゲンコツをかまし、今、自分が何を言ったのか自覚を持たせる。
真由美『痛い!摩利。何を……あ、ああぁ。ち、違うの守夢君、あのね。』
摩利のゲンコツに抗議をしようとしたが、先ほどの自分の科白にさぁ~と顔から血の気が引いていく
先ほど自分が達也に何を言ったのか、この状況で言い訳はできない。
達也『会長からお褒めの言葉をいただくとは、私も頑張った甲斐がありました。』
一応、真由美のためにフォローは入れておくが真由美の発言は取り消せない
というよりも
ほのか・雫『(じっーーー)』
ほのかと雫の睨みに何か怒らせた要素はあっただろうかと
そちらの方が気になっている。
摩利『それで?守夢の技術はどうなんだ。高いのか?』
漸く、落ち着いてきたため、真由美に感想を述べさせる
真由美『高いなんてものじゃないわ。あり得ないもの、私がやってきた調整なんて小学生レベルに感じるもの。』
はっきり言って、比べることすらおこがましい。
第一高校開設以来の傑物と言っていい
十文字『決まりだな。』
真由美『改めまして、守夢 達也君。貴方にエンジニアをお願いします。』
達也『承りました。』
正式に依頼されれば断る訳にはいくまい
達也はお辞儀で返す
こうして、達也の九校戦のエンジニア入りが決定した
――――――――
雫『達也さん、あとで私のCADを調整して』
達也『なぜ?』
雫『会長に告白されたから』
達也『なんか、理不尽さを感じるが。』
ほのか『わ、私のもしてください。』
達也『……分かった。明日の放課後にな。』
――――――――
部活連本部
十文字『奴をどうみる?』
達也のエンジニア入りの会議が終了し、十文字が真由美と摩利を呼び出す
議題は言われるまでもない守夢 達也の件だ。
真由美『…勘だけど、あのブランシュのアジトを壊滅させたのは彼で間違いない気がする。でも、動機が不明だわ。』
摩利『真由美、憶測に過ぎないと言いたいところだが、半分位は私も同感だ。』
十文字『俺は守夢のあの気迫から確信した。そして、何かもっと重大な秘密は持っている。エンジニアの腕はその一端だろう。』
達也から放たれた氣がそれを物語っている
一般人が他者を威圧出来るほどの力は無い
しかも、殺気ではない別の圧倒的な気迫
真由美『十文字君が撮影してくれた映像は衝撃的だったわ。ここまで凄惨な現場があるなんてって。まるで佐渡の時の一条の爆裂よ?』
摩利『あの人畜無害そうな守夢がねぇ。』
達也が聴けば渋い顔をするだろう
私は小動物か何かですか?と
それが容易に想像出来てしまい、摩利は笑いの坪に嵌まってしまった
十文字『それが、表の顔だ。裏の顔が守夢には存在するのだろう。』
表の顔を隠れ蓑に裏で暗躍する
十文字の言葉は達也を侮蔑しているのか分析しているのか、大変失礼な言葉である。
真由美『…それとは別に報告よ。あの四葉が動きを見せてるそうよ。』
達也の件から一旦離れ、七草で調べた情報を二人にリークする
アンタッチャブル-触れてはならない者- 四葉が何らかの動きを見せているとー
空気に緊張感が孕む
四葉が何らかの動きがあるということはこちらも注視していく必要がある
摩利『!それは、どういうことだ?』
真由美『解らないわ。守夢君関係ではないかもしれない。それと、一条と九島にも動きが見られるそうよ。』
一条
ブランシュの映像は二十八家に拡散したため、達也の能力に興味が湧いたのかもしれない
九島
四葉と同様に動きが読めない。
摩利・十文字『!!』
摩利『…やれやれ、守夢は人気者だなぁ。』
これほどまでに一年生に振り回されるこの世の中も珍しい
本人には悪いが、愉快な物語である
真由美『笑い事じゃないわよ!』
十文字『しかし…ここからは、我々も慎重に動く必要がありそうだが、守夢の動きからは目を離さないでいくぞ。』
真由美と摩利は十文字の言葉に頷いた
だが、これは序章でもない
ただのスイッチ
これから、何が起こるのか
全てはーーーー
…如何でしたか?
魔法の描写が難しいですね。
飛行術式とCADの調整
①飛行術式試験はオリキャラ(溺愛)にしてもらいました
②深雪さんが天使ならワンランクアップで神々の舞いで(笑)
③牛山さん達は引き抜きました。お相手はご想像通りかと
④原作は深雪さんが兄妹でしたが、今回は違うので、達也君九校戦は拒否させました(物語的に必要の為)
⑤桐原が実験台でしたが、流れ上真由美に変更しました。すみません。
次はどうしようか
頑張ります。応援いただければ嬉しいです。
九校戦開場まで進めようかな
それでは、次回