抹殺された神の愛し子   作:貴神

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お待たせしました
九校戦編の最新話です

どのように書こうか悩みましたが、結局は達也超最強を目指しているので、周りには引き立て役になってもらいます 

それでは、どうぞ!


13話

九重寺

 

達也は住職の八雲に呼ばれて子の刻 (現代でいう0時前後を指した時間)に九重寺を訪れていた

 

達也『師匠、私を呼んだのは?』

 

八雲『うん、風間君から話したいことがあるとね。』

 

この場にまだ居ない達也の上司の風間からの要望だと説明する

 

本来なら、神夢の家に風間が来るのだが、最近周辺が騒がしいため九重寺にて密会を行うことにしたのだ

 

達也『…義父さんまで呼ぶのは、九校戦で何かあると?』

 

浩也『ははっ、鋭いな。』

 

浩也まで居るこの状況だと、達也自身に関わる内容の可能性もしくは、重要案件ということが窺える

 

暫し思考の末、当たりをつける

 

浩也『九校戦は武の大会。それは優秀な魔法師とエンジニアの集まる機会である。これは有能な魔法師を発掘するためだから私も見逃せないのだよ。それに毎年、家族旅行として凛や子供達を連れて行ってるんだ。』

 

 

達也『…はっ?』

 

達也は浩也が九校戦で有能な人材探しに行くのは知っていたが、家族総出とはー

 

これを浩也の家族旅行と考えるか微妙だがー

 

 

 

浩也『あれ、話してなかったか?まあ、達也はいつも修行や軍関係とかで家に帰って来ないからな伝わってなかったのかもな。』

 

いやぁ、すまん、すまんと笑いながら謝罪する

 

確かに毎年の夏、双子達が家を離れる達也を引き留めていたのは覚えている

 

それが、九校戦を観戦しているとは知らなかった

 

だからなのか、家に帰ってくると双子達が不機嫌で、一週間程は達也にべったりになる

 

理由を訊いてもナンパに会ったとだけで他は何も教えてくれない

 

漸く理由が解った

 

九校戦でナンパに遇ってたのか、これからはなるべく着いていくか

 

と考えるあたり双子や恭也にはとことん甘い達也である。

 

 

しかも、双子の義妹は司波 深雪と並ぶ位の美少女だ

 

しかし、彼女と違う所はヒトらしさだろうか。

 

彼女達の周りには人が集まる。それは彼女達の徳と謂われるものだろう

 

現実逃避に走る達也

 

 

風間『浩也、珍しく達也が理解が追い付いていないようだぞ。』

 

遅れて来た風間が達也のその珍しい表情に声が弾んでいる。

 

浩也『ほんとだな!珍しいものを見た。』

 

遠い目をしていた達也に八雲を含めた三人は何故か嬉しそうである

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

達也『それで、少佐。要件というのは?』

 

風間『あぁ、九校戦でな。今年は相次いで密入国事件が勃発していてな、達也も動いて貰う可能性が出てきた。九校戦は富士の演習場で行われることは知っているだろう?』

 

達也は富士の霊峰が綺麗に見れるあの演習場は少し好きだった

 

風間『そこで、最近、香港系の犯罪シンジケートらしき陰が何度か目撃されている。狙いはおそらく、九校戦だろう。』

 

この時期に犯罪シンジケートが目撃されているのなら、十中八九それだろう。

 

高校生としてはトップクラスの魔法師の卵が集まるのだ。この時期を逃す訳もない。

 

ここを狙えば、日本は大きなダメージを受けることは必至

 

達也『香港系というと?』

 

風間『無頭竜(No Head Dragon)(ノーヘッドドラゴン)の構成員ということだ、詳しいことは調査中だ。』

 

国際犯罪シンジケートが九校戦に絡んでくるとなると少し注意が必要だ。目的の為なら奴等は手段を選ばない

 

結那と加蓮と恭也、引いては神夢家に危害が及ぶなら潰すまでだ

 

しかし、軍とはいえそんな情報をすぐに手に入れることが手来ると言われればNOだ

 

 

達也『…その情報は何処から?』

 

風間『壬生という男だ奴はーー』

 

壬生 勇三

退役後、内閣府情報管理局(通称内情と呼ぶ)に転籍し、現在は外事課長という身分に収まっている

 

仕事内容としては、外国犯罪組織を担当

 

家族構成は妻と娘がいる。娘は第一高校の2年生とのこと

 

 

肩書きとしては立派に聴こえるが、達也は冷静いや、冷ややかな思考をしていた

 

 

達也『壬生 紗耶香の実父でしたか…(娘の機微にも気付かない親がこういう仕事をしているとは信用ならないと同時に親失格だな。) 』

 

風間『達也、何を考えていた?』

 

達也が黙したのをいぶかしむ風間。おそらく、碌でもないことのためすぐに問いただす

 

 

達也『鋭いですね。人事評価をしていました。』

 

風間『人事評価?…止めてくれ、さすがにあいつがかわいそうだ。』

 

誰のことを指しているのか理解したためフォローをする

 

大方、娘の精神の機微を悟れない親の情報など信用できないということだろう

 

達也が正論のため苦笑交じりが関の山だが

 

 

 

 

 

九校戦絡みの問題も打ち合わせも粗方終わると嫌に真剣な浩也と風間が達也を見る

 

 

風間『今度は達也、お前に関する情報だ。』

 

浩也『…四葉、七草、十文字がお前を探っているのは知っているな?』

 

たまに、四葉と七草の手の者が達也を尾行していたのは気配で知っていた

 

が、危害を加えてくることはなかったため放っておいたのだ

 

 

達也『えぇ。』

 

浩也『そこに、一条と九島までもがお前を探りだした。』

 

達也『!?』

 

十師族の半分が動き出しているとは驚きだった

 

自分はよほど人気とみえるーー正直、嬉しくはないが

 

 

浩也『だが、お前自身ではない。ブランシュの件で十文字家が二十八家全体に写真をリークしたから、その人物という訳だ。』

 

当たり前だが、達也がやったという証拠はない

 

いや、残していないと言った方が正しいか

 

しかし、興味を抱かせたのは間違いない

 

 

風間『一条は言うまでも無いな』

 

こくりと頷く

 

達也『あの時と今回のブランシュの映像が酷似している訳ですね。』

 

3年前のあの事件

達也は独立魔装大体の一隊員として出動していた

 

あの時の殲滅戦は達也のある意味独壇場だった

 

表向きは一条の爆裂だったが、裏では一条家が半分達也が半分の戦果だった。

 

と言っても達也個人と団体(一条家)の計算で1:4の戦果だが、

 

殺めた数は一条で、戦車など大きな相手を殲滅したのを含めるとそうなる。そういった状況からだろう

 

 

 

一条とは

 

「対人戦闘を想定した生体に直接干渉する魔法」

を調べる第一研究所が絡んでいる。

 

前回も達也を勧誘していたが今回も引き入れるためだろう。

達也の力が一条に役立つと

 

風間『あぁ、九島は正直不明だ。』

 

九島 烈

現在、九島家の当主を退いているが、日本の魔法師社会の頂点に立っている魔法師だ。

 

第一線ではないものの、長老と呼ばれるだけあってまだまだ、現役と名高い

 

九島 烈と九島家が同じように達也を欲しているのかは不明だが、油断は出来ない

 

 

 

 

そしてー

 

浩也『…俺からは達也、お前の秘密のことだ。』

 

達也『…!』

 

浩也からの情報で緊張したは初めてだ

 

浩也『…ある出来事を契機にお前の様々な秘密が暴かれると出た。そして、それを裏付ける占も出ている。』

 

占(せん)ーうらとも呼ぶ。占いという言葉のほうがしっくりするだろうか。

基本的にそれを行うときは第三者が望ましい。近親者が行うと正確に出ない。だが、達也の場合は例外にあたる

 

達也の出自に関わるのだがそれはここでは割愛する

 

 

達也『…それは、俺に大人しくしていろと?』

 

浩也『いや、それは言わん。それはあの時の凛の言葉で目が覚めた。だが、心して行動しろ。お前の隙を何処かで窺っているはずだ。そして、お前の力で全てを黙らせろ。神夢家が全力でお前を守る。だから、神夢家を守ってくれ。』

 

ブランシュの一件で

達也を守るということを違う意味で捉えていた

 

それを諭され、目が醒めた

 

大人しくしているのは達也の性に合っていないのもたしかー

 

 

達也『無論です。義父さん達の為にも全力で守ります。(例え、アレを使ってでも。)』

 

浩也『…』

 

風間『…』

 

八雲『…』

 

言葉とは裏腹に何か覚悟を決めている達也に三人は何とも言えない表情になる

 

詳しくは知らない、だが、ある程度は予測はつく

 

願わくばそんな未来が来ないことを祈るしかない

 

 

 

 

 

 

 

今日の情報で仮の対策を話し合い、粗方の方向性が纏まり、解散しようと腰をあげる

 

 

風間『…忘れていた。特尉、事務連絡だ。サードアイのオーバーホールで幾つか部品新型に更新したこれに合わせてソフトウェアのアップデートと性能テストを頼む』

 

余談だが、

達也には特尉と中尉という軍での役職がある

詳細に関しては追々説明する

 

 

達也『…承知しました。』

 

ついでの如く言う風間に

 

これが今日の議題で最大の案件なのでは?と思わなくも無い。

 

軍関係を放置してまで達也を案じる風間達

 

如何に自分が大切に思われているか理解する、本当ならば、自分を放っておいても軍には問題ない

 

なおさら、この人たちの為に役に立ちたいと思ってしまう

 

 

 

けれども、この三人にとって、達也は自分の子と同然

 

大切に思わない方がおかしい

 

 

 

風間『日程だがー』

 

真田がいて、訓練のある日程で調整する

 

達也『そうですね。演習にも参加したいので、その日に。』

 

 

風間『分かった、真田にもそう伝えておく。そういえば、藤林が会いたがっていたぞ。』

 

達也『響子さんが?…いつもの発作では?』

 

達也は響子に苦手意識を持っている

 

一番身近な異性は双子だが、響子に近づかれると何故か緊張してしまう

 

双子は身近とはいえ、家族だからだろうかそこまではない

 

そういった意味では、響子が身近な異性だろうか

 

そして、先程の達也の言う発作とは、達也に接しない期間が長くなるほど場を弁えない行動を起こす

 

 

 

 

風間『そう言ってやるな、あいつもお前の事が好きだからな。』

 

達也『全く、こんな覇気のない、やる気のない男が好きなんてどうかしてます。響子さんなら良い男も選り取り見取りでしょうに。』

 

自虐をの意味も含めて呟く

 

双子といい、響子といい自分を好きになるとはどういう神経しているのか

 

 

達也の言葉を聞きながら三人は、彼女達の想いが報われることを祈るしかなかった

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

レオ『おはようさん、守夢。それにしてもやるじゃねーか。』

 

達也『おはようございます。何かありましたか?』

 

 

私用(軍関係)で高校を休み、一週間ぶりの登校の途中、背後から肩を組んできたレオ

 

唐突に達也を褒めたので、何があったかと疑問に思う

 

エリカ『それは、守夢君が九校選のエンジニアに選ばれたことよ。それで、あれは守夢君も出ておくべきだったと思うわよ。』

 

横からレオの代わりに答えるエリカ

 

視線を巡らすと、美月と幹比古と1-Eの面々が揃っていた。

 

 

美月『そうですね、発足式に守夢さん休まれてるんですから。二科生で快挙を成し遂げられたんですから凄いことですよ。』

 

達也『…そういえば、そんなことも言われていたような。』

 

真由美から発足式には出席して欲しいと言われていたが、完全に忘れていた

 

理由はお分かりだろう

 

あとで、摩利と真由美から小言がありそうだと予想する

 

その前に、九校戦のメンバーを全員知らないなぁと思いながら、担当する選手以外はどうでも良いかと真由美達の小言からの逃げるための方法を考える

 

エリカ『ちがうちがう。そうじゃなくて、一科生の奴等が相当悔しがってたから。珍しいものが見れたのにって。』

 

美月『もう、エリカちゃん。女の子がそういうこと言わないの!』

 

意地悪そうな表情をするエリカに美月が叱る

 

 

それをレオはやれやれといった表情をし、幹比古はため息を吐く

 

そして、レオの表情が気に食わないエリカはおちょくり、それを真に受けて噛みつくレオ

 

このやり取りは見慣れたものであるが、互いを思いやる良いクラスメイトを持ったのかもなぁと感じる達也であった

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

達也『改めて、自己紹介をさせていただきます。守夢 達也と言います。今年限定ですが、皆さんの競技用CADのエンジニアを担当します。至らぬ点もあるかと思いますが、精一杯努めますのでよろしくお願いします。』

 

里美『ふーん、ほのか達が絶賛するから興味があったけど、案外普通だね。』

 

里美スバル

 

美少年と見紛うばかりの外見の少女で言動や行動がどことなく芝居がかっており、何故か伊達眼鏡を掛けている少女

 

 

明智『そうそう、カッコいいって聞いてたけど割りと普通っていうか。』

 

明智英美

 

ルビーのような光沢の赤い髪とモスグリーンの瞳以外は日本人的な外見だが、イギリスのクォーターらしい

笑うと八重歯が出る

 

ほのか『な、なんてこと言うのよ!』

 

雫『二人がそこまで酷い事を言うとは思わなかった。』

 

心外とばかりにほのかと雫は二人を睨む

 

睨まれた二人は若干たじろぐ

 

 

結局、達也が担当する選手は前回の会議での挙手をした者と里美スバルと明智英美を合わせた十数名程だ

 

里美と明智も前回のメンバーと同様に実力主義や人間性を重視する考えの持ち主

 

達也にエンジニアの担当を依頼したのは、そんなところだろう

 

大半の理由は興味本位というところもあるだろうが

 

 

達也『2年3年の先輩方はある程度自身の長所や短所を理解してらっしゃるかと思いますので、CADの調整を主に従事していきます。1年生はー』

 

 

ーー部活をされている方もいらっしゃるかと思いますが、体力と長所を探りだすことから始めましょうか

 

ーーえ?、体力づくり?

 

ーーはい、魔法師は魔法力もそうですが、それを行使する体力も大きなポイントです。特に、九校戦は夏場ですので、体力は有るに越したことはありません

 

ーーCADの調整は?

 

ーー後々行います

 

ーー先に守夢さんの調整をしてもらえると思ったのに

 

ーー何を甘えたことを仰っているのですか?調整など、あとでいくらでも致します。他力本願では、勝てませんよ?

 

ーーはい

 

ーーでは、早速トレーニング開始です。

 

 

 

一連のやりとりを端から見ていた真由美達は達也の豹変ぶりに顔がひきつる

 

達也があそこまで愉快そうな表情は初めて見る

 

まるで、苛めっ子である。

 

 

真由美『ねぇ、摩利。守夢君って…実は隠れサディスト?』

 

摩利『言うな、真由美。』

 

 

 

一年を除くと上級生は真由美や摩利、十文字他数名だ

 

こう言っては失礼だが、彼等にCADの調整以外出来ることはない

 

あとは各自のCADを達也が仕事をするだけだ

 

 

達也『では、一旦解散でよろしいですか?』

 

方向性は決定したため、後は各自の練習に入る

 

真由美『そうね、一年生の担当が多いとは思うけどよろしくね。何かフォローが必要なら言ってちょうだいね?』

 

達也『ありがとうございます。』

 

必要はないと思うが、一応達也を慮る言葉をかける

 

達也も社交辞令と捉えて形式的にお辞儀をとる

 

 

真由美『…そうだわ、守夢君。あとで生徒会室に来てね?』

 

声音が少し低く、達也に有無を言わせない笑顔の真由美

 

が、目は笑っていない寧ろ嗤っている

 

 

達也はやはり逃げ切れなかったかと嘆息するしかなかった

 

ーーーーーーーーー

 

エントランスアプローチ

 

美月『(こんな遅くまで大変ですね、皆さん。)』

 

九校戦が控えるこの時期は選手達は皆遅くまで調整に残ることが多い

 

また、部活をやっている生徒達も九校戦の選手達のための下働きだ

 

美月は文科系クラブのため手伝いは殆ど無いため他のメンバーを待つことが多い

 

 

美月『遅いなぁ。』

 

と口に出してハッと我に返る

 

まだ、ここに来て数分しか経っていないのに思わず声にでてしまった

 

無理もない

 

ここ最近は美月がずっと待っているため手持ち無沙汰が否めない

 

いつもは皆が同じ時間帯位に集まるため待つ時間も少ない

しかも、大抵は誰かが待っていてくれるため他の皆が来るまでは話が出来る

 

改めて、友人の得難さを思いしる美月だった

 

少し反省して心に余裕が出てきたため周囲の気配におかしさを感じる

 

美月『?何かしら?』

 

知覚に何かを感知し、見慣れない波動がレンズ越しに飛び込んでくる

 

ふと、考えるも思いきって眼鏡を外す

 

瞬間、彼女の眼に色の洪水が押し寄せる

視界に様々な色調の光が溢れる

じっと、我慢して眼が脳が飛び込んでくる情報量に慣れようとする

 

普段、達也を囲む人間達の中ではそこまで目立ったモノを持つ美月ではないが、彼女の持つ目もまた、特異体質で努力してモノにする必要性がある

 

 

『その目の使い方は無理矢理慣れさせるものではないよ』

 

不意に後ろから聴こえて来た声に振り向く

 

美月『た、達也さん?』

 

達也『驚かせてしまったかな?』

 

美月『いえ。あ、お疲れ様です。光井さんや北山さんは?』

 

達也『あぁ、彼女達なら休憩と着替えに。十分ちょっとすれば、来るはず。』

 

もっとも、彼女達の気力体力が残っていればの仮定だが

それは達也も保証はしかねる

 

 

美月『あ、すみません。守夢さんでしたね。…それで、さっきの私の目の使い方って?』

 

達也『殆ど生徒もいないから名前で構わないよ。その目は人それぞれ鍛え方が違う。俺も美月と似たような目を持っているから美月の辛さは理解している。が、無理矢理目を慣れさせようとするのは体に負担がかかる。』

 

しかし、美月と達也の目が似ていると言っても美月の目は見れるのみ

 

達也の目はそれ以上に特殊なのだ

 

 

美月『どうすれば良いんですか?』

 

美月の目に理解を示す達也に美月も食い下がる

 

 

達也『美月にとってその目がどういうものであるかを考えるんだ。急ぐ必要はない、自分のペースでやればいい。…さて、どうする?美月が知覚した波動を突き止めに行くか?』

 

美月『あ、そうですね。知りたいですし、達也さんの仰るヒントを探したいです。』

 

達也の言う自分にとって何か

 

それは一朝一夕で得られるものではないだろう

 

だから、前に進むしかない

 

 

達也『承知した。では、行くか。』

 

 

ーーーーー

 

 

実験棟

 

達也と美月は先程の波動が実験棟から漂っていることを突き止め、目的の部屋まで歩いていた

 

美月は達也の言葉のヒントを探すためまた、目を使いこなすために現在は眼鏡を外している

 

美月は普段眼鏡を掛けているため大人しそうな地味と言われそうだが、元々は可愛いらしい少女と評されてもいい容姿はしている

 

 

美月はどうしても達也の言葉が理解出来なかった

 

自分にとってこの目は何なのか考えても一種の枷にしか表現出来ない

 

が、それは違うと達也は言うため、先駆者である達也に訊くことにした

 

 

美月『差し支えなければ、聴きたいんですけど。達也さんはどうやって、目を使えるようにしたんですか?』

 

達也『そうだな、先程の通り俺の眼と美月の目はスペックと表現すれば妥当だろう。それが違うから一概には言えないが、俺の場合は揺るぎない意思、覚悟といったところから使いこなせるようになった。』

 

美月『意思、覚悟、ですか。』

 

益々解らないといった表情

 

図上にはクエスチョンマークが飛び交う

 

達也『すまない、こればっかりは自身で鍛え上げるしかない。俺の場合は眼鏡を掛けても視えてしまうから、制御するしかなかったんだ。それに、まだ俺も使いこなすことは出来ていないからね。』

 

疲れがたまり、気が抜けたときに達也の場合は起こることがある

 

美月には申し訳ないが嘘は付いた

 

本当は完璧に制御は出来ている

 

問題なのは精神だ

 

最近はめっきり少なくなったが記憶の奥底にしまっている出来事がフラッシュバックする

 

それは達也としても一番嫌な記憶であり、数瞬、行動不能になる

 

達也が乗り越えなければならない問題であり、精神の問題でもある

 

ある意味では眼からの情報によってその記憶を連想してしまうこともあるため強ち間違ってはいない

 

 

美月『す、すみません。てっきり使いこなしていると思ったものですから。』

 

小柄な美月が余計に縮こまったため、やりすぎたかと少し反省する

 

しかし、これでむやみに質問してくることはないだろうが、助け船として経験談からのアドバイスをお詫びにしておく

 

 

達也『そんな畏まらなくて良い。アドバイス出来る事はあるから。…そうだね、美月は誰かの為にその力を使いたいと思うかい?』

 

達也自身はこの力は自分の為にではない

家族の為に使うと決めている

 

美月『え?誰かの為にですか?考えたことは無かったです。この目の所為で他人の迷惑にしかならなかったので。』

 

達也『そこから変えていく必要がある。ソレはある種の才能だ。モノにすれば武器になる。』

 

ヒトは誰かの為にと思うだけで強くなれる

 

 

美月『…もう一つ良いですか?』

 

 

達也『構わないが。』

 

美月『もし、違ってたら失礼なので、そのときは聞き流していただきたいんですけど。あ、でも私の勘違いかもしれないし…』

 

いざ、質問しようとするも違っていた場合とても不快な気分にさせてしまうかもしれない

 

そう思うと自分の質問はして良いものか不安になる美月

 

達也『少し落ち着くんだ美月。尋ねる言葉位で怒るような狭い度量はしていない。』

 

何故か慌てふためく美月に不思議に思う

 

まだ質問もしていないし、質問の内容位で怒る必要もない。とりあえず彼女を落ち着かせることからしなければ始まらない

 

 

 

達也『落ち着いたか?』

 

美月『あ、すみません。』

 

数分間、時間を要したがなんとか美月の精神が安定したため本題に移す

 

達也『気にしなくて良い。で、どんな内容かな?』

 

美月『…私の直感というか、入学式から感じていたことなんです。』

 

美月から発せられた入学式という単語に達也は予測がつく

 

達也『…続けて』

 

美月『はい、達也さんと司波さんのオーラって言うんですかね?それが、似ているっていうか何というか。本当にごめんなさい。』

 

達也が何も言わず聴くに徹しているため、美月が余計に縮こまる

 

美月の性格もあるのだろうが、達也の纏う雰囲気がそうさせるのか

 

達也『確かに、似ていると言えば似ているな。』

 

美月『ふぇ?』

 

すぐの達也の返答に美月も何を言われたのか理解に遅れが生じる

 

達也も彼女の表情から説明が必要と感じる

 

達也『美月の目ならば、見えてもおかしくはない。…けど残念、俺と司波さんは親戚とかでもないな。俺も入学式に初めて視たときはそう感じたが、血縁には居ないな。』

 

美月『そ、そうだったんですね。よ、良かったぁ。』

 

ヘナヘナと腰砕けのような体勢になる美月

 

少し、目が潤んでいる処を見ると達也から怒られることも覚悟していたようだ

 

達也『流石に良い目を持っている。その目とは大切に付き合っていくんだよ。(柴田 美月、彼女の目から読み取れる情報はそこまで無くて助かったな。師匠の言う通りか、しかし、用心は必要だな。仮初の情報は与えたが、何かの拍子で他者に漏らすと厄介だ。)…美月、それは司波さんの耳に入らないようにするように。』

 

美月『え?どうしてで…あ、そうでしたね。彼女は私達、特に守夢さんの事を嫌ってましたもんね。』

 

達也『そういうことだ。エリカ達にもな。そこから司波さんの耳に入る可能性もある。これは、俺と美月の秘密だ。』

 

人差し指を口許に当てる仕草をして、少し、愉しげな雰囲気を作り、美月を説得する

 

秘密を共有するということは事の重大さを理解していることだが、それは高校生には荷が重すぎるため、敢えて茶化しておくとそれに押し潰されない

 

目下の達成目標としては美月にそれを他言させないようにすることで、方法は何でもいい

 

美月『ふふっ、達也さんて意外とお茶目ですね。』

 

達也『…クラスメイトにはね。…っと、到着したようだ。』

 

会話しながら進んでいたため時間の経過に問題はない

 

そっと、中を覗きこむ。そこには、机ではなく、移動不可の長方形のテーブルが規則性に沿って並べられた部屋

 

例えるなら、理科実験室のような部屋が妥当だろう

 

 

美月『何でしょうか?フヨフヨ漂っていいるあれは。』

 

達也『あれは、精霊魔法と呼ばれるものだ。美月、色は何色に見える?』

 

 

美月『え?色ですか?青、藍、水色、紫色とかですかね。』

 

達也『そうだな。おそらく、魔法の練習をしているのだろう。』

 

美月『(一体誰が)…!』

 

室内を見渡すと、教壇の前に人影が一人分

 

その人物は一枚の札のような物を指に挟み、それを顔の正面に向けて目を閉じていた。

 

あまりの不気味さに美月が声を上げかけるも達也が抑え込む

 

その人物は、吉田 幹比古 達也達と同じクラスメイトだ。

その傍らにお香の器から微かに香りがする

 

そして、彼、幹比古の周りには達也の言う精霊が漂っていた

 

美月『…吉田くん…?』

 

【術を行使している人の邪魔をするな】

 

これは基本的に、他人が魔法実験を行っている場に、招かれず立ち入ってはならないというのは、実習で最初に教わる注意事項だ

 

発動中の魔法とその魔法演算領域の干渉により、思わぬ暴走がある

 

それを忘れていたため、思わず対象の人物の名前を口にしてしまう

 

初回は達也が抑えきったが、二度目を予測出来なかった達也の制止も空しく、相手はー

 

幹比古『!?誰だ!』

 

条件反射での怒号、それは、見られたくない何かを僅かでも見られたことへの怒りとそれに対する反撃

 

意思に呼応して精霊が美月へ襲うー

 

はずが、彼女の周りに何か結界のようなものが精霊から守られる

 

 

達也『すまない、幹比古。邪魔してしまった。』

 

瞬時に美月を守り、幹比古の攻撃もいなし、直ぐに攻撃の意思は無いように両手を開いて挙げる

 

それに数拍おいて、クラスメイトだと気付く幹比古

 

幹比古『たつ、…守夢と柴田さん?』

 

達也『今は誰も居ないし、達也でいい。それよりもすまない。術の邪魔をしてしまった、興味本位で誰が行使しているのか気になってな。』

 

見られたことよりも見知った顔が居ることが勝り、険しい表情が霧散する

 

それとこれとは、別問題のため頭下げて謝る

 

此方に非があるのは確か

 

達也一人ならバレるような失態は犯さないが、今回は美月のこともあり真っ先に謝罪した

 

幹比古『あ、うん。気にしなくて良い。』

 

達也『お言葉に甘えて、さっきのは、喚起魔法か?』

 

幹比古『凄いね、一目で見破るとは。本当に二科生なのか疑ってしまうよ。その通り、水精を使って練習していたよ。あ、柴田さんも気にしないで。』

 

美月は俯いて沈黙しており、幹比古の邪魔をしてしまったことに罪悪感を感じていた。

 

それを幹比古も解っているが言葉が掛けづらい

 

それを察して達也が美月に会話に入ってくるように促す

 

達也『美月、幹比古の精霊は何色に見えた?』

 

幹比古『え?』

 

突然の達也による美月には答えて良いものか、幹比古にとっては耳を疑う発言が出る

 

 

美月『え、えーと。』

 

幹比古『色の違いが判るのかい?』

 

それに即座に反応したのは幹比古で

 

ガシッと美月の肩を掴み、顔を近づける

 

美月は真剣で急接近する幹比古に、顔を真っ赤にし声も出せない状況に陥る

 

流石の達也もこれは安直な打開策だったかと反省し、態とらしい咳を一つし、二人に割ってはいる

 

達也『合意の上なら席を外すが?』

 

幹比古『!ご、ごめん。…精霊の色の違いが判るんだよね?』

 

美月『は、はい。達也さんも判るようですよ?』

 

達也の言葉に二人とも気まずさを感じて何も言えなくなる

 

暫し沈黙の後、幹比古が言葉を選びながら確認するように尋ねる

 

それに対して美月も調子を取り戻したようで、普段通りに回答する

 

幹比古『それは何色だった?』

 

聞き漏らさないように真剣の幹比古

 

美月『確かー』

 

達也と話していた時とこの部屋を覗いたときの精霊の色のことを幹比古に話す美月

 

幹比古はそれに驚きを隠せず、その目について説明をする

 

幹比古『精霊を見れる目は水晶眼と言って、貴重なんだ。それは、精霊の色を見分けられる人なんだ。ただ、そんな貴重な人に会ったのが初めてで。ごめん。本当に驚いたというか、確かめたかっただけで…やましいことは何も、その…。』

 

幹比古の言を信じるなら、精霊(俗称では、神を見れる眼とも言われるらしい)を見れる眼を持つ人間というのはとても少ないのだろう

 

それならば、その貴重な眼を持つ人間は狙われる可能性はあるのではないのか

 

達也『幹比古、その水晶眼とやらを持つ人間は貴重とのことだが、狙われる可能性はあるのか?あるのならば、お前の家もそれを欲しているのか?』

 

ずばり核心を突く達也の言葉に幹比古も誤解のないように説明をする

 

幹比古『!?…鋭いね。その通りだよ。確かに、この眼を欲する家は多い。実質、吉田家もその一つだ。けど、僕はこの事を他言する気はない。今の僕にそんな資格はないしね。それに、この眼を持つ人間は貴重と言った通り誰かが独占とかをしてはいけないと思うんだ。』

 

幹比古自身、正直にこの眼が自分に備わって欲しかった

 

だが、そんなことを言ったところで詮ないことだ

 

 

達也『それを聞いて安心した。美月は力を何も持たない人間だ。それを無理矢理拐う真似をするのは人としてどうかと思ったまでだが、やはり幹比古は出来た人間だよ。』

 

もし、幹比古が美月を拐う暴挙に走るならばその程度の人間だったのだと見切りをつけるところだった

 

もし仮にそうなったとしても、そこまで達也が助けてやる義理はない

 

寧ろ、どうぞご勝手にと言うかもしれない

 

いや、必ずそうするに違いない

 

達也にとっては自分の家族以外がどうなろうともどうだって良いのだ

 

とりあえず、当たり障りのない返答をしておく

 

幹比古『お誉めにいただき光栄だよ。けど、達也もその目を持っているなんて。何度も聴くけど、本当に二科生?』

 

達也『失礼な。事象改変の力は無いに等しい。だから、魔工師の勉強をしているんだが…。それはさて置き、そろそろ皆が下に集まっているはずだ。一緒に帰らないか?』

 

達也は少し違うが、神夢家の人間は大なり小なりこの眼は持っている

 

幹比古の一族や他の一族にも言えることだが、水晶眼とは言わない

 

この眼のことを太古から鬼を見る眼や見鬼等と謂われる

 

ーそして、自分たちがこの実験棟に来てから15分近く経過している今から向かえば、ちょうど位だろう

 

美月『そうでした。ほのかさん達が来る時間合わせで来ていたのを忘れていました。』

 

幹比古『そうだね。急ごう。』

 

相手を待たせるのは気が引ける

美月や幹比古の性分なのだろう、それは美徳の一つでもある

 

何はともあれ、帰途の目処がついたのなら早く帰ることに越したことはない

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

摩利『…遅い。』

 

達也『委員長も堪え性がないですね。』

 

時刻は正午を廻ろうかという頃

出発時間は十時のため二時間ほど遅れている

 

先ほどの摩利の言葉は人待ちをしているため出てきた言葉だ。

 

摩利『お前が言うな。集合時間ギリギリに来たお前が!』

 

何を隠そう、達也は今日から九校戦が始まるということを忘れていたからだ

 

いや、厳密には準備等は万全だったが、研究に没頭しすぎで昼夜を逆転して日付感覚を忘れたというほうが正しい

 

達也『すみません。』

 

摩利『まぁ、時間に関しては許すが、制服はどうした?』

 

現在の達也の服装は第一高校の制服だが、第一高校の校章が無い

 

九校戦のメンバーは校章の入った制服を着るために二科生である達也もその制服は支給されているはずであるが、今の達也の服装は二科生の校章の入っていない制服なのだ

 

達也『はい、サイズが少し小さかったので、懇親会以外はいつものを着ています。』

 

支給されているとはいえ、サイズの微調整はされていない

 

達也もこれからずっとその制服を着るわけではないのでそれで構わないと思っている

 

というよりも、今日は制服でなくても私服でも構わない

 

ーーのだが、達也は何故、関係性のない生徒達に己の私生活を晒け出さなければならないのかということで制服なのだ

 

摩利『まあな、仕方ないといえば仕方ないか。だが、丈や袖を直しても良かったんだぞ?もしかしたら、お前が転入するかもしれないしな?』

 

達也の内心を読んだかのように一科生入りの未来を示唆する摩利

 

そこには面白がる表情が見え隠れする

 

達也『遠慮しておきます。魔法力が無いこの身に絶対条件を満たしてないのに入りたいと思いません。それにー』

 

達也自身にメリットが全く無い

何度も説明したが、この第一高校に入学したのは魔法に関する文献の閲覧のみ

 

それだけだ、それ以外は煩わしいのだ

 

摩利『それに?なんだ?』

 

達也『いえ、一科生の思考が苦手なので、出来れば穏便に過ごしたいだけです。』

 

摩利『…私はお前を高く評価しているんだが?魔法力ではなく、その魔法に対する姿勢に。』

 

魔法力が全てだと自惚れている一科生にうんざりしている

 

それに比べて達也は魔法力は脇に置いておいくも他の能力はずば抜けている。自分に足りないモノを他で補おうとするその姿勢にー

 

達也『光栄です。』

 

しかし、達也は摩利の言葉に無感動に礼を述べるだけ

 

その後は暫し沈黙が支配し、摩利にとっては居心地の悪い雰囲気となった

 

 

真由美『ごめんなさい~、おまたせ。摩利、守夢君。』

 

その数十秒後、七草 真由美が小走りに姿を見せてきた

 

真由美の登場に少し救われた摩利

軽口を叩かなければ気分が晴れない、八つ当たりと解っているが今回は仕方ない

 

摩利『遅いぞ、真由美。』

 

真由美『ごめん、ごめん。守夢君もごめんなさいね。こんな炎天下の中待たせてしまって。』

 

事情が事情なだけに真由美は、前以て連絡をしておいたのだが、大半の生徒が待つということを選んだ

 

というのも、十師族 七草家の事情で遅れるとおよそ三時間前

 

真由美は後から合流すると言っていたのだが、先程の通り待つということで逆に彼女を急かすことになってしまったのだ

 

 

達也『いえ、大して待っていません。これくらいは普通ですし。汗も然程です。若干の魔法も使えますし。』

 

真由美『ほんとだ、汗をかいてないのね。』

 

達也に近づき、首筋や手の甲に汗をかいていないことを確認する

 

というよりも態々そんな確認をする必要性があるのか疑問だがー

おそらくは真由美の小悪魔がいたずらを仕掛けようと企んだのだが、不発に終る

 

真由美もそれなりの美少女だ、そんな異性に近づかれて動揺しない達也は彼女を一体どのように認識しているのか

 

達也としてはただの先輩か厄介者という認識なのだろうかー

 

達也『会長の事情の方が大変でしょうし。会長もお疲れのご様子。約二時間はバスの中で休んで下さい。では、出発しましょう。』

 

真由美『あ、ちょっと守夢君…もう!』

 

スタスタと離れていく達也にそれ以上絡めなくなり、真由美は憤慨する

 

もう少し会話をしたかったが、逃げられる

タイミング的にはそれなりに良かったが、どうも達也は接触を嫌がる

 

達也からすれば、自分はどのように映っているのか気になった

 

 

 

 

 

 

いつも通りに真由美をあしらい、エンジニア用のバスに乗り込む達也

 

一見平常運転をしているような達也

 

しかし、常人が気付かないほどに肌の感覚や精神が鋭敏になっているのを自覚する

 

これが、何を意味しているのかが判らない

 

所謂、第六感や虫の知らせということだが、一般人からすれば、そこまで気にしないだろう

 

しかし、達也はこれを無視をしない

 

必ず何かが起こることを理解しているからだ

 

 

達也『……』

 

空を見上げ、達也はこのまま九校戦が何事も無く終えることを祈るばかりだった

 

 

 

 

真由美『もう、守夢君ってば。私の事をもう少し構ってくれてもいいじゃない!』

 

バスの座席に座るなり、達也に対する愚痴を漏らす真由美

 

内容は殆ど八つ当たりなのだがー

 

鈴音『…十分、相手をしていると思うのですが?まあ、守夢君は賢明な判断だと思いますよ?』

 

真由美『どうして?』

 

鈴音『会長の持つ美貌という魔力にやられていたかもしれませんし。しかし、彼はそれを無効するキャストジャミングの亜種系のようなものを使われるとか。どっち道、会長には勝ち目は無かったですね。』

 

と澄ました表情で分析をする鈴音だが、言葉の端々には愉悦が混じっている

 

ここぞとばかりに真由美を弄る鈴音

 

真由美『なっ…、もうリンちゃんの馬鹿!』

 

魔眼と魔顔を掛け合わせた鈴音の言葉に真由美も理解出来たようで、拗ねて背中を丸めて反対側に顔を向ける

 

その姿はとある症状を連想をさせてしまう

 

 

服部『会長、どうされましたか?お気分が優れないのですか?やはり守夢の言う通り少しでも休まれたほうがー』

 

現在進行形で片想い中の服部がやはりというべきか真由美を気遣う

 

真由美『あ、大丈夫よ、はんぞー君。ありがとう。』

 

服部『本当ですか?』

 

真由美『えぇ。全然なんともないから。』

 

真由美を理解した人物なら放っておくのだが、(片想い)フィルター越しの服部には判らない

 

その様子を隣で見ていた鈴音は真由美の様子がおかしいことに気付く

 

やはり、精神的に疲れていたのだろうか

これ以上溜め込ませるのはよろしくない、服部には悪いが生け贄になってもらう

 

鈴音『服部副会長、どこを見ておられるのですか?視線が嫌らしく感じるのですが。』

 

服部『え、あ、いや、どこも見てません!会長の素肌など…じゃなくて、冷えてはいけないので毛布をと。』

 

鈴音『そうでしたか、ではどうぞ掛けてあげて下さい。…会長の柔肌に触るために。』

 

最後のボソッと呟かれた言葉に服部は何を想像したのか顔を真っ赤に染める

 

それを見た真由美も鈴音の言葉に便乗する形で仕草だけ服部から距離を離すように動く

 

その表情には悪戯心が窺える

 

真由美『…はんぞー君。あのね…優しくしてね?』

 

服部『なっ、あの、そうじゃなくてーー』

 

そんな真由美の行動から七草家の事情はストレスだったのだと思われる

 

しかし、相も変わらず服部は不憫だと感じる鈴音だった

 

 

 

 

 

摩利『何をやっているんだ?あそこは?…おい、花音。少し大人しくしろ。数時間位我慢しろ。』

 

席の前の方で真由美達が騒がしくしており、まるで遠足を楽しみにしている小学生である

 

まあ、真由美に関しては家の事情だけに彼女だけを責めることは出来ない

 

少しでもストレスを発散させる必要があるのだが、原因(七草家)と解決方法(脱七草家)がジレンマのためどうしようもない

 

せめてもの救いが誰かに捌け口になってもらうのが一番良い

 

服部には悪いが現状はそれがベストなのだ

 

 

前の座席の喧騒にため息をしつつ、シートに深く座り込むと隣には後輩である2年の千代田 花音が此方は此方で不満げな顔と足を揺らしていた

 

千代田『だって、だって摩利さん。折角、啓と旅行出来ると思ってたのにこの仕打ちはあんまりです。』

 

千代田 花音ー数字付きの家柄で千という数字を冠する百家である。

百家は十師族に次ぐ位の家柄だ

 

数字で言えば、十一の数字から呼ばれる

 

そして、彼女はその千代田家の直系である

 

彼女は対物攻撃力なら摩利を凌ぎ、陸上兵器相手なら十師族の戦闘魔法師と同等の戦闘力を誇る

 

 

 

摩利『全く、大袈裟な。』

 

千代田『なっ、摩利さんの馬鹿。婚約者だからこそずっと居たいんです!』

 

そして、彼女は何が不満かと言うと恋人もとい婚約者と一緒に居られると思ったのだが、実際は違うということ

 

五十里 啓 彼もまた、百家の家柄である

魔法理論の分野では二年生トップ、実技も上位で今回はエンジニアとして九校戦のメンバーに入っている

 

 

摩利『そういうものか?』

 

千代田『そうです!…だいたいですね、このバスの席は十分空いているのに、此方に来れないのかってことですよ!ー聞いてます?』

 

花音の力の籠った肯定に引いてしまう摩利

 

反論がないことで花音の不満が爆発し、愚痴となる

花音の甲高い声に摩利は、必要のないスイッチを押してしまったと後悔する

 

とりあえず、ある程度治まるまで待つしかないかと嘆息するしかなかった

 

 

 

 

ほのか『雫、楽しみだね。』

 

雫『そうだね。欲を言えば、達也さんも同じバスが良かったかも。』

 

雫の言葉にほのかも頷く

バスの座席を見れば、まだ余っている

 

席の位置としてはバスの中央より後ろの席にほのかと雫といった、一年生が座る形になっている

 

同じ横の列にほのかと雫、通路を挟んで深雪と他の一年生である

 

そのため、雫とほのかとやりとりも聴こえている訳でー

 

 

深雪『?どうしたの?二人とも、何か心配事かしら?…あの男の事だったら忘れなさいね。』

 

達也の言葉が出てくると途端に不機嫌になる深雪

 

彼女は二科生というよりも達也という単語に反応する

原因はおそらく、あの模擬戦だろう

 

 

ほのか『ううん、何でもないの。気にしないで?』

 

確信した、達也という単語は深雪にとってNGワードだと

これ以上不機嫌にさせないように深雪には忘れてもらおう

 

深雪『そう?何か気になりそうなことは言ってね?』

 

ようやく、可憐な表情を見せる深雪にほのかと雫は胸を撫で下ろす

 

危うく、極寒の地になるところであった

 

雫『ほのか、深雪の前では達也さんの話は避けよう。(ボソッ)』

 

ほのか『そ、そうだね。』

 

同じ轍は踏まない

 

二人はそう誓った

 

 

 

 

学校という生活の中で、特別学外に出ることは少ない

 

しかも、学校側がすべて費用を負担して半ば旅行のようなものである

 

しかし、全ての人間が楽しいと感じる訳ではない

 

最近のスイーツの話題や目的地の話、はたまた恋愛の話であったりする生徒も居れば、つまらなさそうにする生徒や何か興味を抱くものがないかバスの外を確認したりする生徒ーー

 

しかし、実際バスの外の様子を確認する生徒、所謂アンテナを張った人間が生き残る率も高いのも事実

 

今回は千代田花音が婚約者と離れているため、バスの車内はつまらないと外を見ていたのが幸運だったのだろう

 

彼女の視線の先で、数百メートル前方の対向車が不自然な動きをする

 

高速道路なのに、ふらふらと蛇行をするオフロード車

 

居眠りでもしているのかと疑いたくなるような走行に

危ないなぁと思ってしまう

 

しかし、それが一時の状況なら問題はないが、それが続けば危機感を覚えるのは当然のこと

 

 

花音『なんか、あの車の動きがおかし…危ない!』

 

言い終わらないうちに対向車がスリップを起こし、走行車線のガードレールに当たり、その反動で追い越し車線に来る、更に中央分離帯に激突するかと思いきやそれを飛び越えて来たのだ

 

車は炎を纏いながらバスに向かってくる

 

彼女が声をあげるもその車が止まるはずも無く

 

バスの運転手も慌ててブレーキとハンドルをきる

バスは車体を横に向け何とか停止するも、飛び越えて来た車は止まらず、此方に向かってくる

 

この状況に反応して一部の生徒が向かってくる車に減速魔法といった類いの魔法を発動させる。

 

 

花音『止まれ!』

 

森崎『この!』

 

雫『止まって!』

 

1-A『止まれ!』

 

2-A『止まるんだ!』

 

服部『…(スッ)』

 

しかし、事象改変の魔法は相克を起こし、車は止まらない

 

摩利『やめろ!魔法をキャンセルするんだ!(…魔法が相克を起こしている、これでは。)…十文字!いけるか?』

 

大人数の魔法が重なりあって魔法が発動しないこの状況

 

行使された魔法は発動中で未完成のため、運は尽きていない

 

そのことに摩利は気付き、冷静に努め打開策を探る

強力な魔法は一瞬で現実をを書き換える

 

それを行うには今、発動している魔法を圧倒する魔法力を持った魔法師が必要だ

それを行えるのは、十文字しかいないと判断する

 

しかしー

 

十文字『…』

 

普段なら、無言ながらも実行してきたが、さしもの彼も想子(サイオン)の嵐の中で消火と衝突を防ぐことは難しいのか

彼の顔に焦りが浮かぶ

無理もない、重ねられた発動中の魔法は十個以上なのだ

 

それを見た摩利も無茶を承知で尋ねたので責めることは出来ない

しかし、この二つの事象改変をしなければ、自分達が巻き込まれるのだ

 

 

万事休すかーー

 

 

 

 




如何でしたか?

最後は少しアニメに寄りました。

①達也君家族にはだだ甘です
②達也君と響子さんの距離は原作より圧倒的に近いです
双子達が嫉妬するほど(笑)
③隠れSの達也
④達也は霊子-プシオン-も見えます、というよりか厳密に言えば、違うんですよね
⑤達也は興味の無いことには結構ズボラに近かったりします

本編としては、優等生の内容も盛り込もうと思案してますので、見ていただければと思います。

それでは、次回もよろしくお願いします。
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