抹殺された神の愛し子 作:貴神
まさか、同じような思われていたとは。
…さて、今回はどこまで進めようか
優等生のキャラも入れたいし………。
漸くですが、この小説サイトの投稿のコツ?が解ってきました。それに連なって過去の単語も変えていきます!
今回はオリジナル設定の達也君の特殊能力を少しばかり書きます!
もう一つ!
あるキャラクターを登場させる予定です❗️
私としては、一番、達也と似合ってるんじゃないかというか一番好きな人物です。願いとしては、達也とその人が結ばれて欲しいと思っています。
それよりも、達也君の追加能力は好評なのか少し(いえ、結構)気になります。
温かな目で見守って下さい
九校戦二日目
午前7時過ぎ
浩也達の宿泊している部屋に早朝から訪問者があった
コン、コン、コンと扉をノックする音、気配でその人物が誰なのかは判っている
だが、その人物にしてはやけに弱々しいノック
浩也『構わないよ、入って来なさい達也。』
達也『…朝早くからすみません。』
浩也の促しから間をおいて入室する達也
凛『おはよう、…達也?』
普段の達也と比べても今日の達也はおかしい
第一印象としては、親鳥を探す雛鳥のよう
そして、服装も就寝用で覇気もない
まるで別人のようである
浩也『…』
達也『…すみません、恭也と結那、加蓮は?』
キョロキョロと視線をさまよわせる達也
何かを探すというか、きっかけを探しているのか
言葉に出すことを躊躇っているようにも見受けられる
凛『あの三人なら少し体を動かしてくると言って…』
達也『!?どこですか?』
妹達と弟が出掛けていると凛から聴くや否や
焦りと恐怖が混じった表情で凛に詰め寄る
凛『!』
浩也『達也、落ち着きなさい。』
何かを察した浩也が達也の肩に手を乗せる
そしてその手で達也の頭をわしゃわしゃと撫でる
達也『っ!…すみません、取り乱しました。』
時間にして数秒だが、達也を落ち着かせるには十分な時間だ
浩也『…夢を見たな?』
達也『…』
浩也は達也の様子を見て核心を付く
達也は頷くだけだが、言わなくても解る
浩也『凛の言葉を補足すると、体を動かしてくると言った三人だが、独立魔装大隊のメンバーと一緒だ。安心しろ。』
浩也の言葉に達也も胸を撫で下ろす
その言葉を聴くまで安心することは出来なかった
達也『良かった。なら、私は部屋に戻ります。』
家族の安否が確認出来たため、部屋に戻る
今日も朝から(エンジニアとしての)仕事のため準備もある
選手達の体調も確認して最終調整をしなければならない
浩也『待ちなさい達也。そのまま仕事をしても問題無いだろうが、時間にはまだ余裕があるゆっくりしていきなさい。ハーブティで良いか?』
達也『…はい、それでお願いします。』
今の自分の精神状態を見抜かれていたのだろう
ガタガタの精神は回復したものの、安定したいつもの自分にも程遠いことを
手っ取り早く戻すには、落ち着く場所に居ること
それが達也の場合、家族の傍ということだ
凛『達也のことだわ、予選用の調整は全て終えているのでしょう?』
浩也『昨日の試合は見事だったぞ。まさかあれを使うとはな。』
親である二人は達也を甘やかすことにする
いつも、家族第一に考え行動するような達也を負かせる数少ない人物だ
達也『お二人には敵いませんね。』
家族に褒められるとやはり嬉しい
他の子供達は居ないものの、達也にとっては安らぐ空間といっていい
浩也『…落ち着いてきたところで、お前の見た夢だが俺だけでなく、子供達にも聞いてもらった方がいいだろう。』
予知夢を見ることが出来る血は浩也だけではない
双子の姉妹の結那と加蓮に末の弟の恭也
しかし、達也はあまり心配をさせたくないのか渋っている
凛『達也、言霊ということもありますが、話すは放すといいます。』
達也『…はい。』
凛にも説得されては根負けするしかなかった
ーーーーー
加蓮『ただいま!あっ!達也!』
結那『ただいま戻りました。あっ!達也さん!』
恭也『ただいま戻りました。…!兄上!』
五分も経たずに双子と弟が鍛練から帰ってくる
数分前の静けさは何処へやら一転して騒がしくなる
騒がしいのは嫌いな達也だが、愛する者達と過ごす時間はこの上ない贅沢なのだ
達也『おかえり、三人とも。』
穏やかな笑みを浮かべる達也
三人の身嗜みも整った処で、昨晩見た夢の内容を打ち明ける
結那『…なるほどですね。』
加蓮『う~ん。』
双子は達也の滅多にないお願いに真剣な様子
末の弟の恭也も似たような表情だ
しかし、浩也に関しては三人とは違った表情
達也『…朝からこんな事を言ってすまない。だが、どうしても気になってな。恥ずかしながら、三人が居ないことに取り乱してしまって義母さんを困らせてしまったんだ。』
加蓮『えー!?なんでなんで?それを私の前でしてくれないの?』
結那『加蓮じゃ役不足なんじゃないかしら?私なら達也さんの弱ったところも包み込んであげれるわ。』
取り乱した達也を見てみたかったという結那と加蓮
そういった表情をほとんど見たことが無いため、双子にしてみれば達也の新たな一面を知ることが出来たかもしれない
更に言うなれば、達也との距離が縮まったかもしれないのだ
凛『二人とも少し落ち着きなさい。達也が取り乱したのは、貴女達のことが心配だったから。かけがえのない存在ということよ。ねぇ?達也?』
達也『義母さん?ちょっとそれは飛躍すぎでは?』
凛『あら?二人が大切ではないということかしら?』
双子の追及を凛が止めてくれたは良いものの、煽っては逆効果な気がするのは何故だろう
暫く沈黙していた浩也が達也に問いかける
浩也『…達也、その夢。いや、記憶といったほうが的確か。他には何か視たか?』
口にすれば『みた』という言葉だが、浩也が問うた言葉は『視た』
言ってみれば、目に見えるものではない何かを視たのかどうか
達也『…いえ、何も。唯、あの時の記憶とは違うような気もしました。…人も違った気がします。何より、自分自身がこの姿でした。』
あの記憶はあまり思い出したくない
だが、乗り越えなければならないものではある
浩也『なるほどな。…恐らくだが、達也お前予知が出来るようになっているのかもしれないな?』
主観的な情報を元に浩也は達也が呆気に取られるような言葉を発する
達也『は?』
達也だけではない
妻の凛から結那、加蓮、恭也までもが似たような表情をする
浩也『お前の能力に【
【
その眼で見た魔法を再現するしかし、再現できても質は本家に負ける
但し、自身の魔法力に比例する
つまり、自身のスペック(魔法力・能力)の範囲内でしか不可能
達也『待ってください。あれは、見たものを自分の能力の範囲内で再現するというもの。予知には血筋と霊力が必要です。血はありませんし、霊力は魔法力や
予知という特殊能力は誰でも真似出来る訳ではない
血と霊力その二つが揃ってこそだ
それを当て嵌めると、達也は養子のため霊力は無い
全く無いではわけない、人間誰しも霊力は少なからず持っているもの
しかし、生命力=寿命ではない
気力という言葉が近いのかもしれない
それが多いか少ないかの話なのだ
そして、神夢家の血を引く人間はこの霊力が徒人より圧倒的に大きいのだ
その圧倒的に大きい霊力が予知には必要不可欠
そのため、どちらかが欠けていても不可能
それを一番理解している浩也だが、何故かそれを力業で通そうとしている
浩也『だからだよ。…お前の中にあるアレは万能と言っても過言ではない能力、お前の左手に着けているブレスレット兼時計だが…。』
それを可能にするための証拠を達也の中にある能力で組み上げていく
そして、達也が秘匿すべき能力の一つ
分解と同等以上のそれが予知を可能にした要因として挙げる浩也
達也『…』
浩也『まだ、使いこなせていないアレと溢れ続けている
達也の左腕、手首辺りに収まっている腕時計の形をした特殊な素材で出来たもの
計時機能は勿論あり、日々増え続ける
達也『…なら、こういうことですか?アレの影響で複製が進化し予知をしたと。』
浩也『その可能性が高い。』
納得はいかないものの、確かにアレは自分でも解明出来ない謎が多い力
能力をグレードアップ(改良)させることは出来たが、無いものを補うことは信じられなかったが
達也『わかりました。仮に予知が出来たとして、その夢の内容ですが…』
浩也『そうだな。横たわる四肢に血の海か…。』
今回の達也の夢は如何せん情報が少ない
しかし、浩也らが視る夢は殆ど情景も全てが完璧
初めて視た予知夢ということは考慮すべきかもしれない
凛『…二人とも。考えるのはいいですが、達也が時間みたいですよ?』
時刻は午前8時前
あと一時間もせず九校戦が始まる
達也はエンジニアのため、選手の体調も見て最終調整が必要だ
達也『遅刻気味なので、また昼に伺います。今日も暑くなりそうなので、体調を崩さないよう。…じゃあ、いってきます。』
全員『いってらっしゃい。』
部屋を出ていく達也を笑顔で見送る家族
加蓮『…で?お父さんは何を考えているの?』
浩也『おや、バレていたか?』
結那『普段の達也さんならとっくに見抜いてますわ。』
達也から夢の内容を聴いてから数分後に瞳が煌めき、十分後には面白がるような表情に変わっていた浩也
凛や双子、恭也が気付いたのは偶然だった
達也が暫し思考に耽った時に、浩也の口角が上がっていたため漸く気付いた
だが、達也は昨晩の動揺から戻っていないため気付けなかったようだ
浩也『大したことではないよ。達也と我が家を阻むモノが一つ減ったから嬉しくてね。達也があの苗字を名乗れる日も近いかな?とね。』
本当に嬉しそうな浩也
凛『…本音は?』
永年連れ添った妻の凛には隠していた本音を見破られたようで
浩也『もっと、困った達也を見てみたい♪』
いい大人が語尾を弾ませて可愛く言ったつもりだろうが
…悪寒がした
結那・加蓮『…ヒトデナシ』
ーーーーー
摩利『遅いぞ。』
達也『申し訳ありません。時間もあまり無いので、早速始めます。』
時刻は午前8時10分頃
試合開始は午前8時30分からのため、今回の達也は遅刻寸前である
普段の達也なら、この時間には調整も全て終わっているのだが、今回の事態は特殊だろう
摩利『…うん、いい感じだ。流石だな。』
調整を開始してから僅か数分で仕上げた達也
そのスピードと完成度は流石と言わざるを得ない
しかし、それは摩利本人の体調管理の賜物ともいえるが
達也『ありがとうございます。これで、予選は問題は無いと思いますので、試合が終わればCADは私に預けていただいて、体を休めて下さい。』
摩利『了解した。』
摩利自身の能力としてそこまで策を弄する必要もない
彼女自身の体調と達也が調整をきっちり行えば、問題ない
達也『では、お気を付けて。』
バトル・ボード
全長3kmの人工水路を3周するレース競技である
選手からは「波乗り」とも呼ばれる
加速魔法などを駆使し競い合う
ルールとして他の選手に魔法で干渉することは禁じられている
予選は4人ずつ6レース行い、予選1位になった6人で3人ずつ2レースの準決勝、3位決定戦を準決勝敗退者4人で行い、準決勝1位の二人で決勝を行う(計10レース)
1レースの競技時間は平均15分、コースの整備に競技時間の倍以上を要することから1レース1時間でスケジュールが組まれている
元々は海軍魔法師の訓練用に考案された競技
これだけを聞けば、加速魔法が得意な選手を選抜すればいいと勘違いしてしまう
しかし、忘れてはならないのがこの競技は外で行うということ
それは、外的要因が大きく絡む競技でもある
例えば、風が吹いたり、気温が高かったり、雨が降っていたりとそういった状況でも競技をする
そのため、選手には魔法力も然ることながら体力がものを言う
また、時速50kmから60kmでコースを攻めるため嫌でも風を受ける
ボードから落とされないように維持したりと、相当の体力を消耗する競技なのだ
選手がコースに入り、各選手はそれぞれの体勢で試合開始のブザーを待つ中
摩利はというと、仁王立ちで腕を組んで合図を待っている
選手紹介アナウンスで摩利の名前が上がると、摩利のファンは黄色い声を挙げる
エリカ『うわっ、相変わらず偉そうな女。』
堂々した摩利の様子をエリカは辛辣な言葉で批評する
その言葉に周囲はエリカに不思議そうな目を向ける
レオ『?』
ほのか『エリカちゃん、渡辺先輩と何かあったの?』
エリカ『いや、ちょっとね。』
普段、からかう事が多いエリカが罵倒に似た言葉を使うのが珍しい
ならば、その相手と何かトラブルでもあったか
開始のシグナルがされ、試合が始まる
開始と同時に四高選手が自分の後方に魔法で波を作り出す
が、波が大きすぎて自らも巻き込む荒波になる
この時、別の場所で見ていた達也は
波を推進力にしようとしたのだろうなと四高の選手の意図を理解していた
エリカ『自爆戦術?』
呆れるエリカ
それにしては効果が薄い
雫『持ち直したみたいだけど、渡辺先輩には効果なかったみたいだね。』
荒波に巻き込まれることもなく、開始とともにスタートダッシュを切る摩利
1コーナーに差し掛かかる摩利
その時、漸くスタートを切った他の選手
勝負はこの時点で決まっていた
ほのか『あっという間に差が開いていく。』
尚も、摩利は手を緩めずにどんどん加速していく
それにしても、あれだけ高速なら体への負担が大きいはず
美月『一体、何の魔法を使っているんでしょう?』
深雪『加速と振動系の他に…何かしら?』
摩利が使用していた魔法が判らないままだが、他の選手の追随を許さぬ圧倒的なスピードに脱帽ものである
そして、コース終盤にある坂を上って滝もどきをジャンプし、着水時には大量の水飛沫を後続に浴びせ、失速させる
追い打ちなのか定かではないが、中々の策士である
エリカ『あんなことする必要ないじゃない、性格悪ぅ。』
摩利を悉く批評するエリカに周囲はどうしたのかと逆に心配になる
しかし、この場合は性格よりも戦術家と称する方が良いかもしれない
そうこうしているうちに摩利の予選通過が決まった
達也『お疲れ様です。流石と言いますか、3.4種類の魔法をマルチキャストされていたのは驚きでした。(その中でも硬化魔法の使い方は参考になるな。)』
予選通過を決めた摩利
緊張からの一区切りをつけるためタオルを渡す
摩利『ありがとう。まぁ、お前の調整もあったからな。』
終始にこやかな表情の摩利
調子は良いようで一安心する
達也『私の調整ではありませんよ。委員長の魔法力あってこそです。私以外がしても結果は変わりませんよ。』
摩利『それじゃあ、次は一時間後だな。お前の言う通りに休ませて貰うよ。』
達也の謙遜も聞き慣れたものだが、聞き流すことは出来ないため嘆息して、次へ話を進める摩利
バトル・ボードのコースは6コースある
本選女子の予選が終わったため次は新人戦女子の予選
それが終われば、本選女子の決勝トーナメントとその余ったコースで本選男子と新人戦男子の予選を行い、その次に新人戦女子と非常にタイトなスケジュールで進められる
午後からは、本選男子で新人戦男子の決勝トーナメントだ
達也は新人戦女子で出場するほのかの担当でもあるためこれから会場入りだ
摩利が休憩に入ったのを確認して新人戦女子で出場するほのかの許に向かいながら考えに耽る達也
達也『(今のところ、予知に関しての手掛かりは無いな。昼休憩時に、浩也さんと相談だな。…それにしても、奴等は何も仕掛けてこないな。)』
夢の内容は浩也と再度協議するとして、もう一つ、一昨日侵入してきた賊が何も仕掛けてこないのが不思議だった
達也『体調はどうだい、ほのか?』
新人戦女子バトル・ボードの控え室で準備しているであろうほのかの様子を確認する
ほのか『…だ、大丈夫です。しゅ、睡眠も十分に摂ってますし、体力作りも達也さんにアドバイスしてもらった通りにしてますから。…うぅ。でも、それとこれとは別で緊張で体が。』
試合用のICHIKOのロゴの入ったウエットスーツとスイムシューズを着用して準備は整っているようだが、それとは逆におどおどした様子のほのかがいた
達也『体力作りと睡眠が摂れているなら、まずは良しだ。緊張か(雫の話によると、ほのかは試合の場合に緊張というよりかは他人と比較しすぎて自分に自信が持てないということらしい)…それは誰でもあることだ。馴れるしかないな。』
達也自身緊張は経験しているし、今でもある
それは、個々それぞれが克服の仕方を持っているため教えることは出来ない
ほのか『どうしても、失敗したらって考えたらその事ばかり頭に浮かんできて…。』
何でもいいから克服のヒントが欲しいと強く願うほのか
しかし、それは只の甘えでしかない
達也はこれまで色々とほのかや雫らに対して破格といって良いほどに優しい対応をしてきた
しかし、それが今日の達也はーー
達也『…引き寄せの法則というのがこの世の中にはある。それは、良し悪しに関わらずに思考したことが現実に起こる。というよりは、意思とは無関係に勝手にそういう行動を起こしてしまうと言った方が近いだろう?ほのかの言葉や思考が鍵になる。だから、自分がどうしたいかを考えるんだ。…アドバイスはここまでだ、悪いが俺はほのかではない。』
少しと言い難いがピリッとしており、触れれば切り裂かれそうな緊張感を纏っている
ほのか『え?』
そんな達也の雰囲気と発言に呑まれるほのか
はっきり言って、こんな達也は知らない
知っているのは、余所余所しく話す達也、穏やかに諭すような口調の達也だ
それが今は、何か試すような言葉遣いでほのかは恐怖を感じる
達也『冷たい、酷いとか考えているならお門違いだ。これはほのか自身の問題だ。アドバイスはした、CADの調整もしている。エンジニアは選手ではない。』
尚も、畳み掛けるようにほのかに反論を与えない達也
ほのか『ごめんなさい、達也さんなら何とかしてくれると思って甘えてました。』
ここまで言われるとは思わなかったほのか
彼女の涙腺は決壊寸前である
達也『厳しい言い方で申し訳ないが、事実だ。けど、ほのかなら優勝出来ると確信しているよ。尚武の三高や海の七高であろうとね。予選と準決勝までの作戦も授けた、やれるさ。』
ほのかの頭を優しく撫でる
突然、達也の手が頭を撫でて驚くほのかだが、片想いの人物に撫でられて嬉しくないわけがない
先程の緊張と恐怖は何処へやら
目許に溜まった涙も引っ込み、すっかりリラックスしたほのか
何だかんだでほのかにとっての緊張緩和剤は達也自身なのかもしれない
ほのか『はい!頑張ります!』
コースの調整も早く終わり、新人戦女子のバトル・ボードの予選が始まる
それぞれがコースに別れてスタート位置に立つ
雫『あ、ほのかの番だね。』
入場口からほのかが姿を現す
そこにはリラックスした表情の彼女がいた
深雪『結構緊張していたみたいだけど大丈夫かしら?』
誰にも緊張することはあり、深雪自身も例外ではなかった
水波『そこは担当エンジニアの仕事ではないでしょうか?』
雫『違うよ。緊張はほのか自身の問題。エンジニアの仕事は体調に合わせてのCADの調整だけど、これはお門違いだよ。』
何故だろうか?
達也が嫌いだから仕事を増やそうとしているのか、それともエンジニアは当然の仕事だと思っているのか判断しかねる
ほのかの親友である雫は水波の発言に真っ向から否定する
こればかりは、ほのか自身が越えなければならないもので他人が代わりに出来るものではない
睨みを効かせ水波の反論を封殺する
エリカ『へぇ、桜井さんって自分の出来が悪いと他人の所為にするタイプ?』
またまた、茶化すことが大好きなエリカは少し飛躍した想像で水波を誂う
水波『違います。エンジニアは選手の体調も考慮して、調整を行うもの。彼女の緊張も解ってこその調整ではないかと思っただけです。憶測だけでの発言はしないで下さい。』
エリカの茶化しに過剰に反応する
とことんまで深雪と水波は二科生とは反りが合わないようだ
とはいえ、エンジニアとして緊張も考慮にいれた調整はするのだが、選手本人が克服出来なければ、社会に出たときに何も出来なくなる
エリカ『そりゃ失礼♪』
エリカはエリカで嫌われるのを楽しんでいる節も見受けられる
ニコニコとしているエリカと睨みつけている水波
対極の二人を余所に試合の合図がまもなくされようとしていた
雫『始まるよ。』
と、雫一人だけサングラスを着けている
不思議に思っていると試合開始の合図がすると同時に閃光が視界を埋め尽くす
全員『!?』
その瞬間、ほのかはスタートダッシュを成功させる
後続は、スタート位置で水面への閃光魔法から視界が戻っていないようだ
さらには、ボードから落ちている選手もいる
達也『これは、あんな小細工をする必要はなかったかな?』
ほのかのスタートダッシュとスピードを見ながら、少し反省する
ほのかのスピードに着いていける選手が果たして、何人いるのか後続がコースの半周を過ぎた頃にはほのかは二周目に入ろうとしていた
単純なスピード勝負でも引けは取らなかったかもしれない
摩利に続きほのかも予選通過を決めた
ほのか『やりましたぁ~、達也さんのおかげです。』
予選通過を決め、一安心のほのか
まるで奇跡が起こったように達也に駆け寄る
達也『ほのか、落ち着くんだ。』
ほのか『で、でも、私、こういう試合とかで緊張ばっかで良い成績なんて残せなかったから…』
興奮覚めやらずで達也の声が聴こえていない
達也『(それは、小学生の時分だと雫から聴いているのだが…)昔は昔で、今は今だ。小学生の時に出来なかった事が高校になって出来るということはほのか自身が成長出来ているということだ。それは自分を褒めるべきだ。』
距離を取ろうとするが、達也の服の袖を無意識だろう
ほのかはずっと掴んで離さない
ほのか『ありがとうございます!』
雫『ほのか、達也さんが困ってるよ?』
ずっと、達也の傍から離れようとしないほのか
達也の助けてくれという視線が雫に向けられる
ほのか『あ、ごめんなさい。』
雫から指摘されて漸く解放される
達也『何はともあれ、予選通過だ。本線は一時間後だから体を休めることだ。決勝の相手はおそらく、三高の四十九院選手だから、次のインターバルで四十九院選手の映像と作戦会議だ。俺は、渡辺先輩の最終調整があるから後でな。』
達也に迷惑をかけてしまい、縮こまるほのかを宥める
第一関門も突破し、経験からの自信も多少は付いたのは確実だ
次の試合のために体を休めるよう言い含め、達也は摩利の元へ向かうのだった
雫、深雪達が観客席からに対して真由美達は第一高校の天幕からレースを観戦していた
真由美『見事なスタートダッシュね。』
ほのかの見事なスタートダッシュを誉める
摩利『あぁ、それよりも驚くべきは…』
鈴音『光井さんの水面への閃光魔法ですね。』
対人への魔法の使用は認められていないが、間接的なら認められているということ
水面に干渉した魔法は問題ない
老師の言った工夫とはこういうことなのだろう
思い付きそうで、思い付かない選択肢
魔法の種類によってはこの競技は活かせないと思っていたが、ほのかの閃光魔法はその概念を吹き飛ばした
真由美『もしかしなくても、彼が考えたのよね?』
鈴音『その通りです。』
考えるまでもなく、達也が作戦を立案したことは明白
摩利『私には、何もしてくれなかったぞ?』
真由美『まあ、摩利はそんなことをしなくても勝てるということじゃない?』
ほのかと比べて自分には何もしてくれないと拗ねる摩利
完成された摩利にヘタな案を授けても逆効果なことは自身でも理解しているが、少し羨ましいと思ってしまった
ーーーーー
女子バトル・ボード本戦 準決勝
スタート位置には摩利の他に海の七高と尚武の三高の水尾 佐保の三人の選手が試合の合図を待っていた
他の二人は緊張した表情でいるのに対して
摩利は相変わらずというべきか不敵な笑みを浮かべていた
普通なら決勝進出をかけたこのレース、実力は拮抗しているため一つのミスも許されない
そう考えただけで体が強張るが、摩利はこの状況でも何処か楽しんでいるようだ
流石は、一高の三巨頭の一角である七草 真由美と十文字 克人、十師族と肩を並べるだけある
愛梨『いよいよ、水尾先輩の試合ね。』
生徒会長でもあり、三高にとっては絶対に勝って欲しいところ
しかし、相手は一高の三巨頭の渡辺摩利がいる
踏子『厳しい試合じゃな。海の七高に渡辺 摩利が相手とは。』
仕組まれてるのでは?と疑いたくなる準決勝の対戦相手
愛梨『えぇ。(頑張って下さい、水尾先輩…!)』
愛梨と水尾は旧知の仲のため尚のこと、負けてほしくない
しかし、勝負事に私情を挟むのはもっての他
愛梨は祈るしかなかった
コースの脇でひっそりと観戦をしている達也
基本的にエンジニアも例外無く、控え室からモニター越しに観戦する
というよりも、そもそもバトル・ボードはコースだけのため、観戦出来る場所はそこまで無い
そして、そういった場所には大会運営委員のスタッフが居るため観戦が難しいといった方が正しい
尤も、スタッフが居る理由としては、外部からの妨害を防ぐためが主な理由だが
そんな場所に達也はいるのだが、
何故、そのような危ない真似をしてまで駆り立てた理由
首筋がピリピリするような感覚と虫の知らせの二つが達也をそうさせたというのが今回は適当だろう
ズキッ
達也『…(なんだ、この痛みは?)』
スタートの合図が鳴る数十秒前、突如として達也を頭痛が襲う
痛みには馴れているが、この痛みはただの痛みではない
何かを訴えかけるようなそんな類いのもの
合図が近づいていくほどに痛みが増していく
その痛みが頭全てを支配した瞬間、達也の脳裏に今朝の夢が映し出される
達也『(っ!、なんでまた、あの時の記憶が…?)…!』
記憶に気を取られている間にスタートの合図が鳴り、歓声が沸く
顔を上げて、状況を確認すると
どうやら、摩利がトップを走っているようだ
しかし、一選手分を空けるも七高が追随、三高もすぐその後ろにいる
試合はまだ始まったばかり
このまま順位が変動しない、そんな組み合わせでもない
僅かなミスがそのまま順位に響く
先頭の摩利が第一コーナーに差し掛かろうとした刹那、再び達也の脳裏に夢の光景が現れる
【横たわる四肢】が
横たわる二人の女性へと
【血の海】が
大きな水溜まりに
克明に映し出されたそれ
二人の女性とは摩利と七高の選手
水溜まりはコースの水が何らかの原因でコースサイドに溢れたもの
しかし、これが判ったところで達也は動く筈もなく
達也『(凄いな、これが予知か。)』
自分には関係のないことだと、そう思っていた
しかしー
観客『オーバースピード!?』
観戦していた人間全てが同じことを思っていた
それは、七高の選手がコーナーに進入する速度を減速せずに寧ろ加速しているようにも見える
通常は、スローイン・ファストアウトが原則
摩利や三高の水尾もまた例外なく減速をする
例外的に進入速度を落とさずに突っ切る選手もいるが、スピードはそこまで出せない
だが、七高の選手はコーナーに差し掛かるまでに出しているスピードで曲がろうとしている
これは誰もが無謀と思うだろう、一般の人間ならば
しかし、これを異常と見抜けたのは先行する摩利と達也のみ
摩利は先行していたため、減速し体勢をコーナーに合わせていた
そのため、後方も見えており七高の選手の表情がはっきりとわかっていた
減速出来ないー
一方達也は、予知もあるが七高の選手の姿勢の変化とCADの異物を視ていた
初めて見るウイルスだが、症状はCADが制御不可能にすることだろう
そして、姿勢も腰が引けて胸も反っている状態で予測不能な事態に体が強張っている
摩利『(このままでは、コースを外れてフェンスに直撃か。まず、ボードと離さなければ減速は無理か。)』
七高の選手は動揺で思考も行動も不能な状態
自身が無理ならば、他人が手助けをする必要がある
摩利はコーナー脱出のための加速魔法をキャンセルし、体を止まらない七高の選手に向けために反転に加速と減速魔法を
そして、七高の選手を助けるためにボードを移動魔法で吹き飛ばす
次いで、受け止めるために加重系慣性中和魔法で受け止めた際の後方と沈み込む力のベクトルを相殺させるー
はずだった
不意にボードが沈み込むまでは
深さにして10cm程だろうか
単なる沈み込みならば問題なかった
だが、今回は少々緊迫した状況であったため
僅かでも摩利の感覚が狂うのは不味かった
水面の沈み込みで摩利の体勢が崩れる
魔法の座標もズレ、ボード上でのバランスを保てずに七高の選手を受け止めれるどころか自分も巻き込まれてしまう形となる
そのままコース外のフェンスへと吹き飛んでいく二人
それを見ていられず、目を閉じるも思考は一致する
《ぶつかる》
ーー刹那、
まるで、太陽が降ってきたかのような凄まじい熱気と岩石が砕け吹き飛んだような衝撃と轟音
次いで、金属が壊れる時の特有の音が周辺を支配した
数十秒の間、音が人々の耳を支配し続けるも少しずつ静寂が戻っていく
基本的には興味がないとしつつも興味心は少なからずあるのが人間
見たくないようで見たいそんな心境で恐る恐る目を開ける
ーーそこには
ぶつかった衝撃で大破し所々鋭利になった鋼鉄のフェンス
空中に投げたされた二人から外れたボードがコースの水をコース外へ押しやり、水溜まりをつくる
そして投げ出された二人に誰もが最悪の状況を予想していた
一人の影が見えるまではーーー
その影は摩利がフェンスと七高の選手とで挟まれるのを防いでいた
自身を犠牲にして二人を助けたその人物
観客は、誰だ?といった風
しかし、一高にとってはよく知る人物
エンジニアのウェアを着用した男子生徒
この女子本選バトル・ボードの選手である渡辺 摩利の担当エンジニアの守夢 達也
何故、どうやって?と不思議に感じるが
それよりもすぐさま、選手二人の容態を確認すべきなのは明白
選手二人を抱えたままぴくりとも動かない達也
二人をフェンスから身を挺して守った代償は計り知れない
普通ならばーー
だが、そんなこともなかったかのように起き上がる達也
そんな達也に驚きつつも、大会スタッフ達は三人に駆け寄る
フェンスに激突した衝撃は問題無いようで、抱えていた二人を優しく横たえる
達也は軍属だ
軍でも救急の医療措置は学ぶため、ある程度の救急措置や身体の状態を確認することも可能なのだ
その知識から二人の症状を確かめる
十秒足らずでの簡易的な触診だが、外傷も骨折等の症状も見当たらなかった
二人とも予想外の出来事に体が防衛本能を起こして気絶させたのだろう
あと三十分もあれば目は覚めるが、今回の出来事は魔法師としては悪い影響にしかならないだろう
よって、本戦女子バトル・ボードは棄権が望ましい
二人の額に手を翳し、記憶内に入り込む
記憶というのは曖昧であるため、少し弄れば人間の脳はそれを事実として思い込む
今回の記憶を曖昧に暈し終えると、達也は七高の選手のCADを改めて確認する
どういうものかは不明だが、CADに干渉するものだろうと直感する
CADに手を触れ、その異物を【分解】する
直後、大会スタッフが到着し選手二人の容体を本格的に診断する
これでようやく一安心だろうと気を緩めた達也
不意に激しい頭痛が達也を襲う
達也『っ!(また、この痛み。今度はなんだ?)』
片膝をつき、頭を押さえる
スタッフ『君、大丈夫か?無理もない、二人を庇ってフェンスに激突したんだ。どこか怪我をしているのは確実だ。すぐに医務室へ。』
状況を確認をしていたスタッフの一人がうづくまった達也を見て、慌てて駆け寄る
達也『それは、問題ありません。それよりもこの試合の結果ですが、二人は棄権の判断をお願いします。外傷や内臓の損傷当はありませんが、気絶しているため肉体が良いと判断して目覚めるには時間が掛かるでしょうから。』
スタッフ『わ、わかった。もし、何かあったならすぐに医務室に行くように。あとで、今回の事情を聴かせて貰いたい。』
怪我等が無いことを伝え、お決まりの如く今回の事件の聴取の了承をする
達也『構いません。それからーーー』
全ての事象が片付き、コースの再整備と試合が再開されたのは約二時間後のこと
試合結果は、本選女子バトル・ボードの優勝は三高となった
新人戦においては、ほのかは準決勝を通過し、残すところは決勝のみ
相手は三高の四十九院 踏子となり、一時間後に決勝が始まる運びとなった
僅かな時間で再開出来たのは、僥倖だろう
本来ならば、この日の試合全てが中断する可能性だってあったのだから
ほのかのCADの調整も終えて、少し休憩を摂る達也
家族に会いに行きたかったところだが、浩也から夜に来なさいと言われたため競技場内のソファで横になる
横になりながら、今回の件で自己嫌悪をしていた
何故、あんなことをしたのか
見て見ぬふりをしている筈が咄嗟に取ったあの行動とそのあとの魔法の行使
見られていたわけではないが、あのような行動をした自分に嫌気が差した
自分には家族やそれと同義の者達がいるのに、その人達の為にしか動かないと誓ったはずだった
達也『(いや、答えは出ている。あのとき…)』
あの二人がいや、あの吹き飛んだ姿があの三人に見えたから
抑えきれず、自分の奥底に抑えていた力が達也を駆り立てた
達也『(ブレスレットに損傷はない。一瞬だったからな。次は気を付けないとな。)…。』
目を開き、左手首に収まっているそれの状態を確認する
そのときになって漸く、ローテーブルを挟んであるソファに一人の女性が達也を見て微笑んでいることに気が付く
??『あ、ごめんなさい。そんな見ているつもりはなかったんだけど。』
達也よりは確実に年上だろうと思われるが、真由美という極めて例外もあるため何とも言えない
達也『いえ、ここは私の私有地ではありませんので。どこに座られようと自由ですし、私が不法にこのソファを占拠しているのを不思議に思われても仕方がありませんから。』
と、何故ここまで赤の他人を相手に雄弁に語ったのか瞠目する達也
しかし、どこかで会ったことがあるのだろうか
無論、気配に敏い自分が他人の接近をこうまで許してしまったのかもおかしい
だが、彼女の瞳には、達也という人物に興味を抱いているという風に見受けられた
??『ふふっ、私有地って随分高校生らしくない思考をされているのね。ますます、貴方と話してみたくなったわ。』
からかわれているのだろうか、それにしては雰囲気が純粋な好奇心を醸し出している
達也『…失礼ですが、私に何か御用ですか。』
このままでは、埒があかない
言外に、何か用があるなら話せと伝える
??『ごめんなさい、気を悪くしたなら謝ります。名乗るならまず、私からね。初めまして、私は津久葉 夕歌と言います。よろしくね、守夢 達也君。』
如何でしたか?
ほのかの緊張と達也の対応が難しかったので、違和感を感じられるかもしれません。
いつも以上にグダグダな文章になったような気がしないでもないです。
読んでいただいている皆さん申し訳ないです。
もう少しとんとん拍子にストーリーが進めれるようにしたいのですが、書きたいこともなりなかなかどうして…
①設定通り、水波は深雪さんのガーディアンです。
②原作通り、摩利と七高は棄権ですが、怪我はさせてません。
③相変わらずで達也は最強です。
④夕歌さんに出て来て貰いました。まあ、一高のOGですから。
また、次回も見てください。
失礼します。
あと、一つだけお願いがあります。
感想ですが、批評はご遠慮願います。
ここを変えれば良くなるんじゃないの?といったアドバイスコメントは有難いですが、駄目出しは此方も傷付きます。
ぶっちゃけ、私自身が書いてみたいと思い、始めてる訳ですし。
妥協、ご理解をお願い致します。