抹殺された神の愛し子   作:貴神

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今回は淡白な気がする…

あまり響子さんの番外編は不評だったんですかね?

それはさておき、夕歌さんとの絡みを少し出せればと思います。

それでは、お楽しみいただければ幸いです。


17話

達也『津久葉 夕歌さんですか。ご存知の通り、守夢 達也です。それで、何か私にご用ですか?次もエンジニアの仕事があるので、時間は取れないのですが。』

 

津久葉と聴いた瞬間、思ったより早かったなと思う達也

 

何か企んでいるのか疑うも彼女の目には純粋な興味が映るだけのようだ

 

夕歌『あ、そうなのね。じゃあ、その試合が終わったら少し時間をいただけるかしら?私、一高のOGなの。毎年、九校戦は観戦してるのだけど、貴方みたいな他と一線を画する人は初めてだったから。』

 

どうしても自分と話したいらしい

 

がー

 

達也『そうですか。それは光栄ですが生憎、他人に評価されるために身に付けた訳ではありませんので。これで失礼します。』

 

他と一線を画する

 

この言葉に、他の真由美や摩利と同じかと結論づける

 

はっきり言って煩わしい

 

技術的観点から話せるような人間ではなかったため次の試合を引き合いに出し退席する

 

夕歌『あ、ちょっと…。もしかして、地雷を踏んだのかしら?』

 

達也の仁瓶もない言葉と遠ざかる姿

 

何か琴線に触れるものがあったらしい、素直に反省する夕歌だった

 

しかし、反省はするも、達也と交流を持ちたいと思う夕歌

 

その瞳には純粋な好奇心があった

 

 

 

 

 

 

選手控え室に入るとすでに準備が出来ているほのかがいた

 

入ってきた達也に駆け寄る

 

ほのか『あ、達也さん。』

 

達也『いけるか、ほのか?相手は水の家系の四十九院選手だ。全力で行かないと勝てない相手だ。』

 

策は付け焼き刃では難しい

そのために、達也は九校戦の準備期間の練習をよりハードなものにした

 

 

ほのか『はい!』

 

ほのか自身、一人だと不安だが、達也がいることは何よりも強い味方だ

この一ヵ月、出来る限りの努力をしたその成果を見せるときだ

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

九校戦開催一ヵ月前

 

担当する選手一人一人に達也が考案したメニューを渡し、それぞれがそれに従って練習に入っていく

 

 

達也『ほのか、バトル・ボードはミラージ・バッドと同様に非常に体力が必要だ。いくら、魔法を上手く行使したところで体力が無ければ無理だ。』

 

ほのかの競技はそれなりにハードなため、力の入り用が大きい達也

深雪はある程度の基礎体力もあるためメニューを渡すだけに留めた

 

ほのか『そうですね。私、そんなに体力がないから。』

 

他の選手と比べても基礎の体力は無いとほのか自身感じていたため、素直にそれを受け止めていた

 

達也『そう悲観することはない。無いなら作れば良い。そこで、俺が考案した体力作りのメニューなんだが。』

 

ほのか『…達也さん、嘘ですよね?』

 

達也から手渡されたメニュー表は高校生がするのか?と疑いたくなるようなものだった

 

例として、水泳1kmを一時間以内(二日目以降から時間を短縮、距離も増加)やランニング1~10kmをそれぞれ時間内で走りきること(但し、足に負担が掛かるためトラックに限る)など十個ほどのアスリートが通常こなすようなメニューが書かれていた

 

しかし、解る者が見れば、理想的なトレーニングだと太鼓判を押すほどのもの

 

達也『残念ながら、冗談ではないな。雫や司波さんもそうだが、全体的に体力、筋力値は低い。基準は渡辺先輩や十文字先輩あたりを考えてほしい。そこまでは時間が少なすぎるから、これは最低限のメニューだ。』

 

とは言え、現在のほのかでは到底半分も出来ない

 

ほのか『達也さん…。』

 

若干の期待を込めて見つめるほのかだが、そんなことで九校戦で勝てる訳もなく

 

事実のみをほのかに伝える

 

達也『勝ちたくないならそれでいいが、それは後々自分に返ってくる。俺の仕事は全員が勝てるように最大限サポートすることだ。結果が、駄目だった場合は責めてくれて構わない。』

 

優勝出来なければ俺の所為にしろ、と

 

それほどの覚悟を持って達也は望んでいるのだと、ほのかは自分の浅はかな考えを反省する

 

ほのか『そんな、もし駄目だった場合は私の努力が足らなかっただけです。達也さんを責めたりしません。』

 

自分の敗けを達也を理由にしたくない

その一心がほのかを奮い立たせた

 

達也『何度も言うが、悲観しなくていい。選手は試合に集中してくれればエンジニアも全力を尽くすさ。二人三脚さ。』

 

ポンポンとほのかの頭を撫でる

 

これで、達也の担当の選手はスタート位置に立った

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

真由美『…摩利、本当に体は大丈夫なの?』

 

ほのかのバトル・ボードの決勝がもう少しで始まろうという頃

 

天幕では、真由美達も観戦モードでいたが摩利が目覚めるなり、ここに来ていることに不安があるようだ

 

 

摩利『安心しろ、真由美。守夢のおかげで傷一つないよ。寧ろ、調子が良いくらいだ。まあ、守夢に礼は言わないとな。』

 

確かに達也が衝撃から守ったおかげで、摩利と七高の選手には傷一つ無かったのは良かった

 

しかし、結果として二人は棄権扱いになり、優勝は三高となった

 

真由美『それはそうなんだけど。…彼のおかげで本選のミラージ・バッドの代役を立てずに済んだのは助かってるけど。』

 

まだ不満が残っているような表情の真由美だが、言葉にせず軽く嘆息するに留めた

 

鈴音『しかし、どうして守夢君はあの場に居て、反応出来たのでしょうか?』

 

いつも不思議に思っていた、どうしてピンチのときには必ず現れるのか

 

正義の英雄(ヒーロー)でもこうはいかない

 

摩利『さあな。行きの事故に対応出来てたくらいだ、私達とは何か違うのさ。』

 

言外に化け物だと言っているようだが、これまでも達也にそういった場面での対応力を目の当たりにしてきたため、否定出来る材料が真由美達には無かった

 

ーーーーー

 

クシュッ

 

ほのか『達也さん、風邪ですか?』

 

かわいいくしゃみに誰か分からなかったが、達也が鼻を擦っていた

 

達也『いや、体調は問題無い。誰かが噂でもしているんだろう。それより、対戦相手の情報の確認だ。四十九院選手は古式魔法の白川家で川という文字通り水を自在に操れる。それはつまり、水に関してならば眠ってても問題無く、他に意識を傾けていても大丈夫ということだ。勘だが、彼女は古式魔法と現代魔法の両刀で挑んでくるだろう。』

 

よからぬ噂をするのはこの第一高校のごく僅かな人間しかいない

それに、それは大して重要でもない

 

次のほのかの決勝が目下の最優先事項だ

 

ほのか『パラレルキャストということですか?』

 

達也が風紀委員時に使用していたこともあり、すぐに理解出来た

 

達也『あぁ。けど、心配するな。ほのかの底力を発揮すれば、追い付ける。勝負は三周目の後半だろう。後ろに着けていれば問題無い。タイミングはほのかに任せる、行けると思えば行っていい。最終コーナーを越えてゴール迄の直線(ストレート)には前にいるようにな。そうでないと、効果が薄くなってしまうからな。』

 

今回は策はそこまで弄しない

 

保険というような意味合いで考えている

 

策VS策だと、かえって危険だと判断した達也

達也の頭脳をもってすれば可能だが、ここは真っ向勝負の方がほのかにとっても特訓の成果を発揮しやすいだろう

 

 

ほのか『わかりました。』

 

達也『あとは、ーーーーーー。』

 

 

ーーーーー

 

三高控え室

 

愛梨『期待してるわ、沓子。』

 

今日のバトル・ボードの試合も残すところあと数試合

 

女子本選は水尾が優勝

 

この勢いのまま優勝したい

 

沓子『任しておくのじゃ。勝ってくるぞ!』

 

もちろん、沓子もそのことは承知している

 

景気良く明日に望みたい

ハイタッチを交わす

 

愛梨『あ、水尾先輩。』

 

沓子と入れ替わりに控え室に来た佐保

 

エールを送り、沓子を奮起させる

 

水尾『四十九院、頑張って!』

 

沓子『もちろん!栞の起爆剤にもなってくるのじゃ!』

 

本来ならば、この場にもいたであろう栞のためにも負けられない

 

この試合に勝って栞を元気づけたいそんな気持ちが踏子から感じる

 

 

 

 

 

愛梨『水尾先輩、栞の様子は?』

 

あの試合から1日しか経っていないが、栞の様子が気になる

 

試合内容としては栞に落ち度はない

それ以上に相手が栞を上回っただけのこと

 

しかし、それを割りきれるほどの精神力はない

 

自分の出自も要因としてあるのかもしれない

ひたすらに自分を責め続けている

 

 

水尾『うーん、もう少し時間がいるかもね。』

 

愛梨『そうですか。』

 

時間が解決してくるのも一つの手だと佐保から諭され、愛梨は無理矢理納得するしかなかった

 

ーーーーーーー

 

開始のブザーが鳴り、新人戦女子バトル・ボード 決勝戦が幕を開ける

 

 

真由美『始まったわね。』

 

本選の摩利の事故もあり、険しい表情の真由美

 

内心では、また何かあるのではないかと気が気ではないがじたばたしても何か出来るものでもない

 

摩利『ここまで、光井は光波振動系魔法(得意魔法)で来たが、今回は何を用意しているんだ?』

 

ほのかの準決勝を見ていないが、ほのかの得意魔法は知っている

研究もされているだろう

 

今回は特に三高が相手だ

生半可な策では勝てないのは解っている

 

鈴音『そのことですが、守夢君に伺ったところ言葉を濁されまして。』

 

鈴音が達也と作戦の打ち合わせをしているため彼女が唯一、知っているのだが今回は勝手が違うようだ

 

摩利『どういうことだ?』

 

真由美『もしかして、何の策も練っていないってことなんじゃあ?』

 

訳がわからない摩利と何か不安が隠せない真由美

 

摩利『おいおい、相手は三高だぞ?勝てるのか?』

 

真由美の言葉に摩利も段々と不安を抱いてくる

 

鈴音『わかりません。ただ…』

 

鈴音にあたっても仕方がないのはわかってはいるが、それとこれとは別問題だ

 

達也なら何か凄いことを考えているのではないか

雫の時と同じように期待してしまう

 

真由美『ただ?』

 

鈴音『【必ず勝たせます】とこれだけはハッキリと答えてくれました。』

 

だが、その心配を見透かしていたのような達也

 

その言葉に安心できる材料は見つけられない

 

摩利『まぁ、あいつがそれを言ってのけるなら信じるか。』

 

しかし、摩利は少し思うところがあるのか素直に信じる

 

真由美『ちょっと、摩利。』

 

あっさりと引き下がった摩利に不安があるようで、真由美は摩利に迫る

 

摩利『真由美、ここは信じるのが当然だと思うが?無理矢理エンジニアとして参加させたのは我々だ。会って数ヵ月だが、あいつはやると決めたらとことんまでやる男だ。信じてやるのも親心だぞ?』

 

摩利が達也を信じたのはエンジニアとしての腕ではなく、入学から今までの達也の行動だ

 

これまで、何度も差別的扱いや闇討ち紛いをされても自分の仕事をきっちりとこなしてきた達也

 

捻くれるわけでなく、ただひたすらに自分に出来ることは何かを模索しながらどんな時も正々堂々と立ち向かっていた

 

風紀委員では摩利がトップのためそういった姿勢は見えてしまう

 

それが良い事だろうと悪いことだろうと

 

 

真由美『わかったわ。…ていうか、誰が親よ?』

 

しぶしぶといった体だが、納得する真由美だが、親心は違うようで噛み付く

 

摩利『すまない、嫁だったな。』

 

真由美『まだ、嫁じゃないわよ!…はっ!』

 

まだ、というのは咄嗟に出てきた言葉だろうが摩利にとっては良い肴を手に入れたと嬉しそうな表情だ

 

まあ、摩利から見ても真由美の一方通行で達也を意識しているだけだろうから進展は全くないのは確かだ

 

 

摩利『ほう。関係はともかく、惚れていることには違いなかったな。』

 

謀られたと悔しがる真由美

 

それとは別に

親友の恋を温かく見守っていこうと思う摩利だが、

 

 

ゴゴゴゴゴと

 

なにやら禍々しい気が鈴音から出ているのに気づき、直ぐ様考えるのをやめた

 

 

鈴音の真由美を射殺さんばかりの眼力には摩利も目をそらさずにはいられなかった

 

当の真由美は何やら妄想に浸って気づいてはいないようだが…

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

沓子『(ほう、中々速いのぅ。加速に関しては儂には分が悪いのぅ。その他で隙をついていくかしかあるまいな。)』

 

試合開始から先行してほのかが沓子の前を行く

 

先行は後方からのプレッシャーがあったりとするため後方の方が有利となるのが普通だが、魔法が使用可能なこの場面では前も後も関係ない

 

水面を介して魔法が決まり、先にゴール出来ればいいのだから

 

ほのか『(達也さんの言う通り何かを仕掛けてきそうな雰囲気が伝わってくる。体力を温存しながら勝機を見出だす戦法でいかないと。でもなんで、ゴール直前は先頭にいるようにって言ったんだろう?)』

 

着かず離れずの距離を保つ沓子に焦りを感じるほのか

 

隙を見せないようにするためにも焦りは禁物だ

ただ、達也のアドバイスの通りにそして、自分を信じるのみ

 

 

沓子『(よし、距離はこの位がボーダーラインじゃな。これ以上離されるわけにはいかん。あとは…ここじゃ!)』

 

沓子自身、全力で追い掛けているわけではないが、ジリジリと広がる距離

 

相手に精神的余裕を与えないために一定の距離でプレッシャーをかけ続けている

 

追い抜く隙を伺いつつも、ほのかにそれを悟らせないように

 

しかし、タイミングも必要になってくる

 

それが、二周目中盤の下りのトンネルを潜り抜けたタイミング

 

下りに神経を傾けていたためフラットなコースに気が緩んだときに更なる、緊張を走らせる

 

 

ほのか『!?(こんなところで?ちょっと!)』

 

コースに無数の渦が作られ、体勢を崩してしまう

 

何とかクリアしたものの、踏子が後方からあっさりと抜かれてしまった

 

沓子『お先じゃ!』

 

ほのか『くっ!』

 

僅かな油断だが、言い訳はできない

隙を作ってしまった自分のミス

 

 

沓子『さて、そろそろ反撃開始じゃ!』

 

右腕には古式魔法を繰り出し、ほのかの行き先を阻む

 

左腕に装着しているCADから自分に加速魔法でほのかを突き離していく

 

ほのか『(速い!達也さんにパラレルキャストで来ることを教えてもらってなければ、慌てていた。よし、まずやることは追い付くこと。)』

 

相手の行動が解れば冷静に対処出来る

 

そうなれば思考もクリアになり、行動に勢いが生まれる

 

沓子『?(おかしい、差がついていない?ラスト一周を逃げ切れるほどの十分なマージンを設けたはず。)』

 

予想以上に沓子を追い詰めるほのか

速さもさることながら、沓子のパラレルキャストにあまり動揺もせず妨害をすり抜けて来る

 

そんなほのかに恐怖を覚える

 

ほのか『(あの特訓に比べればこんな距離なんて。)』

 

ほのかの言う【あの特訓】とは何なのか

 

話は九校戦を数日前に控えた一高での出来事に遡る

 

 


 

 

 

ほのかの努力の甲斐もあり、達也の考案したトレーニングメニューをこなせるようになってきた

 

調子の良い日は摩利に着いていける時もあり、順調な仕上がりと言えた

 

達也はほのかの成長ぶりに感嘆し、更なる飛躍のためにある特訓?を考えていた

 

達也『(…そろそろいい頃合いか。)ほのか、今日はあと一つで終わろう。』

 

時刻は夕方

 

トレーニングをするにもあと一つか二つが限度のためタイミング的にもそれなりに良い

 

ほのか『はい!それで、最後は何をすれば?』

 

日頃のトレーニングのおかげで体力的にもまだ余力はあったためどんなメニューが気になったほのか

 

しかし、後にほのかはこの興味を後悔することになる

 

 

 

達也『簡単なことだ。俺とどちらが速いかを競うだけだ。』

 

ほのか『は…い?』

 

聞き間違いではないのかと疑うほのか

 

拍子抜けな言葉と思うも達也が嘘を言うわけもない

どういう競争なのかも気になるところではある

 

 

達也『大丈夫だ、ちゃんと許可は取ってある。審判もな。お願いします。』

 

詳細が欲しい

達也に質問しようと口を開くも遮れ、なし崩し気味の強制参加

 

達也の声で来たのは同じバトル・ボードの本選女子選手でもある摩利

 

公平なジャッジは期待出来るも、何だか嫌な予感しかしない

 

摩利『そういうことだ。準備が終えたら来るように。』

 

そう言い終えると、コースに向かっていった

 

 

ほのか『いえ、そうじゃなくて。達也さん…。』

 

ふと、気になったのが、果たして達也はボードで魔法の行使が出来るのか

 

そもそも何の目的で達也と競争するのか、不明な点がいくつも存在した

 

達也『あぁ、魔法の問題だな。そこは気にしなくていい。走るからな。』

 

ほのか『え、と?』

 

走る?

 

ということは水面と陸上での競争になるのか?

 

ならば、審判は二人必要なのではないか?

 

益々、理解が追い付かない

 

達也『百聞は一見にしかずだ。コース内に入ろう。』

 

そこには、コースの中に二つボードが置かれてあり、どう想像しても自分と達也の分に他ならない

 

しかも、達也は運動できる服に着替えている

 

まさか、本当に?

 

 

ほのか『達也さん、無理があると思うんですけど。』

 

この時ばかりはほのかも達也に止めるように説得する

 

自慢や差別するわけではないが、一科生と二科生の魔法力の差は大きい

 

 

達也『大丈夫だ。その前に謝っておく。』

 

何が大丈夫なのかはわからない

 

しかし、そんなことを気にする様子もなく

また達也がおかしなことを言うのだった

 

ほのか『?なんですか?』

 

遅くてごめん?

 

それなら判りきってーー

 

達也『久し振りに(水面を)走るからな。手加減はそこまで出来ないから全力で来てくれ。』

 

二度の走るという言葉にもう何が何やら

 

手加減?

全力で来てくれ?

 

ほのか『は?』

 

ほのかが出せる最大の言葉はこれのみだった

 

 

 

幸い、夕方ということもありコースで練習する生徒も居らず

 

気兼ねなくコースを使える

 

そして、ほのかの相手に達也というイレギュラーすぎる人間

 

真由美や十文字、鈴音といった主要メンバー以外に雫

 

そして、物珍しさに惹かれてなのか深雪、水波

 

人数はそこまで多くはないものの、濃い面子がこの競争を観戦していた

 

摩利『準備はいいか?ルールはバトル・ボードと同じだ。先に3周してゴールした方の勝ちとする。スタート5秒前…4.3.2.1、スタート!』

 

何やら気合いが入っている摩利のスタートの合図と普段はあまり見られない少しそわそわしている達也の表情

 

気になるも、今は達也と競争のため気合いを入れ直す

 

 

そしてーー

 

開始直後、隣から凄まじい突風と波、水飛沫が巻き起こる

 

ほのか『え?』

 

ほのかが驚くのは無理もない

何故なら、本当に水面を走る達也が自分より遥か先にいるのだから

 

完全に物理法則を無視した常軌を逸した人間が目の前にいた

 

呆然としているのも束の間、達也と競争ということを忘れていたほのか

 

慌てて、追いかけるも何故かどんどん距離が離れていく

 

まるで、早送りの映像を実体験しているようである

 

 

結果、ほのかと一周半の差を作り出し圧倒的な勝利を飾った達也だった

 

 

これを傍から見ていた摩利や真由美達は後にこう残したという

『あいつ(彼)は前世は魚か、何かの生まれ変わりで。改めて人外の化け物だと再認識した』と

 

 

 

 

 

ほのか『ハァッハァッ、…に、人間、じゃない。』

 

先ほどの達也の言葉を漸く理解したほのか

 

理解はしたが、この事実を受け入れることは容易ではない

魔法も無しで自分より速いなんて、最早人知を超えた存在だ

 

 

摩利『(おい、守夢。これは、逆効果だったんじゃないか?というかお前、水面走りとか奇行すぎるぞ。)ヒソヒソ』

 

摩利は予め達也からほのかに自信をつけさせたいと依頼されていた

 

本来ならば、摩利が適任かもしれないがこれを彼女は拒否

同学年が望ましいと理由をつけて

 

しかし、今回はそれが裏目に出た

 

というよりも、何故達也が相手をしたのかが謎ではある

 

 

達也『(すみません。久し振りなもので加減が…。)ヒソヒソ』

 

摩利から軽い叱責を受けているにも関わらず、達也本人はあまり悪びれていない様子

 

元凶がこんな状態では、選手が心配だ

 

エンジニアの依頼を間違えたかなと考えつつ、ほのかを励ます摩利

 

摩利『み、光井。大丈夫か?』

 

ほのか『…先輩、私成長出来てるんですかね?自信無くなってきました。』

 

摩利の励ましも憔悴したほのかには効果は薄い

 

しかも、自信をつけさせる処か逆に自信喪失の危機だ

 

こればかりは、摩利も達也に詰め寄る

 

摩利『おい、守夢。どう光井の(自信の)責任をとるつもりだ?』

 

試合本番までにはほのかを本調子まで引き上げたい

 

だが、今のほのかに効く特効薬は摩利では見つからない

 

元凶でもある達也が唯一持っているかもしれないそれに掛けたつもりだったーーが

 

 

ほのか『せ、責任?』

 

摩利の言葉に敏感に反応するのに無理もない

 

ずっと、達也に片想い中のほのか

 

そんな彼女の思いを知ってか知らずか摩利は達也に自信という言葉を省いて責任を取れという

 

摩利が省いた言葉を理解していなければ、責任(イコール)結婚という構図が完成する

 

ボンッとほのかの顔が真っ赤になる

 

それを見た達也は呆れるしかなかった

 

 

達也『委員長、彼女が勘違いしています。』

 

このあと、勘違い中のほのかの誤解を解くのに時間がかかったのは言うまでもない

 

 


 

 

ほのか『(あれが無ければきっと慌てていた。達也さんが私達より遥か高みにいることに実感した分、大抵の選手なんてどうってことない。この勝負、絶対に勝つ!)』

 

少し、遠い目をするほのか

 

しかし、あれのおかげで現状、慌てることなく対処出来ているのは間違いない

 

 

達也『頑張れほのか。今の君なら渡辺先輩にも引けはとらないはずだ。』

 

達也がほのかに授けた策は三つ

 

一つがガチンコのスピード勝負

 

 

 

沓子『(もう、追いついたじゃと!?おのれ、やるではないか。だが!…!?)』

 

ほのかが沓子との距離を10メートル足らずに縮めていた

 

それを脅威に思い、水面に妨害の魔法を発動させるがー

 

達也『残念、それは幻影だ。』

 

ほのかがそれに掛かった様子がなく、次の瞬間にはその姿が消え失せる

 

本物はどこに?と後方を探すも見当たらない

 

しかしー

 

沓子『!?(まさか!)』

 

直感が沓子の視線を前に向かせる

 

そこには、数メートル先にほのかがいた

 

愛梨『!いつの間に。』

 

隙とも呼べない僅かな間

 

 

二つ目

沓子が後方を振り向く直前に、ほのかは自身に光を屈折させ、自分との距離を狂わせる魔法を使用していた

 

それと同時に温存していた体力と魔法力で加速し、沓子を抜き去っていたのだ

 

沓子『くっ、おのれ。だが、まだじゃ!』

 

抜かれたのなら抜き返せばいいだけのこと

 

抜かれたことに動揺したものの、すぐに立ち直ったその精神には流石としか言いようがない

 

間髪いれずに、ほのかの前無数の渦を作りだす

 

達也『甘い、俺がそれの対策をしていないとでも?』

 

三つ目

体に受ける空気の抵抗と水面とボードの接地面での摩擦による抵抗、この二つを限りなく0にする放出系魔法

 

これを駆使することによりほのかのスピードが倍以上に跳ね上がり、沓子の魔法は不発に終わる

 

沓子『くっ、速すぎる。これでは、座標の指定を出来ん!やられたわ!』

 

加速系の魔法なら距離等を計算して座標指定が出来たかもしれないが、摩擦や抵抗を計算するとなるとそれなりの頭脳が必要だ

 

 

この試合、達也の策による一方的な有利な試合運びと思うかもしれない

 

が、沓子の古式魔法やほのかの今までのこのバトル・ボードのために努力した時間が本選にも引けをとらないハイレベルな試合展開を可能にした

 

出来るからなるのではない

どうすれば出来るのか、出来るまでやり続ける

 

今回はほのかの諦めない心が試合を決定づけた

 

 

ーーーーー

 

今日は不本意な出来事もあり、ほのかの優勝の労いの言葉や摩利からのお礼もそこそこに部屋へ戻る達也

 

また、七高の選手などからの挨拶も程よく逃げる

 

しかし、道すがらに呼び止められた人物に最早辟易するほかなかった

 

達也『あまり言いたくはありませんが、暇なのですか?生憎、私は明日もエンジニアの仕事で忙しい身。早々に休みたいのですが…田辺香織さん。』

 

どうして自分の他人の興味を引くのか

 

何かの呪いなのかと疑いたくなるほどだ

 

さっさと終わらせたい

 

一つ学んだことは名前を呼ばれても相手が自分の顔を憶えていなければ無視しても問題ないということ

 

自信がなければ、呼び止めることもない

 

しかし、彼女の場合はそれに当てはまらなかった

 

夕歌『一文字もあってないわ。津久葉 夕歌よ。他人行儀は嫌だから夕歌と呼んで下さらない?』

 

名前を間違えられれば大抵の人間は顔を歪めたり、怒ったりする

 

だが、彼女は怒るどころか少し嬉しそうにしている

 

ここぞとばかりに要望までつけて

 

達也『これでもマシなほうですよ。普通は記憶にすら残っていないので。余程貴女との出会いが最悪だったのでしょうね。お断りします。貴女の名前を呼ぶそのメリットが私にはありませんし、私も呼ばれたくはありませんので。』

 

愛梨のときもそうだが、どんな絶世な美女が達也の目の前に居ようと席を外せば忘れる

 

何度も言うが、彼は外見では判断はしない

あくまで中身、性格や心情とするもので判断する

 

他人からしたら取っ付きにくい性格と捉えられるかもしれないが

 

 

夕歌『…屁理屈ね。まぁ、いいか。今回は、あの時の貴方に謝りたくて。多分、努力で身に付けたそのエンジニアとしての腕を誉めたのが貴方の心の琴線に触れた。違うかしら?』

 

達也から辛辣な言葉に対して気にしてはいない夕歌

 

どうしても達也ともう一度話したかった理由は謝罪なのだ

自分の称賛の言葉が達也をひどく傷付けた

 

自分と達也の性格は違うためそれは仕方のないことだが、それだけで済ませるのはよろしくもない

 

夕歌自身が望まぬことでもあった

 

 

達也『流石は、他の方々より数年を多く過ごしてらっしゃる。それほど気にしてはいませんので安心してください。』

 

相手を不快にさせてしまったと、何が原因だったのかを理解してすぐに行動に移す

 

そういったことを出来る人は少ない

 

達也とそこまで年は離れていないであろう彼女は立派だ

 

夕歌『…暗に年増と言いたいわけ?』

 

確かに自分は達也より年上だが、年齢だってまだ、はた…ゲフンゲフン

 

これくらいの歳の差なんて、許容範囲内じゃないかしら?

 

あら、何を考えているのかしら私?

 

達也『そう思われるのはご自由にどうぞ。ただ、私は無駄にプライドだけ高く、人生を過ごしてきた人間達よりもまだ貴女のように素直になれる人は人格者としては尊敬出来ると思っているだけです。』

 

ただ何となくで年齢を重ねるよりも何かを感じて、何かを変えようとする姿は素晴らしいとは感じる

 

とまぁ、こんなことを摩利達に話せばお前もなと返されそうだが

 

夕歌『なんか、上から目線が嫌なんだけど。まぁ、それは私も同じか。ありがとう、守夢君。』

 

達也『お礼を言われるほどのことはしてませんが。』

 

突然、礼の言葉を述べられ驚く達也

 

夕歌に貸しを作ったわけでもないし、今回も対等な関係ではある

 

見ず知らずではないが、親しくもない

 

その前に達也は知り合いたくもなかった(知られたくもなかった)と言うだろうが

 

夕歌『それは、人それぞれでしょう?私は貴方の雰囲気が好きかも。困っていたらさりげなく、手をさしのべるその姿が。そしてそれは、貴方の生来のもの。生まれ育った環境もあるかもしれないけどね。』

 

会って間もない人物から好き発言をいただく達也

 

双子と響子以外ではそんなことを言われるのは初めてかもしれない

ほのかと雫でさえ、発言は控えている位だ

 

というのも達也にはそういった恋愛感情に疎い

そのため行動で意識させたほうが効果的ではある

 

 

達也『…』

 

赤の他人に近い人間に言われても社交辞令にしか聴こえない、そもそもあの一族だ

 

警戒心しかない

 

どう返したものかと思案していると

 

夕歌『ふふっ、褒められるの馴れてない?』

 

達也『さあ?では、話も終わったようですしこれで失礼します。』

 

これまた、話を切り上げるネタを提供してくれたので利用しない手はない

 

 

夕歌『あ、待って守夢君。』

 

早く休みたいから話しかけるな、そんな雰囲気を醸し出しながら振り返る

 

達也『…何か?』

 

夕歌『また、時間があれば話に付き合って下さらない?』

 

そんな達也の無言の圧力に臆することなく、笑顔の夕歌

 

達也『気まぐれに善処します。』

 

 

 

夕歌『素直じゃないんだから。(でも、この感じはなにかしら?彼と話していると凄く満たされた気分になるのは…そういえば私、彼のことを好きって。カアッ…やだ、私ったら、軽い女って思われなかったかしら?)』

 

 

達也が去っていった廊下を眺めながら充実した時間を過ごせたことに満足していた

 

しかし、自分がとんでも発言をしたことに気付き、顔を赤く染める夕歌

両手を顔に当てながら百面相をする夕歌だった

 

 

 

 

 

 

 

達也『(勘弁してほしいものだ。四葉が堂々と近付いてきたと考えたら、個人的興味とは。…ということは、まだ俺のことは調査中と断定していいだろう。)』

 

浩也達の部屋に向かう道すがら二度の四葉の一族対面に現状を分析する

 

司波深雪と津久葉夕歌、(桜井水波は除外)二人とも四葉に連なる者

 

この二人が達也の正体を知っていれば何らかのアクションを起こすはず

 

それがないということは調査中か本家が何らかの意図でその情報を止めているのか

 

後者の場合は、神夢がその情報を掴むため可能性は低いだろう

 

 

コンコン

 

浩也『入れ。』

 

達也『お邪魔します。…義父さん、謀りましたね。』

 

部屋に入ると、ニヤついた浩也が出迎えてくれた

 

奥には凛、結那、加蓮、恭也がそんな浩也を見て、呆れた表情をしていた

 

浩也『さて?何のことやら。』

 

達也『それは横に置いておきます。それより、少し気掛かりなことが。』

 

浩也『珍しいな。』

 

達也は大概のことを自分で片を付けてしまうため達也から何かの相談を受けることは珍しい

 

浩也自身、寂しさも感じながらも達也の成長に嬉しくならないわけがない

 

愛情とは相反した、矛盾したものなのかもしれない

 

 

達也『四葉の人間が俺に接触してきました。』

 

と、流石の達也も一人で抱えるのはよろしくないため打ち明ける

 

全員『!?』

 

達也の予想だにしない告白に緊張が走る

 

しかし、逆に達也はそこまで心配はしていない様子

こちらが過敏すぎるだけなのか

 

凛『どういうこと?』

 

詳細が知りたい

 

達也『すみません、言葉足らずでしたね。四葉当主の命令で接触してきたわけではなさそうです。ただ単に俺に興味があったみたいでした。』

 

津久葉夕歌という四葉の人間

 

あの事故の後と先ほどと二回会話したことと

 

二科生なのにエンジニアとして他と一線を画するということで興味があったため興味を持ったことなど、簡単に説明する

 

 

浩也『なるほどな。俺の感では、その人間に害意は無いな。むしろ、お前には好意的だろう。違わないか?』

 

達也『その通りです。俺の人間性が好きとも言われました。』

 

二人で状況整理と今後の方針について盛り上がるのは良いのだが、忘れてはならない

 

四葉など足元にも及ばない恐ろしい女性陣の存在を

 

 

結那・加蓮『はあ?』

 

達也がそんなことを言われていて黙っている結那と加蓮ではない

 

ドスの利いた声で達也を睨む

 

達也『…結那?加蓮?』

 

先程とは明らかに違う雰囲気に達也もたじろぐ

 

自分が何か地雷を踏み抜いたのは事実

 

結那『もう一度言っていただけますか?誰が誰に好きですって?』

 

幼子に優しく手解きするような声音だが、結那の背後には般若が見える

 

達也が告白されて黙っているほど、おしとやかに振る舞うつもりもない

 

達也『…いや、性格というか雰囲気が好ましいという意味であってな。』

 

好きという発言に達也もしまったと、内心では冷や汗をかく

 

加蓮『達也、答えになってない。それに、その性格、雰囲気が好ましいは貴方が好き(LOVE)と同じなんだけど?』

 

加蓮は加蓮で達也の言い訳を潰しにかかる

 

こちらの背後には業火が見える

 

達也『それは飛躍しすぎではないかと思うんだが?なぁ、恭也?』

 

このままでは、四面楚歌に近い状態になりかねない

 

なにせ、この会場には響子もいるのだ

こんなことを知られたら監禁でもされそうだ

 

とりあえず味方が必要だが、浩也は既に戦線を離脱して

読書と洒落こんでいる

 

後で覚えてろと思いつつも、まずはこの状況からの脱出である

 

いつも自分を慕ってくれている義弟の恭也に望みを託す

 

恭也『義兄上、反省してください。』

 

ーーが、見事に裏切られた

 

今回の出来事に関しては恭也でさえ許容出来ないらしい

 

 

凛『ふふっ、達也?今日はここに泊まっていきなさいな?』

 

と、ここで今まで大人しかった凛が達也に止めを刺す

 

そもそも、結那と加蓮を達也と結婚させようとまで画策している彼女が達也とどこぞの馬の骨とも知らぬ者が逢引をしていたという事実を寛容になるわけがない

 

達也『いや、しかし…』

 

不幸中の幸いというべきか達也は部屋を一人で使っている

 

理由は、CADを調整する機械を部屋に入れることになったため、そこに誰が入るのかということだったのだが、誰も立候補したがらず

 

達也に白羽の矢?(生け贄とも言う)が立った

 

達也自身、相容れない人間達と同じ部屋に入りたくなかったので渡りに舟だったのかもしれない

 

そういう訳で今晩、達也が部屋を空けても然して問題もない

 

誰かがCADの調整をするために訪問しなければのはなしだがーー

 

 

凛『ね?』

 

反論は許さないと

 

語気は強めずに優しい(恐怖)口調

 

双子同様に背後には魔王が顕現していた

 

ーーーーーーー

 

九校戦 3日目

 

今日の試合はクラウド・ボール

 

テニスコートの広さを魔法障壁で覆われた中で

制限時間内にシューターから射出された低反発ボールをラケットまたは魔法を使って相手コートへ落とした回数を競う対戦競技である

 

1セット3分、ボールは20秒ごとに追加され最大9つのボールを操る、女子は3セットマッチ,男子は5セットマッチ

選手の一日の試合回数が多いというよりは瞬発力が必要とされ、魔法発動の速度や集中力も試合の鍵になる

 

 

 

 

真由美『うん、今日もいい感じね。それにしても、守夢君はどうしてCADのソフトのゴミ取りだけでこんなに発動速度が速くなるって知ってたの?』

 

試合は本選から始まるため本選選手である真由美の担当エンジニアのため最終調整を行っていた

 

達也『ありがとうございます。それは勉強しましたから。それに、ソフトのゴミ取りで鋭敏に感じられる会長が凄いだけです。大半は分かりませんよ。』

 

真由美からお褒めの言葉をいただくも淡々とした達也

 

何かを極めれば、それが武器になる

 

達也はそれを突き詰めた結果が現在だ、better(他人より優秀)よりもdiferent(他人とどう違うか)がいつの世の中でも求められるのではないだろうか?

 

それは自分(作者)が身に沁みているが

 

 

真由美『そうかしら?そうだわ、守夢君。この競技で優勝すれば、お願い聞いてもらうからね?』

 

真由美は達也に優勝したらお願いを聞いてもらうという約束をした

 

スピード・シューティングとこのクラウド・ボールで見事優勝をすればその約束は果たされる

 

達也『仕方ありませんね。約束ですし。』

 

本当に嫌そうな表情をする達也

 

エンジニアとして九校戦に参加しなければ、こんなことにはならなかったのだ

今回に限っては達也の自業自得といえる

 

真由美『可愛くないわね。』

 

本心から言った言葉ではないものの

 

もう少し、愛想良くしてほしいものだ

 

達也『こんなむさ苦しい男に可愛いとか会長の目を疑います。約束をした身で言えることではないかもしれませんが、恋仲でもないのにこんな恋愛紛いをするのは如何なものかと思います。』

 

暗に、お前のことは何とも思っていないと告げる

 

真由美『……か…。』

 

達也『なんですか?』

 

真由美『この鈍感!見てなさい、この競技優勝してとんでもないお願いを言ってやるんだから!』

 

しかし、達也の言わんとしていることが伝わっていなかったようで、逆に火に油を注いでしまったようだ

 

優勝して約束を守らせると、啖呵を切る真由美

 

俗に言う自滅フラグが良く見られるも発言する人物は十師族の直系で魔法に関しては超一流といえるためそれは無いだろうが

 

扉を勢いよく閉めて、出ていく真由美

 

達也『どちらが主導権を握っているのか判らないのか?流石は箱入り娘だ、そこまで頭は廻らなかったか。』

 

達也は真由美の態度に呆れるしかなかった

 

ーーーーー

 

結果、言葉通り

本選女子クラウド・ボールで真由美は優勝を飾るのだった

 

 

真由美『さあ!約束は守って貰うわよ!』

 

控え室に戻った瞬間に真由美は達也に詰め寄る

 

その姿はまるで、契約書を笠に着て弱者に迫るヤクザのようだ

 

達也『…その前に一応、会長優勝おめでとうございます。それで、どのような願い事で?』

 

真由美『一応って何よ、全く。…そうね、願い事なんだけどね?そ、その…。(ボソボソ)』

 

一応という釈然としない祝いの言葉

 

それよりも、自分の願い事を伝えなければと思うも口に出せない

 

真由美自身、こういったことは少ないのだろう

 

達也『何を恥ずかしがっているんですか?そんなに後ろめたい内容なんですか?』

 

モジモジされていても何も進まない

 

真由美『そ、そんな訳じゃないんだけどね?え、と、ね?その…た、達也君って呼んでもいいかしら?』

 

真由美が言い淀んでいたことが漸く理解出来た

 

そして、次の願い事もーー

 

 

達也『…(彼女達といい、会長といい、そんなに俺に興味があるのか?)約束ですからね、それで?もう一つの願いはなんですか?』

 

そんなに自分と距離を縮めたがる理由が理解出来ない

 

魔法力はさることながら性格に関しても人格者というわけでもない

 

容姿にしても中の上が関の山だろう

 

真由美『本当に?やった!後ね、もう一つは私のことを真由美って呼んで欲しいんだけど。』

 

達也が拒否しなかったため、嬉しくなる真由美

 

本来の調子を取り戻した真由美はいつもの調子で願い事を伝える

 

達也『仕方ありませんね。但し、条件があります。この二つは私と会長の二人だけの時だけでお願いします。』

 

真由美『いいけど、どうして?』

 

何故、自分達以外の人間がいるときは駄目なのか

 

恥ずかしいといった感情はあまり達也には見られないため純粋に興味が湧く

 

達也『理由はいくつかありますが、話す必要がありませんので。ただ、光井さんや北山さん達にも同じ条件を承諾して貰ってますので。…会長?』

 

大切な家族以外に自分の名前を呼んで欲しくはない

 

この達也という名は自分の存在意義

 

条件付で名を呼ばせているほのか達でさえ、嫌々ではある

 

真由美『ふーん、達也君って相当のタラシなんだぁ。お姉さん結構、ショックだわ~。』

 

達也の口からほのかや雫などの女子生徒の名前が挙げられた瞬間、

 

ドロドロとした感情が真由美の中で生まれてくる

 

嫉妬なのだが、これはあまり達也に見られたくない

だから、いつものように振る舞う真由美

 

 

達也『心外ですね。私がいつ、誰を、タラシこんだというのですか?』

 

悪いが、この高校生活の中で誰かに好かれたいなどと考えたこともない

 

ましてや、この第一高校の人間など真っ平御免だ

この達也の独白を聴いたら、ほのか達は卒倒するかもしれないが

 

真由美『その無自覚は最低よねぇ。』

 

尚も真由美の理不尽は続く

 

というよりも、それは八つ当たりに近いのかもしれない

 

達也『…では、その無自覚最低タラシ野郎に名前呼びをお願いする方もどうなんでしょうか?』

 

ここまで言われて、はいそうですか、と受け流す達也ではない

 

謂れの無い?誹謗中傷にはやられたらやり返すが達也のモットーだ

 

手心は加えて、手加減はするかもしれないが

 

真由美『わ、私はいいのよ!とにかく、お願いしてる身だからね、守夢君の条件は承諾するわ。』

 

確かにそんな最低な男に接近しようとする真由美はどうかしている

 

惚れた弱味というものかもしれないが

 

しかし、それはそれ、これはこれ

 

達也『よろしくお願いします。』

 

真由美『うぅ、私が主導権握っていたつもりが逆になった気がするわ。』

 

どうやら、試合前の台詞は本心だったようだ

 

なんとも傲慢な考え方だなと達也は思ったとか思わなかったとか

 

達也『当然でしょう。真由美さんは私にお願いをする身、斯くして私はそのお願いを拒否も出来る。どちらが上なのかははっきりしています。』

 

例え、相手が年上だとしても自分に益が無ければ問答無用で切り捨てる達也

 

今回は特別サービスといえる

家族からすればどういう風の吹き回しだ?と思われるほどのサービスなのだ

 

真由美『!…今、なんて?』

 

聞き間違いでなければ、今達也は真由美さんと呼んだはず

 

恐る恐る尋ねる真由美

 

達也『どうかしましたか?真由美さん?』

 

真由美『だって、名前…。』

 

聞き間違いではない

 

確かに自分を真由美さんと呼んでくれた

 

たったそれだけのはずなのに、どうしてこんなにも嬉しくなるのだろうか

 

達也『真由美さん、私の条件を承諾したのですから。そこからは私も変わりますよ。』

 

達也自身、こういった約束事に関して機械的というかあまり感情を表に出さないと思っている

 

それは、達也自身が原則、結果主義を念頭に置いているからだ

 

そのため、約束が果たせないならば意味がないと考える

 

しかし、例外もあるが、今回は割愛する

 

真由美『…ねぇ、達也君。二人の時だけ、その畏まった口調をもう少しくだけた口調で話して欲しいんだけど、駄目かな?』

 

と、達也に二つものお願いを叶えて貰っているというのに更なるお願い否、要望事項と表現すべきか

 

つけあがると益々手がつけられなくなるのは間違いない

 

ヤクザと表現したのは逆に失礼だったかもしれない

 

これは彼らに失礼だ

 

達也『…サービスしておきます。』

 

わざとため息を溢し、特別だということをアピールする

 

まあ、真由美には効かないだろうが…

 

真由美『やった!ありがとう、達也君!』

 

まるで、親にねだっていたものがふとした処から手に入ってはしゃぐ子供のようだ

 

この浮かれた真由美が達也が提示した条件をしっかりと守ってくれるように達也はただ願うばかりだった

 

 




…如何がでしたか?
内容が薄い気がするなと思うのですが

①達也と夕歌さんの絡みをここから作っていきたいと思います
②ほのかに新たな魔法を授けてみました。理に叶ってるのかな?
③真由美さん、達也と仲良くなりたいようなのでお互いに名前呼び希望です

それでは、睡魔が近づいてきましたのでこれで失礼します

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