抹殺された神の愛し子 作:貴神
達也『(もう、届いたのか。牛山さん、無理をしたんじゃあ?玩具だから急がなくていいと伝えたのに。暇をもて余していたのを見破られたのかもな。お礼を言っておかないと。)……私に何かご用ですか?』
新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクの決勝の待ち時間に達也は先日、バトル・ボードで摩利が実践していた硬化魔法を参考に起動式を作成していた
それを、エリシオン社にいる牛山宛にCADの作成を依頼していた
牛山も達也の性格はある程度把握している
九校戦に参加した経緯や心情を理解していたのだろう
それが僅か一日足らずで達也の元に送られて来ており、それをホテルのロビーで受け取っていた
届いたからには実験はしたい
誰に頼もうかと思案していると、達也の行き先を塞ぐ二人の陰
吉祥寺『いえ、ちょっとした敵情視察です。スピード・シューティングでは、
あからさまな敵対発言
まあ達也からすれば、俺が何をした?とツッコミ満載の内容ではある
達也『…何か勘違いをされてはいませんか?優勝したのは選手であり、エンジニアではありません。選手が優秀であればこそ、優勝に一歩近付くのであって決してエンジニアが優秀だから優勝するのではないかと思いますが?あと、一つ訂正させていただきたいのが、
やれることをしただけのため、興味を抱かせるようなことはしていないつもりの達也
本人の主観はそうなのだが、端から見ればとんでもない人物
将輝『謙遜だな。それが過ぎれば、ただの嫌みにしかならない。守夢 達也、あれほどの腕前を持ちながら、何故選手として出場しない?理論があれほど出来るということは実技も相当なものの筈だ。理由を知りたい。』
能ある鷹は爪を隠す
という諺があるものの達也は隠しすぎるといえる
それも様々な事情があってのことだが
達也『…何故?と言われましても、実技の成績は下から数えた方が早いので、選手として出れる筈もありません。というよりも、この九校戦に興味は無いのですが。』
将輝『…?実技が駄目?そんな訳はないだろう?』
吉祥寺『ありえない、実技が出来る
将輝の問いに素直に答えるも誤解を生んでしまう達也
一般的に理論と実技は切っても切れない関係のため、達也の答えは常軌を逸している
と言っても、事実は事実のため仕方がない
達也『例外というものですよ。そんなことを言ってしまえば、現在、魔法師で活躍している方は何かに秀でているのが多いと思いますが?魔法力がある、が強いではないと私は考えます。それでは、失礼します。』
これ以上絡まれるのも面倒のため、二人の間をすり抜けようとするも肩を掴まれ、止められる
将輝『待て!』
何故か、怒っている将輝
煩わしいことこの上ない
達也『まだ何か?…一条の嫡子よ。』
若干、苛ついていたため
殺気が洩れる
将輝『!?(何だ?今の違和感は?)』
達也から放たれた殺気に思わず、固まり肩から手を放す
解放されたことを確認し、その場から去る達也
廊下の奥に消え去ってもまだ凝視し続ける将輝に不思議そうな吉祥寺
吉祥寺『将輝?』
将輝『ジョージ、いや何でもない。守夢 達也、何者だ?』
達也『やはり、九校戦に参加するべきではなかったな。面倒事が次々と湧いてくる。』
しかし、これではっきりしたことが一つだけある
一条家は達也を探しているが、その嫡子である将輝はその目的を知らない
若しくは、知らされていないのだろう
たかが九校戦でここまで、一人のエンジニアに執着するくらいだ
家の命を受けているならば、そんなことは気にしない筈だからだ
とりあえず、目下の懸案は七草と十文字、それに四葉に絞られた
レオ『お、達也。エンジニアの仕事は良いのか?アイス・ピラーズ・ブレイクの試合がもうすぐ始まるぞ?』
達也『最終調整は終わっている。俺に出来ることはそれだけだからな。試合は選手の仕事だし。どちらかに居れば贔屓しているのでは?と勘繰られるからな…ちょうど良かった。今日の夜は暇か?』
牛山から送って貰った物をホテルの部屋に置きに行こうかと考えていた矢先、達也にとっては渡りに船といった状況
レオ『?あぁ。それがどうかしたか?』
達也の質問に疑いを見せる素振りもなく答えるレオ
達也『ちょっと、実験に付き合って欲しくてね。』
達也から実験と聴かされると少しばかり身構えてしまうのは何故だろうか?
レオ『いいぜ、何すればいいんだ?』
レオは気にしてはいないようだが、他の人間なら間があったかもしれない
そこはレオという人間なのかもしれない
達也『硬化魔法の実験と言えば、良いかな。これを渡しておくから、説明書を読んでおいてくれ。夜に俺の部屋に来てくれ。…あとは、そうだな、依頼に対しての対価だな。金以外であれば、極力は希望に沿えるようにするが。』
レオから承諾を得たため、次の段取りに入る
現地であれこれと行うよりも隙間時間に下準備は済ませておく
レオ『おう、りょーかいだ。報酬?いや、要らねえけど。こっちも暇だったんだ、その解消を提案してくれただけでありがてぇ。』
暇潰しさせてくれるなら実験の一つや二つ問題ない
それに達也の実験のと言っても危険なことは無いのは判っている
レオの中では報酬
達也『そうか。』
そこまで無理強いする必要も無いため、引き下がる達也
レオ『!あ、いや、待ってくれ。一つあった。』
すると、何か思い付いたのか達也を呼び止める
達也『碌でもなさそうな気がするな。』
冗談混じりに返す
レオの思いつきは無理難題というものでもないだろう
叶えられる範囲なら努力はするつもりだ
レオ『簡単なことさ。ーーーーー?』
そこまで珍しくも無いが、同級生からそれを所望されるとは思ってはいなかった
達也『承知した。』
レオらしいなと思いつつ、承諾した達也だった
真由美『t…守夢君、どうしてソファで寝てるの?もうすぐ、試合が始まるのよ?』
試合開始まで20分もないのに休憩ラウンジのソファで寝そべっている達也を見掛ける
一高スタッフから見れば、サボっているようにしか受け取られないこの状況
真由美もその一人だ
達也『…誰も周りにはいませんので、名前で呼んで構いませんよ?試合が始まろうとも俺の出来ることは終わったので。真由美さんこそ、彼女達を見届けるべきでは?』
自分の仕事は終わっているため、あとの時間はどうしようが勝手なのだが、真由美はそれを許さないようだ
しかし、冷静に考えてみれば、選手である二人と達也の立ち位置ではこうする他無いと解るはずなのだが
真由美『達也君こそ、エンジニアなんだから彼女達を見守るのが当然じゃない?』
なんとも、こじつけの言い分である
達也『解説者として、必要という意味では?』
真由美の思考を読まなくても判る
達也の解説は解りやすい
真由美『そ、そんなわけ無いじゃない。…多分(ボソッ)』
達也『…皆さんは、天幕に?』
図星を突かれ、反論出来ない真由美に仕方ないと軽く嘆息する
どうせ、このままだと無理矢理連れて行かれるのは目に見えている
それならば、自発的に動くほうが得策だ
真由美『ええ、摩利や十文字君、鈴ちゃんもいるわ。』
達也『わかりました。後程、伺います。』
真由美『遅刻は厳禁よ?』
懇親会の事を根に持っているのか、睨まれながら忠告される達也
前科があるため、反論の余地はない
達也は素直に頷くしかなかった
摩利『ギリギリだな。』
達也『野暮用がありまして。』
摩利『で?』
天幕に着くと、摩利から嫌味を言われる
どうやら、全員が達也の到着を待ち望んでいたようだ
理由は一つだろう
察してやるのも癪なので、惚けてみる達也
達也『?』
摩利『どちらが勝つと予想している?』
着くなり早々に質問を受ける
どうも、勝ち負けが知りたいようだ
達也『皆さんの想像通りかと。』
質問に答えるのも億劫な達也
とりあえず、自分の考えだけは伝える
十文字『…司波が勝つと?』
達也の回答に質問をする十文字
達也『模擬戦を見ていたのなら当然、わかるのでは?』
真由美『それは、北山さんが可哀想じゃない?』
達也の客観的事実からの発言に真由美は異議を申す
達也『事実ですから。それに、彼女に余計な期待をかけるほうが酷いと思いますが。九割九分九厘司波さんが勝つでしょうね。』
はっきり言って、雫が深雪に勝てるビジョンが思い浮かばないのは達也にとって当然なのだ
あれほどの才を持つ者が他に居るのかどうか
摩利『そこまで言うか?』
雫の勝利は微塵もないと評価されたものであるため、摩利も苦言を呈する
達也『この競技は魔法のランクの使用制限はありません。扱えるものが強ければ強いほど有利、魔法力も然りです。…始まりますよ?』
アイス・ピラーズ・ブレイクの特徴は使用魔法のランク制限が無いことだ
それはつまり、扱える魔法のランクが高ければ高いほど有利ということだ
達也の深雪に対する高い評価に天幕に居た人間全てが絶句する
しかし、達也にとってはこの評価は只の事実であり贔屓している訳ではない
長々と話していると、試合開始のブザーが鳴る
摩利『序盤から圧倒されるな。
雫の共振破壊に深雪の
二人は高い魔法力の持ち主のため、目に見える範囲で変化はない
鈴音『ですが、情報強化で氷柱の温度は防いでいるとはいえ、周りの空気の温度からくる熱に対しては影響を受けていますね。』
しかし、見る者が見てしまえば、雫に分が悪い状況ということが判る
天幕でこのような会話がなされているということは当然、本人も解っているということ
それ以上に実力差を実感していた
雫『(やはり届かない。流石、深雪。拮抗しているように見えるけど、周囲の空気の温度からくる熱に耐えられない。)なら、これなら!』
だが、試合前から分からなかった訳ではない
そのための準備だってしてきたのだ
左の袖の中からもう一つ、拳銃型のCADを取り出し深雪の氷柱に向ける
深雪『!?(
雫が二つ目のCADを取り出した事に驚きを隠せない深雪
やろうとしていることが解るため、疑いの目にならざるを得ない
雫『(目標はあの列全て。出力良し、いける!)』
相当の努力ともしかしたら、才能もあるかもしれない
それをマスターした雫
熱量のある光線が深雪の氷柱に穴を穿つ
真由美『フォノンメーザー!?Aランクの高難度魔法じゃない!守夢君、彼女にそんなの教えたの?というか、そんなの知ってたの?』
振動系の系統魔法で超音波照射による熱で攻撃する魔法
超音波の振動数を上げ、量子化して熱線とする高等魔法
雫が扱えたことに真由美は驚き、それの起動式を知っていた達也にも驚きを隠せない
達也『まぁ。ある程度は知っています。』
摩利『しかし、初の氷柱破壊だな。これを機に反撃となってくれればいいが。』
摩利の言葉に周囲も頷く
しかし、達也は冷ややかな目で状況を分析していた
達也『無理ですね。アレが来ますよ。』
真由美『?』
達也のアレという言葉に不思議そうな表情の真由美達
その言葉だけで察しろというのは無理な話
解るには、これから起こる事象を見るしかなかった
雫『(あれだけの威力なのに、一本だけ。凄いね、深雪は。…あとは。)』
全力で攻撃をしたのに、氷柱一本しか壊せなかったことに雫は落胆と同時に素直に深雪を尊敬した
世の中には、努力しても到達出来ない領域があるのだと
しかし、努力は無駄ではない
それを今から証明する
九校戦を10日後に控え、調整や作戦を雫、ほのかと共に練っていた達也
達也『こんな感じでどうだろうか?』
現在、アイス・ピラーズ・ブレイクの予選とトーナメントでの作戦を打ち合わせをしている
雫『…駄目。これじゃあ、深雪に勝てない。』
達也『…勝ちたいと?』
立案した作戦を一通り目を通すな否や、速攻のやり直しを雫から言われる
何が何でも勝ちたいらしい
今回、達也が雫に渡した作戦にはとても雫が深雪に勝てるような内容が書かれたものではなかった
それこそ、里美に言い渡した内容と似ている
フォノンメーザーで数本破壊出来れば上出来といったはっきりと負けて当然のようだった
雫『うん。』
雫がどこまで自分の実力と深雪の実力差を理解しているかどうかはわからない
達也『悪いが、事実を述べると魔法力において、彼女に勝てる高校生は誰も居ないだろう。干渉力が並みではない。十師族と言われてもおかしくない、それほどの人物だ。』
達也は淡々と雫に事実だけを告げる
雫が可哀想だから言うのではない
達也の発言は性格からくるものも多いが、エンジニアとしての立場から客観的に分析した結果がこれなのだ
雫『勝てる勝てないじゃない、勝つの。ほのかと私は、深雪に勝ちたいと思ってる。』
しかし、それでも雫は諦めた素振りはない
むしろ、闘志に火を着けてしまったようだ
雫と同様にほのかも深雪に勝つ宣言をする
達也『まあ、競争することも大切だが。』
軽く嘆息をし、時には競べることも大切かと自身を納得させる
しかし、それは達也の思惑とは駆け離れた理由だった
ほのか『そういうことじゃありませんよ。』
ほのかが達也の言葉を否定する
達也『?』
意味が解らないといった表情の達也
それ以外に何があるというのか
雫『深雪に達也さんの凄さを見せつけるためのチャンスだと考えてる。』
達也『益々、解らないのだが。』
雫は深雪に達也の凄さを認めさせると言う
しかし、達也にとってはそれはどうでもいいといった内容にランクがダウンする
ほのか『深雪は達也さんを軽視しすぎています。引いては二科生をです。今回は二科生のことはおいておきますが、私達は深雪の達也さんを軽んじる発言に怒ってるんです。』
どうやら、深雪の達也に対する言動に怒りを覚えているようだ
そんなことは達也自身は何も気にしてはいないため、二人を諫める
達也『いや、別に気にしてはいないが。そんなことに一々怒っていては疲れるし、心が疲弊してしまうぞ?引いてはそれは魔法の発動に関わるからその心は自分の技能のために使うんだ。』
達也の言葉に納得したのか、二人は黙り込む
これで次に進むかと思われた
がーーー
雫『…ハッキリ言うよ。私とほのかは達也さんのことが好き。LikeじゃなくLoveの方だよ。』
ほのか『好きな人が虚仮にされて黙ってはいられません。ましてや、その人の努力を無駄という言われたら達也さんはどう思いますか?』
まさかの異性として好き発言
確かに、この二人は達也を好意的に見ているのは分かっていた
だが、こうも表に出されるとは思ってはいなかったのも事実
達也『…それで?悪いが、二人の立場からすればそうなのかもしれない。エンジニアの選抜の時は、友人として君達をフォローはしたが、それも俺にとってはどうでもいいことだ。それに、俺は君達自身ではない。俺は大切な家族に危害が及ぶなら全力で対処するが、他人の思想は十人十色だ。それを止めることは出来ない。それに、エンジニアとして調整云々の前に司波さんと同等の魔法力を身に付けさせるのは不可能だ。そこは、持って産まれた才能に因るところが大きい。』
しかし、達也にとって二人の高い評価や他の人間からの低い評価のどちらにとってもどうでもいいものなのだ
それに、雫やほのかが深雪に勝ちたいとはいえ、魔法力を上げるなど不可能に近い
ここまで言えば、諦める他ない
雫『…出来るって言ったね、ほのか?』
ほのか『そうだね。達也さん、魔法力は無理と言ったけど、他は出来ないとは言ってないね。』
達也『…。』
主旨が変わっている
確か、深雪が達也を誹謗中傷するのは許せないから勝って、達也の凄さを見せつけるという内容だったはず
勝つためには魔法力を底上げするしかないが、そんな方法は無いに等しい
それが、達也の失言なのか二人の勘違いなのかで達也は他の方法なら出来るという、思考が斜め上をいっている
雫『魔法力が無理でも他の事なら出来るんだよね?』
雫とほのかは達也に食い下がる
まるで、言質を取ったような表情をしている
達也『モノの例えだ。………分かった。一つだけある、特別サービスだ。その前に一つ、これは約束というより契約だ。今から行うことを他言すれば、即座に君達を消す。』
正直、今の二人は面倒臭いと思った達也
達也自身、万能でもない
出来ることと出来ないことは確かにある
今回の場合は出来るに該当する
魔法力を底上げというか無から有にすることも公言はしないが、出来る
しかし、それは達也の秘密に関わるのだが、
数ヵ月、達也と関わっていたため、達也の言葉の端々に敏感な二人はその微妙なニュアンスに気付いた
今回は達也の失言と言えた
雫『…解った』
ほのか『わ、解りました』
結局、根負けした達也だが、
転んでもただでは起きない、これから渋々ながらも秘密をさらけ出すのだ
契約をしてもお釣りがくる
折れた達也だが、突然雰囲気が豹変したため二人はそれに呑まれる
達也『それでは、始めるか。二人共、俺の前に立って、目をしっかり閉じて欲しい。』
普段の穏やかな達也と違い、あまり見たことのない真剣な表情をしているため即座に従い、目を閉じる
カチャカチャと音がしたあと、二人の頭に人肌並みの体温と高校生とは思えないゴツゴツとした手が触れる
達也『今、二人の額に俺の手が触れている。そこから、氣というものを流す。君達の似た概念で言うと
達也の手から二人の魔法演算領域に注がれるものは事実、氣ではない
確かに氣というものもあるのだが、真実は達也の固有魔法だ
達也の魔法は知られる訳にはいかないため、納得のいく嘘を織り混ぜる
雫『うん、感じる。なんか、ポカポカ温かい。』
達也『そのまま、自分の得意魔法がどんな魔法なのか思い浮かべるんだ。…そこに、何の系統の魔法を混ぜたいのか、もしくは、強化をするならどんな効果を付与したいのかを想像するんだ。』
二人の魔法演算領域内に自分の魔法が行き渡ったことを確認する
そして、いよいよここからが本番だ
あくまで、これは補助であり、これ自体が強力な魔法ではない
ゲームで例えるなら、強化素材・進化素材といったところか
雫『違う系統の魔法を混ぜる…。』
ほのか『魔法を強化…。』
達也『…よし、これで終わりだ。』
二人の魔法演算領域内で何かが発露したのを確認すると、手を離すと同時に達也の魔法は霧散する
ほのか『もう、終わりですか?』
自分の中で輪郭が出てきた途端に手を離される
もう少しでハッキリとしたイメージが出来上がったのに、と恨めしそうに達也を睨む
達也『あぁ、こればっかりは本人の想像力次第になる。どんな力にしたいのかは、決められない。自分のスタイルに合った魔法にするしかない。但し、スタイルが決まれば、変えることは出来ないことは憶えていて欲しい。二人が、その力を昇華出来るように祈っている。』
別段、出来上がるまで魔法を使っても問題は無い
それのほうが確実に良い魔法を造り上げることが出来る
しかし、リスクもある
それは、魔法師の力量によっては暴走するということだ
精神が未成熟であればあるほど力に引っ張られやすく、魔法を上手く発動出来なくなる
そのため、この魔法は使うタイミングや被使用者の人格を考慮に入れて使う必要がある
あとは、達也の主観として赤の他人に近い存在に秘密を曝し続けるのは嫌だったということだろう
お膳立てはした
二人の覚悟を見せてもらう
あとは野となれ山となれ
深雪『(流石ね、雫。貴女が全力で応えたように此方も全力で応えるのが礼儀。)受け取りなさい。』
雫のフォノンメーザーによる攻撃を受け、少なからずもその実力を認める深雪
ならば、此方も全力で応えるのが礼儀
左手にCADを持ち、右手を添え頭上に構える
そして、鉄槌を下すように振り下ろす
超上級魔法
広域振動減速魔法 【ニブルヘイム】
摩利『やはり、あの時の魔法はニブルヘイムか!全く、どこの魔界だここは。』
深雪から放たれた白い霧のようなものの実態は魔法であり、以前、模擬戦で発動したものだ
あの時は暴走していたが、今は完全に制御された魔法
達也『(予想した通りの展開だ。さあ、どうする?一か八かの勝負だ。俺はきっかけを与えたに過ぎない。どこまで昇華させることが出来たのかは、雫、君次第だ。)…時間は無いぞ?』
深雪の力に感嘆するも、恐れはない
当然か、というように戦況を分析する達也
どちらを贔屓するつもりはない
雫やほのか、深雪他の担当選手の個々人に合った調整はしている
それ以上の覚悟をもって望むなら、それ相応に応える
それだけだ
雫『(これが噂のニブルヘイム。氷柱を液体窒素が覆う僅かな時間が私の唯一の勝機…!)私だってそう易々とやられる訳にはいかないよ。(スッ)』
残された猶予は僅か
それを掴み取れるかは雫次第
CADを着けている左手を前に出し、右手をその二の腕辺りで支えのような形をとる
次いで、雫から
そして、瞬きする間もなく左手を勢いよく振り下ろす
ドガンッ!!
轟音と共に深雪の氷柱が粉々に砕ける
『えっ?』
誰が発したのかは判らないが、確実なことは一つだけある
雫の魔法が試合の流れを止めたということだけだ
そして、雫にとっては幸運なことに深雪の発動していた魔法が止まったこと
真由美『な、に、が起きた、の?』
摩利『私にも解らん。』
十文字『…見たことのない魔法だったということは確かだ、守夢。』
自分達の知識にない魔法
それは、一般の考えでは脅威に他ならない
自分の知らない世界にその人物は居るということは、心理的には得体の知れない存在
要因としては、自分がそれをしなかったや知ろうとしなかったことが挙げられる
だから、人を妬んだり羨んだりするのだ、自分が出来ない行動をとることに
人間は変化を好まない
特にプライドが高い人物は
達也『さあ?何でも私が起因しているということはありませんよ。北山さんから提案されて、調整したそれだけです。』
何でもかんでも、達也が要因という思考は止めて貰いたい
事実、達也が関わっているのだが
これは絶対秘密なのだ
鈴音『北山さん自身で考案されたと?』
達也でないならば、雫自身が編み出した以外考えられない
意外だという表情の鈴音
達也『それはどうかは知りません。(短期間でここまで完成させるとは、凄いな。)』
あの時からそこまで時間は経っていない
この九校戦までによく仕上げたものだ
素直に尊敬する
深雪『(な、なに?一体何が起きたというの?雫がしたの?じゃあ、あれは防御ではなく攻撃!?)…くっ!まだよ!』
予想外の攻勢に驚きを隠せない
フォノンメーザーが切り札だと決め付け、さらに隠していたとは思わなかった
しかし、このまま終わらせてなるものかニブルヘイムで雫の陣地の氷柱全体に液体窒素を付着した時
それでこの試合の決着が決まる
再度、深雪はニブルヘイムを発動させ、雫の陣の氷柱へ攻撃を仕掛ける
雫『(…一応、三本。結構、威力あったと思ったのに。もっと、
ズガガガッ
何かを削り潰していくような音を発しながら、深雪の氷柱を粉砕していく雫
真由美『守夢君、あれはどういう原理なの?削れているというか、潰されているというか。』
モニター越しでも分かる、氷柱が振動しながら潰れていく
達也『会長の仰る言葉通りですよ。削りながら、潰しています。振動系統の魔法と加重系統の魔法が使われています。言うなれば、魔法を複合させたに近いですかね?』
例えるなら、インパクトドライバーや掘削機といった機械の原理に似ているかもしれない
イメージは出来るもののそれを再現するには相当の努力と時間が必要だったはず
『『魔法を複合!?』』
たった一言で済ませる達也だが、聴いた人間は驚愕しかない
複合された魔法(表現としては、複合に近い:誤解の無いように二度言います)など初めて聴くに等しいため、信じられない
ニブルヘイムは振動・減速の系統魔法だが、振動系に分類される
この魔法もニブルヘイムと同じなのかもしれないが、それならば雫は凄いことをしているということになる
しかし、現実に起こっているので否定材料が無いのも事実
深雪『くっ!(残り、五本。ここまで、私が追い込まれるなんて。あと、少し。)』
自分がここまで追い込まれていることに冷や汗の深雪
深雪の魔法の効果が雫の陣地に到達するのが先か、雫が深雪の氷柱を全て砕くのが先か
勝負は最後まで判らない
雫『(あと、五本。ギリギリ駄目かな?ううん、気持ちで負けてたら駄目。達也さん、見てて。)絶対に勝つ!』
今、雫が使用している魔法に弱点があるとしたら、それは攻撃中に防御が出来ないという点だろう
この攻撃魔法に全神経を集中させている
馴れてくれば、防御しながら攻撃も可能かもしれない
とは言うものの、防御する余力が無いのかもしれないが
ほのか『(私達の覚悟が今、こうやって深雪を追い詰めている、それは確か。)頑張って、雫。』
達也のおかげも大部分あるが、ここまで戦えるまでにモノにしたのは本人たちの努力だ
勝利を願って雫にエールを送るほのか
愛梨『(何なの?司波深雪を追い詰めているというの?無名の選手が?)』
最初に懇親会で会い、アイス・ピラーズ・ブレイクで
さらには、ニブルヘイムといった最早、化け物としか言い表せない人物が追い込まれているこの現実に愛梨は受け入れがたい思いを抱える
ズガガガッ
小気味良く、順調に削れていく氷柱とニブルヘイムによる液体窒素が氷柱に付着していく様を観客は固唾を飲んで見守る
この試合、どちらが勝ってもおかしくはない
達也『…司波さんの勝ちですね。』
ボソッと達也が深雪の勝利を確信する
真由美『え?まだ…』
どちらかと言えば、雫が優勢のはず
何故そのようなことを言うのかは、すぐに理解することになった
雫『(よし、ラスト二本。これを、…壊、せ、ば?…あれ?…)…ぁ。』
残すのはあと、二本
だが、無情にも雫に明智と同様の症状が起こる
所謂、
あれだけの大威力の魔法なのだ、魔法力もだが、
達也も効率良く調整しただろうが、結果がこれだ
立っていることも出来ず、膝から崩れ折れる雫
しかし、目は死んでおらず、まだやれると敵陣の氷柱に目を向けるもその視線の先には深雪が次の魔法を繰り出す瞬間が映っていた
深雪『!(危なかった、けど、間に合ったわ。)これでラストよ。』スッ
雫の陣地の氷柱に付着した大量の液体窒素
その膨張率は700倍
雫『あ…。』
結果は、新人戦女子アイス・ピラーズ・ブレイクの優勝は司波 深雪に決まった
雫『達也さん、ごめんなさい。』
達也『何をだ?』
試合を終えて、達也は控え室に来ている
理由はこれといってないが、雫に呼ばれていた
雫『…達也さんに秘策まで貰ったのに、勝てなかった。』
達也に謝罪の言葉を述べる雫だが、顔を俯けていて表情は窺いしれない
しかし、悔しさは痛いほど伝わってくる
達也『謝るほどではないのだが、俺が心配しているのは、その事を他言されることだけだ。全力で勝てない相手もいる。勉強になったな。』
そんな雫にも達也は通常運転で
ここ最近、達也は雫やほのか達にも空気を読まない発言がちょくちょく見受けられる
雫『…達也さん、少しだけいい?』
達也の最後の励まし?の言葉に少しだけ優しさを感じた雫
ギュッと正面から達也に抱き着く雫
達也『少しだけなら。』
抱き着く腕の強さによほどの悔しさがあったのだろう、その悔しさは解らないでもない達也
雫『k…ち…tかった。勝…ち…たか、ったよ…』
達也『…』
嗚咽する雫にさすがの達也も慰める気持ちは少しある
早く、気持ちの切り替えが出来るように雫の頭を撫で続ける達也
ほのか『(雫…)』
控え室のに入ることもせず、雫の様子を窺っていたほのか
唯一無二の親友である雫
彼女の悔しさは痛いほど解る
深雪に勝つ、死にものぐるいで努力をしてきた
しかし、勝てなかった
明日は自分の番、雫のためにも勝つ
そう決意してーー
とある中華街
何とも怪しげな黒服のボディーガードに守られて、会談する男達がいた
『…どういうことだ?新人戦は第三高校が有利ではなかったのか?』
想定外の事態だと警鐘を鳴らす
『本戦で渡辺摩利を試合に出さなければ帳尻が合うと思っていたが、本命が優勝しては我々の一人負けだ。』
摩利が試合を棄権となれば、新人戦は三高が有利のため、何とかなると考えていた
それも、達也に邪魔されているため効果はいまいちである
『今回カジノは、かなり大口の客を集めたからな。支払いも相当だ。』
どうやら、この集団は九校戦をダシにした闇の賭けをしているように見受けられる
しかも、自分達の有利になるように細工を仕掛けながら
『このままいけば、今期のビジネスに大きな穴をあけることになる。そうなれば、ここに居る全員が本部の粛清対象だ。損失額によっては、ボス直々に手を下すこともあり得る…。』
『…死ぬだけなら良いが。』
『『…』』
ある男の言葉が紡ぐのをやめたその先は解っている
そのため、周りも沈黙するしかなかった
『もはや、形振りかまっていられん。第一高校を優勝させるわけにはいかん。』
どんな手を使ってでも、一高の優勝を阻む
『解っている、策は練ってある。死者が出なければ良いのだからな。』
如何でしたでしょうか?
今回は、(おそらく、オリジナル?)魔法が皆さんに喜んでいただけるか気になります。
楽しんでいただければ嬉しいです!
①原作は深雪さんと歩いているときに将輝と会いましたが、当たり前ですが、一人のときです。
②レオが達也に何の報酬を頼んだのかそれは、後程
③違和感だらけだとは思いますが、雫とほのかが達也に告白しました。文才があれば、もう少しマシかもしれませんが…
④漸く、No Head Dragonの登場?です。
それでは、次回にお会いできますように。
早めの創作頑張ります。