抹殺された神の愛し子 作:貴神
相変わらず戦闘場面は難しい
達也君に新たな?原作にあるのかな?魔法を作ってみました。
吉祥寺『出てきたね、将輝。』
新人戦男子モノリス・コード
代役を立てた人物は全校が警戒していたエンジニア
守夢 達也
将輝『あぁ、そうだな。まさか選手として出てくるとは思わなかったが。奴の言葉を信じるなら、魔法力は無いというがその真実確かめさせて貰おう。』
第一試合は森林ステージ
このステージでは、八高が有利と謂われている
見通しの悪い森林の中でどのような戦い方をするのか見極めさせてもらう
観客『速ぇ!』
観客『自己加速術式を使ってないのに、あんなに速く走れるのか!?』
早速、観客を沸かせる達也
自己加速術式を使わずにそれ以上の速さで走るのだから、驚きだろう
しかし、体験もしくは、一度見ていれば達也が手を抜いていると判っていた
摩利『模擬戦の時と少し遅いか。どうだ服部よ、対戦した時と客観的に見ると違いが判るか?』
模擬戦の時、摩利は外から見ていたため、明らかに判った
服部『そうですね。外から見ると少し見えます。相変わらず、気に食わない奴です。』
服部も少しだが、見えたようだ
真由美『でも、あれは全力じゃないはずよ?』
十文字『おそらくな。服部と司波の二人を相手取っているときと比べると遅いのは間違いない。何を考えているのかわからんな。』
模擬戦では、一高トップレベルを相手取りそれを軽くあしらった実力の達也がこのモノリス・コードではその成りを潜めている
不気味で仕方がない
摩利『それこそ、速攻で片を付けるべきではないのか?』
魔法力が無い分を他で補うのは当たり前の達也にすれば、摩利の考察はもっともだが
十文字『忘れたのか?あいつが二科生なのを。』
魔法力があれば可能だろうが、それが達也にはない
体術で倒そうにも直接の攻撃は禁止だ
しかし、摩利の目の付け所は悪くはない
実のところ、服部や深雪を行動不能にした力は超が付くほどの高性能のCADによるところが大きい
そんな憶測が飛び交うが、実際のところは検討違いな思考をしているのは達也以外知らない
という会話をしているうちに
数秒の間に更に肉迫する
距離にして約50m
八高の選手も草むらを掻き分ける音に気付いたのか、警戒を強める
20mを切った辺りから達也の姿が突然、露になる
約10m辺りか、突然達也がスピードを落とし停止する
息切れをした様子もなく、何故か俯いている達也
何かトラブルか?と不審に思う観客だが、そんなことをすれば、どうぞ攻撃してくださいと言っているようなものである
新人戦レベルとはいえ、第八高校の代表選手なのだ
それを見逃すわけもなく
拳銃型CADの引き金を引き、魔法を放つ
真由美『危ない!』
当たる、と全員確信するも
それを平然と座標から外れ魔法を避ける達也
正直、心臓に悪い
八高の選手もまさか避けられるとは思わなかったのか驚いている
だが、すぐに切り替え再度達也に照準を定め引き金を引く
ーー筈だった
突然、達也は左足を上げる
上げるといっても頭を越えるようには上げてはいない
膝を曲げて腰より少し上辺りだろうか
それ以上上げるのかと思いきや、地団駄を踏むように力強く地面を踏んだ瞬間
地響きと共に達也と八高の選手の前に厚み約30cmの約5m四方の巨大な壁が出来上がる
それはまるで、昔忍びが使っていた技と酷似しているもだった
【畳返し】
真偽は不明だが、畳を返して敵を足止め、縛る術らしい
または、攻撃を防ぐためのなのか
一瞬にして壁が出来上がり、一人を除いて会場全てが混乱する
その一人は出来上がった壁に右の拳を振りかぶると
ドゴッ!
最近のお約束な轟音と共に壁が粉々に砕け、辺り一面を土煙が覆う
これでは状況が把握出来ない
観客もこの土煙では何が起ころうとも何も見れない
方法は二つ
一つは魔法で土煙を吹き飛ばす、もう一つは晴れるのを待つである
一見、前者が有効に思えるかもしれないが、それをすると相手に位置がバレてしまう
そうなると、後者かと思われるかもしれないが、風向きによれば先に相手に見つけられてしまう可能性もある
何のために達也がこれをしたのか気になるところだ
真由美『全然、状況がわからないわね。』
摩利『これでは、守夢も迂闊に手を出せないぞ。』
その時ー
膠着状況が続くかと思いきや、突然近距離で二ヶ所同時での魔法が発動する
観戦者全員が相討ちかと、思考を掠めるもまだ土煙が覆っているため確認のしようがない
しかし、それはすぐに判ることになった
風が吹き、二人を覆っていた土煙が一気に晴れていく
それと同時に、試合終了のブザーが鳴る
余計に何がなんだか解らなくなった
一高のモノリスが開けられたのか?と勘繰る観客も少なくない
だが、実際は違う
土煙が晴れると、そこには片膝をつき、立ち上がろうとするも立ち上がれない八高の選手
そして、当の達也は目を閉じ、開いた八高のモノリスに背を預ける姿が映っていた
真由美『えっ、何がおきたの?魔法の発動が二ヶ所ほぼ同時で、その後よ。どうして、試合が終わったの?』
真由美の疑問は尤もだ
しかし、結果から見れば達也が八高のモノリスを開けたということに他ならない
なんという早業であり、底知れぬ実力を真由美達に感じさせた瞬間だった
摩利『いや、それはこっちも訊きたい。』
しかし、それは全員が知りたい疑問だ
鈴音『守夢君が勝っているという前提ならば、おそらく二つの魔法は守夢君でしょう。』
推測ではあるが、鈴音が状況を説明していく
八高の選手に無系統魔法の共鳴とモノリスを開けるための無系統魔法を同時に放つ
混乱した状況でなら、達也の魔法力でも30秒程度なら十分な効果を発揮するだろう
その間に、開いたモノリスのコード512文字を打ち込む
達也なら30秒もあればお釣りがくるだろう
真由美『なんて子なの。』
鈴音の解説に驚くほかない
鈴音『あくまで推測です。こればかりは本人に聞くしかありません。』
摩利『おそらく、合っていると思うぞ?』
摩利の言う通り鈴音の仮説はほぼ合っている
しかし、言うは容易いが試合開始から終了まで実行出来るかを問われれば出来ないだろう
それほどまでに魔法無しの実力が達也にはあり、誰にも真似できない領域にあった
吉祥寺『全然、手の内が読めなかったね。』
次の試合のインターバルに入り、気持ちを落ち着ける
ここまで興奮させられるとは思っていなかった、魔法をほぼ使わずにあれほどのパフォーマンスをするなど
興奮覚めやらずといったところだ
将輝『いや、一つ収穫はあっただろう?』
しかし、将輝は興奮はしていたものの、何か考える素振りをしている
吉祥寺『確かに。彼、魔法力は無いのは確かだったね。』
魔法を使ったのは、土煙の中の一回だけだろう
他に、使用したというのは無いのは運営側が確認していないはずだ
しかも、その魔法も近距離でありながら相手を戦闘不能に出来ていないということは達也自身が言った通り、魔法力は無いのだろう
将輝『それに、あれは実践馴れしている動きだ。』
地面をせり上げるなど魔法でも使用しない限り自分たちでは不可能
それを達也は身体的な力でそれをしてみせた
相当鍛えているのか、こういう状況だと達也に有利なのかは不明だ
吉祥寺『なるほどね。そうなると、ある程度の作戦は建てることが出来る。遮蔽物の無い場所、例えば、草原ステージなら魔法力勝負で持ち込めば此方の勝ちだ。』
先程の試合と達也の言を信じるなら、作戦は粗方出来る
この競技は魔法力がものを言う
ならば、こちらの土俵で戦ってもらうとしよう
魔法が苦手ならその苦手分野を利用させてもらうまでだ
レオ『さっきの試合、俺達ほぼ何もしてないよな。』
幹比古『まあ、確かに。』
前の試合、レオと幹比古は試合開始直後、達也から五分間待機と指示を受けた
何か作戦があるのだろうとそれぞれ、五分後のシュミレーションをしていたのだが、僅か二分足らずで試合終了のブザーが鳴ったのだ
一瞬、自分達のモノリスが開けられたのかと焦るもモノリスは無事だったためその心配は杞憂に終わる
となると、相手のモノリスが開けられたのだと考える
しかし、早すぎる
達也が居なくなって三分も経たずとは、カップ麺も出来上がらない時間である
相変わらずの化け物っぷりである
達也『当たり前だ。させなかったという方が正しい。試合は4試合するんだ。なるべく二人の力は温存はしておきたい。だが、次は二人にも働いてもらうぞ。幹比古の視覚同調の出番だ。』
動きたかったという二人の言葉に達也も同意したかったが、順当に決勝に進むためには一日に三試合行い、その全てに圧勝しなければならない
そのためには二人の力は必要なのだ
こんなところで消耗させるわけにはいかないのだ
なるべく、決勝のためにも体力は温存が望ましい
幹比古『ということは、次は遮蔽物の多いステージということかい?』
【視覚同調】
精霊を使い、敵の視界の外から状況を把握出来るため遮蔽物の多い場所や視界が悪い場所では重宝する
達也『あぁ、七草会長から廃ビルのステージと聞いている。おそらく、次もだ。御膳立てはする、頼んだぞ。』
十文字がごり押しで一高の代役ありの出場は可能になったものの、一日で決勝戦まで行うためスケジュールは非常にタイトだ
達也の言う通り、体力の温存は必要不可欠だ
幹比古『了解。』
レオ『俺は?』
次の試合から自分も動けるためウズウズするレオ
達也『ディフェンスは任せたぞ。狭くてもそいつの使い方は変わらない。1mなら1mの戦い方がある。』
ハイテンションのレオのモチベーションを下げないように期待とアドバイスを上手い具合に混ぜ混む
レオ『!なるほどね、もちろんだ。』
達也の言いたいことをしっかりと理解したレオは親指を立てた
前例の無い悪質なルール違反により第一高校は選手全員が負傷と出場不能に陥った
本来ならば、棄権によりポイントは無い
しかし、それを十師族による圧力で第一高校の選手の代役による出場が認められた
真由美『ごめんなさい、こんな代役を押し付けてしまって。』
なぜ、真由美がこのような謝罪を言うのか
それは、次の試合の相手が二高にある
代役が大会委員会より認められたとはいえ、他校は納得出来ていない
モノリス・コードは変則的リーグ戦を採用している
それは、一校が四試合行い、その勝利数が多い上位四校が決勝リーグに進めるというもの
しかし、今回は特例中の特例で棄権するはずの第一高校が出場
そして現在、戦績では第三高校がすでに四勝で決勝進出を決めている
そのあとに第一高校が三勝、第八高校は三勝一敗で他校の戦績次第で、決勝に進出出来る
そのあとに第二高校と第九高校が二勝と続く
試合の勝利数は並ぶものの、時間では第九高校が第二高校よりも短い
簡単に言うと、第一高校を除く
第三、第八、第九、第二という順位になる
そこに第一高校が第八高校を破り、現在三勝(第四高校との不戦勝も含める)という現状である
もし、第一高校が棄権になれば、上位四校の四番目であった第二高校は決勝進出だっだのだが、第一高校の復活によりそれも難しくなった
つまり、第一高校が棄権ではなくなったため第二高校に不満があるということである
かといって、第二高校に負けたとあれば、八百長だと第九高校に言われる
達也『謝罪は不要です。それを言うということは、俺に対する侮辱ととりますよ、真由美さん。過程では、やらされている形ですが、決めたのは俺自身です。』
今更、何を謝ってくるのか
不思議でしかならない達也
出ると決めたのは達也自身なのだ、そこまで申し訳なさそうにされても不快でしかない
真由美『…ごめんなさい。』
全然先程の言葉が届いていないのか、真由美はひたすら謝ってくる
埒が明かない
達也『そういうときは謝るのではなく、ありがとうと言ってもらう方が相手は頑張るものですよ。とりあえず、お茶しながら、のんびり見ていて下さい。勝ってくるので。』
双子や恭也にしているようにポンポンと、真由美の頭を撫でる
真由美は長女であったためあまり褒められたり、撫でられたりといったことは皆無なのだろう
達也から頭を撫でられて、どうしていいのか分からず、顔を真っ赤に染める
あとは、現在進行形で気になっている達也からそのような行為をされたため戸惑いを隠せないというのもあるかもしれない
真由美『っ!?…無自覚、天然ジゴロめ。』
ひとしきり撫で終わった達也はさっさと試合会場に向かう
達也の姿が見えなくなり、真由美はボソッと呟くのだった
場所はビル群の一角
ステージは市街地ステージ
ここでも達也は荒業を披露していた
ビルからビルへと飛び移っていく達也
そして、ビルの屋上から飛び降り壁面の割れた窓から侵入をする
一体、何の意味があるのやら
まぁ、それのおかげで会場では歓声があがるのも確かだが…
達也『やるぞ、幹比古。(ボソッ)』
モノリスに近い階層に来た達也は幹比古に無線で合図を送る
左手首のCADで視覚同調のための魔法式を構築する達也
精霊が生み出され、それを幹比古が操り、モノリスの位置を探り出すという寸法だ
幹比古『了解。(流石は、古式魔法の使い手だ。…見つけた。)見つけたよ、達也。場所はーーー。』
手間取ること無く精霊を生み出した達也に改めて舌を巻いた
九重八雲の弟子とはいえ、ここまで出来るとは凄いと言わざるを得ない
達也『了解した。(視覚同調、流石は吉田家の神童と呼ばれるだけはあるな。俺の家族には負けるがな。)』
あっという間にモノリスの位置を見つけ出した幹比古
腕は確かだ
顔を合わせていないものの、互いを褒め合う二人
しかし、達也は家族バカのため張り合っているがーー
幹比古の指示した場所の真上の階から無系統魔法を撃ち込む達也
モノリスが開く音がする
二高選手『くっ!』
開いたのが分かったのか、相手選手が上に上がってきた
そもそも、なんでモノリスを真正面から守るのか
相手の攻撃が正攻法で来ると思い込んでいるからだ
実践派と教科書のみでは、戦い方が違う
その時点で差は歴然だ
達也『見つかったか。』
その言葉とは裏腹に表情はのんびりとしている
言葉と表情が一致していないとはこの事である
二高選手『逃がすか!』
達也『(口を動かすより手を動かさないと無理だぞ。情けない魔法師だ。)少し遊んでやるか。』
魔法を発動する二高選手だが、達也は呆れた表情
二高の猛攻を涼しい表情で避ける達也
その様子を天幕のモニターから見ていた一高スタッフ達
十文字『…どういうことだ?当たれば、身体に影響は確かだ。それを奴は。』
摩利『よほど、自信があるのか。』
達也の戦いに内心、冷や汗を流していた
いくら達也が生身では無類の強さを誇ると言っても不死身ではない
それを魔法が当たらないよう逃走するでもなく、その場で避けている
とはいえ、達也でも魔法が当たれば無事では済まない筈なのだが
そんな心配を天幕でしているのを達也は知るはずもなく
達也『遅い。』
二高の鎌鼬のような魔法を髪の毛一本分の距離で避ける達也
あろうことか、その心配を余所に達也は完璧に相手選手を弄んでいた
真由美『嘘!?』
二高選手『なっ!?』
自分の魔法が当たらず、終いには魔法との間合いまで図られてはショックを隠しきれない
達也『殺す気で攻撃してこい。暇ではないが、少し遊んでやる。』
【遊んでやる】
上から目線のこの言葉は選手どころか、観客までもが呆気にとられる
高校生同士でそのようなレベルの差があるのだろうか?
しかし、達也が強がりでそんな言葉は使わない
二高選手『嘗めるな!』
売り言葉に買い言葉で逆上する二高選手
達也『甘い。』
二高選手『なんで、当たらない!』
しかし、冷静を欠いた魔法が当たるはずもなく
達也にとっては、寝惚けていても避けられるだろう
あとは、どこまで保たせるかというところで
簡単には言えば、幹比古がモノリスのコードを打ち込む時間をつくるだけなのだ
達也『(遊ぶと言ったからには、有言実行だな。)幻影魔法【陽炎】(ボソッ)』
人指し指と中指を立て他の指は握る形、刀印をつくる達也
それはさながら、俗に言われる忍びの印の一つと言われているが、定かではない
口許に当て、何かを呟くと達也の姿が揺らめき、魔法が達也を素通りする
この魔法は認識をずらすという単純な魔法ですべてを惑わせるものではない
高校生が相手ならば、目から入ってくる情報にとらわれやすいためそこを突いてやればご覧の通りだ
観客『!?』
その様子をモニター越しに見ている全員は度肝を抜かれる
摩利『おい、真由美。あんな魔法あるのか!?』
真由美『し、知らないわよ!』
例えるなら、夕暮れ時に起こる地平線での揺らめきである
そんな不思議な現象が達也に起こっている
というよりも、達也が起こしているためその表現は不適切である
こんな隠し玉を持っていたとは真由美達も驚くしかない
忍術遣いの九重八雲の弟子ということは教えられていたため身体の使い方は自分達よりも上ということは知っている
しかし、秘密の多い達也がこのような状況で魔法を使うとは思っていなかったのだ
しかも、古式魔法という希少性の高いものを使うなんて
開いた口が塞がらないとはこの事である
達也『(そろそろ時間切れか。)その気があるなら腕を磨いておくんだな。じゃあな。』
言い終わるのとブザーが鳴るのはほぼ同時
幹比古が無事にコードを打ち込んだのだ
魔法によってボロボロになった柱を一瞥し、窓枠から飛び降りる達也だった
真由美『なんて子なの。…私なんて足元にも及ばないわね。』
椅子に腰掛けた真由美
達也の底知れない実力を垣間見た所為で自分の積み上げてきたものが根底から崩れる感覚に陥る
しかし、そんなことで真由美を嫉妬や卑屈になるわけではない
何故なら、達也は魔法力がない代わりにそれを補おうとした結果がこれなのだ
それでも、ショックは受ける
しかし、これで第一高校は準決勝に駒を進めることが出来た
過程はどうあれ、結果は良好だと言う他ない
摩利『これは、ひょっとしたらひょっとするかもな。』
摩利や十文字も真由美と同様だが、口には出さない
それとは別に、摩利は良からぬことを考えていた
達也『調子はどうだ?幹比古、レオ。』
試合が終わり、小休憩に入る三人
達也はいたって通常運転だが、二人は反省点や驚きがあったようだ
レオ『おう、バッチリだぜ。二高にモノリスを開けられたときは焦ったけどな。CADのお陰でなんとかなった。』
達也がモノリスを開け、二高の攻撃を手玉にとっていた最中、レオは気を抜いていたのか
二高選手と鉢合わせし、驚くとモノリスを開けられた
すかさず、妨害出来たものの焦ったと、レオ
達也の調整したCADに助けられたようだ
幹比古『うん、いつも以上に力を出せているような気がするよ。』
こちらも、手応えを感じているようだ
幹比古は以前、上手く魔法を操れないという経験もあったためそれが一際感じているようだ
達也『それはなによりだ。しかし、幹比古。それが本来のお前の力だ、自信を持て。さて、今から三高の試合を観るが来るか?』
達也にとっては本来の実力を引き出せるようにしているだけで特別なことはしていない
自分達の調子も知ることも大事だが、次の試合の合間に決勝で当たるであろう三高の対策も考えなければならない
レオと幹比古も相手の情報も知りたかったのか達也の誘いに同意するのだった
ほのか『達也さん、休まなくていいんですか?』
試合観戦の道中、ほのか達が駆け寄ってくる
達也に関しては連続のハードワークをしているため心配の表情のほのかと雫
達也『問題ない、久しぶりに体を動かしたからな、全身に力みがある。それを取るには多少疲れがあるほうが良い。』
しかし、当の本人は体が鈍っているだけで何ら問題はないという
寧ろ、疲れている方が良いという常人には理解出来ない言葉を発している
それを聞いていた幹比古は若干、引いていた
達也『…皆、先に行っておいてくれ。野暮用を思い出した。』
ふと、達也が歩みを止める
その行動に周りは不思議そうな表情をするが、何か気になることがあったのだろう
レオ達は試合会場に向かっていく
レオ『りょーかいした。』
レオ達の姿が遠ざかると、背後に声を掛ける
達也『気になるか?お前たち。』
恭也『僕ですら、判りますよ。ただならぬ気配の持ち主です。』
すると、結那と加蓮、恭也が達也の背後からひょっこり姿を現す
いつの間にというわけではない、ほのか達の後ろで気配を消していただけなのだ
恭也の言葉に双子も頷く
達也『流石だな。あれは千葉の長女と次男だ。次男は麒麟児とも呼ばれているのは知っているな?』
千葉 修次 防衛大学に在籍しながらも3mの間合いなら無類の強さを発揮する世界でも十指に入る剣の使い手だ
淡々と事実を述べる達也だが、
結那『でも、どうしてこのような場所に?』
結那の疑問はもっともだ
そんな有名人が九校戦とはいえ、理由がなくては来るはずがない
考えられる理由はーー
エリカ『次兄上、何故このような場所にいるのですか!兄上はタイに剣術指南に出られたはず!』
エリカの兄を問い詰める声が響く
どうも、相当のお怒りのようだ
修次『え、エリカ落ち着いて。』
エリカの凄まじい形相と声音に腰が引けている
そんな状態の修次の声がエリカに届くはずもなく
エリカ『これが落ち着いていられますか!和兄上ならばいざ知らず、次兄上がお務めを放棄されるなど昔はございませんでした。』
どうやら、この男は次男で長男がいるようだ
しかも、その長兄はだらしなく、サボるのは常習犯らしい
それを差し置いても、エリカの修次への信頼は相当高いものだ
それを裏切られたとなれば、ショックは大きいだろう
修次『いや、だから落ち着いて。僕は何も務めを放棄、放り出した訳ではね?』
本人も自覚はあるようで、エリカに対しての態度は申し訳なさそうな表情だ
エリカ『そうですか?…確か、私の記憶違いでなければ、次兄上はタイ王室魔法師団の剣術指南協力のためにタイへ赴かれたのではありませんでしたか?』
そんな修次の表情を見たものの、それとこれとは別問題という風でエリカはさらに畳み掛ける
事実を淡々と述べていくほど、厄介なものはない
修次『うっ、その通りです。けどね?何も無断で帰国した訳ではないんだ。ちゃんと許可は貰ってるから。』
どこの家族でも兄は妹には弱いのだろうか?
後ろめたいことが無いのならば、妹の追撃にそこまで萎縮する必要ない
エリカ『許可云々ではありません!日本とタイの外交にも関わる大事な問題を中断してまでこちらを優先する理由を教えていただきたいものです。』
兄の言い分というか、言い訳というか
筋は通しているものの、妹からすれば信頼している次兄が務めを放棄するということがあり得ないため怒り心頭なのだ
修次『いや、だからね?』
エリカを落ち着けようと話しかける修次
エリカ『まさか、その理由というものが所詮お遊びに等しい全国魔法科高校親善魔法競技大会を見に来たかったからなどとは仰りませんね?』
しかし、エリカの追撃は止まらない
修次の行動一つ一つに何がいけないのかを事細かに口上にあげていく
修次『外交だなんて…大袈裟すぎるよ、エリカ。任官前の士官候補生同士の親善交流で、謂わば大学の部活みたいなものだよ?そこまで目くじら立てるほどのものでも…。』
修次の言い分も一理ある
外交と大袈裟ではあるため、親善交流はよくある話だろう
だが、次の二言目がエリカの怒りに火に油を注ぐことになった
エリカ『兄上っ!』
修次『は、はい!』
エリカの鋭い声がビクッと修次を固まらせる
もはや、親に叱られた子どものようである
エリカ『例え、学生レベルの親善でも、部活だろうと、正式に拝命した任務です。それを疎かにしていいといえ理由などありません!』
任務に大きいも小さいもない
まるで、事件に何とやらである
修次『…お、仰る通りです。』
反論の余地もない正論に修次も返す言葉もない
その様子を柱の陰から見ていた達也達
達也『いくら凄腕と言っても、家族にはたじたじだな。』
誰がとは言わない
しかし、それは達也にとってもブーメランということに気が付いているだろうか?
恭也『義兄上、他人のことは言えませんよ。姉さん達に勝てないのは義兄上も同じです。いえ、あそこの義兄妹以上ですよ?』
達也『…言うな。』
恭也の指摘に達也は苦虫を噛み潰した顔をする
どうやら、自覚はあるらしい
自覚があるぶんまだマシか、いや、もしかしたらもっとヒドイのかもしれないが
結那『当たり前です。放っておけば、達也さんは何をしでかすか解らないんですから。』
弟の言葉に当然だと結那
達也から目を放してはいけないということが結那にとっては当然らしい
加蓮『達也って、後先考えずに行動する時はあるよね?しっかりと手綱は握っておかないと。』
無計画無鉄砲な行動をする達也は首輪が必要だという加蓮
そういうわけで、双子達からすれば達也の行動は目に余るらしい
俺は根無し草どころか、鉄砲玉かと突っ込みたくなった達也
だがここで反論すると百倍になって返ってくるため、押し黙るしかなかった
そんな会話をしていると、向こうで新たな進展が見られた
エリカ『まさかとは思いますが、この女のためにお務めを放り出したとは言いませんよね?』
エリカの言う【この女】というのは修次の横にいる渡辺 摩利だ
彼女と修次が恋仲同士というのは達也は知っていた
何せ、生徒会で暴露してくれたのだから
しかし、摩利は修次のことをシュウとしか言っていないのに、何故達也はシュウが千葉 修次と理解していたのかは八雲の弟子であることと神夢の家が起因しているということだけは確かである
まぁ、エリカの怒りの理由も摩利が一部あるかもしれない
修次『いや、だからね?放り出したのではなくて…。』
いつまで、修次は弁明をしようとしているのか
こういう場合、早々に怒りを鎮めることに努めた方が修次には利が大きいはずだ
エリカ『そのようなことを訊いてるのではありません。はい、か、いいえで答えるところです。』
そのため、修次の弁明がエリカを更なる怒りを誘発している
まだ救いなのは、エリカが怒りで我を忘れていないことだろう
ここまでいけば、普通ならば修次の行動を決めつけてお前が悪いと言い放っているかもしれない
エリカ『…全く、嘆かわしいことです。千葉の麒麟児ともあろうお方がこんな女の為にお務めを投げ出したとは…。』
修次の返答もなく、エリカも呆れた表情をする
そこで止めておけば良いのに、自身で更なる火種をつくるのは彼女に気質によるものだろうか?
摩利『…エリカ。私はお前の先輩に当たるんだが?それを【こんな女】と蔑まれる憶えは無いのだが?』
今まで沈黙をしていた摩利もこの言葉には、異を唱える
今までは修次を叱責していたエリカ
それは修次とエリカです問題でもあったため黙っていたが、今回は摩利自身にも飛び火してくるとは思わなかった
エリカ『そもそも、兄上はこの女と付き合いだしてから堕落しました。千刃流剣術免許皆伝の剣士とあろう者が剣技を磨くことを忘れ、小手先ばかりの魔法に現を抜かすなんて…』
摩利の反論を黙殺し、修次を責め立てる
しかし、どの人間にだって心の琴線に触れる言葉はある
それが今回の場合はその原因が多すぎた
修次『エリカ!』
普段、滅多に怒らない修次
元々、穏やかな気質の人物が声を荒げて怒りの感情を出せば誰だって驚く他ない
エリカ『っ!』
突然の修次の豹変にエリカも気圧される
修次『技を磨くためには常に新たな技術を取り入れていく必要があると、僕がそう考えてそうしたんだ。摩利は関係ない。今回のことは摩利が危ない目にあったと聞いたから、僕が心配になって駆けつけたんだ。摩利は大丈夫だと言っていた。それでなくても、先刻までの非礼の数々。千葉の家の者として恥ずかしい。そして、その家の娘として恥を知りなさい!』
修次は彼自身の考えがあって魔法の勉強とそれを剣に組み込もうとしていた
思考を止めれば、そこで成長は止まる
停滞は退化と同義
進化や変化を厭わない者だけが更なる成長が出来る、そう考えて修次は行動した
自分の事をとやかく言われても構わない
だが、修次自身をダシに他人の悪口を言われるのは我慢は出来ない
この場合、己の精神的な余裕の無さが招いた結果なのだ
修次は知っている
エリカが摩利を毛嫌いしていることも、その原因の一端が自分にあることも
しかし、私情を持ち込むことは許されない
今は、高校生という多感な時期かもしれない
それでも、少しずつで良いから冷静な対応や状況を考えて言葉を選んで欲しいのだ
エリカの腕を認めているからこその修次からの愛情かもしれない
エリカ『…』
兄である修次の叱責に沈黙を返すエリカ
修次『押し黙るとは卑怯だぞ。後半あたりは只の摩利に対しての八つ当たりに過ぎない。さあ、謝りなさい。』
確かにエリカの摩利に対する言葉は目に余るものだった
修次の問題に対して、摩利を無理矢理巻き込んだのは八つ当たりに違いない
エリカ『お断りします。』
修次の叱責に怯んだと思われたが、強気の姿勢を崩さないエリカ
修次『エリカ!』
エリカ『お断りしますと言いました。次兄上が任務を放棄してこの場にいることは事実。その原因の一端がこの女にあることも。』
再度、声を荒げるもエリカはそんなもの知ったことかと言った表情で修次を睨み付ける
修次がこの場にいるのは紛れもない事実
例え、どんな理由であれ任務を放棄することはその人物の株を下げる
無論、身内の死や危篤というならば致し方ない部分はある
しかし、無事ならばそれを理由には出来ない
修次『だから、それは!』
形成逆転と思われたが、一気に再逆転する
エリカの攻勢に戻る
エリカ『次兄上は変わられました。この女と付き合い出してから。堕落と言っても過言ではありません。だから、私の考えは変わりません!』
エリカが慕っていた修次はもういないのだと伝える
摩利と付き合い出してから修次の剣に対しての熱が無く、それがエリカにとっては不満でしかない
立て板に水を流す勢いで捲し立てるエリカ
呆気にとられる修次に対してクルリと背を向け、走り出さない程度で歩き去って行く
修次『すまない、摩利。不快な気分をさせてしまったね。』
エリカの姿が試合会場へと消えるのを見送る修次
そして、摩利に向き直る
摩利『シュウが気にする必要はない。エリカのことも時間が解決してくれるさ。それに、私も怪我も無く、無事だし。』
修次の謝罪に摩利は気にしていないと返す
エリカにも修次にもそして、自分にも時間が必要なのだ
互いを理解するための時間が
修次『それにしても、君を守ってくれた守夢達也君には感謝しないと。それもあって来たんだし。彼は今何処に?』
摩利が無事だというのは彼女自身から聞いていたため、大したことではないことは解っていたが、それでも心配なのは心配で急いで帰国した修次
その無事である、守ってくれた人物が達也で礼を言いたかったのだ
それに、フェンスと板挟みにも関わらず無傷だったというその肉体にも興味はあった
摩利『あぁ、守夢は私達の事情でモノリス・コードに出場させていて、今はインターバルだから、休憩か試合の観戦をしているかもしれない。』
その予想を裏切って、聞き耳を立てているとは露ほども知らないだろう
修次『そうか、なら休憩かな?モノリス・コードはハードだ。休憩は摂るはずだろ…!?誰だ!』
モノリス・コードはミラージ・バッドと同様にハードのため、休憩は必要になる
一年生なら、尚のことだろう
そう考えて、意識が外に向いたそのときだった
剣を磨き、いつしか気配に敏感に感じることが出来るようになった修次のセンサーに僅かに引っ掛かったソレ
摩利『シュ、シュウ?』
本日二度目の声を荒げる修次に摩利は驚いてしまう
しかも今度は、この場に居るのかも、居ないのかもしれない第三者に向けられたもの
修次『隠れているのは判っている、出てきたらどうだ?』
修次の問い掛けにも返答が無いため、更なる質問を投げ掛ける
修次と摩利の場所から10m程の柱に身を潜めていた達也
修次が自分達の存在に気付いたのか怒声が飛んでくる
恭也『(やっぱりバレましたね。これくらいなら仕方ないですか。義兄上、どうしますか?)』
声を出さず、口パクだけで言葉をつくる
音に出さなければ、耳には届かないが達也の場合は、読唇術で恭也の言葉を捉える
達也『(この程度の気配の隠し方はバレても問題ない。しかも、彼女達と言い争いをしている最中に気が付かなかったんだ。技量はそこまでだ、脅威でもない。何処にいるのかも把握は出来ていないからな。)ボソッ』
恭也の言う通り、達也達は気配は完璧に隠してはいなかった
しかし、殆どの人間が気付かない程度には気配は殺していた
それに気付けたのは流石と言えるかもしれない
欲を言うならば、会話の最中に気付いて欲しかったというのはあるかもしれない
結那『(じゃあ、どうするのですか?)』
結那や加蓮、恭也は読唇術は習得出来ていないため、達也は音になるかならないかで口を開く
達也の判断で問題無いならば、それで構わないがこれからどうやってくぐり抜けるのか気になる結那
達也『(完璧に気配を断つまでだ。)ボソッ』
その問いも想定内なのか、三人に逃げるが勝ちだと伝える達也
加蓮『(りょーかい♪)』
人を食ったようなというか歯牙にも掛けない物言いに、いつもの達也だと満足げな加蓮
修次『こそこそとしている者ほど卑怯でしかない。そちらが姿を現さないのなら、此方から行くぞ!』
痺れを切らした修次は物陰に隠れている達也にカマを掛ける
しかし、達也達四人は此方の位置を把握出来ていないことを知っているため動揺はない
摩利『シュウ、待ってくれ。一体誰がいると言うんだ?』
修次の強行な姿に摩利は誰かがいるということは理解出来た
だが、ここまで修次の荒れた雰囲気は珍しい
それ程までに危険なのか?
修次『いつから居たかは判らないが、さっき、視線と気配があったことに気付いたんだ。相当の手練れだよ。』
気配はあるものの、悪意といったものを感じないためより不気味なのだ
只そこにあるといった風な微かな気配
自分ですら、漸く気付いたのだ
そうなると、自分以外で気付ける可能性のある人物は数えるほどしかいない
それほどの腕前なのだ
摩利『シュウでさえ気づかなかった人間って…。』
摩利も修次が凄まじい剣の腕前ということは理解している、世界でも十指に入る程の実力者だ
そんな人物が気付けなかった相手など知らない
摩利の知る中で思い浮かぶ人物を探そうとするも見当がつかない
修次『!?…何だ?…気配が消えた?…クッ!』
そんな思考をしていたのも束の間、修次のセンサーから完璧に気配が消える
とても悔しそうな修次に摩利は何も言えなかった
達也『すまない、待たせたな。』
修次を半分誂うように逃げてきた達也と双子と恭也は通路のすぐ上の観客席でレオ達を見付ける
それなりに混んではいるが、席には余裕があり見付けるのは容易かった
そのため、4席ほどのまとまった席はレオ達の真後ろに余っていた
レオ『気にすんな。』
美月『達也さんの妹さんと弟さんも来られたんですね。』
達也だけでなく、双子の結那と加蓮、恭也がいたことに皆驚いていた
いつの間に達也と合流していたのか、少なくとも達也と自分達が途中で別れたときにはいなかったはずだからだ
しかし、それは全員の勘違いで元から一緒に居たため合流はしていないのだが
美月やレオ、幹比古は人数が増えることに何も不快には感じていないが、ほのかと雫、途中で合流していたのかエリカは嫌そうな表情をしている
恭也『お邪魔します。』
ほのかや雫が不満そうな表情をしている
美月『はい、どうぞ。』
席の位置は達也の左右に結那と加蓮が陣取り、恭也が達也の後ろの席に座るという完璧な陣形だ
エリカ『…納得いかないんだけど。』
雫『確かに。』
ほのか『むぅ。』
この三人、特にほのかと雫は達也に告白紛いをしているため、嫉妬の炎が渦巻いている
その姿を見ていた幹比古は冷や汗をを浮かべるしかなかった
一歩間違えれば、戦争が起きる
そんな恐ろしい情景に見えていた
達也『?どうした、始まるぞ?』
そんな空気にも達也は気付いてないのか、のんびりとしたものである
典型的な鈍感野郎なのか天然ジゴロである
新人戦男子モノリス・コード準決勝
第三高校と第八高校の試合が始まった
レオ『なんだありゃ?十師族はすげぇんだな。』
なんとも頭の悪そうな発言である
ボキャブラリーが無いと思われても仕方がないレオの発言に幹比古も苦言を呈する
幹比古『凄いですまされる話ではないよ。』
幹比古の言う通りである
というのも、第三高校の選手である一条の嫡子である一条将輝はあろうことか単独で敵陣内に侵攻しているのだ
その理由は相手校である八高の選手の魔法が将輝に全く効果が無いということである
こういう場合、不敵という言葉が似合っているかもしれない
まるで、散歩しているかのようなゆったりとしたペースが更に恐ろしさを倍増させている
達也『あれは、相当実力がなければあんな真似は出来ない。または、相手との実力差が圧倒的に無いことにはな。』
エリカ『でも、各校の代表なんだから相手も相当だと思うんだけど?』
幹比古に同意する形で戦況を分析する達也にエリカは八高のフォローを入れる
達也『十師族を嘗めると痛い目を見るぞ?あと、師補の十八の家もな。』
達也の言う通り、一条将輝に対して第八高校の選手達は魔法が全く刃が立たない状況だった
八高選手の放つ魔法は見えない何かで攻撃が弾かれており、将輝には何一つ当たっていない
基本的に魔法師は自らに他者から魔法で攻撃を受けないように領域干渉を施すことが出来るこれにより、不意の魔法による攻撃を防ぐことができる
しかし、それはあくまで自身の魔法力の強さによって決まるため絶対防御ではない
将輝の場合、それはー
達也『…干渉装甲か。移動型領域干渉は十文字家の御家芸の筈だ。それをやってのけるとはな。しかも、相当息継ぎが上手いんだろう。』
十文字家の御家芸をいとも簡単にやってのける
基本的に魔法は永続的に効果が続くことは無い
発動すれば、終わりがある
しかし、その効果を続けようとすることは出来る
それは、魔法の終わる瞬間に新たな魔法を発動することだ
何度も発動するという手間があるものの、この方法が手っ取り早いことは確か
下手に長続きさせようとするよりも短時間の魔法を発動し続ける方が良い
言葉では簡単に言ってのけるが、実際に行うとなれば別だ
そこを達也は称賛していた
レオ『つまり、どういうことだ?』
達也『簡単には言うと、生半可な魔法ではあの防御を崩すことは不可能ということだ。』
ちんぷんかんぷんなレオや達也の解説に開いた口が塞がらないエリカ達
ほのか『でも、達也さん。あの時、十文字さんの障壁魔法を素手で壊しましたよね?あれで何とか出来ないんですか?』
達也の出来ない発言にほのかは不思議そうな表情をする
何せ、その絶対防御とも言える十文字の障壁魔法を拳一つで破壊するという化け物じみたことをやってのけたのだ
先程の達也はいつもの達也ではない
エリカ『は?素手で魔法を破壊したの達也君?』
ほのかの暴露にまたまたエリカ達は呆気にとられる
魔法を肉体的な力で破壊するなど聞いたこともないのだから
確認のために、達也を見るも肯定する達也
達也『つい感情的になってな。…やめてくれないか?その人間じゃない、みたいな目は。』
いくら感情的になったからといって、魔法を素手で破壊するなど人間をやめている
いや、最早生物ではないのかもしれない
恭也『義兄上は魔法力の換わりに肉体の力が半端じゃないですからね。』
エリカ達が驚愕の色に染まっている中、結那、加蓮、恭也はとても誇らしげな表情をしている
達也『それは置いておくとしてだ。基本的に魔法無しでの攻撃は禁止されているから、ほのかの要望は無理だ。(しかし、あの行動は俺に対する挑戦状と捉えていいだろう。正面から向き合って勝負してみろという。策士だよ、吉祥寺真紅郎。そして、正面から対峙することが最も勝率は最も上がるだろう。リスクも最低限でな。)』
話が進まないため、咳払いを一つする
直接的な攻撃は魔法のみであるためほのかの質問は出来ないということ
そして、今回の将輝の行動は達也に対する挑戦状だろう
それを達也は受けざるを得ない
勝つためにはーー
達也達の会話の最中、試合が大きく動く
魔法が弾かれるなら、物体を媒介に足止めを含めた攻撃に切り替える八高選手
ステージ内に無数にある岩の塊に目をつける
そして、将輝の足元にある鉱物から火花が散る
上記の無数の岩の塊を動かすには魔法の規模がものを言う
鉱物から電子の強制放出は放出系の魔法でも難易度は相当レベルは高い
物体の質量や魔法の規模、上級魔法に対抗するには魔法力の大きさが必須だろえ
また、これらは並みの魔法師なら防ぎきれるものではない
達也が勝てたのは、魔法を発動する余裕を与えなかったからだ
純粋な力勝負なら負けていた
八高選手①『これでもくらえ!』
無数の岩の塊を直径50cm程度の大きさに分割し、数を増やすと将輝の四方を囲み一斉にぶつける
同時に、鉱物から電子強制放出を発動する
ーー筈だった
無数の岩の散弾は運動ベクトルを逆転させ、攻撃を無効化
電子の強制放出は未発で抑え込まれる
それらをいとも容易く無効化した将輝は涼しい表情をしている
次いで、将輝は右手を八高選手に向けると爆風が八高選手を襲う
至近距離で、しかも背後からの攻撃に為す術無く地面に
臥すしかなかった
達也『偏倚解放か。単純に圧縮解放を使えばいいものを…ただの派手好きか?いや…そういうことか。』
将輝の使用した魔法から性格を分析する達也
レオ『何を一人で納得してるんだ?』
エリカ『そうそう、偏倚解放って何?』
達也一人で納得したのが、気に入らなかったのか
ほのかや雫までもが達也に説明を求めるように視線を投げる
達也『納得というほどではない。偏倚解放というのはだな、イメージさせると、円筒の一方から空気を詰め込んでもう一方から目標に向けて蓋を外すイメージかな?但し、効率が悪すぎるんだ。解放された面から高圧の空気を噴出して、普通に圧縮空気を破裂させるほうが威力があるのと、爆発に指向性を与えることが出来るのはメリットとしてあげられる。威力を上げるなら、普通の空気圧縮で空気量を増やせばいいし、指向性を持たせたいなら圧縮空気を直接当てればいいのだが。彼は、一条将輝は扱う魔法の一つ一つが強力すぎてしまうために敢えて、殺傷性ランクを下げる為に手間の掛る魔法を使っているだけなのだろう。全く、力がありすぎるのも困りものだな。』
結那や加蓮達でさえ、あまり馴染みのないマイナーな魔法に耳を傾けている
しかし、最後の言葉には達也を気遣う視線があった
将輝の場合威力を抑えることは可能だが
達也の場合は、扱う魔法全てがAランクなのだ
極端に殺傷ランクの高い魔法しか扱えないため、必然的に使用は制限されてしまう
そのため、公の場では魔法を使うことさえ許されない
とはいえ、魔法の使用を封印していても体術でも人を殺めることも可能な達也にはどちらにしても手加減が必要なのだ
本人は気にしてもいないだろうが、ここまで不自由な身の上はそういない
幹比古『達也が言うとあまり大事に聞こえないのはどうしてだろうね?』
レオ『確かにな。』
魔法という世界の中でも達也は突出した存在ということは幹比古達でさえ知っている
しかし、ほのかや雫達と身内である結那や加蓮、恭也の思考は違う
それは達也の素性を理解しているからこそだが
そこは知らぬが仏だろう
達也『いつの間にか終わったみたいだな。』
達也達が話し込んでいる間に残り一人を戦闘不能にした将輝
結果としては、三高の完勝に終わった
理由はお分かりだろう、一条の嫡子一人で八高選手を全員戦闘不能にした圧倒的な魔法力
残りの二人は自陣のモノリスの前で待機していただけなのだ
余力も充分残っているため、決勝も万全であるのは間違いない
真由美『…はぁ~。予想以上ね一条のプリンスは。何だか、十文字君のスタイルに似ていたような気がするんだけど。』
第三高校と第八高校との準決勝の様子を天幕でのモニターから観戦していた真由美達
この場に居るのは、十文字と鈴音、他数名
摩利は魅力的な彼氏といるためこの場には居ない
十文字『似ていたどうかは知らんが。』
真由美の自分のスタイルと似ていると言われても、正直返答に窮する
鈴音『おそらく、あれは守夢君への挑発ではないかと。一条家のスタイルは基本的に、中長距離からの先制の飽和攻撃です。予選リーグでは遠方からの先制攻撃でディフェンスを無力化していましたから。』
しかし、鈴音は将輝の行動が何を意味しているのかを理解していた
それは則ち、達也のスタイルを理解しているとも言えた
達也のスタイルを理解していなければ、将輝の行動が達也にどう影響を与えるのかが解らないからだ
もっと言うならば、達也に想いを寄せている証拠でもある
十文字『市原の言う通りだろう。俺と似た戦法をとったと言うことは守夢に対して正面から撃ち合ってみろという挑発だろう。』
十文字の場合、もし達也と対決することになったら?という予想の結果、将輝と同様な作戦の中の一つとして立てたということだ
しかも、事前に達也自身が魔法力はからっきしだということも知り得ている
真由美『まあ、彼等からすれば気持ちは解らなくはないけど。』
十文字『そして、それを奴は受けるだろう。唯一ではないが、数少ない勝機だ。本来の一条のスタイルになれば、敗北は必至。だが、守夢に触発されたのかは知らんが、守夢の戦闘スタイルを意識し過ぎているのだろう。』
十文字の言葉に真由美は疑問符を浮かべる
しかし、鈴音はその言葉に同意していた
レオ『全く、大した防御力だぜ。どうするよ?』
幹比古『そうだね。しかも、一条選手以外の手の内を確認出来ていないのは痛いね。』
二人の表情は難問を前にした学生のように手詰まりといった風だ
だが、絶望したわけでもない
何処かに攻略の糸口はないものかといった一縷の望みを探していた
達也『いや、そうとも言い切れない。残り二人の内一人、吉祥寺選手は大方予想出来る。もう一人は予想は出来ないが、まあ、大したことはないだろう。』
レオと幹比古の表情と口調と言葉から希望は捨てていないと判った達也
それでこそ、一流になる素質があると心の中で称賛する達也
幹比古『えっ、そうなのかい?』
達也からもう一人の情報は知っていると幹比古は驚く
いつの間にそんな情報収集をしていたのか
達也『あぁ、吉祥寺選手のフルネームは吉祥寺真紅郎。通称、カーディナル・ジョージだ。』
だが、情報収集は達也もしていない、ただの知識として知り得ているだけでなんら特別なことではない
幹比古『そうか、吉祥寺真紅郎ってどこかで聴いたことのある名前だと思っていたけど。あのカーディナル・ジョージだったのか。』
達也からの聞かされた名前に幹比古は納得の表情をする
達也『彼が発見したのは基本コードである加重系統プラスコードだ。出場した競技はスピード・シューティング。ならば、彼の得意魔法は作用点に直接加重を掛ける
しかし、納得の表情をしただけで希望を見出だした訳ではない
希望を見つけ、勝つためには相手を分析する必要がある
そして、分析するにも情報が必要なのだ
達也は二人に相手の情報を全て与えることにした
レオ『…達也、基本コードってなんだ?』
幹比古『達也、対象物の個体情報を改変するんじゃなくて、部分的に加重を掛けるなんて出来るのかい?』
レオに関しては事前知識が欠けており、幹比古に関しては知識に対しての深掘りが欠けているようだ
ならば、この機会に学んで貰うとしよう
幸い、ほのかや雫、エリカや美月といった学んでいそうなメンバーも初耳と言った表情をしていた
非公式での貴重なシルバーによる講義が幕を開けた
達也『そうか…では、そこから説明しよう。魔法式の研究分野には【基本コード仮説】という理論がある。権威のある学者も結構支持しているものだ。【加速】【加重】【移動】【振動】【収束】【発散】【吸収】【放出】の四系統八種にそれぞれ対応したプラスとマイナス、合計十六種類の基本となる魔法式が存在していて、その十六種類を組み合わせることで全ての系統魔法を構築することが出来るという理論だ。それが基本コード仮説だ。しかし、これの結論を言うと、全ての系統魔法を構築出来るという点で間違ってはいるんだが…基本コードは実在するんだ。ここまでで何か質問はあるか?』
一旦、インプットからアウトプットを仕掛ける達也
幹比古『え?間違っているのに、存在する?』
レオ『いや、既に混乱してる。』
達也の説明に何もかもが初めてで脳内で反芻するも疑問符が飛び交っているようだ
だが、義妹と義弟は理解をしているようだ
伊達に十数年一緒に達也と過ごしていない
達也『分からなくはないな。安心していい、ちゃんと説明するから。四系統魔法にどう組み合わせても十六種類もの基本コードだけでは構築出来ない魔法式が存在する。だから誤りなんだ。しかし、基本コードと呼ばれるだけの特徴を持つ魔法式は存在する。』
レオの降参のポーズに呆れた様子はない
寧ろ、良く言ってくれたと思っていた
これで、説明にも張り合いが出てきたと達也
達也にとっては不本意かもしれないが、第三者視点から今の状況を見ると、懇切丁寧に教える姿は心優しいとしか表現出来ない
雫『達也さん、もっと解りやすく。』
予想外だったのは雫がほのかより理論の成績が悪かったことだろうか、決して勉強が苦手ということではないが
雫の要望はほのかや美月が同じように難しいと思っていること
達也『すまない、これ以上は理解におかしな解釈を与えるから無理だ。…続けるぞ、現代魔法は魔法式に改変後の事象の状態を定義することで様々な作用力を発生させる。改変を生じさせるための作用力も魔法式の中に定義されているが、それは魔法が作用した結果を定義しなければ発生しない。だが、基本コードは作用力そのものを直接発生させることが出来る。つまりだ、基本コードとは【加速】【加重】【移動】【振動】【収束】【発散】【吸収】【放出】の作用力そのものを定義した魔法式のことなんだ。個体のエイドス全体に働きかけるのではなく、個体上の一点に直接力を及ぼすという魔法が可能になる。……そうだな、例えるなら、圧力を掛けますか?はいかいいえで、はいと答えたらどのように加重をするかは決めなくても掛けることが出来ると表現したらいいかな?
もしくは、人間の両肩に加重を掛けるのに地面に伏すという定義はしなくて良いという考え方かな?
それが現在発見されている加重系統プラスコードだけだ。』
しかし、達也はそれは無理だと切り伏せる
一応、最大限の理解のための補足を入れるも全員が理解出来たとは考えにくい
この人数なら一人が理解出来れば上出来だろう
幹比古『…なるほど、それなら解ったよ。けど、余計に厄介だよね。』
今の達也の説明で何とか理解に漕ぎ着けることが出来たのは幹比古だけだったようだ
それを理解出来たということは吉祥寺真紅郎の魔法特性が強力だと、攻略が難しいと結論に辿り着いたということ
達也『そうだな。だが、欠点はある。彼の【
その理解の域に到達しても達也と幹比古では論点の問題への視点が違う
幹比古が難しいと結論付けても達也はそう思っていない
強力な魔法でも欠点や短所は必ずあるということ
幹比古『どんな?』
自分では考え付かなかった欠点に気付いた達也はやはり、凄いと感じる
達也『視認しなければならないということは見えなければいい。遮蔽物で防ぐことが出来るはずだ。あとは、領域干渉でも可能だが、俺達には難しい。情報強化では防ぐことは出来ないから注意しておけよ。…どうした、レオ?』
そんな対策方法の装備をいつ用意するのかは聞かなくてもわかる
達也のことだ、相手選手の情報など筒抜けだろう
もはや筒すらないかもしれないが…
レオ『ふと、思ったんだけどよ。達也、さっき【十六種類もの基本コードだけでは構築出来ない魔法】が存在するって言ってたけどよ。つまり、その十六種類もの基本コードを知ってるってことなんじゃないか?』
幹比古は頷き、レオに関してはとても不思議そうな表情をしている
例えるなら、固定概念に囚われず物事の真実に的を射る発言をする子どものようだ
レオは馬鹿ではない、知能、知力は高いといえる
日常の行動が抜けているだけで
達也『…良い質問だな。けど、答えはノーだ。基本コードを見つけたのは吉祥寺真紅郎のみだ。俺が知っているのは、基本コード仮説では構築出来ない四系統魔法を知っているだけだよ。』
ズバリ核心を突いてきた質問に虚をつかれた達也
それも瞬き一つの間に通常運転に戻す
しかし、家族には誤魔化せない
エリカやレオには判らなかったようだが、若干だが、殺気が感じられた
それを落ち着けるためにも話を続ける
だが、今の話をする必要性もなかったかもしれない
それは秘密主義の魔法師が自分の素性を暴露するようなものだからだ
もっとも、達也自身は魔法師ではないと言い張るだろう
恭也『義兄上、そろそろ。』
と、試合時間だと話の腰を折る恭也
これ以上のヒントは不要でもあり、教える必要もないと言外に告げる
両脇にいる結那と加蓮を見やれば同じように頷いていた
それは達也も解っているし、これ以上親しくなるつもりもない
達也『遮蔽物の準備は整えているから、あとは九高に勝つことを考えてればいい。いくぞ。』
全員が達也の知っているという言葉に興味を惹かれたものの、達也達の一方的な切り上げに従うしかなかった
新人戦男子モノリス・コード
準決勝
第一高校VS第九高校
渓谷ステージでの対戦になる
渓谷ステージの形状は「く」の字形に湾曲した人工の谷間
水の流れは上から下かと思いきや、そういったポジションによる有利不利は無い
理由は渓谷ではなく、崖に囲まれた湖(といっても、水深は0.5mほどであるため池以下である)だからだ
しかし、達也からすれば甘いと考えてしまう
なぜなら、実戦では有利不利などぼやいている暇はないのだから
とステージの説明を連連とした訳だが、結論から言えばここは幹比古の独壇場だった
空気中に高い水分を含んでいるため幹比古による古式魔法でとある作用をさせる結界を作り出すと白いガスのようなものがステージを覆う
もうお分かりだろう
そう【霧】だ
この霧は幹比古の結界によって生み出された霧だ
そのため、九高選手には濃く、達也達には薄くという操作をしている
今回の魔法は大気中の水分に関係なく、霧に変えるまほうだ
物理的に風や熱で対策を講じても無駄といえる
しかも、この結界の概念に「閉鎖」が含まれており、何をしてもただただ、空気が循環するだけなのだ
だから、その霧を取り除くためには、幹比古の結界を認識しなければならない
だが、九高選手には古式魔法の根本を理解していないためそれも不可能だった
達也にとっては霧だろうと暗闇だろうと進めるため問題ない、
それに味方には霧は薄いため、早足だと晴れてくれるのだが、それすらも面倒臭がった達也は通常通りに霧の中を駆け抜ける
それによって風が巻き起こるのだが、それすらも九高選手は混乱してあたふたしてしまうだけだった
数分後、敵陣のモノリスに到着した達也
ディフェンダーの背後を取ることも簡単だが、ここでも遊び心というかイタズラ心というか足下に転がっている小石を湖に投じた達也
ポチャンッという水の音に反応した九高選手の背後を取り、モノリスの解除の鍵を撃ち込む
見えないという状況下では、音が重要になってくる
そのため、微かな音も聞き逃してはならない
それが今回、裏目に出ることになった
結局、達也の掌の上で弄ばれていた九高選手
一撃離脱した達也はあとの作業を幹比古に引き継ぐ
元々、この霧は幹比古の仕業のためコードを読み取るのは容易だ
霧の結界を維持しているのは幹比古自身の精霊であり、謂わばこの霧は幹比古の眼だ
結果、一戦も交えずに一高の勝利で終えたのだった
山中『随分と手を抜いているなぁ、達也は。我々には遊んでいるようにしか見えんぞ?』
第八高校との試合から監視という名目で観戦していたが、達也の手抜きが過ぎると軍医の山中は言う
監視という名目だが、達也が何か命令違反をすることは絶対に無い
そのため、身内の頑張っている姿を観ているという図になる
響子『秘密ですからね。彼の力は。けど、決勝の相手は一条ですから。少しだけ彼の特別が見られますよ?』
山中の思いも解らない訳ではない響子は苦笑するしかない
だが、次の試合はそうもいかない
少しだけ、達也の実力が見れるかもしれない
山中『秘密にしては、忍術を使っていたんだが?』
隠すなら徹底的に隠さないのは何故なのか?
達也の事が大切だからこそ、厳しくなる
響子『そこは牽制ですね。身体的な力を見せて注目を集めましたが、そこだけでは注目の的にしかならない。そこで、九重先生の弟子ということをちらつかせれば…。』
しかし、響子は達也の思惑を理解していた
忍びの弟子
単純だが、強力な手札となる
エンジニアとしての腕と古式魔法の使い手という達也を手に入れるためには、スカウトする相手側もその前提条件を超える魅力が無ければおいそれとは手を出せない
エンジニアとしての腕を買おうとすれば、それ相応の技術力のある企業が
ましてや、暗闇に乗じて奇襲をしようにも返り討ちに遭う
しかし、本当の目的は別にある
山中『ふむ、なるほどな。古式魔法の使い手ということで下手に手を出せなくなるという寸法か。』
如何にも達也らしいと満足げな表情をする
響子『はい。でも、達也君はこんなもの遊びでもないと思っていますよきっと。』
自分の説明で納得した山中を見て、少し笑う響子
恐らく達也は、今の山中を見れば笑うだろう
それは表情や説明に納得したからではない、遊びでもない
山中『?』
山中は疑問符を浮かべるも響子はフフッと笑うのみであった
新人戦男子モノリス・コード決勝戦は三位決定戦が終えてから行われる
試合時間としては長くても30分短ければ15分だろうか
そこにステージの設営に約1時間程度
そう考えると、試合時間の逆算をすると2時間後という形になる
達也達はその間を休憩時間として充てることにした
幹比古はその休憩時間を利用してホテル最上階の展望室に訪れていた
幹比古『(…まるで、嘘みたいだね。魔法を精霊を感じることが出来るなんて。この調子なら富士の霊峰の
しかし、先客が展望室にはいた
エリカ『あら?こんなところにどうしたの?…そっか、霊峰の
自分の名前を呼ばれ、振り返ると幼馴染みである幹比古
かつて、とある事故で思うように魔法が使えなくなってしまい、酷く落ち込んでいたのがある同級生によってその自信を取り戻しつつあった
幹比古『う、うん。エリカこそ、どうしてここに?』
エリカ『私は気分転換かな。』
幹比古はエリカの言葉通り、ある事をするために此処に来ていた
しかし、エリカは一人で気分転換と言っている
装いも少女らしい可愛いと称するもので普段の彼女の雰囲気とは違う
幹比古『そっか。(なんか、エリカの様子がおかしい?)』
それ以降何故か会話が続かなく沈黙が支配する
普段の彼女ではないため戸惑ってしまう
エリカ『幹比古君、霊峰の
幹比古『ぇっ?えっと、うん。』
大きく深呼吸するかのように
しかし、方法は吸う・吐くではなく、吐く・吸う
幹比古やエリカの言葉に
しかし、それはあくまで古式魔法や魔法界の話である
幹比古の一連の動作と充填されていく
エリカ『(なんだ、出来てるじゃない。)幹比古君、気付いてるか判らないけど。貴方、以前と同じように、いえそれ以上かな?
確かに、達也により術式は幹比古に最適化されたものの扱うのは幹比古自身だ
幹比古が今までの努力の賜物がようやく、実を結んだのだ
幹比古『確かにそうかも。…っ!痛い!』
エリカ『しっかり頑張って来なさいよ、ミキ!』
バシッと背中を平手で叩かれ、我に返るとエリカがいつも見ていたニヤニヤとした表情をしていた
幹比古『…僕の名前は幹比古だ!』
いつもの調子に戻ったエリカに幹比古もいつもの科白を返すのだった
ーーーー
九校戦の入場門で達也はある人物を待っていた
否、その人物が持ってくる物という方が正しい
達也『わざわざ、お持ちいただきありがとうございます、小野先生。』
小野 遥
第一高校のカウンセラーとして勤務している
裏の顔は公安の秘密捜査官だ
彼女も里美と同様にBS魔法師だ
通称:Born Specialized(ボーン・スペシャライズド)
の略で、BS能力者、或いは先天的特異能力者、先天的特異魔法技能者とも呼ばれる
おそらく、彼女の魔法特性に目を付けた公安がスカウトしたのだろう
ブランシュ日本支部の場所も特定するなど腕前は相当ではある
小野『本当よ、なんで私が届けないといけないのよ。いくら先生の弟子とはいえ。』
前回、達也に自分の素性を暴かれており、どうしてそれを知っているのかを調べようとしても一般家庭の出身で、それ以上は調べれなかったのだ
しかし、自分の師でもある八雲の弟子ということは情報としてあった
それを頼りに八雲に達也の事を尋ねようとしたら、向こうから【やあ、達也君にはもう会ったかい?】なんて訊かれたのだ
何処まで見透かしているのか恐くなったくらいだ
達也『それは、師匠に言って下さい。まあ、弟弟子なので我慢ですよ。』
そう、達也は八雲の弟子になって10年近くになる
だが、彼女の場合は僅か2年程だ
年齢的に上だとしてもどちらが技術的に上なのか判りきっている
小野『はぁ。何だかんだで君に正体を見破られるし、先生に訊いてもはぐらかされるし。』
自分の身分がバレない自信はあったのだ、それを高校生に見破られるなんて(まるで、漫画に出てくる高校生探t…ゲフンゲフン)
そして、八雲も達也の味方にしか見えなかった
達也『そんなに不満が溜まっているのでしたら、仕事を依頼しましょうか?税務申告の不要な、少し遅いボーナスと考えて下さい。』
小野『…何をさせる気なの?』
そんな小野の心情に知ったことかと思う
仕事は仕事なのだ、ならば、したいであろう仕事をさせることにする達也
税務申告が不要なと言われて、少し身構える小野
当然だろう、高校生からの依頼など初めてだ
しかもあの達也からだ、警戒しかない
達也『
小野『!?』
本当に碌でもない依頼である
どうして、犯罪シンジケートの名前を知っているのか
達也に詰め寄るも、何を口に出すべきか多すぎてパクパクと開閉するだけ
達也『どうしてその名前を知っているという表情ですね。今回の九校戦にちょっかいを出してきているのはそいつらです。相手の情報が無いことにはおちおちと寝ていられませんから。』
普段の丁寧な口調が少し砕けているのがチラホラと見える達也
若干、イラついているのだろう
しかし、神夢で調べればこのようなまどろっこしいことは不要なのに何故お金を掛けて他人に依頼するのか?
小野『いつの間に…ってそんな野暮な話は聞くべきではないわね。何をする気なの?』
どうやって調べたのかなんて聞くべきではないだろう、藪蛇にしかならない
どうせ、訊いても教えてはくれないだろう
達也『今のところは何も?というよりか、何故私が何かすると?ブランシュの時も事後処理が面倒だったから帰っただけなのですが?』
小野『…嘘っぽい。』
その通り嘘である
自分で始末したいからさっさと帰りました、が正解である
だが、達也が殺ったという証拠もないため、真実は闇の中である
達也『先生の本職はカウンセラーでは?生徒を信じないでどうしますか?…ところで、この距離はあらぬ誤解を招く予感がするのですが。』
本人はしれっとしている
それよりも達也は小野との距離を言及する
誰からとは言わないが、あらぬ誤解を被るのは御免だ
小野『…只の情報収集なのよね?』
達也との距離が10cmに満たないのを自覚したのか、慌てて距離をとる
これではまるで恋人同士のようではないか
赤面しながらも、達也に使用目的を確認する
達也『勿論です。まあ、小野先生が嫌なら、自分で調べに行きますので。その間の言い訳はお願いしますね?』
あまりの返事の良さに何か隠していないか疑いたくなる
小野『…分かったわ。一日頂戴。』
断ることも出来たが、お金もそうだが、生徒からの依頼となれば断るわけにはいかない
アリバイ作りに加担するのは嫌というのもあったが
達也『流石です。私でも一日は微妙なところでしたから。』
小野からの納期を聞かされて素直に凄いと感じた
八雲の弟子で隠密も叩き込まれてきたが、1日では無理だと実感していたからだ
ーーーーー
大会委員会から装備の許可も得たため、天幕に呼び出しておいたレオと幹比古にこの装備を渡しに行く
天幕に入ると、全員が達也の方に振り向く
その視線には称賛や嫌悪など様々だが、達也は気にした風もない
奥に待たせている二人の元に向かう
真由美『あ、守夢君。決勝戦のステージが決まったのは知ってる?』
どうやら、決勝戦のステージが決まったようだ
達也『いえ、それは後程伺います。二人共此方に来て下さい。』
達也としては、どのステージだろうと作戦に大きな変更もない
優先すべきはこの装備を渡すことだ
レオ『お、どうした、守夢?何かあんのか?』
達也から予め渡すものがあると呼び出されていたため、更なる装備がとても気になるのだ
達也『はい、お二人にお渡しするものがあります。このマントとローブです。』
ワクワクなレオに笑いを噛み殺してマントを手渡す、幹比古にはローブを手渡す達也
幹比古『僕はローブ?どういうことだい?』
幹比古はレオと同じようでマントを渡されると思っていたため、疑問に思う
達也『そのマントとローブには魔方陣を織り込んである特別製です。原理は刻印魔法で発動します。あの時に話した遮蔽物がそれです。』
レオ『なるほどな。』
幹比古『じゃあ、着用した者の魔法が掛かりやすくなるということかい?』
達也から三高の試合の時にカーディナル・ジョージの魔法は遮蔽物もしくは認識出来ないという事を思い出す
そのため、このローブという形状は幹比古には最適なのだ
そういったことも計算に入れて幹比古にローブを渡したのだ、末恐ろしいとしか言えない
達也『はい、その通りです。』
理解の早い幹比古に達也も説明が少なくて助かる
レオ『りょーかいした。じゃあ、準備してくるわ。』
レオは説明よりもやらせてみるに限るため、自由にさせることにする
やる気、気力、体力ともに十分あるだろうからコツはすぐに掴むだろう
達也『お待たせしました、会長。』
二人が天幕から出ていくと、真由美に向き直ると何か言いたげな表情をしている
真由美『さっきのあれは決勝戦に使うためのもの?許可は?』
達也『すでにとってあります。厳密に言えば、ルール上に記載されていなかったため、渋々ながら承諾したという形ですね。』
予想通りというべきか、質問攻めに会う
しかし、意外にも単純な内容で少し助かったのは内緒だ
鈴音『なるほど、流石ですね。』
いつの間に居たのか、鈴音は達也の行動を手離しで褒める
達也『それで、ステージは草原ステージではないですか?』
話がトントン拍子に進み、出遅れた真由美を放置して本題に入る
真由美『…その通りよ。障害物が無いから厄介と思ってるんだけど。』
質問のようで確信を持った達也の問い
真由美は肯定しつつ、難しそうな悔しそうな表情をしている
理由は一つだろう
達也『…一条選手が厄介だと?』
一条 将輝
佐渡の侵攻作戦で初の戦闘を行い、爆裂で敵を多く屠った近年では珍しい実践経験のある魔法師だ
彼が決勝の相手では勝ちの目が薄いと真由美は感じているようだ
真由美『ねぇ、守夢君。出て貰って感謝してるわ。一応、総合優勝の目処も立ったわ。』
まるで、達也をモノリス・コードの選手として出場を依頼したときのような眼をして達也を見つめている
そして、その眼には達也を心配している
準優勝なら当初の目標をクリアしているため無理をする必要はないと
達也『なるほど、私が一条選手に遅れを取ると?否、負けると?(確かに、あの時からどれだけ成長したか気になるがな)ボソッ』
真由美の言い分も解らない訳ではない、確かに高校生で実践経験の魔法師など珍しいだろう
それに加えてあの一条の嫡子だ
十文字でも勝てるかどうかは怪しいものだと達也は考えている
だが、達也の考えは違っていた
真由美『…』
達也の瞳が少し煌めいたのを見留めた真由美
普段はやる気のない表情が今はとても愉しそうな表情をしているのだ、自分では止めることは出来ないと悟る
しかも、何か最後に呟いていたのだ
何か考えがあるのだろう
桐原『おいおい、直接の打撃等の攻撃は禁止されてるぜ?』
服部『お前こそ、魔法師を甘くみるなよ。』
この二人は達也にやられたが達也を少しは認めてはいるのだが、まあ言葉遣いは横に置いておくとしよう
また、天幕にいる一部のスタッフ達も達也の実力を認めているが、敢えてなのか口には出さない
達也『侮られては困りますね。…魔法は道具です。道具に振り回されているようでは三流以下。それに、手段はいくらでもあります。後は、どのようにして当てるかだけです。今回は、少し無茶をしますがね。ご覧にいれましょう。
二人の激励に不敵に笑う達也
勝てる勝てないではない、勝つためにここにいるのだから
大変永らくお待たせ致しました。
長かった…
一話最低一万字を超えるように書いているのですが、終わり方が不自然だなと思ってしまい書き足せば終わらない。
①ご存じの通り、原作より駿足です。
②今回は決勝戦のためにグラムデモリッションは使わせてません。
③幻影魔法 陽炎 オリジナルであれば嬉しいなぁ。あと、入学式の時の達也と八雲の稽古で見せたのがこれにしようかと思っています。
④千葉の麒麟児と接触させてみました
基本コードって全然理解出来ないんですよね。
では、また次回お会い出来ればと思います❗️